10月 21 2020
財産開示手続の実効性が向上するかも
判決を取っても相手が支払わない場合,相手が持っている不動産,預貯金,給与などを差押えて強制的に回収することになります。
しかし,裁判所が財産を見つけて差押えてくれるわけではありませんので,こちら側で差し押さえるべき財産を特定する必要があります。
でもこれって,結構難しいですよね。不動産であればある程度どうにかなるかもしれませんが,預貯金については知り合いでなければ普通は知りませんし,勤務先なども同様です。警察のように家宅捜索などをすることはできませんので,財産が見つからず諦めざるを得ないということもあります。
この点,財産開示手続という方法が民事執行法に定められ,相手に対して持っている財産を明らかにするよう命じる手続があります。ただ,罰則が「30万円以下の過料」という比較的軽い行政罰しかないため,あまり実効性がありませんでした。
当事務所でも何度か財産開示手続を進めたことはありますが,開示されたことは一度もありませんでした。
これを受けて,新しい手続である「第三者からの情報取得手続」が定められ,一定の要件を満たすと,公的機関や金融機関などから情報を得ることができます。
さらに,今年4月の法改正により,財産開示命令を無視した場合の「30万円以下の過料」が「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」とかなり重くなりました。
そして昨日(令和2年10月21日),財産開示命令を無視したという民事執行法違反の容疑で書類送検されたそうです。
以下,毎日新聞2020年10月21日 09時53分の記事の一部を引用
借金を返済せず、強制執行に向けた財産開示手続きで裁判所から命じられた出頭に正当な理由なく応じなかったとして、神奈川県警は20日、開成町の男性介護士(34)を民事執行法違反の疑いで書類送検した。県警によると、財産開示手続きの違反に刑事罰を科した改正法が4月に施行されて全国初の検挙という。
送検容疑は、横浜地裁小田原支部が財産開示のために決定していた8月14日の出頭に、正当な理由なく応じなかったとしている。松田署によると、男性介護士は2016年ごろに東京都内に住む30代の男性会社員から数万円を借りたが、まったく返済していなかった。
(中略)
同法は改正前、財産開示手続きに応じなかったり、虚偽の陳述をしたりした場合は「30万円以下の過料」で、軽いとの指摘があった。実効性を高めるため、改正時に6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金の刑事罰に強化された。
(以上で引用終わり)
そもそも30万円以下の過料から最悪の場合懲役刑まで変わったことについて知っている人はほとんどいないと思いますが,裁判所からの通知にはその旨が記載されていますので,これを機に,財産開示手続が活用できるようになるかもしれませんね。