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2013年11月

11月 29 2013

契約違反による賃貸借契約の解除(その1)

先日,「一度でも家賃の支払いを怠った場合は,催告することなく契約の解除をすることができる」というような趣旨が契約書に盛り込まれていたとしても,当然には解除はできない旨を記載いたしました。

ブログ記事

 

では,それ以外の契約違反だとどうでしょう。

 

1 勝手に又貸しや賃借権の譲渡をした場合

 

 

通常は,賃貸借契約に勝手に又貸し等をしてはいけない旨の記載が入っていると思いますし,もし入っていなかったとしても法律上,大家さんの同意なしで又貸し等をすることはできません民法612条)。

ただし,又貸しをしたとしても当然に解除できるわけではなく,「それだったらしょうがないよね」と思えるほどの特別な事情があると例外的に解除できないことになっています。

これを難しい言葉で言うと,「賃借人の行為が背信行為と認めるに足りない特段の事情」と言います。

 

 

例えば,すでに又貸ししていることを大家さんが知っていたにも関わらず長い間それを黙認していたような場合や又貸しの相手が親族など比較的近い関係の人で使用方法なども特に変更が無いような場合です。

もっとも,「それだったらしょうがないよね」という特別な事情があることについては,賃借人が主張立証する必要があり,これは簡単に認められるものではありません。

したがって,基本的には又貸し等をしていれば契約の解除ができますが,例外的にできない場合もあるということになります。

 

 

2 会社の構成や組織が変わった場合

 

事務所や店舗など,商用利用のために個人事業主や企業等に対して賃貸することがあると思いますが,その企業等の状況の変化により解除できたりできない場合があります。

 

(1)会社の合併や組織変更

例えば,個人事業としてラーメン屋さんを始めたら,経営がうまくいったので個人事業から株式会社に組織変更したとします。

とすると,法律上は個人と会社は別人であるため,形式的には無断で賃借権を譲渡したような状況になります。ただ,個人と会社で行っていることはまったく同じであり,会社の代表者も従前の個人事業の方なのであれば大きな変動はありません。このような場合には解除は認められないと思います。

この点について,最高裁は個人事業のときから実質的に変更がないのであれば上記特別な事情があるとして解除できないとしています。

最高裁サイト

 

(2)役員変更

会社に賃貸した場合,会社の代表者や取締役などが変更になることはあります。ただ,会社そのものが特に変わるわけではありませんので,例え代表者が変わったとしても無断譲渡として契約を解除することはできません

この点,会社が乗っ取りのような状況になった場合(会社の株主が大幅に入れ替わり,役員も全員交代するなど)には,上記(1)とは逆で形式上は何も変わっていないものの実質的には完全に別の会社になっていますが,最高裁判所は賃借権の譲渡は無いと判断した事例があります。

最高裁サイト

 

ただし,当事者で特約を結んでおくことは自由ですので,賃貸借契約を締結する際に「賃貸人の承諾なしに役員や株主の構成を大幅に変更した場合には解除できる。」と特約を入れておけば賃借人の会社が良からぬ人たちに乗っ取られたとしても解除することができます。

 

3 一部屋だけの又貸し等

 

賃貸している部屋がワンルームではなく,複数の部屋がある場合は一部の部屋だけを又貸しするということがあります。

 

まず,大前提として家族を住ませることは当然,又貸しには該当しません。当たり前ですね。

 

では,家族ではなく友人等に部屋を貸した場合はどうでしょうか。

この点,友人が数日泊りに来た程度であればまったく問題ありませんのでこれをもって解除はできないと思います。

しかし,1か月,2か月となると,これはもう泊りに来たというレベルを超えて住んでいる状況になっています。このような場合は,例え一部屋だけだったとしても又貸しとなりますので契約の解除をすることができます。

ただし,上記の通り,「それだったらしょうがないよね」という特別な事情があれば解除ではできません。

例えば,友人が東日本大震災で被災され避難してきた場合などです。もちろん,東日本大震災クラスの大きなものではなく,自宅が火事になったとか失業して住む場所がないなども認められると思います。もっとも,これもずっと認められるわけではないため,この状況が長く続くのであればやはり最終的には解除できると思います。

 

 

4 ペット飼育禁止なのにペットを飼った場合

 

犬や猫などのペットを飼っている時点で契約違反であるため,まずはペットの飼育を止めるように催告してそれでも守られない場合に解除できることになります。

ただし,どのようなペットでも解除できるわけではありません。

 

そもそも,ペットの飼育を禁止する理由としては,部屋の内外が汚れたり,臭いや鳴き声などで近隣住民の平穏な生活が害されることにあります。逆に言えば,そうならないようなペットであればペット飼育禁止には触れません。

一番わかりやすいのが金魚や熱帯魚などです。金魚等が部屋の内外を汚すことはまず無いでしょうし鳴き声等などもありませんので,金魚等の飼育を理由として契約の解除をすることはできません

また,インコなどの小鳥も異常に鳴いたり異臭が凄いということであれば別ですが,一般的には飼育が認められると思います。ただし,籠に入れて飼育しなければなりません。

 

少し長くなってしまったので,次回続きを記載します。

続きは,用法(使途)違反,無断改装,迷惑行為等を予定しています。

 

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11月 18 2013

免許(資格)更新が無いことの代償

司法書士は司法書士試験に合格するだけでなく,その後に登録することによって司法書士を名乗ることができます。

 

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ただ,いったん登録してしまうと,その後に犯罪を犯したり,業務違反の中でも相当悪質なことを行って「業務禁止」の懲戒処分を受けない限り,登録を取り消されることはありません。もっと言えば,登録を取り消されるだけで,資格をはく奪されることはありません。

 

免許の更新

自動車運転免許については,通常は3年,優良ドライバーになると5年に一度更新があります。これは,一定期間内にあった道路交通法の改正について学ぶことで可能な限り最新の知識をもって運転してもらうことにあります。

 

また,学校の先生については,以前は更新制度はありませんでしたが,2009年より更新制度が始まり,更新しないと10年で免許が失効することになっております。

教員免許更新制

 

ところが,医師,弁護士,司法書士,行政書士など,多くの資格については免許に有効期限はありません。

 

したがって,極論を言うと,資格試験合格後,その後の知識のアップデートをしなくても資格をはく奪されることはなく,資格者として名乗ることができます(ただし,上記の通り司法書士等は試験に合格するだけではなく登録が必要です。)。

 

 

ただ,現実問題としてどの資格者がどの程度知識のアップデートをしているかなんてことは外部からはまったくわかりません。

 

研修制度

 

そこで,各資格者団体が一定回数の研修を行っており,その研修に一定程度参加しなければならないと決められていることが多いです。

司法書士に限ると,司法書士法第25条で研修を受け資質の向上を図る義務が定められており,具体的には研修の規則で年間12単位(1単位は1時間)の研修を受けなければならないとされています。さらに,この単位制度に加えて,5年に一度全員の司法書士が絶対に参加しなければならない年次研修というのもあります。

 

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もっとも,この研修のうち年間12単位について取得しなかったとしても特に罰則があるわけでもなく資格がはく奪されるわけでもありません。

そこで,愛知県司法書士会独自の制度として,愛知県司法書士会のHPで単位を取得しているかどうかを公表しており,この制度は昨年度から始まっております。

この研修を受けているかどうかは,各会員のページを見ると一番下に履修状況の欄があり,ここに「-」が入っているとその年度の単位を取得していないこととなりますので,どの司法書士に依頼するかを判断する際の一つの目安になっています。

ちなみに,私のページはこんな感じです。

 

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なお,履修状況のうち平成25年度が「-」となっておりますが,まだ平成25年度は終わっていないため,全員が「-」となっております。

 

一昨日の土曜日に4単位を取得し,無事平成25年度は12単位を取得することができましたので,とりあえず平成25年度も「済」が記載されることになりました。

さらに,日曜日は5年に一度の年次研修もあり,13時から18時までの長丁場の研修を終えてきました。

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このような司法書士会の研修だけでは全然追いつけないので各自で研鑽を積む必要がありますが,可能な限り研修には参加していきたいと思っています。

しかし,この土日で9時間の研修を受けたわけで,さすがに疲れました・・・。

 

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11月 14 2013

何はともあれ原資の確保

ここ数日,立て続けに個人間の金銭トラブルに関するご相談をいただいております。

 

個人間の金銭トラブルは様々な理由があるため一概にどのようなケースが多いうということはありませんが,ご心配されている内容の一つとして「借用書が無い」というような証拠が無いことのご心配が多いようです。

もちろん,借用書や念書といった証拠があればそれに越したことはありませんが,そういったバシッとした証拠が無くてもその他の証拠があれば十分戦うことができます。

例えば,メールなんかはかなり有効です。

 

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証拠はどうにかなることが多い

 

メールのやり取りで,

 

「【11月25日】月末の支払いが難しいんで,10万円貸してもらえないかな?」→「【11月28日】今日はありがとう。これで今月何とか乗り切れるわ。」

 

なんてメールが残っていれば,11月28日に10万円貸したんだな,ということが推認できますよね。これに加えて,現金で貸したのではなく振込とかで貸していれば振込の明細や通帳のコピーも有力な証拠となります。

 

先日,ご相談に来られた方はメールではなくLINEでのやり取りをプリントアウトされてこられましたが,これでも十分証拠となります。

LINEのトークの印刷方法→【ソーシャル完全バックアップ術】「LINE」のトーク履歴をEvernoteに保存する

 

ただ,こういったメール等の記録もなく,さらに振込の明細もなく,貸した時に第三者が立ち会っていないというようなまったく何も証拠が無い状況となると,裁判になった場合にはかなり厳しいと思いますが,事後的に証拠を作ることができる場合もありますので,まったく証拠がなくてもどうにかなる場合もあります。

 

無い袖は振れない

 

例え裁判に勝ったとしても裁判所がお金を立て替えてくれるわけではありません。勝訴判決は,あくまで「強制執行手続をして強制的に取り立てても良いよ」というお墨付きをくれたに過ぎません。

 

逆に言えば,強制執行をしようにも相手に強制的に回収できるような財産が無ければ勝訴判決はまったく意味が無いことになります。やはり無い袖は振れません。

 

ただ,現時点ではお金が無くても将来的にお金が入ってくるのであればそのお金を押さえて回収することができます。それがまさに給与です。なので,お金を貸す際には,雑談の一つとして,相手が勤めている会社の情報をしっかりメモにとっておくということが重要になります。

 

 

思いのほか効果のあった財産開示

 

強制執行をしても回収できない場合,基本的にはそこで諦めてしまうケースも多いと思います。

ただ,先日それでも諦めずに財産開示手続をやった事件がありました。

ブログ記事

 

 

実は,この財産開示は最終的には取り下げて終了しています。

というのは,相手から,「全額支払うから財産開示を取り下げてほしい」という打診があったためです。

 

財産開示手続自体は正直なところ全然強制力は無いと思います(相手が完全に無視したとしても最大で30万円の過料(罰金みたいなもの)でしかありません。)。ただ,あくまでケースバイケースですが,財産開示までやると相手が払ってくれることもありますので,やってみる価値は十分あると思います!

 

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11月 06 2013

相手方不出頭の判決は味気ない

先日の件で判決があり,無事完全勝訴となりました。

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相手方が何も反論をせず,かつ不出頭の場合は,それだけでこちらの請求をすべて認めたことになってしまうため,判決書の内容も味気ないものになっています。

 

さて,次は強制執行です。

 

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11月 01 2013

家賃の滞納があってもすぐに「出ていけ!」とは言えません

本日,賃料未払いによる催告及び賃貸借契約の解除通知を発送いたしました。

 

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賃借人が家賃の支払いをしない場合,大家さんとしては,カギを変えてしまって中に入られないようにしたり,中の荷物を強制的に外に出してしまうなど,法的手続によることなく勝手にやってしまうと,逆に賃借人の方から大家さんが訴えられることがあり,場合によっては刑事事件に発展することもあります。

 

「家賃を支払わない賃借人の方が法的に悪いんだから文句を言われる筋合いはない!」というお気持ちはわかりますが,日本は法治国家であるため実力行使によることは認められておらず,仮に実力行使(強制的に退去させる)する場合には裁判所に代行してもらわなければなりません。

 

法的手続による場合,まずは未払い家賃を支払うよう催告し,その催告に応じない場合に契約の解除をして,退去を求めることになります。賃料の未払いがあるからといっていきなり退去を迫ることができるわけではありません。ということで,建物の明け渡しを求める場合,催告及び解除に関する書類を賃借人に発送するところから始まります。本日はこれを行ったわけですね。

 

なお,賃貸借契約書の中に,「賃借人が1回でも家賃を滞納した場合,催告することなく解除できる」(無催告解除)という条項が入っている場合があります。

そうすると,1回滞納しただけでいきなり契約解除をすることが可能とも読めますが,実際にはそう簡単にはいきません

この点,昭和43年11月21日に最高裁は,「賃料の遅滞を理由に当該契約を解除するにあたり、催告をしなくても不合理とは認められない事情が存する場合には、催告なしで解除権を行使することが許される旨を定めた約定として有効」としています。

 

裁判所サイト

判決全文(PDF)

 

ということで,催告なしで解除するためには,いきなり解除されてもしょうがないと言えるような事情(1回どころか5回も滞納しているなど)が無い限りまずは賃料の支払いを催告(督促)し,相当期間(通常は1~2週間程度)の間に支払いがない場合に初めて解除できるとなっております。

正直なところ,訴訟で無催告解除の効力について時間をかけてまで争うことを考えれば,とりあえず催告をして1~2週間待つ方が結果としてスムーズに進むと思います。

したがって,今回当事務所で催告書を発送した件についても,結果としては無催告解除が認められる可能性は高いと思いますが,スムーズに進めるため催告をしております。もちろん,滞納している家賃を一括で支払ってもらえるかもしれませんしね。

 

さて,今回は賃借人から連絡はあるのでしょうか・・・。

 

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