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2021年2月

2月 03 2021

専門家への報酬を相手方に請求したい(最高裁判決)

債権回収のご依頼をいただく場合、多くのケースでは相手方の責任において支払いがなされていないため、やむを得ずご依頼いただいております。当初の予定どおり支払いがされるのであれば、わざわざ費用をお支払いいただいてまで弁護士や司法書士にご依頼されることはありませんからね。

もちろん、相手方にも言い分があり、内容によっては相手方の主張の方が法的に正しいということもありますので、必ずしも全件相手方に責任があるというわけではありません。

 

さて、相手方の責任において支払いがされない場合、専門家への報酬の支払いや訴訟になった時に裁判所に納める収入印紙等の実費については本来支出しなくてもよ良かった費用な訳ですから、かかった費用についても相手方に支払ってほしいという要望をいただくことがあります。

この点、お気持ちについては十分理解できるのですが、実際にはほとんど請求ができません。こちらについて簡単にまとめたものがありますので、こちらをご覧いただければと思います。ざっくり申し上げると、「裁判所に納める実費等についてのみ請求でき、不法行為の場合に例外がある。」となります。

→ 相手に求めることのできる必要経費

 

先日、弁護士報酬を相手方に請求できるかどうかについて争われた訴訟の最高裁判決がありましたので、今回はこちらをまとめたいと思います。

 

 

1 不法行為に基づく損害賠償請求の場合

 

弁護士や司法書士等との契約は請求する方が自ら選び、当該弁護士等の間で報酬に関する契約をしているため、この費用を相手方に請求することは原則としてできません。

しかし、不法行為(例えば交通事故)によって生じた損害について相手方に損害賠償請求をする場合、弁護士等の報酬の一部を請求することができます

→ 最高裁サイト

→ 判決全文(PDF)

 

その理由としては、「相手方の故意又は過失によつて自己の権利を侵害された者が損害賠償義務者たる相手方から容易にその履行を受け得ないため、自己の権利擁護上、訴を提起することを余儀なくされた場合においては、一般人は弁護士に委任するにあらざれば、十分な訴訟活動をなし得ないのである。そして現在においては、このようなことが通常と認められるからには、訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、右不法行為と相当因果関係に立つ損害というべきである。」

 

となっており、端的に言えば、自己の権利を守るために訴訟を提起することを余儀なくされた場合、一般的には弁護士等に依頼しなければ十分な訴訟手続を行うことができないから、諸般の事情を考慮して相当と認められる額を相手方に請求することができるということになります。

そして、この金額はほとんどのケースで損害賠償額として認められた金額の1割となっております。

例えば、1億円の損害賠償請求を行い、判決では6000万円が認められ、弁護士報酬として1000万円を支払ったとします。この場合、弁護士報酬分の損害として認定されるのは6000万円の1割である600万円ということになり、差額の400万円については自己負担ということになります。

 

2 債務不履行に基づく損害賠償請求の場合

お金を貸した相手方が返済してくれない、土地の売買契約を締結したものの相手方が払ってくれない、請負契約で工事を行ったものの請負代金を支払ってくれないなど、契約した相手方が約束を守ってくれずに損害が生じる場合があります。

 

つい先日最高裁判決がされたものについては、正確には事案は異なるものの、概ね下記のような内容です。

 

(1)Aさんが、売主であるB社から土地を購入する旨の売買契約を締結した。

(2)契約の条件として、B社がAさんに引き渡す前に、B社の責任において①土地上にある建物は事前に取り壊しておく、②担保権について抹消しておく、③土地の測量を終えておく、などが定められておりました。

(3)契約して数日後にB社の代表者が行方不明になり、土地の引き渡しはもちろんのこと、上記①~③について何もされておりませんでした。

(4)Aさんは、上記問題を解決するため、弁護士に依頼し、すべての問題を解決しましたが1000万円近い報酬を支払いました

(5)Aさんは、B社の不履行によって弁護士に頼しなければならなくなり、約1000万円もの支出をしなければならなくなったのであるから、その分は売買代金と相殺する旨を主張しました(弁護士費用の約1000万円はB社が負担すべき)。

 

以上の点について、最高裁は以下のとおり判示しました。

→ 最高裁サイト

→ 判決全文(PDF)

 

契約当事者の一方が他方に対して契約上の債務の履行を求めることは,不法行為に基づく損害賠償を請求するなどの場合とは異なり,侵害された権利利益の回復を
求めるものではなく,契約の目的を実現して履行による利益を得ようとするものである。また,契約を締結しようとする者は,任意の履行がされない場合があることを考慮して,契約の内容を検討したり,契約を締結するかどうかを決定したりすることができる。加えて,土地の売買契約において売主が負う土地の引渡しや所有権移転登記手続をすべき債務は,同契約から一義的に確定するものであって,上記債務の履行を求める請求権は,上記契約の成立という客観的な事実によって基礎付けられるものである。そうすると,土地の売買契約の買主は,上記債務の履行を求めるための訴訟の提起・追行又は保全命令若しくは強制執行の申立てに関する事務を弁護士に委任した場合であっても,売主に対し,これらの事務に係る弁護士報酬を債務不履行に基づく損害賠償として請求することはできないというべきである。

 

端的に言えば、誰が請求の相手方(加害者)となるのか分からない不法行為の場合と異なり、債務不履行に基づく損害賠償請求の場合においては、契約の時点で相手方の状況などを踏まえて、契約の内容等を決めたり、そもそも契約するかどうかの判断をすることができるのであり、また、契約の内容によって相手方がなすべきことは確定しているのであって必ずしも弁護士に依頼しなければならないようなものではないから、弁護士報酬については請求できないということになります。

なかなか厳しいようですが、契約の相手方を見極める責任は契約当事者双方にあるのであるから、契約どおりに支払い等をしてくれなかったとしても、ある程度は自己責任ですよということになってしまいます。だからこそ、金融機関や消費者金融等においては、お金を貸したとしても支払ってくれないと困りますので、審査がありますよね。また、請負契約等においても、会社の状況を調べる調査機関なども存在しており、自己防衛するしかないということになります。

 

3 契約の内容において弁護士費用を相手方が負担することになっていた場合

 

契約をする際に、特約等において「債務不履行があった場合に、当事者の一方が弁護士等に依頼した場合、その費用は相手方が負担する。」というような相手方が弁護士費用を条項が定められている場合があります。

特に、マンションの管理規約において、管理費の滞納に関する請求において弁護士費用は滞納者が負担するような規定が定められていることがあります。

 

実は、この点については確定的な見解がなく、無効となる考え方もあれば有効とする考え方もあります

まず、無効とする考えについては、以下のような点が理由となります。

・必ずしも契約時において対等な立場ではなく(例えば、「金銭消費貸借契約」、「事業者と消費者との契約」等)、一方が無理やりまたは知らないうちに契約している可能性がある。なお、事業者が消費者に対して請求する場合は、消費者契約法によって無効となる可能性が高いと思います。

・弁護士報酬は、請求者と弁護士等との間の契約によって決まるので、損害は1万円しか出ていないのに、弁護士報酬が100万円という損害と弁護士報酬の関係がおかしな状況が出てくる可能性がある。

 

有効とする考えについては、以下のような理由となります。

請求された側の不履行によって請求者が費用を負担したのだから、その分は負担すべき。

・契約時において、不履行の場合の違約金(違約罰)を定めることが認められているのだから、その中に含めれば良い。

 

あくまで私見とはなりますが、ある程度合理的な金額を請求するのであり、請求された側にかなりの落ち度がある場合には有効となり、損害額と比べて弁護士費用があまりにも過大となるような場合には無効と判断されるのではないかと思います。

 

なお、高裁判決とはなりますが、相手方への請求(管理費の滞納をした人への請求)を認めた裁判例があります。

→ 平成26年 4月16日東京高裁判決(PDF)

 

判決理由として、

区分所有者に管理費等の滞納がある場合において、被控訴人が弁護士に法的手続を依頼することが必要になったときは、その費用を他の区分所有者に負担させるのではなく、当該区分所有者に負担させることを予め定めておくことにより、迅速かつ公正な問題解決を図るものである。この趣旨からすれば、被控訴人が委任契約に基づき弁護士に対し支払義務を負う一切の費用を当該区分所有者に負担させるものと解するのが相当であって、弁護士費用の額が著しく合理性を欠くなど特段の事情がない限り、当該区分所有者がその全額の支払義務を負うものというべきである。

としており、弁護士費用を相手方に請求することを認めています。

 

4 まとめ

 

以上から、弁護士報酬等の相手方への請求については以下のとおりです。

①原則として請求できない。

②不法行為に基づく損害賠償請求の場合は、訴訟において認められた損害額の1割程度を請求できる。

③契約において特約がある場合は、認められる場合がある。

 

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2月 02 2021

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