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2016年2月

2月 05 2016

支払督促で異議が出なかった場合

訴訟や調停など,法的手続きにはいくつか種類があり,その中に「支払督促」という手続きがあります。

※その他の手続や支払督促の概要についてはこちらの記事をご覧ください。

→ 法的手続あれこれ

 

一般論として,支払督促が最後まで完了する可能性は高くないため当事務所ではあまり使わないのですが,今回最後まで異議が出ずに手続が終了ました(とは言っても回収はできていません)ので,ご自身で手続をされる方のために簡単な流れを書いてみたいと思います。

 

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支払督促とは

 

訴訟や調停などは,原則として双方とも裁判所に出廷して色んな書類を提出しつつ,話し合いをしたり,主張を繰り広げて進めていく手続です。

一方,支払督促とは,裁判所(正確には裁判所書記官)が申立人(債権者)の言い分だけに基づいて相手方(債務者)に請求書を発送してくれるというものです。詳しくは後程説明いたしますが,順調に進めば裁判等を行うことなく強制執行手続きに進むことができますので,相手に差し押さえが可能な財産があり,スムーズに手続きが進むようであれば使える手続だと思います。スムーズに進めばですが・・・。

 

支払督促の申立て

裁判所に申立てをすると,裁判所は書類の形式的な審査はしますが,請求の当否については審査をしませんので証拠なども必要ありません。一時期,振り込め詐欺で支払督促が悪用されたことがありますが,これもこの証拠が不要で申立人の言い分に基づいて発送されることに目を付けられてなされたものです。

また,申立ても郵送でできますので裁判所に一度も行く必要がありませんし,申し立て時に納める収入印紙も通常の訴訟と比べると半分となっておりますので,良いことづくめのようにも思えます。

 

相手方への送達及び異議

 

書類に不備がなければ,裁判所は特別送達という方法で相手方に発送します。相手がすんなり受け取ってくれれば問題ありませんが,相手が受け取らない場合は所在確認等が必要になります。なお,支払督促においては公示送達は使えませんので,行方不明の場合は支払督促以外の手続を検討しなければなりません

※送達についてはこちらをご覧ください。

→ 想いよ届け!【書類の送達】

 

相手に支払督促の書類が送達されると,裁判所から申立人宛に送達通知書というハガキが送られてきます。

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相手方は支払督促が届いた場合,異議を出すことができます(督促異議)。異議を出すことに理由は必要ありませんので,かなり高い確率で異議は出されるもんだと思っておいた方が良いと思います。

相手方から異議が出ると,通常の訴訟に移行することになり,支払督促手続はここで終了となります。

この「異議」という制度により,かなり多くのケースで支払督促が途中で終わってしまい訴訟に移行してしまいます。とすると,最初から訴訟を提起した方が早いですし通常の訴訟だと管轄も選べるため支払督促はあまり使いません。

※支払督促の管轄は,相手方住所地の簡裁ですが,金銭の支払いを求める訴訟の場合は,こちらの住所地を管轄する簡裁で進めることができます。

 

仮執行宣言の申立て

 

相手方に支払督促が届いてから2週間以内に異議が出なかった場合,2週間経過後から30日以内に限り仮執行宣言の申立てをすることができます。

仮執行宣言の申立てをすると,以下のような仮執行宣言付支払督促正本が申立人と相手方の双方に送付されます。つまり,相手方には,2回書類が届くことになります。

ちなみに,下記画像は表紙のみであり,2ページ目以降に当事者の記載や請求金額の記載などがあります。

 

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仮執行宣言付支払督促正本の送達と確定

 

仮執行宣言付支払督促が相手方に届いた時点で強制執行をすることは可能です。また,こちらが相手に届いて2週間経過した時点で仮執行宣言付支払督促が確定し,通常の訴訟で勝訴したのと同じような効果が得られることになります。相手方に書類が送達された場合,最初の支払督促同様,いつ届いたのかがハガキで通知されますのでいつ確定するかもわかります。

なお,なかなか無い話だと思いますが,当初の支払督促が相手方に届いた後に,債務者が行方不明になってしまった場合,仮執行宣言付支払督促の送達は公示送達によることも可能です。

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その後の回収は・・・

 

仮にすべてが上手くいったとしても,強制執行ができるというだけであり,実際に回収できるかどうかは相手方の資力によります。特に,支払督促が異議も出ずに確定してしまうような相手方だと資力が低い可能性が高く,実際に役に立つかどうかはしっかり検討してから申立てをしなければなりません。

ちなみに上記の事例は,すぐには回収できる見込みはないものの消滅時効が迫っていたため時効を中断させるために行ったものであり,また管轄は支払督促でも通常の訴訟でも名古屋簡裁以外の選択肢はありませんでしたので,支払督促を行った次第です。

これにより,時効が確定の時から10年になりますので,相手方の状況が変わればいつでも強制執行をして回収することが可能になります。あとは,状況が好転することを願うばかりです。

 

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