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8月 29 2013

想いよ届け!【書類の送達】

6:15 PM 全手続共通

自分の想いや考え,主張などを相手に分かってもらうためには,当然相手に伝わらなければなりません。

 

 

これは裁判手続でも同じことであり,裁判がスタートするためには,相手(被告)に書類が届かなければそもそも何も始まらないことになっています。

被告が一般的な企業であれば届かないということは少ないと思いますが,被告が個人だったり倒産した会社などでは書類を送っても届かないということが往々にしてあります。

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では,被告が受け取りを拒否した場合や行方不明で書類が届かない場合は裁判はどうなるのでしょうか?

もし,被告が受け取りを拒否すれば裁判が始まらない,行方不明だと裁判ができないとなると,最短で1年最長でも10年逃げれば消滅時効により債権が消滅してしまうことになってしまいます。

 

このような逃げ得を許さないため,法律に書類の送付方法(送達)についての規定があり,相手が受け取りを拒否した場合や行方不明の場合でも裁判ができるようになっています。

 

 

1・受け取り拒否の場合(差置送達)

 

裁判関係の書類を郵送する場合,書留と同じように必ず手渡しとなり,受取人からサインをもらうことになっています。しかし,裁判所から送付されてくる封筒には「○○裁判所」というように露骨に裁判所からの書類ということがわかるため,受け取りを拒否されることがあります。

 

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この点について,「書類の交付を受けるべき者が正当な理由なくこれを受けることを拒んだときは、送達をすべき場所に書類を差し置くことができる」(民事訴訟法106条3項)と規定されており,郵便局員が書類を届けたにも関わらず受け取りを拒否した場合は問答無用でその場に置いてくることが認められています。なので,玄関先に受け取りにきた人がお子さんとかだとダメですが,基本的にはその場に置いてくることが送達が完了し,裁判が始まることとなります。

 

 

2・留守などで受け取ってもらえない場合(付郵便送達)

 

では,受け取り拒否ではなく,居留守を使われたり,本当に留守にしていて郵便局に再配達依頼をせずに結果として送達されない場合はどうなるのでしょうか。

この場合は,こちらの方で実際に被告はその住所に住んでいるけど,単に受け取ってもらえないだけなんだよ,という旨の報告書等を裁判所に提出することによって,書留郵便等に付して発送するという方法で送達をしてもらうことができます(民事訴訟法107条)。

ここで,「ん?元から書留で送ってるし,結局受け取ってもらえなければ同じでは?」という疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。

この付郵便送達の凄いところは,その郵送方法ではなく,法律上の効果にあります。民事訴訟法107条3項には,「書留郵便等に付して発送した場合には、その発送の時に、送達があったものとみなす。」と規定されています。つまり,裁判所が発送さえしてしまえば,その後,実際に被告に届いたのかどうかに関係なく届いたことになる,というものです。なので,受け取りをしなかったとしても,送達は完了したこととなり,裁判が始まることになります。

 

なお,法律の勉強だとここまでで十分なのですが,上記の報告書等の作成というのが実はかなり大変です。

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被告が住所地に住んでいることを立証しなければなりませんので,当然被告の住所を訪ねる必要があります。また,留守であれば隣人にお話を伺ってみたり,電気メーターが回っているか等の確認しなければなりませんので,ちょっとした探偵のようなことをしなければなりません。

実際に,当事務所では何度も付郵便送達は行っていますが,朝,昼,夜に被告住居のベランダを撮影して洗濯物の変化で居住を立証してみたこともあります。被告の住所地が被告的近所であれば問題ないのですが,他県ともなると調査だけでも一苦労ですね。

 

 

3・行方不明の場合(公示送達)

 

本当に相手が行方不明の場合だと,上記付郵便送達は使えず,公示送達という方法で行います。

この公示送達というのは,付郵便送達よりも凄い送達方法であり,そもそも相手に郵送しません。行方不明ということはどこに送って良いのかわからない状況なので郵送しないのはある意味当然ですね。

ではどうするかというと,裁判所の掲示板に「あなたに対する訴状を書記官室に保管しているから取りに来てね」という趣旨の紙が貼ってあるだけです。

 

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公示送達で呼び出しを受けて実際に書類を取りに来る人なんて皆無ですので,裁判は相手方欠席によりほとんどの場合で勝訴なります。逆に言えば,公示送達になる時点で事実上結果が見えているため,裁判所はそう簡単に公示送達を認めてくれません。したがって,裁判所へ提出する行方不明である旨の調査報告書は大変です。

余談ですが元裁判官である公証人の方との話の中で公示送達で実際に被告が裁判所に来たケースが一度だけあるそうです。被告がたまたま裁判所の前を通ったら自分の名前があったのでしょうか。裁判所としても公示送達で被告が出頭するというのはかなりの珍事だったようです。

 

 

ということで,被告が受け取りを拒否しようが行方不明だろうが裁判自体は進めることができます。

とはいえ,大事なことは裁判をすることではなく回収すること。裁判以上に回収するための財産を見つけるのはもっと大変です・・・。

 

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