2月 28 2018
勤務先に立て替えたお金の回収
会社が取引先から売掛金を回収できないということは多々あり,当事務所でも売掛金の回収業務として会社からご依頼いただくことがあります。この場合,債権者は会社ですので個々の担当者の方が依頼者となるわけではありません。
しかし,今回のご依頼は会社ではなく,個々の担当者が依頼者となる事件でした。
通常,担当者が取引先から売掛金が回収できない場合,社内評価としては良くない評価はされるかと思いますが,法的には取引先に代わって会社に立て替えて支払う義務はありません。ただ,現実的には会社から事実上強制されたり,社内評価が下がることを避けるために担当者が会社に内緒で自発的に立て替えて支払うということもあります。
この点,会社から強制された場合は,会社の対応が大問題ですので会社に対して立て替えた分を返すよう請求することも可能ですが,今後も勤務を続けたいということになると会社とコトを構えることは避けて,取引先に立て替え分を請求することが考えられます。
今回ご依頼いただいた件は,事実上会社に強制されたものの,会社と構える気はないということで取引先に立替金を支払うよう請求したケースでした。
話し合いと和解
取引先に連絡をしたところ,立て替えてもらっていることは認めたうえで,一括での支払いが困難であることから半年程度の分割でお支払いいただくことで和解が成立いたしました。
しかし,初回の支払いは予定どおりされたものの,2回目以降は支払いが滞り,連絡も取れない状況になりました。
少額訴訟
初回の支払いがあったことで少額訴訟の上限額(60万円)を下回ることとなり,また上記の和解書という強力な証拠がありましたので少額訴訟を提起いたしました。
少額訴訟は原則として1回で終わりますので,難しい訴訟で無ければ少額訴訟という選択肢もあります。ただし,異議を出されてしまうと通常の訴訟に移行する分の時間がかかってしまいますので,異議を出される可能性が低いものに限って少額訴訟で行う必要があります。今回は,いったんは和解が成立しており,異議が出る可能性は低いと思いましたので少額訴訟で進めました。
再度の和解成立
少額訴訟の期日には被告(取引先)が出廷し,再度分割で支払うことで和解が成立いたしました。裁判上の和解が成立したことにより,もし支払いが止まったとしても強制執行により回収ができることとなります。訴訟提起前に取引先の財産を調査しており,価値はそれほど高くは無いものの無担保の不動産(自宅)があることを把握していましたので,支払いが滞ることはないだろうと考えて和解しました。
回収
和解成立後,当初は順調だったものの半年程度で返済が遅れるようになりましたが,最終的には強制執行を行うことなく無事回収ができました。
依頼者としては,会社に迷惑を掛けていませんので現在も同じ会社にお勤めですし,結果としては全額回収できていますので良かったと思います。
上記のとおり,本来であれば売掛金は会社が取り立てるものであって,担当者が責任を負うものではありません。しかしながら,現実的には担当者が立て替えることがあろうかと思いますので,そのような場合はご相談ください。