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1月 23 2025

凍結された口座への不当な強制執行

今週に入り、詐欺に使われた口座に対する強制執行が不当に行われたという事例が複数見つかっているようであり、最高裁判所が調査をするようです。

→ 不当な強制執行が疑われるケース、全国の高裁・地裁に報告要請…最高裁(読売オンライン 2025/01/23 05:00)

 

記事だけを読んでもなかなか分かりづらいところがありますので、これを少しかみ砕いてまとめるとともに、関係する手続について改めて説明させていただきたいと思います。

 

 

1 前提情報

(1)支払督促

証拠を添付する必要は無く、申立てをすると裁判所から債務者に請求書(支払督促)が送付されるという手続です。

裁判所を使った手続というのは訴訟が一般的かと思いますが、争いが無いような債権の場合は支払督促が使われることもあり、実際に当事務所でも何度も申立を行ったことがあります。

支払督促のメリットは、債務者が反論しなければ訴訟をして勝訴したのと同じような効果があるため、債務者が反論をしてこなければ比較的簡便に次の強制執行の手続に進むことができます。

一方、デメリットとしては、①債務者が反論してきた場合(異議申立てをした場合)には通常訴訟に移行しますがその場合に相手方住所地の管轄になってしまうこと、②公示送達ではできないため債務者が行方不明の場合は使えないということかと思います。

なお、手続上、証拠を添付する必要が無いため、本来であれば時効で消滅している債権や今回の事件のように虚偽の債権について支払督促を利用されることがあります。もっとも、消滅時効の債権や虚偽の債権については支払督促ではなく訴訟などで請求してくることもありますので、必ずしも支払督促に限ったことではありません。

 

(2)詐欺口座の凍結

振り込め詐欺や投資詐欺など、詐欺に利用された口座については、「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律(いわゆる「振り込め詐欺救済法」)」に基づき被害者側が申立てをして口座を凍結することが可能です。とりあえず口座を凍結して口座内の預金を引き出せなくしておけば、被害者がその後に詐欺被害を立証し、当該口座から弁償を受けることができます。

なお、凍結されている口座であっても例外的に当該口座の名義人を相手として勝訴判決などを得ている場合は、強制執行の申し立てを行うことで当該口座から回収することができます。今回はこれを悪用されています。

 

(3)口座名義人

ベトナム人名義の口座であり、当該名義人が詐欺グループの一員なのか、詐欺グループに口座を売却したのかは不明です。なお、3名のベトナム人名義の口座があったようですが、当該ベトナム人は支払督促の時点ですでに出国していたようです

 

2 事件の概要

事件の概要は下記のとおりですが、かなり省略しています。

(1)LINEにて投資詐欺に遭ってしまった方がベトナム人名義の口座を含む複数の口座宛に合計1億円超のお金を送金した。

(2)被害者の申し立てにより当該ベトナム人名義の口座は凍結され、詐欺グループはお金を引き出すことができなくなった。

(3)詐欺グループの関連会社と思われるA社が口座名義人であるベトナム人に対して支払督促の申立てをした。ただし、支払督促の対象となる債権は実際には存在しない虚偽債権だったようです。

(4)支払督促の申立書は送達されなかったため、A社が当該ベトナム人が就労している場所を指定して再度送達し、当該ベトナム人が受け取った。なお、上記のとおり当該ベトナム人はすでに出国しており、書類の受領書も当該ベトナム人の筆跡では無かったようです。

(5)A社が当該支払督促に基づいて、凍結されているベトナム人名義の預貯金に対して強制執行の申立てをし、裁判所は債権差押命令を出した

(6)差押えの通知を受けた金融機関は不審に思い、差し押さえに応じなかった

(7)投資詐欺に遭った方がA社を訴えたところ、虚偽債権であることを認めた

 

つまり、本来であれば凍結されている口座からお金を引き出すことはできないのですが、例外的に強制執行であれば回収することができ、その強制執行の申立てのために虚偽債権にて支払督促の申立てを悪用したというものです。

ニュースでは支払督促の悪用がクローズアップされていますが、通常の訴訟でも起こりうること(虚偽の債権を基に虚偽の付郵便送達や公示送達で判決を取ることは制度上可能です。)であり、「訴訟詐欺」という言葉があるくらいです。

今回はたまたま金融機関が不審に思って強制執行に応じなかったり、投資詐欺に遭ってしまった方の代理人弁護士が様々な調査をした結果判明したものですが、現実的には見つけ出すことは難しいと思います。とはいえ、支払督促は重要な制度であるため、これを解決するのはかなり難しい問題かと思います。


1月 15 2025

【司法書士の債権回収最前線】目次

当ブログ「司法書士の債権回収最前線」の記事一覧表です。

 

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【全手続共通】

法的手続あれこれ(平成25年7月30日)

一番回収できる方法は(平成25年8月21日)

想いよ届け!【書類の送達】(平成25年8月29日)

まずは催告!(平成25年9月6日)

強制執行後の手続(平成25年9月11日)

書類作成のみのご依頼もお受けしております!(平成25年12月17日)

直接お会いすることも大事(平成26年1月10日)

移送申立てという名の時間稼ぎ(平成26年1月17日)

相手に求めることのできる必要経費(平成26年1月21日)

公示送達の訴訟(平成26年2月14日)

内容証明郵便のウソ・ホント(平成26年4月2日)

妻の借金は夫が,夫の借金は妻が支払わなければならないこともある。(平成26年6月20日)

飲み屋のツケ,1年逃げればチャラです→5年にします(平成26年7月4日)

会社が知らないうちに無くなっているかもしれません(平成26年7月23日)

債権回収に関するよくあるご質問(平成26年10月7日)

探偵さんが債権回収詐欺をして逮捕(平成26年10月28日)

登記簿から見る債権回収の調査(平成26年12月5日)

時効の期間が経過した分も絶対に回収できないわけではありません。(平成26年12月17日)

支払の担保となるもの(平成27年3月26日)

子どもの行為が原因となって怪我をした場合の損害賠償請求(平成27年4月9日)

極めて少額な債権回収について(平成27年5月8日)

過料の制裁(平成27年7月17日)

訴訟における住所及び氏名(平成27年9月2日)

第三者の住民票等を取得する(平成27年12月25日)

支払督促で異議が出なかった場合(平成28年2月5日)

期間の計算方法(平成28年3月11日)

養育費不払い,口座を裁判所が特定(平成28年6月6日)

法律上または事実上回収できないケース(平成28年7月8日)

訴訟提起後の対応(平成29年3月3日)

民法改正による債権回収への影響(平成29年4月14日)

動産執行って効果ある?(平成29年6月19日)

訴え提起前の和解(即決和解)について(平成29年6月22日)

少額訴訟債権執行手続をやってみました。(平成29年7月11日)

書類が届かない場合の法的効果や対処など(平成30年1月16日)

差押えが禁止される財産(平成30年3月4日)

付郵便送達と公示送達(平成30年4月25日)

二段の推定(平成30年7月25日)

公示送達が無効に!(平成30年8月8日)

主文に記載されている「訴訟費用」,「仮執行宣言」とは?(平成30年9月4日)

【毎年恒例】会社が知らないうちに無くなっているかもしれません(平成30年10月11日)

給与の差し押さえでもなかなかうまくいかないケース(平成30年10月15日)

欠席判決=勝訴ではない(平成30年10月24日)

分割弁済の完走(平成31年1月8日)

離婚に伴う慰謝料請求(最高裁判決)(平成31年2月19日)

差押の競合(平成31年4月4日)

ハンコについてあれこれ(令和元年5月29日)

少額訴訟について(令和元年8月10日

相手方からの質問(令和元年10月21日)

回収が大変な「売掛金」と「未払い賃料」(令和元年12月26日)

消滅時効に関する改正(令和2年1月16日)

結論としては和解の方が良い(令和2年3月4日)

令和2年4月1日の民法改正について(令和2年4月1日)

強制執行をしても回収できない場合(令和2年7月11日)

財産開示手続の実効性が向上するかも(令和2年10月21日)

複数の債権がある場合に一部弁済があった場合の時効更新(令和2年12月19日)

不動産の強制競売について(令和3年1月4日)

付郵便送達や公示送達における調査(令和3年1月21日)

専門家への報酬を相手方に請求したい(最高裁判決)(令和3年2月3日)

あまり苦労せずに回収できたケース(令和4年7月8日)

財産開示拒否、起訴相当(令和4年8月19日)

不動産以外の担保で保全する(①自動車抵当)(令和4年11月21日)

不動産以外の担保で保全する(②債権譲渡登記)(令和5年1月10日)

株式会社の代表取締役の住所が分からなくなるかも(令和6年4月16日)

代表者の住所非表示措置について(令和6年10月2日)

証拠が無い場合(令和6年10月16日)

凍結された口座への不当な強制執行(令和7年1月23日)

 

【個人間トラブル】

保証人になって代わりに返済した場合(平成25年7月22日)

貸金回収のハードル(平成25年8月2日)

住所を特定するも反応なし(平成25年8月6日)

送達できず!(平成25年9月13日)

付郵便の上申書で解決(平成25年9月20日)

借金と詐欺(平成25年9月27日)

財産開示手続実施決定!(平成25年10月2日)

相手が来なければ,まず間違いなく勝訴(平成25年10月18日)

相手方不出頭の判決は味気ない(平成25年11月6日)

何はともあれ原資の確保(平成25年11月14日)

貸したことがわかれば何でもよい(平成25年12月12日)

期限の利益喪失条項(平成26年2月7日)

再び財産開示手続をやってみる(平成26年3月12日)

お金を貸す際の金利の上限(平成26年5月20日)

風俗業界の方への貸金請求(平成27年2月19日)

完璧な借用書(平成27年9月14日)

貸金回収の実例(前編)(平成27年11月6日)

貸金回収の実例(後編)(平成27年11月16日)

貸金請求で良くあるご質問(平成27年11月20日)

時効についての注意点(平成28年10月11日)

男女間の交際に関連する費用の請求(平成28年12月12日)

200円の損害賠償請求(平成28年12月16日)

夜のお仕事の方からの回収(平成30年1月22日)

風俗店勤務の方からの回収(令和2年4月7日)

風俗店勤務の方からの回収②(令和2年9月17日)

勤務先の同僚への請求(令和3年6月3日)

相手が偽名だったケースで全額回収(令和3年8月6日)

SNSの情報から給与を差し押さえて全額回収(令和3年10月22日)

お金を貸すときにやっていただきたいことベスト3(令和4年6月28日)

当事務所の報酬等も含めて全額回収できた事案(令和5年1月4日)

 

【売掛金回収】

東京中央銀行の差押え【半沢直樹】(平成25年8月8日)

140万円超の売掛金請求事件(平成25年10月24日)

売掛金回収の事例(平成28年5月2日)

売掛金の回収事例(平成28年12月14日)

勤務先に立て替えたお金の回収(平成30年2月28日)

施設の利用料等に関する債権回収(令和5年7月14日)

 

【家賃滞納】

家賃の滞納があってもすぐに「出ていけ!」とは言えません(平成25年11月1日)

契約違反による賃貸借契約の解除①(平成25年11月29日)

契約違反による賃貸借契約の解除②(平成25年12月3日)

任意の立ち退きと強制執行(平成26年3月28日)

退去に関するゴミ等の処分費用(平成26年9月2日)

未払い賃料回収のケース(平成27年3月18日)

賃料未払いの場合の解除の基準(平成27年6月16日)

勝手な明渡の強制執行は犯罪・不法行為となります(平成28年4月13日)

建物明渡の強制執行(平成28年5月9日)

明け渡し催告と動産執行(平成28年7月5日)

建物明渡しの実例(平成28年8月4日)

1年がかりの土地建物明渡(平成28年11月29日)

定期建物賃貸借契約(平成29年5月9日)

断行前の明渡し(平成29年11月22日)

楽待(不動産投資新聞)さんからの建物明渡に関する取材(平成30年3月12日)

建物明渡に関する和解で必ず入れておくべき条項(平成30年5月23日)

相続人に対する明渡及び賃料請求(平成30年6月4日)

賃貸借契約における保証人に関する改正(令和元年9月18日)

駐車場代の滞納で不動産を失う…(令和3年5月27日)

未払い賃料を保証人から全額回収。でも今後は注意。(令和3年9月18日)

建物明渡しの実例(断行まで進むも不在で終了)(令和4年1月4日)

断行直前まで行って和解したケース(令和4年3月7日)

家賃を滞納した場合に自動的に明渡したことになる条項の有効性(最高裁判決)(令和4年12月12日)

 

【管理費滞納】

管理費の滞納は早期対応が大原則!(平成25年7月25日)

管理費滞納の請求実例①(平成25年7月26日)

管理費滞納の請求実例②(平成25年7月29日)

滞納管理費回収の実例(平成28年5月10日)

 

【診療報酬】

診療報酬の回収について(平成26年4月9日)

 

【事務所からのお知らせ】

ホームページを公開しました(平成25年7月18日)

よくあるご質問(平成25年10月11日)

免許(資格)更新がないことの代償(平成25年11月18日)

140万円超の債権回収のご相談(平成26年4月15日)

私自身が巻き込まれた中古車トラブル(平成26年11月25日)

140万円超の請求に関する内容証明郵便の送付及び訴状等の作成について(平成27年1月5日)

事務所までの経路(公共交通機関編)

事務所までの経路(自動車編)

大槌町及び南三陸町に行ってまいりました。(平成27年9月8日)

ご相談に関する注意点(平成27年10月20日)

マイナンバーを絡めた詐欺的メール(平成28年1月18日)

弁護士さんとの違い(平成28年4月4日)

私自身が原告になった話(平成30年12月7日)

ご相談について(新型コロナウイルス感染症対策等)(令和2年4月24日)

報酬体系について(令和4年4月27日)

ご相談ができない、または難しい場合について(令和4年10月28日)

ご相談に関する注意点(改訂版)(令和5年9月1日)

ご相談いただいてご依頼いただく割合(令和6年2月20日)

住民票や戸籍謄本等の取得について(令和6年4月11日)


12月 27 2024

年末年始について

本日をもって今年の業務がすべて終了となります。本年もご依頼いただきましてありがとうございました。

 

 

年末年始の業務時間は下記のとおりとなり、令和6年12月27日18時以降にご連絡いただきましたメールについては、令和7年1月6日9時以降に順次返信させていただきます

 

 

令和6年12月27日(金)18時まで 通常営業

 

令和6年12月28日(土)~令和7年1月5日(日) 冬期休業

 

令和7年1月6日(月)9時から 通常営業

 

以上、よろしくお願いいたします。 


10月 16 2024

証拠が無い場合

知人間での貸金の場合、貸したことは間違いないものの現金で渡しており借用書や領収書などの証拠書類がまったくないというケースがかなりあります。

早期に解決できるものではありませんが、まったく証拠がないところから訴訟手続を行ったケースがありますのでまとめたいと思います。

1 証拠書類が重要

証拠は必ずしも書類でなくても良いため、メールやLINEでのやり取りなどで証明できるようであれば問題ないのですが、具体的な金額のやり取りが無い場合は有力な証拠にはなりません。

また、証言をするという方法もありますが、双方の言い分が異なることも多いため第三者の証言であれば良いものの当事者の証言だとあまり有力な証拠にはなりません

メモ程度でも構いませんので、書類は極めて重要です。

 

2 証拠書類を作る

証拠が無ければ証拠を新たに作れば良いので、毎月の返済額をかなり譲歩したうえで和解書や合意書などを作成するという方法があります。もちろん、和解や合意となりますので強制的に進めることはできませんが、月額の返済額が少額の場合は応じてもらえる可能性は高くなります。

例えば、100万円の貸金があり、最低でも月5万円は返済してほしいとお考えであったとしても、例えば1万円や5000円、極端に言えば月1000円という内容で和解したとします。相手方が遅れることなく返済を継続している場合は何もできないのですが、仮に1000円だとしても遅れる方はいらっしゃいます。また、返済金額を段階的に設定し、当初は月1000円だけど半年後からは5000円や1万円のように増額した金額を定めた場合はその段階で遅れてしまう方がいます。

通常、和解書等においては遅れた場合は一括で返済する旨の「期限の利益喪失条項」が入っておりますので、この時点で一括弁済を求めることが可能となります。

 

3 訴訟手続を行い有利な内容で和解する

和解書や合意書があれば訴訟において負ける可能性は低くなります。相手方が訴訟を無視した場合は判決となりますのであとは強制執行をせざるを得ないこととなりますが、相手方が裁判所に出廷してきた場合は月額1000円という低額ではなく、ある程度現実的な金額や回数で和解できる可能性が高くなります。また、裁判上和解となりますので、もし相手方が返済に遅れた場合は強制執行が可能となりますのでし、「遅れた場合はすぐに強制執行をされてしまう」というプレッシャーもありますので、支払いが遅れる可能性を低くすることができます。

もちろん、最終的には相手方の懐事情によりますので、裁判をしようが強制執行をされようが支払わないという方は存在しますが、一切証拠が無いという状況からすれば支払ってもらえる可能性は高くなると思います。

 

以上、証拠が無い場合の回収についてでした。

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10月 02 2024

代表者の住所非表示措置について

先日、代表取締役の住所が調べられにくくなる可能性についての記事を記載いたしました。

→ 株式会社の代表取締役の住所が分からなくなるかも

 

令和6年10月1日からその制度がスタートしましたので、前回の記事と重複する部分もありますが重要な点についてまとめておきたいと思います。

 

 

1 対象となる法人

株式会社のみとなります。有限会社、合同会社、一般社団法人、NPO法人など、株式会社以外の法人は非表示措置の対象とはなりません。

 

2 非表示措置の対象人物

基本的には代表取締役となりますが、住所が登記されている代表清算人、代表執行役なども対象となります。

 

3 非表示措置の範囲

住所のうち市区町村よりも後の部分が非表示になります。例えば、「愛知県名古屋市〇〇区」までは非表示措置がされていても表示されます。また、氏名は非表示とはなりません。

また、あくまで非表示措置を申し出たとき以降の登記について非表示となりますので、従前の住所は非表示となりません。住所が変わっていない状況で非表示措置の申し出をして認められたとしても、従前の住所は非表示にはなっていませんので、その時点では事実上あまり効果がありません。もっとも、履歴事項全部証明書を取得した場合、3年前の1月1日時点以降の情報しか載ってきませんので、非表示措置の申し出をして4年以上経過すれば意味があることになります。

なお、本店の住所は非表示措置の対象ではありませんので、会社の本店が代表者の自宅である場合にはその時点ではまったく意味がないことになります。この場合でも将来的に本店移転をする可能性があるのであれば非表示措置をしておく意味があります。

 

4 非表示の申出の時期

役員変更など、代表取締役等の住所が申請内容になっている何らかの登記申請を行うタイミングの際に同時に申し出る必要があります。非表示措置の申出のみを行うことができません

 

5 非表示措置のメリット

住所の一部を非表示とすることで個人情報が守られる、この1点のみだと思います。

 

6 非表示措置のデメリット

金融機関の取り扱いなどが固まっている状況ではありませんので流動的ではありますが、金融機関から融資を受ける際に書類が増えることは間違いなく、場合によっては融資自体を避けられる可能性があります。また、新規の取引を開始する際にも取引先から追加の書類を求められたり取引自体が中止になる可能性があります。

 

正直なところ、制度が始まったばかりであるためメリットデメリットはまだ分からない部分があるかと思いますが、このご時勢からすると個人情報保護の方向に進むと思いますので、今後は対象となる会社が株式会社以外にも拡大していくと思いますし、一部の住所ではなく全部の住所が非表示となる可能性もあるかと思います。

 

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8月 07 2024

夏季休業のお知らせ

 

当事務所では、下記の期間について夏季休業とさせていただきます。夏季休業期間にお問い合わせいただきましたメール等につきましては、夏季休業後に順次回答させていただきます。

 

8月9日18時まで  通常業務

 

8月10日から8月15日まで 夏季休業

 

8月16日9時から  通常業務

 

以上、よろしくお願いいたします。


4月 16 2024

株式会社の代表取締役の住所が分からなくなるかも

会社の代表者等の住所は、いわゆる会社の謄本(登記事項証明書)を見れば誰でも知ることができ、プライバシーの観点から問題があるとの声がありました。一方で、会社が機能していない場合に代表取締役の住所が分からないと責任追及をすることができず、住所を表示したままにした方が良いのか、非表示にした方が良いのかでせめぎあいがなされておりました。本日、法務省令において登記事項証明書などに記載されている代表取締役の住所について一部非表示とすることが令和6年10月1日から可能となりました。

→ 代表取締役等住所非表示措置について(法務省サイト)

 

これにより、会社の代表者の住所を容易に調べられなくなる可能性が出てきましたので債権回収においても影響があることから、この点についてまとめます。

 

 

1 対象となる法人及び肩書について

すべての法人が対象となっているのではなく、株式会社(特例有限会社を含む)に限定されております。最近増えてきている合同会社や一般社団法人などは対象外となっております。

また、住所が非表示となる方の肩書は代表取締役に限定されるものではなく、住所が登記されている代表執行役、清算人なども対象となります。

 

2 非表示の対象となる個人情報

上記代表取締役等の住所のうち、市区町村より後の部分に限り非表示となります。したがいまして、「愛知県長久手市」まで、「東京都新宿区」まで、というように住所の一部は今後も必ず表示されます

また、氏名は非表示の対象とはなっていません

 

3 非表示とする場合

会社の設立や役員変更の登記申請と併せて必要書類を提出することでその時に申請する代表者等の住所を非表示とすることができます(過去の代表取締役の住所等は非表示にはなりません。)。また、特に役員変更などの登記申請はなく、非表示の申請だけをするということはできません

非表示とする場合には、通常の登記申請に必要な書類に加えて下記の書類が追加で必要になります。

①登記されている会社の本店宛に郵便物が到着することを証明する郵便局の配達証明書等

②代表者の住所及び氏名が分かる住民票等の公的書類

③実質的支配者(会社の株主等)が分かる書類

なお、上場会社の場合は、上場されていることが分かる書類があれば上記①~③の書類は不要です。

 

4 非表示となった場合の措置

法務局で取得できる登記事項証明書や登記事項要約書、インターネットで取得できる登記情報において、代表者の住所が一部非表示となったものが交付等されます。

ここで重要なのが、あくまで各種証明書の交付等の際に非表示になっているだけで、登記申請をする際には番地等の正確な住所が分かる公的書類を提出したうえで正確な住所を記載して申請し、法務局に備え付けられている登記簿には番地までの正確な住所が登記されています。さらに、非表示とした後に証明書を取得する際に住所有りや住所無しの証明書を選択できるのではなく、常に住所が一部非表示となった証明書が発行されることになります。

法務省のサイトでの注意書きにも記載がありましたが、金融機関で融資を受ける際には代表者の住所が入っていないと代表者が誰であるかの確認ができませんので融資を受けることが難しくなることが予想されます。その他の手続においても、登記事項証明書及び印鑑証明書だけでは会社の代表者であることを厳密に証明することができなくなりますので、追加の書類が必要になることが予想されます。

 

5 会社の代表者の住所を知りたい場合

債権回収としてはむしろここからが本題となります。

これまでは登記情報を取得することで代表者の住所を知ることができましたが、10月以降は容易に調べられない可能性があります。このような事態に備えて、下記のとおり住所を知る方法がいくつかあります。

①会社の本店に会社が実在しないことを証明し、非表示措置を終了させる。

→上記のとおり、登記簿そのものには正確な住所が登記されているため、非表示措置が終了すれば普通に登記事項証明書等を取得することで住所を確認することができます。なお、本店に会社が実在しないことの証明はどの程度のレベルまで必要なのかは現時点では不明です。単に宛先不明で郵便が返ってくればそれで良いのか、現地調査をして電気メーターなどまで確認する必要があるかなど、これらの点は今後の通達で明らかになる予定です。

②登記申請書類を閲覧する。

→上記3②に記載のとおり、非表示措置をする際には必ず住民票等の住所及び氏名が分かる書類を法務局に申請しているため、法務局に保管されている住民票等の書類を閲覧することで正確な住所を確認することができます。ただし、申請書類については正当な理由がなければ閲覧できないため、まったく無関係な人が閲覧することはできません。加えて、登記事項証明書等は全国どこの法務局でも取得できましたし、登記情報であればインターネット環境があればどこでも確認ができましたが、会社の管轄法務局まで行かなければ申請書類の閲覧できませんので遠方の会社の場合はかなりの費用と時間がかかることになります。

 

6 今後について

住所を非表示にできることは今後周知されていきますが、実際には住所を非表示にすることを知らない会社が大多数であろうと思われること、また、上記のとおり登記申請の予定が無い場合に単独で住所の非表示の申請をすることができないため、実際に非表示の会社が相手方になるということは少ないと思われます。ただ、もしそのような会社が相手方になった場合で、会社に書類が届かないとなるとかなりの苦労を強いられるように思われます。


4月 12 2024

住民票や戸籍謄本等の取得について

私ども司法書士を含めたいわゆる「士業」と呼ばれる職業には、第三者の住民票の写しや戸籍謄本等の各種証明書を当該対象者の同意等を得ることなく取得することができます。この点について、誤解されているケースがあり、何度かご質問いただいたことがあるためここでまとめておきたいと思います。

 

1 根拠規定と取得できる士業

住民票と戸籍では根拠となる法律が異なり、住民票の写しについては住民基本台帳法第12条の3第2項及び第3項に、戸籍謄本等については戸籍法第10条の2第3項等にその旨の規定があります。

住民基本台帳法では、いわゆる士業については「特定事務受任者」と呼ばれており、具体的には、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、行政書士(いずれも法人を含む)となります。他にも士業と呼ばれる職業として、公認会計士や不動産鑑定士、中小企業診断士などがありますが、これらの職業については特定事務受任者には入っておりません。

戸籍法では特定事務受任者ではなく、個々の職業毎に明示されておりますが、住民票の特定事務受任者と同じ職業となります。

 

2 取得できる場合

私どもが住民票の写しや戸籍謄本等を取得するためには、専用の請求書である「職務上請求書」という書類に必要事項を記載して役所に請求する必要がありますが、職務上請求書に記載すれば何でも取得できるというものではなく、各士業において業務のご依頼をお受けしており、その業務の遂行に必要な場合にのみ請求できるに過ぎません

私ども司法書士だと、不動産や会社等の登記手続のご依頼をお受けしており、住所の変遷や氏名の変更の証明として住民票の写しや戸籍謄本等を取得することがあります。また、債権回収のご依頼をお受けしており、債務者の現住所の調査のために住民票の写しを取得したり、債務者が亡くなっていてその相続人に請求するために戸籍謄本等を取得するという事もあります。

このように職務上請求書を使用して住民票等を請求するのは、何らかのご依頼をいただいてそのご依頼のために必要な場合に限りますので、住民票の写しや戸籍謄本等の取得のみのご依頼をお受けすることはできないことになっております。

件数として多い訳ではございませんが、住民票の写しや戸籍謄本の請求だけをお願いしたいというお問い合わせをいただくことがあるため、念のためまとめさせていただきました。


2月 20 2024

ご相談いただいてご依頼いただく割合

日々たくさんのご相談をお受けしておりますが、実際にご依頼いただく割合は決して多くありません。正確な統計ではなく、あくまで感覚的な割合ですが恐らく2~3割程度だと思います。

その理由としては、ご相談をお受けした時点で回収の見込みがかなり低いケースが多く、余程の理由が無い限りご依頼いただくメリットが無いと説明させていただいているためです。
以下、ご相談いただいた時点で回収の見込みがかなり低いケースについてまとめてみたいと思います。

 

 

第1 回収することが極めて難しい場合

 

1 SNSでのやり取りのみで相手が誰だか分からない

近年、ネット上でのやり取りのみで金銭の貸し借りをされる方が多くなっているように思います。X(旧ツイッター)やインスタグラムなどのSNSで知り合い、SNS上だけのやり取りでお金(電子マネー)の貸し借りを行うというケースもあります。この場合、相手のアカウントは特定できていたとしても生身の人間としては誰かが分からないため、回収の見込みというよりも誰に請求して良いか分からず、そもそも手続を開始することができません

なお、近年良く見かける情報として発信者情報の開示請求がありますが、上記のような場合には開示請求ができません。
開示請求に関する特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第5条に、開示請求のための要件が規定されており、その中に「侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたこと」が必要であるとされています。「侵害情報の流通」というのは、名誉棄損等に該当するような投稿や第三者の著作権等を侵害する画像や動画の投稿などになり、あくまでその投稿自体が問題になる場合に限られます
とすると、金銭の貸し借りの相手方に違法な投稿等が無いようであれば発信者情報の開示請求はできないということになります。

 

2 会ったことはあるがLINEでのやり取りのみで相手の情報が無い

最近はメールではなくLINEでのやり取りが多くなっており、場合によっては相手方に会ったことはあるが電話番号は知らず、LINEでは繋がっているということが多くあると思います。ただ、LINEだけでは基本的には相手が誰であるかを特定することはできませんので、基本的に手続を開始することができません。

ただし、相手方のLINEIDが分かるようであれば、弁護士会照会を行うことで相手方の電話番号などが特定でき、そこから相手方の情報が得られる場合があります。ただし、弁護士会照会は文字通り弁護士さんでしか使えない制度であるため、当事務所では調査することはできません

また、LINEによって脅迫等をされた場合には、刑事事件にすることでそこから相手方が誰かが判明することがあります

 

なお、上記1と2においても、金融機関での送金にてお金のやり取りをしているようであれば、金融機関に弁護士会照会を行うことで相手方が誰であるかを特定できる場合があります。また、SNSやLINEのみのやり取りであっても、運転免許証などの身分証明書を送ってもらっていれば手続を進めることは可能です。

 

第2 回収することが難しい場合

 

1 住所が分からない場合

相手方に請求の手紙を出す場合、相手方の住所が必要になりますが、相手方の住所が分からないというケースがあります。

この場合、現在の住所は分からなくても、前の住所だったり、実家などの他の情報が分かる場合は、役所での調査により現住所が判明する場合があります。また、役所での調査では住所が特定できなかった場合であっても、郵便局の転送によりとりあえず前住所に発送することで現住所に転送されて相手方に届くということもあります。

もっとも、転送された場合であっても転送先の情報を郵便局は教えてくれませんので具体的に住所を特定することはできません。

なお、こちらも弁護士会照会であれば特定することは基本的には可能です(DV事案等の恐れがある場合は開示されません。)。

 

2 相手方が破産準備に入っている場合

大前提として、相手方が破産手続を行っている場合は法的に支払義務が無くなりますので請求自体ができません

ただ、破産手続は進んでいないけど、破産準備に入っているというケースはあります。この場合はまだ破産していない以上は訴訟等を行うことは可能であり、財産があれば強制執行により回収することも可能です。実際に破産準備中に訴訟手続を行い、給与を差し押さえて回収できたケースもあります。

もっとも、破産準備から実際に破産手続開始の申立てがされた場合は以降は回収できなくなりますので、全額回収に至ることは少ないです。

 

3 請求金額が少額である場合

こちらは回収することが難しいというよりもメリット・デメリットの問題となります。

例えば、1万円の請求をしたいというご相談をお受けすることがありますが、仮に訴訟や強制執行まで行ってしまうと、貸した金額よりもの多くの費用がかかることが考えられ、この費用は相手方に請求することはできませんので、手続をすればするほど赤字になってしまいます。

この場合、気持ちの部分で許せないから手続をしたいということであれば手続を行うメリットはあるかもしれませんが、経済的には手続を行うことはデメリットでしかありません。

 

第3 回収できるかどうかは相手方次第という場合

 

1 相手方に財産が無く勤務先も分からない

法的には訴訟等を行うことは可能であっても、相手方が任意に支払ってくれない場合は強制執行により相手方の財産を差し押さえて強制的に回収するしかありません。逆に言えば、相手方が分割弁済の交渉等に応じてくれる場合は相手方の財産の有無に関係なく回収することができます。

ただ、相手方に財産が無く、勤務先も分からないとなると差し押さえる財産が無いため、結果的に回収できないということも当然あります。

当事務所では相手方が生活保護を受給していても親族等の協力を得て分割支払により回収できたケースもありますので必ずしも回収が不可能という訳ではありませんが、この点は相手方次第であるためやってみないと分からないということになります。

※無関係な親族に支払いを求めることができるわけではありません。あくまで親族の任意の協力が必要です。

 

2 証拠がまったく無い

訴訟等を行うためには証拠が必要となりますが、実際に会って現金でやり取りを行い、メールなどの記録もまったくないという事があります。このような状況は昔からの知り合いというケースによく見られます。この場合、お金の貸し借り自体は恐らく事実かと思いますので、請求自体は可能です。そうすると、相手方から回答があり、一括または分割で支払ってくれるということでまとまることも多くあります。

しかし、相手方がお金の貸し借りの事実自体を否定されてしまうと訴訟をしようにも証拠がまったく無いため訴訟をしても負けてしまう可能性が十分考えられ、現実的には相手方次第であるためやってみないと分からないということになってしまいます。

 

以上の次第で、第1については手続を始めること自体が極めて難しいですが、それ以外は回収の見込みがゼロという訳ではありませんので、あとは費用対効果を踏まえてご検討いただくこととなります。

 

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12月 28 2023

年末年始の業務について

本日をもって今年の業務がすべて終了となります。今年もたくさんご依頼いただきましてありがとうございました。

 

 

年末年始の業務時間は下記のとおりとなり、12月29日以降にご連絡いただきましたメールについては、1月4日以降に順次返信させていただきます

 

 

令和5年12月28日(木)18時まで 通常営業

 

令和5年12月29日(金)~令和6年1月3日(水) 冬期休業

 

令和6年1月4日(木)9時から 通常営業

 

以上、よろしくお願いいたします。 


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