10月
24
2013
本日,売掛金請求事件のために名古屋地裁に行ってまいりました。

当ホームページの至る所に記載しておりますが,当事務所に限らず,司法書士が依頼者の代理人となって和解交渉をしたり裁判をすることができるのは140万円以下の請求(管轄は簡易裁判所)に限られます(裁判所法33条,司法書士法3条1項)。
したがって,140万円を超える請求や140万円以下でも合意管轄等により管轄が地方裁判所になる事件については,代理人を選任する場合は弁護士さんでなければならず司法書士が代理することはできません。
しかし,司法書士の業務には上記のような裁判等の代理以外に,「裁判所に提出する書類の作成業務」というものがあります。これは,代理人となって司法書士が行動するのではなく,裁判所に提出する書類について,依頼者のお名前で司法書士が作成するものです。お金の請求に関する裁判はドラマのように法廷で朗々と弁論をするのではなく,多くのケースで書類のやり取りだけで終わってしまうため,司法書士が書類を作成し,裁判所には依頼者ご本人に出廷していただくことで140万円超の請求でも司法書士が対応することが可能なケースも多くあります(司法書士も法廷まで同行します)。
※平成26年4月追記
日本司法書士会連合会の見解(平成26年3月17日付日司連発第1859号)によると,司法書士の裁判所提出書類作成業務について,
①依頼者の方のご主張や解決に向けてのご要望等を伺い,事実関係の確認をし,
②司法書士としての法律的判断を用い,依頼者の方の意向に沿った書類を作成し,
③作成した書類の内容について依頼者の方にご確認いただく
という流れで行うこととされております。
弁護士さんにご依頼された場合は,極論すればご依頼された以降はまったく依頼者の方に作成した書類についての説明をせず訴訟を進めることが可能となりますが,司法書士の書類作成業務はあくまで依頼者の方の意向に沿った書類を作成することになりますので,「司法書士に全部おまかせ」ということはできません(なお,恐らく弁護士さんも依頼者の方にまったく確認せずに書類を提出することは無いと思います)。
ですので,司法書士が書類を作成する場合には,ご自身で法廷に行かれることのみならず書類に書かれている内容について十分ご理解いただく必要があります。
以上から,高度な法律解釈が必要な事件については弁護士さんにご依頼された方が良く,司法書士にご依頼いただけるものとしては,単純なお金の貸し借りや売掛金の未払いなどが適していると思われます。なお,お話を伺って,弁護士さんの方が適していると判断できる場合には,当事務所が懇意にしていただいている弁護士さんを紹介させていただいております。
最後に,当事務所の費用については,代理事件とは異なり,成功報酬ではなく固定の金額となります。
これは,勝訴した場合に○○%というものでも,書類1通作成ごとに○○円というものではなく,1つの事件全体としての報酬となりますので,勝訴しても敗訴しても報酬額は変わりませんし,書類を何通作成しても報酬額は変わりません。
この報酬額については,請求金額及び争点などによって異なるため一律には決めておりませんが,概ね請求額の5%から20%の間くらいになります。基本的に請求額が大きくなればなるほどパーセンテージは低くなり,上記の約1億円の訴訟の場合だと2%よりも低い金額でした。
ということで,140万円超の事件についても,弁護士さんに依頼するには報酬額が高い場合だったり,裁判所に出廷することが可能という場合に司法書士でも対応できる場合がたくさんありますので,ぜひご相談ください。
【司法書士の債権回収最前線】目次はこちら
10月
18
2013
これまで何度も記載していますが,提訴しても相手に書類が届かなければ裁判は始まりません。これは,相手の知らないところで勝手に裁判をしてしまうと反論の機会が与えられないことになり,不当な結論になることがあるためです。
したがって,相手の書類が届いた時点で初めて裁判は開始されることになっています。逆に言うと,書類が届いた時点で相手は反論をする機会が与えられているため,反論をしないと自動的にこちらの言い分を認めたことになってしまいます。これを擬制自白といいます(民事訴訟法159条)。
ただし,これは事実に関するものだけであり,法律問題に関しては適用されません。
例えば,AさんがBさんにお金を貸したけど返してもらえないということで提訴し,Bさんが訴状を受け取ったにも関わらず特に反論をしない場合,Bさんはお金を借りたということについては,自白が成立するためAさん勝訴が確定します。しかし,AさんがBさんに貸した際の利率が仮に年利25%だったとしても,この利率は法律違反であるため25%分の利息を付けて支払え,ということにはなりません。
さて,本日こちらの事件についての裁判でしたが,やはり相手は出頭せず,かつ反論の書面も提出しませんでしたので即日結審となりました。これで,まず間違いなく勝訴となります。ただし,裁判官と利息が付く元本の部分について議論になったため,もしかしたらこの部分についてはこちらの請求分全部は認められないかもしれません。
いずれにしても,結論として勝訴は間違いありませんので,次の強制執行手続きに進むことになりますね。
【司法書士の債権回収最前線】目次はこちら
10月
11
2013
こちらのホームページを開設後,いくつかご質問をいただいておりますので,そのうちよくあるご質問について記載いたしいます。
相手が遠方地に住んでても良いの?
訴訟を提起する場合,原則として相手の住所地を管轄する裁判所にしなければなりません(民事訴訟法4条1項)。
しかし,提訴できる場所については例外がたくさんあり,その中で金銭の支払いを求める訴訟の場合は,訴えを提起する方の住所地を管轄する裁判所に提訴することもできます(民事訴訟法5条1号)。条文だけ見ても直接はわからないのですが,財産権上の訴えは義務履行地を管轄する裁判所もOKとなっており,金銭の支払いは「持参債務」,すなわちお金を支払う人が相手の住所地まで持参しなければならない債務となっていますので,端的に言えば,金銭の支払いを求める訴えは訴える側の住所地を管轄する裁判所でOKということになります(民法484条)。
ということで,相手のお住まいが遠方だったとしても,依頼者のご住所を管轄する裁判所で提訴できますので,問題ないということになります。
ただし,さらにこれの例外もあります。それは,「専属的合意管轄」の定めがある場合です。
これは何かというと,文字通り,当事者の紛争は,専属的にこの管轄裁判所で行うことに合意するというもので,個人間の契約ではまず無いと思いますが,当事者の一方が会社の場合は契約書に「本契約に関する紛争については,専属的に○○地方裁判所とすることに合意する。」というような条項が入っている場合があります。この場合,住んでる場所などに関係なく,その裁判所でしか裁判が行えないため,仮に遠方での裁判となるとお受けできない可能性があります。
司法書士が裁判に行くたびに日当などはかかるの?
費用のページに記載の通り,訴訟を提起した場合の手数料は5万円(+税)のみであり,これ以外に費用がかかることはありません。したがって,裁判が長引き,仮に10回裁判所に司法書士が出頭したとしても報酬は5万円から増えることはありません。
ただし,訴訟を提起したものの被告が書類を受け取らない等の理由により送達ができなかった場合には,付郵便送達や公示送達のための現地調査をすることがあります。
→ブログ記事
このような調査を行った場合のみ,別途,2万円(+税)及び実費をお願いしております。調査の場所によっては交通費だけでもかなりの費用になってしまうことがありますので,事前にお見積りを及び事情を説明させていただき,手続を進められるか止められるかを依頼者の方にご判断いただくこととなりますし,ご自身で調査を行っていただければ別途費用をいただくことはございません。
相談や依頼については必ず事務所まで行かなければならないの?
ご相談に関しては,簡単な内容であればお電話で回答することも可能です。ただし,何らかの書面がある場合にはやはり事務所までお越しいただいて書類を見ながら回答させていただいた方が,より正確な回答ができると思います。なお,お電話にしても直接事務所にお越しいただいても相談料は一切かかりません。
次にご依頼については,法律上,必ず本人確認をしなければならないことになっておりますので,基本的には事務所までお越しいただく必要がございます。ただし,事情により事務所までお越しいただくのが難しいという場合には,当方よりお伺いすることが可能な場合もございますのでご相談いただければと思います。
確実に回収できるの?
自己破産をされてしまった方については法的に回収はできませんし,まったく財産が無い方についても現実的に回収は不可能となりますが,仮に財産があったとしても完璧に隠してしまい回収できないこともあります。もちろん,財産開示手続など,使える手段はすべて駆使しして回収に努めますが,最終的に回収できないこともあります。
逆に,依頼者ご本人が請求してもすべて無視なのに,司法書士が間に入って請求すると,拍子抜けするほど簡単に回収できることもあります。
この点は相手の経済状況のみならず人間性なども関係してきますので,正直なところやってみなければわからないという部分はかなりあります。この点を踏まえ,当事務所では,依頼者の方に損が無いようすべての債権回収について「着手金0円プラン」を用意しておりますので,ご検討いただければと思います。
今後も,ご質問をいただいた際には随時追加してまいります。
【司法書士の債権回収最前線】目次はこちら
10月
02
2013
先日申し立てた財産開示が無事認められました。
→ブログ記事
※裁判官や書記官の氏名及び事件番号等については修正しております。

専門的な話ですが,比較的容易に認められる1号ではなく2号での申立て(民事執行法197条1項)だったため認められるかどうか心配だったのですが,すんなり認められたのでホッとしました。
1号→債務者に対し強制執行を行ったものの全額回収に至らなかった場合等
2号→債務者に対し強制執行をしていないものの,明らかに強制執行をしても回収できないような事情がある場合等
1号の場合,強制執行をしても失敗したのであれば回収できないことは明らかであるため,財産開示の申立ては比較的容易に認められます。ただし,強制執行をするための費用や時間がかかってしまいます。
一方,2号の場合は強制執行をせずにいきなり財産開示の申立てをするため費用や時間の節約ができますが,その分強制執行をしても回収できないことが明らかであることをこちらで立証しなければなりませんので,その立証がなかなか大変です。その立証方法としては,債務者の住所の不動産が債務者の所有ではないことを証明するために不動産の登記事項証明書を取得するなどが考えられます。
正直なところ,ここまでやればOKという基準があるわけではないので不安な点もありましたが問題ありませんでした。
ということで,強制執行に関する民事執行法上できることはすべて行いました。あとは,これを受けて回収できるかどうかです!
※11/14追記
財産開示を行った結果,無事回収できました!
【司法書士の債権回収最前線】目次はこちら