8月 19 2022
財産開示拒否、起訴相当
相手方に支払いを請求し、それに応じなかったら訴訟等の手続を行います。
訴訟を行い、「〇〇万円支払え」という判決が出ても、相手方が支払いに応じなければ相手方の財産を差し押さえて現金化し、回収することになります。
しかし、そのような相手方には財産が無いことが多く、仮に財産があってもなかなか見つけることは難しいです(だからこそ、預貯金等の差押えよりも、給与を差し押さえた方が回収できる可能性は高まります。)。
これに対応し、民事執行法では「財産開示手続」といって、相手方に対して自らが保有する財産を開示してもらう手続がありますが、裁判所からの出頭に応じなかったり虚偽の事実を陳述する等の違反したとしても従前は「30万円以下の過料」という行政罰しかなかったため、あまり実効性がありませんでした。
というのは、違反しても必ずしも過料が課されるとは限りませんし、多額の支払いをするくらいなら30万円を払った方がマシと考える人もいたからです(30万円は国が回収するだけで債権者には分配されません。)。
さらに、令和2年に民事執行法が改正され、財産開示手続に違反した場合には懲役または罰金という刑事罰が科されることになりました。これにより、財産開示に違反することで刑事事件となってしまい、逮捕や起訴されることもあれば、最悪の場合は収監される可能性が出てきましたので、従前と比べれば実効性は増したと思われます。
もっとも、「虚偽の事実」(例えば、実際は財産があるにもかかわらず、無いと陳述する)については、そう簡単に見破ることはできないので、そういう点ではどこまで実効性があるかとも思われます。
さて、このような事件に関して、先日いったん不起訴になったものの、検察審査会によって「起訴相当」の議決がなされました。
これにより、検察官が再度捜査を行い、恐らく起訴されるものと思われます。
~~~~以下、読売新聞オンラインからの引用~~~~~
暴行でけがを負わせた相手方への賠償金支払いに応じず、裁判所の財産開示手続きに出頭しなかったとして民事執行法違反の疑いで書類送検され、大阪地検が不起訴とした加害者の男性に対し、大阪第4検察審査会が「起訴相当」と議決したことがわかった。賠償金支払いの「逃げ得」を防ぐため、同手続きには2020年4月から刑事罰が導入されており、議決は今回のケースでは刑事責任の追及が妥当と判断した。
(中略)
6月9日付の議決は、男性には地裁から期日の呼び出しの書類が届いていたことなどを指摘し、「不起訴には疑義があり、国民の常識で考えると刑事責任は厳しく追及されるべきだ」とした。刑事罰導入の目的は手続きの実効性を高めるためだったと言及し、「法が適用されなければ、改正の意義が損なわれる」と述べた。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20220817-OYT1T50067/
~~~~以上、読売新聞オンラインからの引用~~~~~
もっとも、上記のとおりいったんは検察は不起訴にしており、財産開示手続に違反したとしても必ずしも起訴されるわけではありません。さらに、30万円以下の過料のときと同様に、相手方が逮捕されても、罰金が科されても、懲役で収監されても、それによってお金が返ってくるわけではありません(もちろん、示談を持ちかけられて回収できることはあると思います。)。
やはり、財産開示手続はあくまで最後の手段であり、ここまで手続を行わなくても回収できるよう進められるのがベストかと思います。