9月 11 2013
強制執行後の手続(財産開示)
裁判で勝訴したり,裁判上で和解したにも関わらず相手が支払わない場合は強制的に回収することになります。
これが強制執行という手続きで,不動産の場合は不動産執行,家具・貴金属等,不動産以外の目に見える財産であれば動産執行,預金や給与といった目には見えない権利などであれば債権執行という形で差し押さえてそこから回収することになります。
それでも払わない人
敗訴しているにも関わらず,支払いがない場合,考えられるのは単純に2つで,「払えない」か「払わない」かのどちらかです。
財産がまったくなく「払えない」のであれば,回収はなかなか難しいかもしれませんが,それでも働いている以上は給与を抑えて回収することができます。ただ,相手が生活保護を受給していたり,すでに自己破産をしている場合などは残念ながら回収できません。
一方,「払わない」という人は,不動産などすぐ調べればわかるものは処分しており,預金なども自宅周辺とは関係ない金融機関の口座に開設するなどして財産を隠すことがあります。
もし,隠されてしまうと,正直なところなかなか見つけるのは困難です。不動産などは名義があるので見つけやすいが,財産を隠される方はすでに処分している可能性が高いです。また,現金にして隠している場合,強制執行の方法としては動産執行になりますが,執行官が現金を見つけてくれるわけではありませんので現実的に現金の回収も難しいです。最後に預金の場合,預金の差し押さえは,口座番号までは不要ですが,金融機関名と支店名までは特定する必要がありますので,自宅周辺の金融機関ならまだしも,まったく関係ない遠方の金融機関に口座を作って隠していると,それを見つけ出すのは困難です。なお,余談ですが,警察署や税務署といった国家機関は金融機関に要請して見つけ出すことができますが,一般私人はそういったことはできません。
ならば本人に教えてもらう
このように,財産はあるけど隠していてわからないという場合,裁判所に申し立てをすることによって財産のありかを相手に直接聞くことができます。
これが財産開示手続の申立てです。こちらが認められると,裁判所が相手を裁判所に呼び出し,財産のありかを聞き出すことができます。
使い勝手が悪いし効果も薄い
この財産開示手続の申立てですが,実は使い勝手が良い手続きではありません・・・・。
まず,財産開示の申立てをするためには,いったん強制執行をしたけど失敗したという場合や,強制執行はしていないけど明らかに強制執行をやってもムダだという場合でなければなりません。したがって,前者の場合だとまず強制執行をまずしなければなりませんし,後者においては「明らかにやってもムダ」ということを立証しなければなりませんので,申立てをするまでに時間もかかりますし調査も大変です。
さらに最大の問題点は,ペナルティの低さです。
つまり,この手続きの最大の特徴は,「裁判所に呼び出して聞く」ということなんですが,そもそも裁判所に来ないという人が多々いますし,裁判所に来てもしゃべらない人もいます。もちろん,正当な理由なく来ない場合等には制裁がありますが,最大で30万円の過料(罰金のようなもの)となっていてあまり制裁の効果がありません。なので,平気で裁判所に来ないというケースが多々あります。
それでもやり続ける
ということであまり効果が無さそうな財産開示申立てですが,まったく効果が無いとも言えません。というのは,強制執行→財産開示→強制執行→財産開示と何度も繰り返すことができますので,無視するたびに過料が科されることになり,何度もやられると相手もたまったものではありません。それを嫌がって,財産開示手続申立てをすると支払ってくることもあります。もう,あとは相手との我慢比べのようなものですね。
ということで,今日財産開示の申立てを行います。