4月 13 2016
勝手な明渡の強制執行は犯罪・不法行為となります。
当事務所では,家賃の回収及び土地や建物の明け渡しに関する手続を行っており,本日も明渡しの裁判に出廷し,別件の明渡しで警察と打ち合わせもしてきました。
このような法的手続を執ると,早くても数か月の時間がかかりますし,明渡しの強制執行まで進んでしまうと数十万円の費用がかかってしまうため,できることならそこまでいかない方が良いのですが,頑なに明渡しを拒否される場合はこういった手続を執らざるを得ません。
大家さんのお気持ちとしては,家賃等を支払わないうえ,さらに多くの時間と費用を遣ってまで手続を進めることに不満を感じられることは重々承知しておりますが,今の日本においては,このような手続を執らずに明け渡しを勝手に進めてしまうと犯罪(刑事)及び不法行為(民事)になってしまう可能性があり,まさに勝手に進めてしまった件が裁判になっていました。
「追い出し行為に賠償命令 家賃滞納で家財処分は「窃盗罪」 東京地裁」
以下,産経ニュース(http://www.sankei.com/affairs/news/160413/afr1604130014-n1.html)からの引用です。ただし,被告の会社名は「A社」としております。
家賃滞納を理由に、玄関ドアに錠を取り付けて入れなくするなどしたのは不当な「追い出し行為」だとして、東京都の40代男性が山口県岩国市の家賃保証会社「A社」に330万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は13日、同社に55万円の支払いを命じた。判決によると、男性は平成21年1月、同社を連帯保証人として神奈川県海老名市のアパートに入居。仕事を辞め、昨年3、4月の家賃計8万円を滞納したところ、同社は錠を取り付けた上、家財を無断で処分し、男性は9日間公園やファストフード店で過ごした。戸室壮太郎裁判官は、こうした行為が「窃盗や器物損壊罪にあたる」と指摘。処分された家財の損害を30万円と算定し、ホームレス状態を強いられた慰謝料20万円など計55万円の賠償を命じた。A社は「担当者がおらずコメントできない」とした。
以上で,引用終わり。
上記は,民事事件ですが,判決理由の中で「窃盗や器物損壊罪にあたる」とされており,刑事罰に当たる行為であることが指摘されています。なお,状況によっては窃盗や器物損壊のみならず住居侵入罪,盗品等関与罪が成立する可能性もあります。
このように,家賃を支払っていなくても,賃借人が占有している状況である以上,部屋の中に勝手に入ることはできませんし,ましてや部屋の中にある物を勝手に処分することはできません。
したがって,万が一このような事態が生じてしまった場合は,必ず法的手続を踏むか,本人(賃借人)の同意のもと進めるようにしてください<(_ _)>