5月 02 2016
売掛金回収の実例①
先日,売掛金回収について解決となりましたので,ざっくりとした流れについて記載したいと思います。なお,重要な部分以外について,万が一にも特定できないように一部フィクションを入れております。
相手は建築会社
自宅等の建物を建築する場合,ハウスメーカー(建築会社)にお願いすると思いますが,実際に現場で建物を建てているのはその建築会社の人ではなく下請けの職人さんたちです。職人さんたちは,仕事の依頼を受け,仕事が終わった後に建築会社に報酬を請求します。
今回,ご依頼いただいたのは,このような職人さんの報酬を建築会社が払ってくれないというものでした。
請負ならではの特質
一般的に,企業間で取引をする場合は契約書を作成し,契約書までとはいなかなくても発注書だったり,発注する旨のメールなどが残っていることが多いです。しかし,中によっては電話1本で依頼し,仕事完了後に請求するというケースも多くあります。これだと,問題なく払ってくれているときは良いのですが,トラブルが生じたときにそもそも本当に依頼(発注)があったのかという点について問題になることがあります。今回ご依頼いただいたのも,契約書や発注書等の明確な書類がないケースでしたので,もし裁判になった場合は尋問などで立証しなければならないだろうと予想していました。
代理人の選任と交渉
相手は,大手建築会社だけあってすぐに代理人の弁護士さんが選任され,その後は弁護士さんと交渉することとなりました。
2か月程度かけて和解交渉を行い,結論としては大筋でこちらの請求金額は認めるものの,資金繰りが厳しいので一定程度減額したうえで分割で支払うということで提案があり,依頼者の同意の下で和解が成立いたしました。
私としては,裁判等まで行けばかなり高い確率で勝てるだろうと思いましたが,やはり裁判まで行くと時間も費用もかかりますので依頼者の方は賢明な選択をされたと思います。
その後,分割で全額返済され,無事解決となりました。
実は,司法書士も下請け的な業務もあったりします。例えば,金融機関からご依頼を受けて抵当権設定登記等の担保に関する登記のご依頼をいただくことが日常的にありますが,特に契約書や発注書があるわけではありません。しかし,登記申請の際に必ず委任状や抵当権設定契約書等をいただきますので,これらがある意味証拠になります。
ですので,建築関係における,下請けの立場の方が弱く元請さんに強く言えない事情はとてもよくわかるのですが,万が一にもトラブルになった時に何も書類が無いと大変なことになってしまう可能性もありますので,できれば発注書をもらうのがベストですが,それが難しい場合でもメールで連絡をもらうなどして,証拠を残しておかれることを強くお勧めいたしいます。