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11月 25 2014

私自身が巻き込まれた中古車トラブル

私は法律を使った職業に就いているため,少なくとも法律的に不利な立場に追い込まれないよう,いろんな契約(携帯電話,自動車の購入,不動産の購入等)をする際に細かな約款まで読むようにしていますし,何をするにしても契約書や念書など書面を万が一のときのために証拠となるようなものを残すようにしています。最近では,どこで何が起こるかわかりませんので,自動車にはドライブレコーダーを設置していますし,事務所の電話は自動的に全件録音されるようになっています。

 

と,かなり注意した生活していたのですが,トラブルに巻き込まれました・・・。

「債権回収」そのものとは少し違いますが,債権回収関連ではあるため,生の事件としてどのような法律的な問題が発生し,どのように解決に至ったのかを書いてみたいと思います。なかなか無いとは思いますが,もし同じような事案に当たってしまった場合には参考にしていただけるかと思います。

 

 

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きっかけは2年前

 

2年程前,当時使っていた社用車が車検の時期となりました。すでに10年以上乗っていてさすがにこれ以上乗るのは難しいと判断し,とあるディーラー(以下,「Tディーラー」とします。)で3年落ちの中古車を購入いたしました。

町の自動車屋さんで購入しても良かったのですが,自動車に疎い私としては,ディーラーで買った方がメンテナンスや故障した場合の保証などが充実していて安心できますし,何といっても自動車メーカーの看板を掲げて営業しているわけですから,変な車を掴まされることは無いだろう,という考えもありました。

実際に,自動車本体も私が見た限りでは前所有者の方が綺麗に使われていたようですし,走行距離も3年落ちにしては少なく,当然修復歴も無いとのことでしたので安心して購入しました。

それから2年。些細な故障はありましたが,特に問題なく車検の時期となりました。それが先月(平成26年10月)のことです。

 

知人が店長をしているディーラーに車検を依頼

 

私が購入した中古車は愛知県に本社がある自動車メーカーのものでしたが,私の友人が別の自動車メーカーのディーラーで店長をしているため,車検は友人のディーラー(以下,「Hディーラー」とします。)にお願いをしました。

乗っていてエンジンだったり足回りだったりというような自動車の走行に支障がある部分については特に不具合は感じませんでしたが,ETCがたまに反応しない,トランクが閉まりにくいといった点についての不具合を伝え,その点について重点的に見てもらうこととなりました。

すると,友人からメールがありました。

 

「トランクの部分をかなり修復しているんだけど,事故車って知って買ったんだよね?」と。

 

 

私自身は事故を起こしていませんし,当然修復もしていません。また,Tディーラーからは修復歴無しとして購入していますので,まったく意味がわかりませんでした。

念のため,友人に修復したと思われる部分を写真に撮って送ってもらいました。

 

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上記のとおり,私は自動車については本当に疎いんですが,そんな素人の私でも何かしらの事故があって修復しているだろうということがわかる修復の痕跡がありました・・・

 

 

検討した法律問題

 

ここですぐにTディーラーに連絡しても良かったのですが,今後大きなトラブルとなり,法律的な解決を要する可能性が出てきましたので,まずは法律上の問題を検討しました。

 

【私が使える法律上の規定】

①瑕疵担保責任

代替性のある新車と異なり,中古車は世界にひとつとしてまったく同じものは存在しません。そのような物(これを「特定物」と言います。)の売買の場合,売主には瑕疵担保責任が定められています(民法570条)。

瑕疵担保責任を簡単に言えば,「購入した物に隠れたキズ(瑕疵)がある場合,売買契約自体の解除や損害賠償請求ができる」という規定です。ただし,買主がそのキズの存在を知ってから1年経ってしまうと時効になり,瑕疵担保責任を追及することはできません。さらには,売買契約の時に,瑕疵担保責任を特約で排除することもできますので,そのような場合にも瑕疵担保責任を追及することはできません。

私が購入した自動車については,隠れたキズがありましたし,知ったのはつい最近ですので時効も関係ありません。また,契約時に瑕疵担保責任を排除していませんので,瑕疵担保責任を追及することは可能です。

ちなみに,瑕疵担保責任は無過失責任ですので,売主であるTディーラーがキズの存在について知っていたか否かは関係ありません

 

②錯誤無効

契約の重要な部分に思っていた部分と違う点がある場合,契約自体が無効となります(民法95条)。

中古車の売買で修復歴の有無は重要な部分ですし,さらに購入時に修復歴の有無を確認し,修復歴があるような自動車を購入することは無い点も伝えていますので,錯誤により売買契約自体が無効になると考えられます。

 

③詐欺取消

契約を締結するに当たり,売主が買主を騙して購入してしまった場合,買主は契約を取り消すことができます(民法96条)。

今回のケースだと,修復歴あり車(事故車)でありながら,修復歴無し車(無事故車)であると騙して契約を締結したのであれば,私は売買契約を取り消すことができます。もっとも,瑕疵担保責任や錯誤無効とは異なり,売主側が事故車であるということを知っていなければ詐欺とはなりませんので,上記2つと比べるとハードルは高いと思います。

 

 

以上から,法律的なアプローチは複数あるものの,結論としては契約自体を無かったことにする(解除,無効,取り消し)か損害賠償請求(事故車であることで価値が下がった分)が可能であると考えられます。

 

なお,法律ではありませんが,自動車業界内で自主的に作った「自動車公正競争規約」というものがあり,修復歴がある場合は必ず記載しなければならないという規定にも違反することになりますので,ひとつのカードとして使えることになります。

 

【証拠の問題】

仮に訴訟となった場合,証拠の有無によって勝敗が決すると言っても過言ではありませんので,どのような証拠が必要になり,どのように集めるのかが問題です。ただ,証拠が必要になるのは,相手がこちらの言い分(主張)を認めない場合に必要となりますので,必ずしもすべてにおいて証拠が必要という訳ではありません。極論を言えば,裁判になったとしても,相手がこちらの言い分をすべて認めるのであれば,証拠はまったく必要ありません。

 

①瑕疵担保責任

ア 購入時に隠れた瑕疵があったこと→隠れた瑕疵,つまり修復歴は私が自動車を購入した当時になければなりません。まぁ,当たり前ですよね。私の購入後に修復したのであれば私の責任ですからね。

イ 損害の発生及び金額→修復歴はあるといっても,走行自体には何ら支障はありません。しかし,「修復歴がある」ことそれ自体で自動車の査定価格は下がりますので,その下がった分が損害ということになります。現実的にもトランクがしまりにくいといった不具合が生じています。

ということで,瑕疵担保責任を主張する場合,私が購入する前に修復されたこと及び査定価格の下落分を立証しなければならないことになります。私が購入する前に修復したことについては,自動車の広告サイト(GOO,カーセンサーなど)を印刷したものや前所有者からの証言使われている部品の年代など,損害額については査定書などになるかと思います。もちろん,Tディーラーがこちらの言い分を認めるのであれば立証する必要はありません。

 

②錯誤無効

ア 契約をした時点で存在する客観的事実と認識した事実が違うこと→つまり,自動車の売買契約時に修復歴があったにもかかわらず無いものと認識していたこと。

イ その錯誤がなかったら普通は契約しないだろうといえること→修復歴があると知っていたら,普通の人は契約しないだろう,ということ。

証拠としてはなかなか難しいのですが,私の認識が問題となるため,仮に裁判になった場合は私の陳述書なり当事者尋問がメインになるかと思います。ただ,一般的に修復歴がある自動車とない自動車では価格が全然違いますが,今回購入した価格は,同程度の自動車の中でも比較的高い金額でしたので,その客観的事実からでも錯誤の主張は通るのではないかと思います。

 

③詐欺取り消し

ア 売主に詐欺の故意がある→私を騙そうとする認識の存在

イ 売主が実際に詐欺行為を行った→修復歴があると知っていながらそれを修復歴無しとして販売した

ウ 相手が騙された→私が修復歴無しだと誤認して購入の意思表示をした

ウは立証可能だと思いますが,正直なところアとイについては不可能だと思いますし,実際そんな故意は無かったと思います。もし,それをやってたら民事どころか刑事事件に発展しますからね。

なお,仮に立証しようとすれば,前所有者の証言(前所有者がTディーラーに売却する際に修復歴があることを伝えていた等)くらいしかないと思います。

 

 

以上のうち,③の詐欺取り消しは証拠上,なかなか難しいと思います。特に,Tディーラーに詐欺の故意があったことを立証するのはほぼ不可能ではないかと思います。ですので,現実的な選択肢としては,①か②となりますが,証拠の収集の観点からだと①の方が簡単ではないかと思います。また,Tディーラーに修復歴があることを知らせたとしても,そこから証拠隠滅することは不可能(販売当時のデータはこちらに保存してありますし,自動車本体もHディーラーに保管されているので,今からTディーラーが自動車に手を加えるのは無理です。)ですので,とりあえずTディーラーに確認することとしました。

 

ディーラー側の対応

 

TディーラーにHディーラーの店長から聞いた話を伝えました。少なくとも電話での対応では,まったく寝耳に水という感じで,大変驚いていました。

この電話をしたのが土曜日の正午くらいだったのですが,すぐにTディーラーでは検討が行われたようで,その日の夕方には,Hディーラーに保管してある自動車を確認に来られるとのことでした。

その後,Tディーラーより連絡があり,一度私と話がしたいということで,その日の夜に,当事務所まで来られました。

その結果,全面的に非を認められました。

いろいろと,法的な問題点や証拠収集について検討したんですが,とりあえずこの時点で訴訟に向けての証拠収集の必要性はほぼ無くなりました。

 

着地点をどこにするのか

 

法的な観点から言えば,私には以下の選択肢があります。

瑕疵担保責任に基づく解除をして自動車を返還する代わりに自動車の代金を返還してもらう。

瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求をして,自動車はそのまま使う(修復歴があることによる査定の下落分等)。

錯誤無効を主張して,自動車を返還する代わりに自動車の代金を返還してもらう(結果としては①とまったく同じです。)。

これは,あくまで法律上の規定となりますが,当事者が合意するのであれば法律に決められた内容以外で合意することも可能です。

例えば,

別の自動車と交換する。

損害賠償請求とは別に慰謝料や迷惑料などの名目で金銭を請求する。

私が我慢して,何も無かったかのように今の自動車を使い続ける。

なんていうことも可能です。

 

 

それで,実際にどのように進んだかというと,ベースは④とし,それが無理であれば①ということになりました。

つまり,同程度の代替車両が見つかればその自動車との交換,見つからなければ売買代金を全額返還するというものです。

そして,Tディーラーに何台か探してもらったところ,まったく同じ車種・グレードで年式も走行距離も良くなったもの(グレードはまったく同じで,年式が少し新しく,走行距離も短くなっている)と交換していただくこととなり,無事解決となりました(慰謝料や迷惑料などの金銭のやり取りは一切ありません。)。

考え方によっては,もしかしたら得したのかもしれませんが,私としては望んでこのような事態になったわけではないのでもうトラブルはこりごりですね。

 

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