10月 27 2014
探偵さんが債権回収詐欺をして逮捕
本日,こんな事件の報道がありました。
探偵さんの業務
フィクションの世界では,シャーロックホームズや工藤新一など,探偵が大活躍して殺人事件などを解決するということがありますが,現実的には探偵さんが立ちまわって事件を解決することはありませんし,逆に首を突っ込みすぎると探偵さん自身が犯罪者になってしまうこともあります。
探偵さんができる業務ですが,探偵業法では,
「他人の依頼を受けて、特定人の所在又は行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その調査の結果を当該依頼者に報告する業務」
と定義されています。
端的に言えば,とある特定の人について調べたり,尾行したり,聞き込みをして集めた情報を依頼者に報告する業務ということです。なので,一般的には浮気調査や特定人の行方を追う(人探し)業務が多いのではないかと思います。
探偵に資格は無い
探偵業を営むためには公安委員会に届出が必要ですが,「探偵」という資格はありませんので,届出さえすれば翌日から探偵になることができます。
逆に言えば,それだけしか担保されていないので,弁護士や司法書士などに与えられるような特権はありません。
具体的には,他人の住民票や戸籍謄本を職権で取得することはできませんし,誰かの代理人となって交渉をすることもできません。
今回の事件では
詳細な事実が書かれていないため,事実とは異なる可能性もありますが,記事によれば債権回収をするつもりもないのに,債権回収をすると騙して報酬を得たことが詐欺罪に該当するとのことのようです。
確かに,騙して金品を交付させたのであれば詐欺だと思います。
ところが,記事にもあるとおり,本当に債権回収をしてきたとしても,実はこれはこれで犯罪になってしまいます。
というのは,弁護士以外の者が他人の代理人となって債権回収等の業務を行うことは弁護士法で禁止されているからです(ただし,法務大臣の認定を受けた司法書士は140万円以下の債権回収業務を行うことは,弁護士法の例外として適法です。)。
なので,探偵業者さんが「債権回収」を謳っている時点で,どう転んでも犯罪になってしまいます。また,上記のとおり,職権で住民票等を取得することもできないことから,業務としてもスムーズに進みませんので,債権回収を探偵さんに依頼するメリットはまずないと思います。もし,訴訟や強制執行といった法的にまっとうな方法では回収できないような債権を回収してくれるようであればメリットと言えなくもありませんが,結局は債権回収行為自体が犯罪ですので,これをメリットとは言ってはいけないと思います。やはり,メリットは無いですね。
ちなみに,実際には回収していないのに,すでに被害者の方は96万円支払っているとのことです。今でもよく使われている弁護士さんの旧報酬規程で計算すると,債権回収の着手金で96万円も支払うとなると,約1700万円もの債権回収となります。いくらの債権回収なのかわかりませんが,正規で弁護士さんに依頼された方が安いんではないかという気がします。
探偵さんにお願いするとしたら
債権回収行為そのものは探偵さんには依頼できないのですが,弁護士等ではどうしようもない部分について,探偵さんにお願いすることはたくさんあると思います。
例えば,現実的な所在調査です。
上記のとおり,弁護士等は相手の方の住民票や戸籍謄本を取得することは可能ですが,あくまで書面上のことであって,住民票がある場所に住んでいないことは多々あります。また,転居をしてしまうと,元の役所には5年間しかデータが残されていないため,職権でも住民票を取得することはできません。このような場合に,現実的に相手がどこにいるのかを見つけてきてもらうというようなケースで探偵さんに活躍していただくことになります。
他には,給与の差し押さえをするために,相手がどこで働いているか尾行してきてもらうなんていうのも探偵さんの業務だと思います。
結局は,餅は餅屋ですので,それぞれの得意分野で活躍していければ良いですね。