7月 14 2023
施設の利用料等に関する債権回収
当事務所では債権回収業務のほか、不動産登記や商業登記など一般的な司法書士が行っている業務に加えて、成年後見業務も行っております。
そもそも成年後見とは、精神的な疾患や認知症などにより、ご自身で契約をしたり財産管理等を行うことが難しい場合に、ご本人に代わって契約等を行う人である「成年後見人」を家庭裁判所が選任し、以降は成年後見人がご本人の代理人として財産管理や契約等を行う制度です。
当事務所でも複数の方の成年後見人を務めており、その中でご本人が入所する施設との契約を成年後見人として締結することがあります。
契約前には、契約書はもちろんのこと重要事項説明書についても隅々までチェックをしたうえで内容に問題が無ければ契約手続を進めていくのですが、これまで見てきた契約書等は恐らく法律家が作成したものは1件も無く、内容的に「施設側にとっての穴」が多い契約書等が多いように思います。例えば、保証人が署名等をする欄があるのに保証人に関する契約条項が無かったり、逆に保証人に関する契約条項はあるのに保証人が署名等をする欄が無かったりします。
当事務所が成年後見人として契約する以上はご本人さんの施設の利用料の支払いを怠ることはありませんので実際に保証人の有無がトラブルになることは考えにくいのですが、そうで無い方との間では今後トラブルになることがあるだろうな、と思いながら契約をしています(ちなみに、本筋とは関係ありませんが、成年後見人は保証人にはなれません。)。
このような前振りをしたところで、昨年からご依頼をお受けしていた施設の利用料の債権回収が無事完了いたしました。
ご依頼いただいた施設の契約書も一部穴があり、お預かりした契約書の内容では保証人である家族に請求できる部分とできない部分がありましたので、訴訟等の法的手続だと全額回収できない恐れがあったことから、何度も交渉を重ねて全額の分割弁済で合意をし、1年以上かかりましたが何とか分割にて回収することができました。
それだけであればハッピーエンドになるのですが、実際には同じ施設から複数名の方の債権回収のご依頼をお受けしており、残念ながらほとんど回収できなかった方もいます。
例えば、施設に入所していた家族がすでに亡くなっていて今後施設の利用料が発生することは無く、保証人である家族自身も生活保護を受けているような場合だと、訴訟等を行っても現実的には回収は難しいです。
とはいえ、契約書の内容が適正なものであれば回収できるケースも多々あると思いますので、施設関係の方は今一度契約書や重要事項説明書の内容を確認していただいた方が良いかと思います。