3月 28 2014
任意の立ち退きと強制執行
先日,賃貸物件の大家さんよりご依頼いただき,家賃を支払ってくれない入居者の方に対する,未払い賃料の請求及び立ち退きを求める訴訟手続を行いました。
家賃未払いの場合,支払っていないことは明白ですので,訴訟において勝訴判決を得ること自体はそんなに大変なことではありません。ただし,場合によっては入居者が行方不明(いわゆる「夜逃げ」)になっていることもありますので,その場合は少し大変です。
さて,勝訴判決を得ることはできますが,当然それだけでは解決しませんので,現実的に出て行ってもらわなければなりません。これが本当に大変です。
というのは,日本においては例え立ち退きを認める判決が出たとしても,入居者を自力で追い出すことができないことになっているからです。ですので,勝手にカギを変えて部屋に入れなくしたり,家の中に入っていって引きずり出すなんてことは絶対にできません。
ではどうするかというと,裁判所の手を借りて追い出してもらうしかありません。
と,手続的にはこういう流れになるんですが,実はここまで行くのはかなり良くないです。
というのは,強制執行はとてもお金がかかります。
【強制執行にかかる費用】
強制執行の申し立てをするための予納金 →10万円程度
中に入るために合い鍵がなければ鍵屋さんの費用 →2~3万円
中にある荷物を搬出するためには専門業者の費用 → 量により変わりますが,数万円
ゴミなどがたくさんあるのであればゴミの処理費用 →ベッドや冷蔵庫など大きな物が大量にあったりゴミ屋敷になってしまっている数十万円かかることもあります。
以上から,あくまでケースバイケースになりますが,強制執行まで行ってしまうと最低でも20万円程度はかかってしまい,中の荷物の量によっては50万円程度かかることもあります。
とすると,やはり明け渡しを認める判決を取ったとしても,強制執行で出て行ってもらうのではなく,自ら出て行ってもらった方が安上がりなのは間違いありません。
そこで,大家さんとしてはまさに盗人に追い銭のような形になってしまいますが,ある程度の引っ越し費用を支払ってでも任意に出て行ってもらった方が結果的には得になるケースが多いと思います。
先日の件は,判決を取得したものの,まったく入居者の方と連絡が取れないため強制執行をしなければならないような状況にありましたが,幸いにして入居者の方と連絡が取れるようになったため強制執行は避けられました。
もちろん,このような事態にならないのが1番良いのですが,最終的にかかる費用を考えると,法律通りに進めて強制的に退去していただくよりも,滞納している家賃を少し負けてあげてでも一刻も早く出て行ってもらうように進めた方が結果として良い結論が得られることが多いと思います。