11月 01 2013
家賃の滞納があってもすぐに「出ていけ!」とは言えません
本日,賃料未払いによる催告及び賃貸借契約の解除通知を発送いたしました。
賃借人が家賃の支払いをしない場合,大家さんとしては,カギを変えてしまって中に入られないようにしたり,中の荷物を強制的に外に出してしまうなど,法的手続によることなく勝手にやってしまうと,逆に賃借人の方から大家さんが訴えられることがあり,場合によっては刑事事件に発展することもあります。
「家賃を支払わない賃借人の方が法的に悪いんだから文句を言われる筋合いはない!」というお気持ちはわかりますが,日本は法治国家であるため実力行使によることは認められておらず,仮に実力行使(強制的に退去させる)する場合には裁判所に代行してもらわなければなりません。
法的手続による場合,まずは未払い家賃を支払うよう催告し,その催告に応じない場合に契約の解除をして,退去を求めることになります。賃料の未払いがあるからといっていきなり退去を迫ることができるわけではありません。ということで,建物の明け渡しを求める場合,催告及び解除に関する書類を賃借人に発送するところから始まります。本日はこれを行ったわけですね。
なお,賃貸借契約書の中に,「賃借人が1回でも家賃を滞納した場合,催告することなく解除できる」(無催告解除)という条項が入っている場合があります。
そうすると,1回滞納しただけでいきなり契約解除をすることが可能とも読めますが,実際にはそう簡単にはいきません。
この点,昭和43年11月21日に最高裁は,「賃料の遅滞を理由に当該契約を解除するにあたり、催告をしなくても不合理とは認められない事情が存する場合には、催告なしで解除権を行使することが許される旨を定めた約定として有効」としています。
ということで,催告なしで解除するためには,いきなり解除されてもしょうがないと言えるような事情(1回どころか5回も滞納しているなど)が無い限りまずは賃料の支払いを催告(督促)し,相当期間(通常は1~2週間程度)の間に支払いがない場合に初めて解除できるとなっております。
正直なところ,訴訟で無催告解除の効力について時間をかけてまで争うことを考えれば,とりあえず催告をして1~2週間待つ方が結果としてスムーズに進むと思います。
したがって,今回当事務所で催告書を発送した件についても,結果としては無催告解除が認められる可能性は高いと思いますが,スムーズに進めるため催告をしております。もちろん,滞納している家賃を一括で支払ってもらえるかもしれませんしね。
さて,今回は賃借人から連絡はあるのでしょうか・・・。