6月 28 2022
お金を貸すときにやっていただきたことベスト3
個人間のお金の貸し借りにおいて、「こういった情報があれば回収できるのに…」、「この書類があれば裁判をやっても勝てそうなのに…」など、ご相談いただいた時点ではなかなか手続が難しいケースがあります。
もちろん、相手方の事情がありますので、どれだけ対策をしていても回収できないということはありますが、1つの情報があるだけで一気に好転することもあります。
そこで、お金を貸すに当たってこれはやっておいてほしいという点について3つにまとめてみました。
必ずしもすべてを満たすことはできないかと思いますし、そもそも当事務所のサイトをご覧いただいた時点ではすでに貸した後、ということが多いかと思いますが、それでも将来お金を貸すことがあった場合には思い出していただければ幸いです。
第1位 相手方の勤務先を聞いておく
完璧な証拠があり、仮に訴訟を行えば勝てるような状況にあったとしても、相手に財産が無ければ強制的に回収することはできません。
強制執行と言うと、不動産を差し押さえられたり、預貯金を差し押さえられたりというイメージがあるかと思いますが、実際には一番回収できるのは給与です。
というのは、不動産は持ってない人の方が多いですし、預貯金についてもあくまで差押えた時点での口座残高しか回収できませんので、なかなか回収できませんが、多くの方が働いていらっしゃると思いますので、勤務先さえ分かれば時間はかかるものの給与から回収できる可能性が高くなりますし、場合によっては「会社に迷惑をかけたくない」ということで一括で返済してもらえることもあります。
したがって、相手方の勤務先の情報はかなり重要です。
ただし、下記のような場合だと勤務先が分かっても回収できないこともあります。
①派遣社員
この場合、実際の勤務先ではなく、派遣元から給与を支払ってもらっていますので、派遣元の会社を調べる必要があります。
②水商売・風俗店など
あくまで経験上ですが、水商売等の給与を差し押さえようとしても、お店が従業員をかばって他の店に移籍ことにしたり、退店したように偽装するケースがあります。また、給与ではなく、業務委託などの個人事業として契約している場合もあり、そうなると給与の差押えでは回収できません。
③退職している場合
差押えをすることによって退職してしまうことがあり、そうなると給与からは回収できなくなってしまいます。もちろん、次の勤務先が分かれば改めて差押えをすることは可能です。
第2位 借用書を書いてもらう
一番確実なのは、「金銭消費貸借契約書」を取り交わすこととなりますが、個人間のお金の貸し借りでそこまでやっていることは多くはなく、あっても借用書程度です。とはいえ、借用書があればかなり大きな証拠となりますし、手書きやメモ程度であっても貸したことが分かる何らかの書面はもらった方が良いです。
なお、通常はお金を貸すときに書いてもらうことが多いかと思いますが、貸したあとに事後的に書いてもらっても問題ありません。
借用書については情報が多ければ多いほど良いですが、最低限、下記の内容が分かれば大丈夫です。
①貸主及び借主の氏名
誰が誰に貸したか(借りたか)が分からないと意味がありませんので、最低限当事者の氏名は必要です。
また、借主については、最低限署名(サイン)をしていればハンコは無くても大丈夫であり、ハンコがあれば尚良いという感じです。また、住所は合った方が良いですが、絶対条件ではありません。
②金額
いくら貸したかが分からないと何もできないので、金額は絶対に必要です。
③貸金(借金)であることが分かる文言
単に当事者の氏名と金額しか書いて無いと、それが貸したお金なのか、あげた(贈与した)お金なのか分かりませんので、貸金であることの記載は必要です。
例えば、「BはAから100万円を借りた」という文言でも良いですし、返済日の記載があれば貸金だということが分かります。
④日付
いつ貸したかが分からないと債権を特定することが難しくなりますので、必ず日付は記載してください。
第3位 メールやLINEなどの記録を残しておく
本当は上記のとおり借用書等の書面があれば良いのですが、それすらも無い場合も結構あります。
そのような場合は、借金の依頼に関するメール等や返済について交渉をしていることが分かるメール等が必要です。
ご相談でよくある内容として、「送金した銀行の明細があります。」というお話しがあるのですが、これはあくまで「送金した」という事実が分かるだけであって、もし相手から「確かにお金を送金してもらったけど、これはもらったお金だから返す必要は無い。」と反論されてしまう可能性があります。
なので、貸したお金なんだということが分かるものが必要となります。
ベストの状況としてはそもそもお金を貸さない方が良いですし、仮に貸したとしてもトラブルなく返済されれば何も問題ありません。
しかし、借金をしなければならないような人にお金を貸す場合、どんなに良い人であっても現実的に返済されないことは起こり得ますので、万が一そうなったときのためにも上記のように対策していただければと思います。