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2月 20 2024

ご相談いただいてご依頼いただく割合

日々たくさんのご相談をお受けしておりますが、実際にご依頼いただく割合は決して多くありません。正確な統計ではなく、あくまで感覚的な割合ですが恐らく2~3割程度だと思います。

その理由としては、ご相談をお受けした時点で回収の見込みがかなり低いケースが多く、余程の理由が無い限りご依頼いただくメリットが無いと説明させていただいているためです。
以下、ご相談いただいた時点で回収の見込みがかなり低いケースについてまとめてみたいと思います。

 

 

第1 回収することが極めて難しい場合

 

1 SNSでのやり取りのみで相手が誰だか分からない

近年、ネット上でのやり取りのみで金銭の貸し借りをされる方が多くなっているように思います。X(旧ツイッター)やインスタグラムなどのSNSで知り合い、SNS上だけのやり取りでお金(電子マネー)の貸し借りを行うというケースもあります。この場合、相手のアカウントは特定できていたとしても生身の人間としては誰かが分からないため、回収の見込みというよりも誰に請求して良いか分からず、そもそも手続を開始することができません

なお、近年良く見かける情報として発信者情報の開示請求がありますが、上記のような場合には開示請求ができません。
開示請求に関する特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第5条に、開示請求のための要件が規定されており、その中に「侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたこと」が必要であるとされています。「侵害情報の流通」というのは、名誉棄損等に該当するような投稿や第三者の著作権等を侵害する画像や動画の投稿などになり、あくまでその投稿自体が問題になる場合に限られます
とすると、金銭の貸し借りの相手方に違法な投稿等が無いようであれば発信者情報の開示請求はできないということになります。

 

2 会ったことはあるがLINEでのやり取りのみで相手の情報が無い

最近はメールではなくLINEでのやり取りが多くなっており、場合によっては相手方に会ったことはあるが電話番号は知らず、LINEでは繋がっているということが多くあると思います。ただ、LINEだけでは基本的には相手が誰であるかを特定することはできませんので、基本的に手続を開始することができません。

ただし、相手方のLINEIDが分かるようであれば、弁護士会照会を行うことで相手方の電話番号などが特定でき、そこから相手方の情報が得られる場合があります。ただし、弁護士会照会は文字通り弁護士さんでしか使えない制度であるため、当事務所では調査することはできません

また、LINEによって脅迫等をされた場合には、刑事事件にすることでそこから相手方が誰かが判明することがあります

 

なお、上記1と2においても、金融機関での送金にてお金のやり取りをしているようであれば、金融機関に弁護士会照会を行うことで相手方が誰であるかを特定できる場合があります。また、SNSやLINEのみのやり取りであっても、運転免許証などの身分証明書を送ってもらっていれば手続を進めることは可能です。

 

第2 回収することが難しい場合

 

1 住所が分からない場合

相手方に請求の手紙を出す場合、相手方の住所が必要になりますが、相手方の住所が分からないというケースがあります。

この場合、現在の住所は分からなくても、前の住所だったり、実家などの他の情報が分かる場合は、役所での調査により現住所が判明する場合があります。また、役所での調査では住所が特定できなかった場合であっても、郵便局の転送によりとりあえず前住所に発送することで現住所に転送されて相手方に届くということもあります。

もっとも、転送された場合であっても転送先の情報を郵便局は教えてくれませんので具体的に住所を特定することはできません。

なお、こちらも弁護士会照会であれば特定することは基本的には可能です(DV事案等の恐れがある場合は開示されません。)。

 

2 相手方が破産準備に入っている場合

大前提として、相手方が破産手続を行っている場合は法的に支払義務が無くなりますので請求自体ができません

ただ、破産手続は進んでいないけど、破産準備に入っているというケースはあります。この場合はまだ破産していない以上は訴訟等を行うことは可能であり、財産があれば強制執行により回収することも可能です。実際に破産準備中に訴訟手続を行い、給与を差し押さえて回収できたケースもあります。

もっとも、破産準備から実際に破産手続開始の申立てがされた場合は以降は回収できなくなりますので、全額回収に至ることは少ないです。

 

3 請求金額が少額である場合

こちらは回収することが難しいというよりもメリット・デメリットの問題となります。

例えば、1万円の請求をしたいというご相談をお受けすることがありますが、仮に訴訟や強制執行まで行ってしまうと、貸した金額よりもの多くの費用がかかることが考えられ、この費用は相手方に請求することはできませんので、手続をすればするほど赤字になってしまいます。

この場合、気持ちの部分で許せないから手続をしたいということであれば手続を行うメリットはあるかもしれませんが、経済的には手続を行うことはデメリットでしかありません。

 

第3 回収できるかどうかは相手方次第という場合

 

1 相手方に財産が無く勤務先も分からない

法的には訴訟等を行うことは可能であっても、相手方が任意に支払ってくれない場合は強制執行により相手方の財産を差し押さえて強制的に回収するしかありません。逆に言えば、相手方が分割弁済の交渉等に応じてくれる場合は相手方の財産の有無に関係なく回収することができます。

ただ、相手方に財産が無く、勤務先も分からないとなると差し押さえる財産が無いため、結果的に回収できないということも当然あります。

当事務所では相手方が生活保護を受給していても親族等の協力を得て分割支払により回収できたケースもありますので必ずしも回収が不可能という訳ではありませんが、この点は相手方次第であるためやってみないと分からないということになります。

※無関係な親族に支払いを求めることができるわけではありません。あくまで親族の任意の協力が必要です。

 

2 証拠がまったく無い

訴訟等を行うためには証拠が必要となりますが、実際に会って現金でやり取りを行い、メールなどの記録もまったくないという事があります。このような状況は昔からの知り合いというケースによく見られます。この場合、お金の貸し借り自体は恐らく事実かと思いますので、請求自体は可能です。そうすると、相手方から回答があり、一括または分割で支払ってくれるということでまとまることも多くあります。

しかし、相手方がお金の貸し借りの事実自体を否定されてしまうと訴訟をしようにも証拠がまったく無いため訴訟をしても負けてしまう可能性が十分考えられ、現実的には相手方次第であるためやってみないと分からないということになってしまいます。

 

以上の次第で、第1については手続を始めること自体が極めて難しいですが、それ以外は回収の見込みがゼロという訳ではありませんので、あとは費用対効果を踏まえてご検討いただくこととなります。

 

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12月 28 2023

年末年始の業務について

本日をもって今年の業務がすべて終了となります。今年もたくさんご依頼いただきましてありがとうございました。

 

 

年末年始の業務時間は下記のとおりとなり、12月29日以降にご連絡いただきましたメールについては、1月4日以降に順次返信させていただきます

 

 

令和5年12月28日(木)18時まで 通常営業

 

令和5年12月29日(金)~令和6年1月3日(水) 冬期休業

 

令和6年1月4日(木)9時から 通常営業

 

以上、よろしくお願いいたします。 


9月 01 2023

ご相談に関する注意点(改訂版)

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 ご相談に関して

 

1 ご相談に関する費用等

ご相談に関しては相談料等の費用をいただくことはございません。また,ご相談の時間や回数の制限はございません。ただし,ご相談の後に別の予定が入ってしまっている場合は時間を区切らせていただく場合がございます。

 

2 電話によるご相談

お電話によるご相談については,申し訳ございませんが原則としてお受けすることができません。以前は,その場で簡単に結論が出るようなことであれば回答させていただくこともございましたが,債権回収については証拠の有無が大きなカギを握っており,かつ,ちょっとした聞き間違いなどで結論が正反対になることがありますので,結果として誤った回答をしてしまわないよう電話でのご相談は基本的にはお断りさせていただいております。もっとも、ごく一般的かつ誰が回答しても同じ回答になるような内容であれば回答させていただくこともあります。

また、司法書士は、ご相談者からご相談をいただく前に、すでに紛争の相手方からご相談をお受けし、信頼関係を形成していた場合にはご相談やご依頼をお受けすることができないとされていることから、具体的なご相談に入る場合はご本人確認が必要となるためです(司法書士倫理第61条)。

 

3 メールによるご相談

当事務所サイトのお問い合わせフォームよりご相談いただくことが可能です。ただし,電話によるご相談と同様に,証拠を拝見して回答しているわけではないため,あくまで一般論的な回答に留まってしまいます。また、上記と同様に司法書士倫理上、具体的なご相談に入る場合はご本人確認が必要となりますので、より正確な回答をご希望される場合は,関係書類をお持ちいただき,直接ご相談いただいた方が良いかと思います。

 

4 回答させていただく内容

ご相談にお越しいただき,その際にご説明いただいた内容やお持ちいただいた関係書類を基に,

①法的に相談者さんまたは相手方の言い分が認められるか(認められる可能性が高いか低いか)

②手続としてどのような方法があるか

③手続をした場合に回収できるか(回収できる可能性が高いか低いか)

 などについて,私の考えを回答させていただきます。しかし,アドバイスをさせていただくだけであり,何らかの手続を執ることを勧めることはございません

 

5 回答できないご相談

対応業務以外の債権回収のご相談

当事務所では、個人間の金銭トラブル(お金の貸し借り)、未払い賃料の回収や明渡しなど、債権回収業務に関しては特定の業務に限定しております。こちらの業務以外の債権回収業務(交通事故の損害賠償請求、離婚に伴う慰謝料請求、契約不適合等による損害賠償請求、売買契約に基づくトラブルなど)に関してはご相談をお受けすることはできません。過去に当事務所の本ブログにおいて中古車関係のトラブルの記事を上げているため、中古車トラブルに関するご相談をいただくことがありますが、中古車トラブルについてのご相談はお受けしておりません。

 

司法書士及び行政書士の業務外のご相談

他士業(弁護士,弁理士,税理士等)の独占業務となっている業務についてのご相談については,法令違反となってしまいますので回答することができません。特に多いのが税金関係のご質問となり、制度としての一般的な回答(相続時清算課税制度、基礎控除など)であれば可能ですが、「課税されるのか」、「どの程度税金がかかるのか」など個別具体的なご相談は回答することができません。

 

違法行為または公序良俗違反により無効となる恐れのある契約等に関するご相談

例えば、ギャンブルの勝ち金の請求、利息制限法や出資法に違反した高利貸金の請求、水商売・風俗産業の方の売掛金についてのご相談はお受けしておりません。水商売・風俗産業の方の売掛金については必ずしも違法や公序良俗違反となるものではありませんが、その売掛金の発生自体が第三者からでは不透明な部分が多いため一切お受けしておりません。

 

具体的な手続に関するご相談

例えば,具体的な内容証明郵便の書き方や送付方法,訴状や準備書面等の裁判手続に関する書類の内容や作成方法については回答することができません。また,ご自身で作成された各種書類の添削なども行うことはできません。というのは,上記のような書類を作成して報酬をいただくことが当事務所の業務であるためです。

→ ご相談ができない、または難しい場合について

 

 

 

以上がご相談に関する注意点となりますので、これらを前提にご相談いただけますと幸いです。

 

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8月 07 2023

夏季休業について

 

当事務所では、下記の期間について夏季休業とさせていただきます。休業期間にお問い合わせいただきましたメール等につきましては、休業後に順次回答させていただきます。

 

8月7日18時まで  通常業務

 

8月8日から8月15日まで 夏季休業

 

8月16日から  通常業務

 

以上、よろしくお願いいたします。


7月 14 2023

施設の利用料等に関する債権回収

当事務所では債権回収業務のほか、不動産登記や商業登記など一般的な司法書士が行っている業務に加えて、成年後見業務も行っております。

そもそも成年後見とは、精神的な疾患や認知症などにより、ご自身で契約をしたり財産管理等を行うことが難しい場合に、ご本人に代わって契約等を行う人である「成年後見人」を家庭裁判所が選任し、以降は成年後見人がご本人の代理人として財産管理や契約等を行う制度です。

→ 成年後見人制度(裁判所サイト)

 

 

当事務所でも複数の方の成年後見人を務めており、その中でご本人が入所する施設との契約を成年後見人として締結することがあります。

契約前には、契約書はもちろんのこと重要事項説明書についても隅々までチェックをしたうえで内容に問題が無ければ契約手続を進めていくのですが、これまで見てきた契約書等は恐らく法律家が作成したものは1件も無く、内容的に「施設側にとっての穴」が多い契約書等が多いように思います。例えば、保証人が署名等をする欄があるのに保証人に関する契約条項が無かったり、逆に保証人に関する契約条項はあるのに保証人が署名等をする欄が無かったりします。

当事務所が成年後見人として契約する以上はご本人さんの施設の利用料の支払いを怠ることはありませんので実際に保証人の有無がトラブルになることは考えにくいのですが、そうで無い方との間では今後トラブルになることがあるだろうな、と思いながら契約をしています(ちなみに、本筋とは関係ありませんが、成年後見人は保証人にはなれません。)。

 

このような前振りをしたところで、昨年からご依頼をお受けしていた施設の利用料の債権回収が無事完了いたしました。

ご依頼いただいた施設の契約書も一部穴があり、お預かりした契約書の内容では保証人である家族に請求できる部分とできない部分がありましたので、訴訟等の法的手続だと全額回収できない恐れがあったことから、何度も交渉を重ねて全額の分割弁済で合意をし、1年以上かかりましたが何とか分割にて回収することができました。

それだけであればハッピーエンドになるのですが、実際には同じ施設から複数名の方の債権回収のご依頼をお受けしており、残念ながらほとんど回収できなかった方もいます。

例えば、施設に入所していた家族がすでに亡くなっていて今後施設の利用料が発生することは無く、保証人である家族自身も生活保護を受けているような場合だと、訴訟等を行っても現実的には回収は難しいです。

 

とはいえ、契約書の内容が適正なものであれば回収できるケースも多々あると思いますので、施設関係の方は今一度契約書や重要事項説明書の内容を確認していただいた方が良いかと思います。

 

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1月 10 2023

不動産以外の担保で保全する(②将来債権譲渡担保)

前回、自動車を担保に取る自動車抵当について記載いたしました。

不動産以外の担保で保全する(自動車抵当)

 

今回は、自動車のように動くどころか目には見えない「債権」、さらにはまだ発生すらしていない将来債権について担保に取る手続きについてまとめたいと思います。

なお、今回は債務者(譲渡人)が事業等を行っている法人であることが前提となりますので、基本的には法人に対する貸金請求や売掛金の回収のお話しとなり、個人間の金銭トラブルや建物の明渡等に関しては、無関係な内容となります。

 

 

 

1 債権と将来債権

お金を貸した場合、お金を貸主は借主に対して、「お金を返してください」という権利があり、これを債権といいます。

また、不動産の売買契約を締結した場合、不動産の売主は買主に対して「代金を支払ってください」という権利があり、逆に買主は売主に対して「不動産を引き渡してください」という権利があります。これも債権です。

さらに、特定の会社同士が基本契約を締結した上で継続的に取引をしている場合があります。例えば、問屋と小売店などにおいては、大元となる基本契約を締結し、その都度仕入れる際に個別契約をしているということがあります。また、医療法人だと、診療報酬のうち健康保険等が負担する分を国保連などに定期的に請求しています。そうすると、将来にわたって定期的に債権が発生することが見込めることもあり、現在は発生していないけど将来発生する予定の債権のことを将来債権と言います。

 

2 債権譲渡

返済期限を貸した日から1年後、利息を年10%として100万円を貸主であるAさんが借主であるBさんに貸したとします。Aさんは1年後にはBさんから110万円を返してもらえる債権を持っているといえます。

しかし、半年後にAさんが急遽お金が必要になり、110万円を返してほしいとBさんに言ったとしても、Bさんとしては1年間は返済しなくても良いことになっていますので、Aさんからの要求を拒絶することができます(これを「期限の利益」といいます。)。

そこで、Aさんは第三者であるCさんに対してBさんに対する債権を売却(譲渡)し、お金を回収することにしました。この場合、AさんはCさんに対して例えば103万円で売却することで、利息は予定より少ししかもらえないけど、すぐに現金を手にすることができますし、Cさんとしても半年待つだけで7万円増えてBさんから返してもらえますのでAさんとCさん双方にメリットがある内容になっています。

 

ところで、上記のとおり債権というものは目には見えませんので、やろうと思えばAさんは同じ債権をまったく無関係のDさんに譲渡することもできてしまいます。もし、AさんがDさんにも債権を譲渡し、Dさんの方が先にBさんから回収してしまったらCさんは損をしてしまいます。

そこで、法律上は、確定日付のある通知(一般的には内容証明郵便)にて、AさんがBさんに対して「私のBさんに対する100万円の債権はCさんに譲渡したので、半年後の返済期限にはCさんに返済してください。」という債権譲渡通知をすれば、第三者であるDさんに対抗できることになっています。

Aさんからの債権譲渡通知がBさんに届けば、その後にBさんにDさんから返済の請求があったとしても、Bさんとしては「いや、Cさんに対する債権譲渡の通知を受け取っているのでDさんには支払えませんよ。」と支払いを拒絶するでしょうし、万が一BさんがDさんに返済してしまったとしても、Cさんは改めて自分に返済するようBさんに請求することもできます。

 

このように債権譲渡をする場合には、通常は確定日付のある債権譲渡通知を行うことになります。

 

3 債権譲渡登記

上記のようにAさんがCさんに債権譲渡をしてしまうと、その時点で債権はCさんに移ってしまいますし、債権譲渡をされた通知がBさんに行きますので、BさんとしてはAさんが資金繰りに困っているのかもしれないという疑念を抱く可能性があります。

単発の貸金債権であれば問題にならないかもしれませんが、Aさんが問屋、Bさんが小売店、Cさんが貸金業者だったとすると、Cさんへの債権譲渡通知を受領したBさんは今後Aさんとの取引を止めて、別の問屋さんと取引を始めてしまうかもしれません。

そのような場合に有効なのが債権譲渡登記です。

→ 債権譲渡登記制度とは?(法務省)

 

債権譲渡登記は、AさんがBさんに対する債権についてCさんに譲渡した旨の登記をすることで内容証明郵便で通知した場合などと同様に第三者への対抗力を持ちますが、Bさんに通知等が行くわけではないので、Bさんは債権譲渡登記がされたことは知りません(調べようと思えば調べられます。)。

AさんがCさんからお金を借りる際に、Bさんに対する将来発生する売掛金をCさんを譲受人として債権譲渡登記をしておき、特にAさんがCさんへの返済を滞納等をしない限りは、これまでどおりAさんがBさんに対して売掛金の請求をして受領できる契約をしておきます。こうしておくことで、特にトラブルが無いようであれば、外見上は債権譲渡していることは誰にも知られず、AさんとBさんも普通に取引を継続すれば良いことになります。

そして、万が一Aさんが滞納等をした場合は、Cさんは債権譲渡登記がされたことが分かる登記事項証明書をBさんに提示することで、以降はCさんはBさんから回収することができます。

 

4 まとめ

なかなか分かりにくいため、頻繁に見ることは少ないと思いますが、担保に取れる不動産がなく保証人もいないが、安定的な取引先があるという場合には、債権譲渡登記をして担保しておくということも1つの手段になるのではないでしょうか。

 

なお、前回の自動車抵当も債権譲渡登記も当事務所で扱っておりますので、お気軽にご相談ください。

 

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1月 04 2023

当事務所の報酬等も含めて全額回収できた事案

債権回収に際してかかった費用のうち、裁判所に納めた訴訟費用や強制執行の費用に加えて法律(民事訴訟費用等に関する法律)で定められた裁判所への出廷のための日当や交通費については認められますが、それ以外の費用(弁護士や司法書士などの専門家に対する報酬、探偵等を使った場合の費用など)については基本的には回収の対象外となります。

したがって、訴訟等で専門家に対する報酬を含めて請求したとしてもこの点は認められず、例外的に不法行為に基づく損害賠償請求の場合においては、判決で認められた損害賠償額の1割程度(専門家の報酬の1割ではありません。)が専門家に対する報酬分として認められる場合があるに過ぎません。

 

ただし、相手方との間で話がまとまり、その金額が常識外れの金額でなければ、専門家等に対する報酬を含めた金額を回収できる場合があります。今回、大変珍しいケースですが、相手方との間で当事務所の報酬も含めた全額の返還で話がまとまり回収できましたので、この点についてまとめたいと思います。

なお、事案の特定を避けるため、一部フィクションが入っています。

 

 

1 事案

(1)ネット上で知り合った男性から頼まれ、分割で返済する約定で数十万円を送金して貸し付けました。

(2)貸し付けるに際して、相手方から免許証の画像を送信してもらうことに加えて、郵送で借用書を送って借用書のやり取りも行いました。

(3)一度も返済が無いため督促したものの連絡が取れなくなり、当事務所にご相談がありました。

(4)当方も連絡を試みましたが一切連絡が取れない状況だったため訴訟を提起し、証拠も揃っていましたのですんなりと勝訴しました。

(5)動産執行の申立てをしたところ相手方から連絡があり、当事務所の報酬や訴訟費用等の実費も含めて親族が立て替えて全額返還する内容で和解し、実際に一括で全額回収いたしました。

 

2 和解が成立した理由

まず、上記(2)で免許証の画像が送られてきていましたが、こちらで確認したところ免許証の一部に変造が疑われたため警察への相談をお願いいたしました(当方は弁護士では無いため、基本的には刑事手続には関与できません。)。

そして、動産執行のタイミングと上記の変造に関する警察の事情聴取のタイミングが重なり、さらに相手方の家族が知るところになったため、もう逃げられないと悟ったのかこちらに連絡があった次第です。

警察から連絡があるということ自体かなりインパクトがありますし、動産執行において執行官が自宅を訪問し、さらに家族を巻き込むとなると相当なプレッシャーにはなったと思います。

 

3 まとめ

今回のケースでは、依頼者は元金+和解日までの利息を全額回収しており、かつ、実質的に当事務所の費用の負担も無くなったため、ご依頼いただいたことにより完全にプラスで終えることができました。しかも、和解時に判明したことですが、相手方はもともと無職だったようで、そのような方から回収できたのは大成功だったと思います(返済金は親族が立て替えています。)。

もっとも、大多数のケースでは当事務所の費用まで含めて回収するというのは難しいですし、今回は相手方の家族が立て替えてくれるという協力があって一括で回収できましたが、ひとり暮らしの場合だとここまで上手くはいかないことも多いのでご留意ください。

 

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12月 28 2022

年末年始の業務について

本日をもって今年の業務がすべて終了となります。今年もご依頼いただきましてありがとうございました。

 

 

年末年始の業務時間は下記のとおりとなり、12月29日以降にご連絡いただきましたメールについては、1月4日以降に順次返信させていただきます

 

 

令和4年12月28日(水)18時まで 通常営業

 

令和4年12月29日(水)~令和5年1月3日(火) 冬期休業

 

令和5年1月4日(水)9時から 通常営業

 

以上、よろしくお願いいたします。 


12月 12 2022

家賃を滞納した場合に自動的に明渡したことになる条項の有効性(最高裁判決)

アパートのなどの賃貸借契約において、「1か月でも滞納した場合は契約を解除し、すぐに明け渡す。」という趣旨の条項が入っていたとしても、法律上は認められないことになっています。

居宅に関する賃貸借契約はコンビニなどで商品を購入するような一時的な契約ではなく、短くても数か月、長ければ数十年にも及ぶ契約となりますので当事者の信頼関係が重要視されており、居宅は生活の本拠となる場所であるため、そう簡単に解除することは認められていません

なので、賃貸人側から契約を解除するためには、賃借人が生活の本拠を失ってもやむを得ないと思える程度に信頼関係が破壊されているような事情が無ければならず、簡単に契約を解除することができません。

この点、家賃に関して言えば、一般的には3か月分を超える滞納があると信頼関係が破壊されたと考えられる傾向にあります。ただし、あくまで総合的に判断であるため、一概に3か月を超えていれば解除できるというものではありませんし、逆に賃借人に他の悪い事情があれば1か月の滞納でも解除が認められることがあります。

この点の事情については、下記をご覧いただければと思います。

→ 契約違反による賃貸借契約の解除(その1)

→ 契約違反による賃貸借契約の解除(その2)

 

 

さて、本日(令和4年12月12日)、賃貸人ではなく保証会社と賃借人との契約にはなりますが、下記の2つの条項について差止めが認められるかどうか(適格消費者団体が原告となって、上記のような条項を使うことについての差止請求)について最高裁判決がありました。

①賃借人が支払を怠った賃料等及び変動費の合計額が賃料3か月分以上に達したときは、無催告にて原契約を解除することができる。

②賃借人が賃料等の支払を2か月以上怠り、被上告人が合理的な手段を尽くしても賃借人本人と連絡がとれない状況の下、電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から本件建物を相当期間利用していないものと認められ、かつ本件建物を再び占有使用しない賃借人の意思が客観的に看取できる事情が存するときは、賃借人が明示的に異議を述べない限り、これをもって本件建物の明渡しがあったものとみなすことができる。

→ 最高裁サイト

→ 判決全文(PDF)

 

上記のとおり、居宅に関する賃貸借契約は賃借人が保護されることが多いため認められる可能性は低いと思っていましたが、やはり認められませんでした。

その理由はざっくり申し上げると次のようなものです。

①賃借人が支払いを怠った賃料等の合計額が3か月分以上になった場合、賃貸借契約の当事者ではない保証会社が何の限定もなく賃貸借契約を無催告で解除権できるものとしている点において、賃借人が重大な不利益を被る可能性があり、消費者契約法違反により無効である。

②明け渡したとみなされた場合、賃借人は建物に居住することが一方的に制限されることになる上、賃貸借契約は解除されていないから建物の明け渡す義務を負っていないのに、法律に定める手続によることなく強制的に明渡しが実現された状態に置かれるのであって著しく不当というべきである。

明け渡したとみなすことができる要件のうち、「建物を再び占有使用しない賃借人の意思というものが客観的にみなすことができる事情がある」という要件は、その内容が明らかでないため、賃借人はどのような場合に適用があるのかを判断することができず不利益を被るおそれがある。

賃借人が異議を述べた場合には、保証会社が本件建物の明渡しがあったとみなすことができないものとしているが、賃借人が異議を述べる機会が確保されているわけではないから、賃借人の不利益を回避する手段として十分でない。

以上の理由により、消費者契約法違反により無効である。

 

したがいまして、判決でこのような条項が入った契約書は破棄しなければならないとされており、仮にみなし明渡しの条項が入っていたとしても、通常の明渡手続が必要になることになります。

仮にみなし明渡し条項が入っているからと言って勝手に室内の動産を処分した場合、相当なトラブルになる可能性があります。この点、通常の明渡手続を踏めば、室内の動産を処分することについて裁判所のお墨付きが得られますので、トラブルになる可能性はかなり低いことを考えると、費用も時間もかかるため大変ではありますが、やはり真っ当な方法で進められた方が良いと思います。

なお、判決自体は賃借人保護になりますが、賃貸人側(保証会社側)としては従前より審査が厳しくなって契約に至らないケースが増えることになると思われますので、下記のようなケースがより社会問題になっていくと思います。

 

毎日新聞「入居6回断られ…シングルマザーが直面する「住まいの貧困」とは」2022/12/11 08:00(最終更新 12/12 12:20)

以下、引用

「やっぱり貸せない」。神戸市の女性(43)は2年前、アパートの賃貸契約を交わす直前で、大家から入居を断られた。女性はパート従業員で、小学生から高校生までの3人の子どもを育てていた。家を探していたのは、元夫のドメスティックバイオレンス(DV)から逃れるためだが、断られるのは6回目だった。元夫は定職に就かず、家事や育児は女性任せ。子どもが泣くと、壁をたたいたり暴言を吐いたりした。女性は知人から支援団体を紹介され、別居を決意した。20カ所以上の物件にあたり、ようやく家賃5万2000円のアパートに移り住むことができた。母子4人には狭いが、我慢するしかなかった。「金銭的な不安もある中、心と体を守れる安全な場所にたどり着くための負担が大き過ぎる」と女性は振り返る。

以上で引用終わり

 

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11月 21 2022

不動産以外の担保で保全する(①自動車抵当)

「担保」というと、まず最初に思い浮かぶのは不動産だと思います。一般的に不動産は価値が高いですし、「不動」となっているとおり財産が逃げることが無いので、担保として一番確実性が高いです。

不動産は、法務局にある登記簿にて権利関係が公示されていますので、不動産の登記事項証明書を取得すれば「その不動産が担保に入っているかどうか」、「入っているとしていくらの担保になっているか」等を確認することができます。

 

また、あまり担保というイメージは無いかもしれませんが、保証人を取るという事も多いかと思います(保証人は「人的担保」と呼ばれます。)。ただし、保証人の場合は、保証人自体に資力が無ければ結局回収できませんし、人間である以上逃げてしまう可能性もありますので、確実性という点では不動産には劣ると思います。さらに、保証人の資力は公示されていませんので、保証人が実は多重債務者となっていて回収が困難ということもあり得ます。

 

さて、今回はその中間という訳ではありませんが、先日、自動車を担保に取る自動車抵当の手続を行いましたので、今回はこの点についてまとめてみたいと思います。

 

 

1 自動車抵当とは

 

不動産に対する抵当権は民法に規定がありますが、自動車に対する抵当権の設定は自動車抵当法という特別法によって定められています。

基本的には、不動産に対する抵当権と同様であり、次のような特徴があります。

 

(1)所有者(設定者)が占有したまま使用可能

住宅ローンを組んで家を購入する場合、その家は銀行の住宅ローンの担保に入っていますが銀行が家を占有している訳ではなく、家はそのまま所有者が使うことができます。自動車抵当も同様に、抵当権が設定されても所有者がそのまま使用し続けることが可能です。

 

(2)役所で抵当権の有無を確認することができる

不動産に対する抵当権自体は当事者の合意のみで成立しますが、当該抵当権の存在を第三者に対抗できませんので通常は登記を行います。登記をすることで、第三者に対しても抵当権があること(担保として取っていること)を対抗することができます。同様に、自動車抵当の場合も自動車登録ファイルに抵当権設定の登録をしなければ第三者に対抗できませんので登録を行います。

抵当権が設定されていることは、不動産であれば登記事項証明書を法務局で、自動車であれば登録事項等証明書を運輸支局で、それぞれ取得することで誰でも抵当権の存在を確認することができます。

 

(3)優先弁済を受けることができる

不動産や自動車が競売などで売却される場合、当該売却代金から優先して債権を回収することができます。

抵当権が設定されたまま不動産や自動車を売却することができますが、買主としては抵当権が設定されたままの不動産や自動車を購入したくありませんので、通常はその時点で弁済してもらい、抵当権を抹消することになります。

 

2 不動産に対する抵当権等の違い

 

不動産と動産である自動車では性質が異なりますので、下記のような違いもあります。

 

(1)不動産より回収できない可能性が高い

不動産の場合、建物が火事等で焼失してしまうことがありますが、土地は地震で地面が崩れるなど特段の事情が無い限り、価値がゼロになってしまうということは考えにくいです。

一方、自動車は高速で動く動産ですので、事故等により価値が無くなってしまい、結果として回収が難しくなる場合があります(保険に入っている自動車であれば、保険金から優先的に回収できる「物上代位」が可能です。)。また、盗難等により所在不明になる可能性もあります。

 

(2)そもそも価値が低いことが多い

不動産は安くても数百万円、高ければ億単位になりますので、担保として大きな効果があります。一方、一般的な乗用車の場合は、新車時点ではそれなりの価値があるものの年々価値は下落していきますので、それほど多額の融資を受けるための担保にはなりにくいです。ただし、運送会社等が所有しているトラック等の大型車両は価値が大きいため、担保としての価値は十分あると思います。

 

(3)滅失・廃車の可否

不動産の場合は抵当権が設定されていても滅失登記ができますが、自動車の場合は抵当権が設定されていると廃車手続ができません

 

3 手続について

 

(1)必要書類

申請書等を除けば、不動産における抵当権設定登記とほとんど同じです。自動車の所有者の印鑑証明書、抵当権者の資格証明書(個人であれば住民票)が必要となります。

異なる部分としては、不動産の抵当権設定登記だと抵当権設定契約書は必要となるものの被担保債権に関する書類は不要です(例えば、金銭消費貸借契約書)が、自動車抵当の場合は抵当権設定契約書が必要になることは当然のこと、被担保債権に関する書類も必要となります。

 

(2)登録免許税

不動産の場合は債権額の0.4%を登録免許税として納める必要がありますが、自動車の場合は0.3%と少しだけ低くなっています。ただし、3万円を超える場合は収入印紙での納付ができませんので注意が必要です。

 

(3)完了までの時間

不動産の場合は、各法務局の執務状況によって異なりますが、概ね1週間前後で登記は完了します。一方、自動車の場合は、数十分から1時間程度で即日完了します。

 

(4)報酬

各専門家によって異なりますし、債権額によっても変わりますので一概に申し上げることができませんが、当事務所の場合は不動産よりも自動車の方が高くなります

というのは、不動産は事務所からオンラインで申請すれば良いだけですので申請に関する手間がそれほどかかりませんが、自動車の場合は運輸支局に出向く必要がある上、完了するまでその場で待つ必要があるため実質的な拘束時間が長くなること、及び上記のとおり必要書類として抵当権設定契約書等が必要になるところ、不動産の場合は通常は金融機関が書類を準備するのに対して、自動車の場合は当方で抵当権設定契約書や被担保債権に関する書類を作成する必要があるためです。

なお、不動産に関する抵当権設定登記は基本的には司法書士の業務であり、自動車に対する抵当権設定登録は行政書士の業務となります(当事務所は両方の資格を有しております。)。

 

4 まとめ

 

ということで、不動産と比べると担保価値としては大きくありませんが、トラックなど比較的高額な自動車について担保として取るという方法は十分選択肢の1つにはなるかと思います。

 

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