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1月 08 2019

分割弁済の完走(完済)

ご依頼いただく債権回収のほとんどが分割弁済による解決になります。事前の交渉を試みても一切連絡が取れずに訴訟となり,強制執行を行うケースもありますが,それでも一括で回収できるケースはあまり多くなく,その後に連絡をいただいて分割弁済になることが多いです。

 

今回は,あくまで当事務所が関与しているだけでの話となりますが,分割弁済の完済率についてまとめたいと思います。

 

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1 全体の80~90%が分割弁済

相手方に金銭の支払いを求めた場合,本当の実情は分かりませんが,やはりお金が無いことを理由に分割弁済を求められることが多いです。こちらとしても,分割とはいえ全額返済してもらえるのであれば,不合理な長期間で無い限り分割弁済で合意しています。

 

すべての事務所に当てはまるものではありませんが当事務所では以下のような感じです。

 

(1)話が出来て一括で回収できるケース → 10%程度

(2)こちらからの連絡は完全無視で一切連絡が取れず交渉もできないケース → 5%程度

(3)相手方から連絡があり交渉するか,訴訟手続を行った後に和解して交渉するなどして分割弁済となるケース → 85%程度

 

2 分割弁済の和解の方法

分割弁済の和解(合意)には,訴訟提起前に任意で和解書のやり取りを行うケースと訴訟提起後に裁判上和解が成立するケースがあります。

前者の場合はあくまで私文書であるため強制力はないものの,書類を作成するだけですので費用は抑えられます。少なくとも,当事務所ではご依頼いただいたうえで合意が成立した場合の書面の作成自体は無料なので費用はまったくかからないことになります。

一方,後者は分割弁済が滞った場合には預貯金や給与などの強制執行ができるため強制力が強いですが,そのためには訴訟手続を行うことになるため,それなりの時間と費用がかかります

 

なお,中間の方法として公正証書で和解書を作成すれば訴訟等を行うことなく強制力が強い書面を作成することも可能ですが,当事務所はあまりこの方法は執りません。

 

3 分割弁済の完走率

一般論としては,強制執行ができる裁判上和解の方がちゃんと完済してもらえそうな気がしますが,それほど変わらないように思います。どのような書面で和解が成立したとしても,結局は相手方次第だと思います。

ただ,1つだけ確実に完走率が確率が上がる場合があり,それは強制執行後に和解をした場合です。

 

裁判上の和解が成立し,「返済に遅れた場合は強制執行をされるかもしれない」という状態であっても,普通の方は強制執行を受けたことが無いので強制執行をされることの実感がありません。ところが,実際に強制執行をしてみると,勤務先に通知が届いたり(給与の債権執行),突然自宅に執行官が来たりします(動産執行)ので,以降のレスポンスは早くなりますし,遅れることなく返済してくれることが多くなります。

 

これまた,あくまで当事務所の感覚ですが,和解後にしっかり完済するのは概ね以下のような割合です。

(1)訴訟に和解が成立した場合 → 60%程度

(2)訴訟(裁判上)の和解が成立した場合 → 70%程度

(3)強制執行後に和解が成立した場合 → 90%程度

 

つまり,強制執行後に和解が成立したのに,それでも支払いが滞る方がいらっしゃるということです・・・。もうこうなると再度強制執行するしかありませんが,そのような方は差し押さえられるような財産がなく,現実的な回収は難しくなります。

 

以上,どの程度参考になるか分かりませんが,債権回収手続をご検討いただく一助となれば幸いです。

 

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12月 27 2018

年末年始の業務について

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12月28日の18時をもって本年の業務は終了となります。今年1年ありがとうございました。

当事務所の年末年始は下記のような予定となっており,当該期間中にいただいたお問い合わせにつきましては,原則として1/4に回答させていただきます。

 

平成29年12月28日18時まで 通常業務

 

平成29年12月28日18時から平成30年1月4日午前9時まで お休み

 

平成30年1月4日午前9時から 通常業務

 

それでは皆様,良いお年をお迎えください<(_ _)>


12月 07 2018

私自身が原告になった話

当事務所では,皆様からご依頼をお受けして債権回収の手続をしておりますが,実は私自身もこれまでに2回原告本人となって法的手続を行ったことがあります。

 

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私どもは,国にいわば特権を与えられて業務を行っている部分がありますので,純粋な商売のみならず公益的な活動をすることも求められています

例えば,ご依頼いただく業務の中に「借金の整理」などがありますが,業務の性質上,報酬をお支払いいただけない方が多少なりともいらっしゃいます。借金の整理をしている以上,経済状況については大変よく分かっておりますので,ある種の公益的な業務を行ったものと考え,依頼者に対して報酬のお支払いに関する法的手続を執ることはありません

 

その他の司法書士の業務としては,不動産登記及び商業登記の手続があります。

このうち,不動産に関しては性質上大金が動きますし,登記に関する費用も踏まえたうえで資金計画を立てていらっしゃいますので,費用をお支払いいただけなかったことは一度もありません。

ということで,残る商業登記が実は曲者なんです。上記の2回の訴訟手続もともに法人さんからご依頼いただいた商業登記の費用となります。

 

一般的に,商業登記の場合はいったんは司法書士が法務局に納める登録免許税を立て替えて登記手続を行い,登記完了後に報酬と立て替えた登録免許税をまとめて依頼者である法人さんにお支払いいただくことになります。ですので,費用がお支払いいただけないと,単に報酬がいただけないのみならず,立て替えた税金分までマイナスになってしまいまうことになります。

商業登記の手続をするということは,法人として存在しており商売をされているわけですので,お支払いいただけないことは通常考えられないのですが,なぜかお支払いいただけないことがあるんですよね・・・。

もちろん,当初はお手紙やお電話などでお話をさせていただくのですが,それでもお支払いいただけない場合は残念ですが法的手続を執ることとなります。

 

1件目に関しては,提訴した後すぐにご連絡いただき,一括でお支払いいただきました。裁判所から送付された書類が大きなプレッシャーになったと思います。

2件目に関しては,残念ながら会社のみならず代表者の方の行方がわからないため,とりあえず判決は取得いたしましたが現時点では回収できておりません。所在が判明すれば強制執行を進めることもできますが,まずは話し合いをしてお支払いいただければと考えています。

 

このように,同じような債権回収でも,1回目は提訴まで行ったもののその後はスムーズに回収できております。しかし,2回目は判決を取得しておりますが,現時点では1円も回収できておりません。つまり,債権回収は相手方の状況によって大きく左右される部分が多く,さらには「やってみないとわからない」ということが多々あります

ということで,当事務所では「着手金無しでとりあえず手続を進めてみる」というプランを設けておりますので,お気軽にご相談いただければと思います。

 

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10月 24 2018

欠席判決=勝訴ではない

先日,弁護士さんの懲戒請求に絡んだ損害賠償請求で,被告(懲戒請求者)が敗訴したという記事がありました。

 

この記事に対して,「欠席判決だから意味が無い」というようなコメントがあるようです。確かに,欠席判決の場合は,被告の主張を聞かずに判断され,極めて高い確率で原告勝訴となりますが,意味が無いというものではありません。今回の訴訟は懲戒請求が不法行為に該当するかどうかの訴訟であるため,意味が無いどころかかなり影響があるものだと思います。

ということで,私は上記の懲戒請求とはあまり関係ないのですが,今回は欠席判決全般についてまとめてみたいと思います。

 

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1 通常訴訟の流れ

訴えが提起されると,裁判所から被告に対して訴状等の関係書類が送付されてきます。送付された書類の中には2つの重要な期日が書いてあり,1つが答弁書提出期限,2つ目が口頭弁論期日です。

 

答弁書とは,被告側の初回の反論の書面のことであり,「被告の請求を棄却する。との判決を求める。」だったり,「原告から借りたお金は○月○日に返済した。」など,その理由を記載することになります。

通常,答弁書提出期限は口頭弁論期日の1週間程度前が設定されており,口頭弁論期日にとりあえずの原告と被告の主張が出て,審理が始まることになります。

この答弁書提出期限はあくまで目安であり,遅れたとしても特にペナルティはありませんが,答弁書を提出せず,口頭弁論期日に欠席してしまうと後述のとおり不利益がありますので,なにはともあれ出した方が良い書類です。

 

次に,口頭弁論期日というのは,いわゆる「裁判の日」であり,裁判所に出廷する日時となります。

2回目以降の期日は当事者と裁判所が打ち合わせをして決めるのですが,初回の期日に関しては被告の予定は関係なく一方的に決められてしまいます。そこで,これに対する救済措置として,事前に上記の答弁書を提出しておけば,口頭弁論期日には出廷しなくても良いことになっています(民事訴訟法158条)。

 

2 答弁書を提出せず口頭弁論期日で反論しなかった場合

 

被告が,答弁書に反論内容を記載して口頭弁論期日を欠席したり,逆に答弁書は提出していないけど,口頭弁論期日に出て口頭で反論した場合,その場で判決できるような特殊な事情が無い限りとりあえず裁判は続行することになります。

逆に,被告が答弁書で請求をすべて認めるような記載をして口頭弁論期日を欠席した場合や口頭弁論期日に出て請求を認めるような発言をした場合,特に争うことがありませんので裁判所は判決することができます。もちろん,被告が出廷しているのであれば和解協議が行われることも多いと思います

 

では,被告が答弁書を提出せず,しかも口頭弁論期日に出廷しなかった場合はどうなるのでしょうか。

この場合,被告の真の意思は分からないのですが,法律的には裁判所は原告の主張を認めることになっています(民事訴訟法159条)。これを法律的には擬制自白と呼んでいます。

例えば,原告が「被告に対して100万円を貸した。」という主張をしている場合,擬制自白が成立することによって,裁判所は借用書や通帳など一切の証拠無しに100万円貸したことを認めて良いことになっています。

したがって,擬制自白が成立する以上,原告が勝訴する可能性が極めて高くなり,このような判決のことを俗に欠席判決と呼んでいます。

 

3 擬制自白に含まれるものと含まれないもの

 

擬制自白=原告勝訴になりそうですが,実は擬制自白の制度は事実認定にしか及ばないとされています(民事訴訟法179条)。

「事実」というのは「100万円を貸した」,「被告に殴られた」というようなものを指します。

 

これに対し,法律の解釈・適用や事実の評価などは対象外となります。

例えば,親である原告が子である被告に対して,「子が成人したら,子は親に対して毎月10万円支払うのが健全な社会だ!」と裁判所に訴えを提起し,子が何ら反論をしなかったとしても原告の主張は認められません。なぜなら,「子が成人したら親に対して10万円ずつ支払う」という法律が無いからです。

これは極端な例ですが,実際に擬制自白が成立しても法律の解釈・適用により原告が敗訴した実例があります。

平成17年(少コ)第1186号売買代金請求事件

 

上記の裁判例は,通販会社である原告が,被告に対して代金の請求をしている事件ですが,被告に擬制自白が成立しているものの,裁判所はクーリングオフが適用されるとして原告敗訴の判決をしています。

 

また,とある事実が認定されたとしても,それが法律上の不法行為に該当するかどうかは裁判所が判断することになりますし,慰謝料も裁判所が決めます

例えば,隣家の騒音がうるさくて精神上の損害を受けたとして被告を訴え,被告が答弁書を提出せず口頭弁論期日を欠席して擬制自白が成立したとしても,あくまで「隣家から音が出ている」という事実について擬制自白が成立するだけで,それが不法行為とされるほどの音量ではない場合(受忍限度の範囲内)には原告敗訴の判決が出ることになります。同様に,「平手打ちをされてけがをした」ということで1億円の損害賠償請求をし,被告の欠席等により擬制自白が成立したとしても,「被告が平手打ちをした」という事実について擬制自白が成立するだけで「慰謝料1億円」まで及ぶものではありませんので,被告が欠席したとしても慰謝料として1億円も認められることはあり得ません。

あくまで「事実」についてしか擬制自白は成立せず,騒音が不法行為に該当するか,平手打ちで受けた損害(慰謝料等)の評価額などは裁判所が決めることになります。。

 

4 まとめ

 

冒頭の懲戒請求事件について,「被告が懲戒請求をした」ということは擬制自白で認定されると思いますが,その懲戒請求が不法行為に該当するものなのか,仮に該当するとしても慰謝料がいくらになるのかは,例え擬制自白が成立したとしても,ちゃんと裁判所は判断しています。仮に被告が行った懲戒請求が不法行為に該当するようなものではなかったと裁判所が判断したのであれば,擬制自白が成立していたとしても原告敗訴の判決がなされたはずですが,原告勝訴の判決が出ていますので,懲戒請求は違法なものだったいうことになります。

ただ,まだ判決が出たばかりですので,控訴・上告がされれば結論が変わる可能性もあります。

 

なお,公示送達に関する記事でも説明しておりますが,送達が公示送達だった場合には擬制自白は成立しません

公示送達は,裁判所の掲示板に呼出状が貼られるものであり,現実的に被告は裁判を起こされていることを知るよしもありませんので,そんな中で被告欠席による擬制自白を認めることはあまりにも酷であることから,原告は証拠による立証が必要となります。

ただ,普通は証拠を踏まえたうえで訴訟を起こしていますので,公示送達でも原告勝訴になることがほとんどだと思います。

 

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10月 15 2018

給与の差押えでもなかなかスムーズにいかないケース

最近,裁判上の和解をしても支払ってもらえなくなることが多く,結果として債務者の給与を差し押さえることがあります。

給与は,債務者が退職しない限りは少ないながらも毎月回収できますので,他の差し押さえと比べても比較的回収率が高い手続ではあるのですが,ここのところ立て続けに悩ましい事態に遭遇してしまいました。

今回は給与の差し押さえについて少しまとめたいと思います。

 

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1 原則として手取り給与の25%

 

給与の差押ができる上限が定められており(民事執行法152条1項),差押債権目録に定型文句として以下の文言を記載いたします。

「給料(基本給と諸手当。ただし,通勤手当を除く。)から所得税,住民税,社会保険料を控除した残額の4分の1(ただし,上記残額が月額44万円を超える時は,その残額から33万円を控除した金額)」

 

簡単に言えば,手取り給与の4分の1(25%)を差し押さえるというものであり,手取り給与が44万円を超える場合は33万円を控除した残りの金額を全額差し押さえることができます。

例えば,手取り給与が20万円だった場合は5万円を差し押さえることができますし,手取り給与が100万円だった場合は33万円を控除した67万円を差し押さえることができます。

 

また,給与に限らずボーナス(賞与)も対象となりますし,退職した場合に支給される退職金も対象となります。

 

例外的に,養育費や婚姻費用など生活にかかわるお金の場合は手取り給与の半分を差し押さえることができます(民事執行法152条3項)。

 

2 第三債務者の協力が必要

 

給与の差し押さえをしても自動的に裁判所が債権者に振り込んでくれるわけではなく,第三債務者(通常は債務者が勤務先の会社)に話しをしたうえで毎月送金してもらわなければなりません。つまり,勤務先の協力が必要になるということです。

差押の書類は勤務先にも郵送され,届いた時から上記の25%を控除した分しか債務者たる従業員に支払ってはいけません。万が一,全額支払った場合は,対債権者との関係では支払ってないことになり,債権者に対して25%分は二重払いしなければならないことになりますので,普通は勤務先は債権者に対して支払ってくれます。

ところが,中には裁判所の命令を無視して全額従業員に支払い続ける会社があります。債権者には対抗できないので債権者に対して二重払いしなければならない旨を説明しても,「自分が法律」と思って聞く耳を持たない社長さんもおり,支払ってもらえません。そうなると,もう勤務先の会社を訴えて回収するしかありません。

 

ただ,そのような場合でも差し押さえ金額の全額について訴えることができるわけではなく,経過分しか請求ができません

上記の例にあるとおり,仮に債務者の手取り月収が20万円だった場合1ヶ月当たり差し押さえができる金額は5万円です。とすると,最初の給料日が来た時点で会社が支払ってくれなかった場合は5万円についてしか訴えることができません。したがって,50万円回収したいということであれば10ヶ月待って訴えることになりますし,100万円であれば20ヶ月待たなければなりません。

最終的には回収できる可能性はありますが,このような事態になると大変です。

 

3 競合している場合

 

同一の債務者の給与に対して複数の差押が入ることがあります。これを「競合」と言います。

競合した場合,第三債務者は法務局に供託しなければなりませんので,会社としても面倒です(民事執行法156条2項 執行供託(義務供託))。

この場合,債権者は会社から支払ってもらうのではなく,配当手続によって支払ってもらうこととなり,最終的には法務局から払い渡してもらうことになります。

また,何より困るのが競合しているということは取り分が少なくなるということです。つまり,上記の例で言えば毎月5万円ずつ回収できたものが,他の債権者と分けることになりますので,毎月2~3万円ずつしか回収できないことになってしまいます。

競合しているかどうかは勤務先の会社から送られてくる「陳述書」という書類に記載されているため,この書類が届いた時はいつもドキドキです。

 

 

このように給与を差し押さえてもなかなかすぐに回収することができないのですが,それでも預貯金等の差し押さえよりは回収可能性は高いので,今後も給与の差し押さえは生命線だと思います。

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10月 11 2018

【毎年恒例】会社が知らないうちに無くなってしまうかもしれません

去年も同様の記事を書いておりますが,重要なことなので今年も記載しておきます。

 

 

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株式会社は12年以上,一般社団(財団)法人は5年以上,何も登記をせずに放置すると消えてしまう可能性があります。

株式会社の場合は,取締役等の役員の任期が最長で10年と定められており,かつ,役員変更等があったときから2週間以内に登記申請をしなければならないこととなっております。同様に,一般社団法人等については,任期は2年となっております。

とすると,少し余裕をみて株式会社であれば12年一般社団法人等であれば5年もの間,何も登記がされていないとなると会社として存続していない可能性が高くなるため,強制的に会社が解散されてしまうこととなっております。なお,あくまで株式会社及び一般社団法人等に限った話ですので,(特例)有限会社,合同会社,合名会社,合資会社等,株式会社や一般社団法人等以外の会社や法人に関してはまったく関係ありません。というのは,これらの会社は任期を定めなくても良いこととなっているため,会社が運営されていても20年以上,登記がされないことも十分にあり得るためです。

 

いつ解散させられてしまうのか

この強制的な解散は,随時行っているものではなく,年に1回公告をしたうえで毎年行っております。この公告が本日(10月11日)であり,2ヶ月後に強制的に解散させられることになります。

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対象となっている場合はどうすれば良いのか

 

もし上記の条件に当てはまる場合で,かつ会社を存続させたい場合は管轄の法務局に対して「まだ事業を廃止していない」旨の届出を出すか,何らかの登記申請をすれば会社がまだ存続していることが分かりますので勝手に解散させられることはありません。

なお,仮に解散させられたとしても,事後的に「会社継続」の登記を行うことで復活させることもできますが,その分の登記費用がかかってしまいますので,対象になっている場合は早急に手続を行った方が良いかと思います。

ちなみに,下記の法務省のリンクによれば,平成29年度は18146社が解散となったようです。そうなる前にお手続きをお願いいたします。

 

→ 平成30年度の休眠会社等の整理作業(みなし解散)について(法務省)

→ 休眠会社・休眠一般法人の整理作業の実施について(法務省)

→ 官報公告(すぐに見られなくなります)


9月 05 2018

主文に記載されている「訴訟費用」,「仮執行宣言」とは?

貸金請求や明渡請求等で訴訟をして勝訴した場合,「被告は,原告に対して100万円を支払え」,「被告は,原告に対して,別紙物件目録記載の建物を明け渡せ」など,原告が求める内容が主文に記載されます。原告の請求した内容と主文が一致している場合,原告の勝訴ということになります。

ところで,主文にはこういった原告のメインの請求のみではなく,他のこともいくつか書いてあります。この点についてのご質問をいただくことがあるため,今日はこの点についてまとめておきたいと思います。

 

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主文とは

そもそも「主文」とは,訴えに関する裁判所の結論部分を言います。上記のとおり,「100万円を支払え」,「建物を明け渡せ」などになります。

被告が100万円を支払わなければならない理由(例えば,「100万円を借りていたのに返済していない」,「交通事故によって100万円の損害が生じている」など)や建物を明け渡さなければならない理由(例えば,「家賃を3ヶ月滞納して契約が解除された」,「権原もないのに不法占有している」など)については,「事実及び理由」や「理由の要旨」という欄に記載されます。

具体的には下記のような感じです。

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訴訟費用とは

上記をご覧いただくと,第2項に「訴訟費用は,被告の負担とする。」という記載があります。

これをご覧になって,「弁護士や司法書士の費用も被告に支払ってもらえることですか?」というご質問をいただくことがあります。

ここでいう訴訟費用とは,「訴訟手続を行う上で支出された費用であって民事訴訟費用等に関する法律という法律の中に定められた範囲のもの」をいいます。

具体的には,申立て(訴え提起)のときに収入印紙を貼って支払う手数料,裁判書類の送達のための郵券などが有名ですが,それ以外にも当事者や代理人が出頭するための日当交通費宿泊費,外国語で書かれた文書の翻訳料なども訴訟費用に含まれます(同法第2条)。

ところが,この中に代理人(弁護士や司法書士)の報酬は入っていませんので,「訴訟費用」には含まれないということになります。

 

ちなみに,手数料(収入印紙)や郵券はそのまま使った額になるので良いのですが,実際の支出額と訴訟費用として認められる金額が異なる場合が結構あります。

例えば,交通費(旅費)に関しては,住所地を管轄する簡易裁判所から出廷した裁判所を管轄する簡易裁判所の移動にかかる費用となっており,それが同一の場合は一律300円となっております。

具体的には,名東区の方が名古屋簡易裁判所に出廷した場合,住所地も出廷した裁判所もともに管轄する裁判所は名古屋簡易裁判所であるため,実際には1000円以上かかったとしても一律300円しか認められませんし,もし住所地から裁判所まで500メートル以内であれば0円となっております(民事訴訟費用等に関する規則第2条)。また,当事者等が出廷した場合,日当が支払われますが,これも3950円しか出ず,仕事を休んだ方の給料相当額が出る訳でもありません。

 

それでも,支払われないよりは支払ってもらった方が良いため,勝訴した場合には請求した方が良いと思います。

なお,判決後に相手が任意に支払ってくれるのであれば問題ないのですが,そうでない場合は,訴訟費用額確定処分の申立てをしたうえで,強制執行にて回収することになります。

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仮執行宣言とは

判決に基づき強制執行を行うためには,原則として判決が確定していなければなりません。というのは,日本の裁判は三審制となっており,第1審で原告勝訴の判決がなされたとしても,控訴や上告によって覆ることがあるためです。ですので,判決が出た後に控訴・上告期間が満了したり,第三審の判決が出ることによって判決は確定し,強制執行に進むことができます。

しかしながら,訴えを起こした原告側としては第1審で勝訴判決が出たのであればすぐに支払ってもらいたいと思うのが当然ですし,ある意味三審制を悪用して,被告側が無意味に時間稼ぎをする可能性も否定できません。そこで,判決が確定していなくても強制執行を認めることがあり,これを「仮執行宣言」と呼んでいます。

あくまで「仮に」執行を認めるだけですので,強制執行で回収した後に,控訴や上告で結論が変わった場合には受領した金銭等を被告に返却しなければならないことになっています。また,お金で解決できるもののみに仮執行宣言は認められていますので,建物の明渡や登記の請求などには仮執行宣言は認められていません。

さらに,仮執行宣言は原告側の便宜のために認められているに過ぎませんので,仮執行宣言が付されたからと言って,必ず確定前に強制執行をしなければならないわけではありません。

 

以上,あまり取り上げられることが少ない,訴訟費用と仮執行宣言のお話しでした。

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8月 08 2018

公示送達が無効に!

公示送達が無効になるという興味深い事件がありましたので,記事から分かる範囲で解説し,まとめておきたいと思います。

 

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公示送達とは

 

公示送達については何度か触れておりますので,詳細については,こちらをご覧いただければと思います。

→ 想いよ届け!【書類の送達】(平成25年8月29日)

→ 公示送達の訴訟(平成26年2月14日)

→ 付郵便送達と公示送達(平成30年4月25日)

 

すごく簡単にまとめると,

(1)相手方(被告)が行方不明で裁判に関する書類が届かない

(2)裁判所の掲示板に呼出状を貼り,2週間経過すると相手に届いたことになる

(3)付郵便送達と異なり勝訴するためには証拠が必要

というものです。

 

相手の住所が分からないと裁判ができないとなると訴える側(原告)にとって酷な結果になってしまいますので,相手(被告)が行方不明である場合にはやむを得ない手続かと思いますし,裁判所としてもしっかり証拠調べをしたうえで判決を出しますので,必ずしも公示送達だからと言って原告勝訴になるわけではなく,被告に酷すぎる結果になるとも限りません。

もっとも,訴訟を提起する以上,証拠があることがほとんどですので,現実的にはほぼ原告が勝訴するかと思います。

 

今回の事件では

本日,こんな事件が報道されました。

 

→ 11年前の確定判決、異例の取り消し…東京高裁(読売)

 

以下,記事の一部を引用いたします(青字部分)。

2007年8月に確定していた民事訴訟の1審判決を取り消していたことがわかった。1審の裁判所が、被告の住所が判明しているにもかかわらず訴状を郵送せず、提訴されたことを掲示板に貼り出す「公示送達」の手続きを経て審理に入っていたことが問題視された。

(中略)

民事訴訟は、訴状が被告の手元に届いた段階で始まるとされ、送達先は原告側が確認する必要がある。男性が女性の住所地を調べたところ、表札もなく、居住が確認できなかったため、「女性は無断で引っ越した」と判断。同年6月、同区役所から取得した女性の住民票(除票)を同支部に提出し、公示送達を申し立てた。

除票には女性の転居先の住所が記載されていたが、同支部はこれを見落として男性の申し立てを認め、訴状が提出されたことを示す書面を敷地内の掲示板に貼り出した上で、同年7月に第1回口頭弁論を開いた。女性が出頭しないまま、同支部は男性の請求を認める判決を言い渡し、同年8月に確定した。

<引用終わり>

 

今回の事件では,公示送達が無効と判断されていますが,これは完全に裁判所のミスかと思われます。

記事によると,原告の男性は弁護士さんに依頼せず本人訴訟で進めています。原告は被告の住所を調べたが本人の居住が確認できず,除票を提出したうえで公示送達の申立てをしたそうです。

私どもがご依頼をお受けした場合も同様の状況にはよく遭遇します。この場合,裁判所から被告の住所の調査を指示されるため,近隣住民の方や管理会社などにお話しを伺ったり,夜に行って電気が付いていないかなどを確認します。この調査をする場所は基本的には住民票の場所であるため住民票を取得しますし,仮に転居しているのであれば除票が発行され,除票に記載されている転居先を調査することになります。

今回の記事によれば,除票に転居先の住所が記載されているとのことですので,私であれば当然ながら転居先の調査を行いますが,原告は本人訴訟であったため除票の記載にはあまり詳しくなかったものと思われます。

したがって,公示送達の申立てを受けた裁判所が原告男性に指示をして,転居先の住所を調査させるべきだったにも関わらず,それをしないまま公示送達をしてしまっているので無効という判断になっているようです。

 

具体的な手続

 

詳細が書かれていないため推測になりますが,被告の女性はもともとの裁判に対して控訴していると思われます。

というのは,控訴は判決を受け取ってから2週間以内に申し立てなければなりませんが,公示送達での送達は無効であるため,被告女性は未だ適正な送達で判決書を受け取っていない状況にあります。したがって,いつまで経っても2週間は経過しないことになり,控訴ができるのだと思います。

そして,当該控訴は有効な控訴として扱われ,今回の判決に至っています。

また,最近原告が提訴した訴訟については,恐らく二重起訴の禁止に該当し,却下されることになるのではないかと思われます(民事訴訟法142条)。

 

消滅時効はどうなるのか

 

上記のとおり私としては裁判所のミスであるため原告男性は悪くありません。ただ,すでに時効期間である10年が経過していますがこれはどうなるのでしょうか。

この点,消滅時効は訴え提起の時に中断することになっています(民法147条1号)。本件訴訟は未だもって係属中となりますので,時効も中断したままということになります。

また,東京高裁はさいたま地裁の判決を取り消して,さいたま地裁に差し戻しています。ということは,結局のところ改めて1審の審理が始まるのであり,必ずしも被告である女性が勝つとは限りませんので,原告がしっかり立証すれば改めて原告勝訴の判決がなされることは考えられます。

 

このような事件はなかなか無いのですが,上記のとおり私としては頻繁に公示送達の申立てを行っておりますので,今後もしっかり調査をしなければならないと改めて肝に銘じておきたいと思います。

 

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7月 25 2018

二段の推定

「二段の推定」というのは,民事訴訟における書類の作成に関する論点であり,民事訴訟法の勉強をすると出てくるテーマなのですが,先日,実際にこの点が争点になった訴訟がありましたので,今後の備忘も兼ねてまとめておきたいと思います。

 

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その書類は真意に沿って作成されたもの?

 

今はインターネット社会であるため,通販などであればクリック一つで物が買えてしまうため,契約書等の書類に署名をしたり押印することはありません。また,コンビニでの買い物や自動販売機での購入など,必ずしも契約する際に書類に署名等をするわけではありません

しかしながら,不動産の売買だったり,住宅ローンの契約だったり,大きなお金が動く契約に関しては,やはり契約書に署名し,実印を押印することがあろうかと思います。

何もトラブルがなければ契約書が問題になることはないのですが,契約後に何らかの問題が起こった時には,その契約書の内容によって処理されることとなりますが,その前提としてその時に作成された契約書が偽造されたものではなく当事者が正式に作成したものでなければなりません。

と,言葉で説明するだけだと簡単なのですが,この「偽造されたものではなく当事者によって正式に作成された書面である」ということを証明するのは実はなかなか難しいです。

例えば,筆跡が似ているなどある程度は推定できるかと思いますが,筆跡を似せるプロが書いた偽物かもしれません。また,契約書に署名等をするときの状況を録画するということも考えられますが,今の技術だとそれすらも編集などでどうにかできてしまいそうです。さらに,印鑑に至っては誰が押印しても同じ印影となりますので,ますます本人が関与したのかどうか分からないということも考えられます。

 

このように,「偽造されたものではなく正式に作成された書面である」ということを確定させるのは実際のところは難しいのですが,すべての取引においてこれを言い出すと社会が回っていかないのもまた事実です。

そこで,法律ではある程度画一的に判断することとなっています。

 

民事訴訟法の規定と事実上の推定

 

文書が真正に成立(作成)されたかどうかに関する条文としては以下のものがあります。

民事訴訟法228条4項 → 「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」

 

ここで言うところの「署名又は押印」は,当然ながら本人の意思に基づいてなされたものでなければなりません。

署名の場合は,自分の手で書いているので本人の意思が無いということは考えにくいのですが,押印の場合は,すでに名前が印字してある(記名がある)契約書に第三者が勝手に押印することということも考えられ,このような場合には「本人の意思に基づいた」とは言えません。したがって,押印については,ご本人が押印したか,ご本人の了承のもと第三者が押印していなければならず,書類が本物(真正に成立した)だと主張する人は,本人の意思に基づいて押印されたことを立証しなければならないのですが,現実的には大変です。

 

ところが,判例により,押印されている印鑑の印影が本人の印鑑のものである場合には,本人の意思に基づいて押印されたものであると推定されることになっています(最判昭和39年5月12日)。

 

以上により,本人の印影が捺印がされた書類については,次の二段階によって真正に成立したものと推定されることになります。

 

一段目

・本人の印鑑が押印してある → 本人の意思のもとに押印されたものと推定する。

 

二段目

・本人の意思のもとに押印された書類がある → 民事訴訟法228条4項の規定により,文書が真正に作成されたものであると推定される。

 

となり,結果としては,本人の印鑑が押印してあれば「偽造されたものではなく正式に作成された書面である」という推定を受けることになります。

なお,「本人の印鑑である」ということを確実かつ容易に立証する方法は,実印+印鑑証明書のセットです。これにより役所が本人の印鑑であることを証明してくれますが,仮に認印だったとしても,基本的には本人が押印したものであると推定してくれます。

 

これはある意味恐ろしい話で,例え認印だとしても,ご自身がいつも使っている印鑑を盗まれてしまった場合,自身のまったく関知しないところで契約書に押印されているかもしれません。

もっとも,あくまで法律上の規定は「推定する」となっているため,反証を出すことで覆すことができます。例えば,契約書に署名等をしたとされる日は海外にいたことをパスポートなどで証明したり,まさに筆跡鑑定でご自身の字ではないことを立証することも考えられます。

とはいえ,あらぬ紛争に巻き込まれかねませんので,印鑑,特に実印については大切に保管されますようお気を付けください。

 

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6月 04 2018

相続人に対する明渡及び賃料請求

先日,相続人に対する未払い賃料及び明渡しの請求手続が終わりました。通常,明渡しと言えば賃借人の方が賃料を滞納してトラブルになるケースが多いのですが,賃借人が亡くなってしまい,そのまま賃料が未払いとなってトラブルになるケースもあります。

件数としては多くありませんが,相続人に対する明渡しもそれなりにありますので,今日はこの点についてまとめてみたいと思います。

 

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1 賃借人(入居者)が亡くなっても当然に賃貸借契約は消滅しない

 

人が亡くなると,亡くなった方の財産や負債は相続人が相続することとなります。また,一部の例外を除き,契約関係や地位についても相続することとなります。

一部の例外とは「一身専属権」と呼ばれるもので,扶養請求権や雇用契約の地位などいくつかありますが,一番わかりやすいのは運転免許や医師などの資格関係だと思います。運転免許を持っている方が亡くなってもその相続人である子どもが運転できることにはなりませんし,医師の子どもが手術できるようにはならないですよね。

 

このような例外を除いたその他の権利,義務,地位などはすべて相続の対象となります。具体的には,今回のようなアパートの賃借人(権利的に言えば「賃借権」)の地位は相続の対象になりますし,不動産の買主や売主といった地位についても相続の対象になりますし,保証人の地位も相続の対象になります。

もし,賃借権が相続の対象にならないとすると,例えば夫名義で借りていたアパートについて,夫が亡くなってしまった場合,妻や子どもは何も契約がないのにアパートに住んでいることになってしまうので出ていかなければならないことになってしまいおかしなことになってしまいます。

 

といことで,アパートの賃借人が亡くなっても賃借権は相続人に承継されることになり,賃貸借契約の解除事由(家賃の滞納や無断転貸,用法違反など)が無ければ相続人に退去を求めることはできないこととなります。

 

2 相続人全員を探し出す必要があります

 

さて,賃借権が相続されるとして,大家さんとしては誰と話をすれば良いのでしょうか。

この点,民法及び最高裁判決により,賃貸借契約を継続するのか終了するのかについては原則として相続人全員と話し合う必要があるとされています(民法544条1項最判昭和36年12月22日)。したがって,明渡しを請求するためには賃借人の相続人を全員探し出さなければなりません。具体的には,亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本等を取得して調査する必要があり,相続関係によっては亡くなった方の両親の出生から死亡まで取得しなければならないこともあるため膨大な量の戸籍謄本等が必要になるケースもあります。そこまで相続関係がややこしくなってしまうと,専門家の力を借りないと相続人を見つけ出すのは難しいかもしれません。

なお,例外としては,相続放棄をされている方は関係ありませんし,遺産分割により特定の相続人が賃借権を相続することになっているのであればその方とのみ話し合えば良いということになります。

 

3 賃料等については場合分けをして請求

 

賃借人が生前滞納していた賃料債務については相続人に対して請求することになりますし,賃借人が亡くなったあとも部屋が明渡されていないのであればその分の家賃も相続人に対して請求することになります。

一見すると同じような感じですが,法的には生前の賃料と死亡後(相続発生後)の賃料は分けて考える必要があります。

 

(1)生前の滞納賃料

賃借人が亡くなるまでに生じている賃料については,相続人が相続することになる訳ですが,金銭債務のように単純に割れるものを可分債務(可分債権)と呼び,相続人が法定相続分に応じて分割して相続することになります。

例えば,生前の滞納賃料が20万円であり,相続人が賃借人の妻と子ども2名だった場合には,妻が10万円の負債を,子どもが各5万円ずつの負債を相続することになります。

 

(2)相続発生後の賃料

相続発生後の賃料も金銭債務であるため割れるような感じがしますが,そもそも賃借権というのは単純に分数で割れるものではありません。上記の例でいえば,賃借権全体として,半分を妻が,子どもが残りを相続するのであり,各相続人はすべてを利用することが可能です。決して,「妻が寝室とキッチンを,子どもがリビングとトイレを相続する。」というように分割されるものではありません。このように単純に割れないものを不可分債務(不可分債権)と呼び,賃借権という不可分債権から生じる債務については不可分債務になると考えられています。

そして,不可分債務は基本的には連帯債務と同じです(民法430条)。

ということで,相続発生後の賃料に対して,相続人全員に対して全額請求できることになります。

 

(3)賃料相当損害金

純粋な賃料ではありませんが,相続発生後に賃貸借契約が解除されたにもかかわらず明渡がされない場合は,賃料と同額(場合によってはそれ以上)の金額を損害金として請求することができます。

この損害金についても不可分債務であり,(2)と同様,相続人全員に全額請求できることになります。

 

4 実際の事例

先日無事完了した事例を基に具体例を記載いたします。ただし,事件の特定を防止するためにフィクションが入っております。

 

(1)明渡しのご相談

大家さんが賃借人が亡くなったという連絡を受け,相続人のうちの1名に対して,「もし今後誰も利用しないのであれば室内の荷物などを搬出してほしい。また,半年程度の家賃の滞納があるのでこれも支払ってほしい」旨の話をしたそうです。しかし,相続人はのらりくらりと話を進展させず,相続発生後の家賃はもちろんのこと,生前の滞納家賃についても支払いがありませんでしたので当事務所にご依頼がありました。

 

(2)相続人の調査

上記のとおり,生前の滞納賃料については法定相続分で分割して請求しなければなりませんし,契約の解除を進めるためには相続人全員を探し出さなければなりませんでしたので戸籍謄本等の調査を行いました。

 

(3)相続人に対する請求

調査の結果判明した相続人に対して,未払い賃料の請求及び賃料の支払いがない場合は契約を解除する旨の通知を行いました。この通知が届かないケースが結構ある中,相続人全員に無事配達されました。

 

(4)相続人との交渉

相続人の代表の方より連絡があったことから交渉を行いましたが,「自分たちは契約当事者ではないから1円も支払うつもりはない」,「家具が残っていたとしても人は住んでいないのだから明渡しは完了している」など,無理筋の主張を繰り返されて一向に話が進まず,残念ながら交渉で解決することはできませんでした

 

(5)賃料の支払い及び明渡しを求める訴訟提起

相続人全員に対して賃料及び明け渡しを求める訴訟を提起しました。判決や強制執行までいくと時間も費用もかかりますので,訴訟を提起したとしてもできる限り和解で解決したいと考えていました。また,相続人全員と交渉するのは大変なので,できれば弁護士や司法書士を代理人として選任してもらえると助かるなぁなどと考えていたところ,本当に相手に代理人が選任されたため,代理人と交渉をすればよくなりました。

 

(6)和解成立

相続人の代理人と交渉を行ったところ,こちらが訴訟を提起した後に室内の動産等は搬出が終わっており,多少の減額したものの滞納賃料についても一括で支払う内容で合意しました。

 

(7)明渡しの確認と金銭の授受

相続人の代理人とともに物件の明渡しが完了していることを確認し,裁判所において未払い賃料を現金で受領して無事和解成立となりました。

 

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あくまで私の経験上だけでの話ですが,賃料が未払いとなって明渡しを請求する場合,そもそもお金がないから未払いとなっているため,裁判になってもなかなか未払い賃料は回収できません。

しかし,相続人に対する請求の場合は,頭数が増えるということもあり回収率はかなり高いと思います。

ということで,入居者が亡くなった場合の退去についてお困りの際にはぜひご相談ください。

 

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