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8月 08 2018

公示送達が無効に!

公示送達が無効になるという興味深い事件がありましたので,記事から分かる範囲で解説し,まとめておきたいと思います。

 

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公示送達とは

 

公示送達については何度か触れておりますので,詳細については,こちらをご覧いただければと思います。

→ 想いよ届け!【書類の送達】(平成25年8月29日)

→ 公示送達の訴訟(平成26年2月14日)

→ 付郵便送達と公示送達(平成30年4月25日)

 

すごく簡単にまとめると,

(1)相手方(被告)が行方不明で裁判に関する書類が届かない

(2)裁判所の掲示板に呼出状を貼り,2週間経過すると相手に届いたことになる

(3)付郵便送達と異なり勝訴するためには証拠が必要

というものです。

 

相手の住所が分からないと裁判ができないとなると訴える側(原告)にとって酷な結果になってしまいますので,相手(被告)が行方不明である場合にはやむを得ない手続かと思いますし,裁判所としてもしっかり証拠調べをしたうえで判決を出しますので,必ずしも公示送達だからと言って原告勝訴になるわけではなく,被告に酷すぎる結果になるとも限りません。

もっとも,訴訟を提起する以上,証拠があることがほとんどですので,現実的にはほぼ原告が勝訴するかと思います。

 

今回の事件では

本日,こんな事件が報道されました。

 

→ 11年前の確定判決、異例の取り消し…東京高裁(読売)

 

以下,記事の一部を引用いたします(青字部分)。

2007年8月に確定していた民事訴訟の1審判決を取り消していたことがわかった。1審の裁判所が、被告の住所が判明しているにもかかわらず訴状を郵送せず、提訴されたことを掲示板に貼り出す「公示送達」の手続きを経て審理に入っていたことが問題視された。

(中略)

民事訴訟は、訴状が被告の手元に届いた段階で始まるとされ、送達先は原告側が確認する必要がある。男性が女性の住所地を調べたところ、表札もなく、居住が確認できなかったため、「女性は無断で引っ越した」と判断。同年6月、同区役所から取得した女性の住民票(除票)を同支部に提出し、公示送達を申し立てた。

除票には女性の転居先の住所が記載されていたが、同支部はこれを見落として男性の申し立てを認め、訴状が提出されたことを示す書面を敷地内の掲示板に貼り出した上で、同年7月に第1回口頭弁論を開いた。女性が出頭しないまま、同支部は男性の請求を認める判決を言い渡し、同年8月に確定した。

<引用終わり>

 

今回の事件では,公示送達が無効と判断されていますが,これは完全に裁判所のミスかと思われます。

記事によると,原告の男性は弁護士さんに依頼せず本人訴訟で進めています。原告は被告の住所を調べたが本人の居住が確認できず,除票を提出したうえで公示送達の申立てをしたそうです。

私どもがご依頼をお受けした場合も同様の状況にはよく遭遇します。この場合,裁判所から被告の住所の調査を指示されるため,近隣住民の方や管理会社などにお話しを伺ったり,夜に行って電気が付いていないかなどを確認します。この調査をする場所は基本的には住民票の場所であるため住民票を取得しますし,仮に転居しているのであれば除票が発行され,除票に記載されている転居先を調査することになります。

今回の記事によれば,除票に転居先の住所が記載されているとのことですので,私であれば当然ながら転居先の調査を行いますが,原告は本人訴訟であったため除票の記載にはあまり詳しくなかったものと思われます。

したがって,公示送達の申立てを受けた裁判所が原告男性に指示をして,転居先の住所を調査させるべきだったにも関わらず,それをしないまま公示送達をしてしまっているので無効という判断になっているようです。

 

具体的な手続

 

詳細が書かれていないため推測になりますが,被告の女性はもともとの裁判に対して控訴していると思われます。

というのは,控訴は判決を受け取ってから2週間以内に申し立てなければなりませんが,公示送達での送達は無効であるため,被告女性は未だ適正な送達で判決書を受け取っていない状況にあります。したがって,いつまで経っても2週間は経過しないことになり,控訴ができるのだと思います。

そして,当該控訴は有効な控訴として扱われ,今回の判決に至っています。

また,最近原告が提訴した訴訟については,恐らく二重起訴の禁止に該当し,却下されることになるのではないかと思われます(民事訴訟法142条)。

 

消滅時効はどうなるのか

 

上記のとおり私としては裁判所のミスであるため原告男性は悪くありません。ただ,すでに時効期間である10年が経過していますがこれはどうなるのでしょうか。

この点,消滅時効は訴え提起の時に中断することになっています(民法147条1号)。本件訴訟は未だもって係属中となりますので,時効も中断したままということになります。

また,東京高裁はさいたま地裁の判決を取り消して,さいたま地裁に差し戻しています。ということは,結局のところ改めて1審の審理が始まるのであり,必ずしも被告である女性が勝つとは限りませんので,原告がしっかり立証すれば改めて原告勝訴の判決がなされることは考えられます。

 

このような事件はなかなか無いのですが,上記のとおり私としては頻繁に公示送達の申立てを行っておりますので,今後もしっかり調査をしなければならないと改めて肝に銘じておきたいと思います。

 

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7月 25 2018

二段の推定

「二段の推定」というのは,民事訴訟における書類の作成に関する論点であり,民事訴訟法の勉強をすると出てくるテーマなのですが,先日,実際にこの点が争点になった訴訟がありましたので,今後の備忘も兼ねてまとめておきたいと思います。

 

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その書類は真意に沿って作成されたもの?

 

今はインターネット社会であるため,通販などであればクリック一つで物が買えてしまうため,契約書等の書類に署名をしたり押印することはありません。また,コンビニでの買い物や自動販売機での購入など,必ずしも契約する際に書類に署名等をするわけではありません

しかしながら,不動産の売買だったり,住宅ローンの契約だったり,大きなお金が動く契約に関しては,やはり契約書に署名し,実印を押印することがあろうかと思います。

何もトラブルがなければ契約書が問題になることはないのですが,契約後に何らかの問題が起こった時には,その契約書の内容によって処理されることとなりますが,その前提としてその時に作成された契約書が偽造されたものではなく当事者が正式に作成したものでなければなりません。

と,言葉で説明するだけだと簡単なのですが,この「偽造されたものではなく当事者によって正式に作成された書面である」ということを証明するのは実はなかなか難しいです。

例えば,筆跡が似ているなどある程度は推定できるかと思いますが,筆跡を似せるプロが書いた偽物かもしれません。また,契約書に署名等をするときの状況を録画するということも考えられますが,今の技術だとそれすらも編集などでどうにかできてしまいそうです。さらに,印鑑に至っては誰が押印しても同じ印影となりますので,ますます本人が関与したのかどうか分からないということも考えられます。

 

このように,「偽造されたものではなく正式に作成された書面である」ということを確定させるのは実際のところは難しいのですが,すべての取引においてこれを言い出すと社会が回っていかないのもまた事実です。

そこで,法律ではある程度画一的に判断することとなっています。

 

民事訴訟法の規定と事実上の推定

 

文書が真正に成立(作成)されたかどうかに関する条文としては以下のものがあります。

民事訴訟法228条4項 → 「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」

 

ここで言うところの「署名又は押印」は,当然ながら本人の意思に基づいてなされたものでなければなりません。

署名の場合は,自分の手で書いているので本人の意思が無いということは考えにくいのですが,押印の場合は,すでに名前が印字してある(記名がある)契約書に第三者が勝手に押印することということも考えられ,このような場合には「本人の意思に基づいた」とは言えません。したがって,押印については,ご本人が押印したか,ご本人の了承のもと第三者が押印していなければならず,書類が本物(真正に成立した)だと主張する人は,本人の意思に基づいて押印されたことを立証しなければならないのですが,現実的には大変です。

 

ところが,判例により,押印されている印鑑の印影が本人の印鑑のものである場合には,本人の意思に基づいて押印されたものであると推定されることになっています(最判昭和39年5月12日)。

 

以上により,本人の印影が捺印がされた書類については,次の二段階によって真正に成立したものと推定されることになります。

 

一段目

・本人の印鑑が押印してある → 本人の意思のもとに押印されたものと推定する。

 

二段目

・本人の意思のもとに押印された書類がある → 民事訴訟法228条4項の規定により,文書が真正に作成されたものであると推定される。

 

となり,結果としては,本人の印鑑が押印してあれば「偽造されたものではなく正式に作成された書面である」という推定を受けることになります。

なお,「本人の印鑑である」ということを確実かつ容易に立証する方法は,実印+印鑑証明書のセットです。これにより役所が本人の印鑑であることを証明してくれますが,仮に認印だったとしても,基本的には本人が押印したものであると推定してくれます。

 

これはある意味恐ろしい話で,例え認印だとしても,ご自身がいつも使っている印鑑を盗まれてしまった場合,自身のまったく関知しないところで契約書に押印されているかもしれません。

もっとも,あくまで法律上の規定は「推定する」となっているため,反証を出すことで覆すことができます。例えば,契約書に署名等をしたとされる日は海外にいたことをパスポートなどで証明したり,まさに筆跡鑑定でご自身の字ではないことを立証することも考えられます。

とはいえ,あらぬ紛争に巻き込まれかねませんので,印鑑,特に実印については大切に保管されますようお気を付けください。

 

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6月 04 2018

相続人に対する明渡及び賃料請求

先日,相続人に対する未払い賃料及び明渡しの請求手続が終わりました。通常,明渡しと言えば賃借人の方が賃料を滞納してトラブルになるケースが多いのですが,賃借人が亡くなってしまい,そのまま賃料が未払いとなってトラブルになるケースもあります。

件数としては多くありませんが,相続人に対する明渡しもそれなりにありますので,今日はこの点についてまとめてみたいと思います。

 

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1 賃借人(入居者)が亡くなっても当然に賃貸借契約は消滅しない

 

人が亡くなると,亡くなった方の財産や負債は相続人が相続することとなります。また,一部の例外を除き,契約関係や地位についても相続することとなります。

一部の例外とは「一身専属権」と呼ばれるもので,扶養請求権や雇用契約の地位などいくつかありますが,一番わかりやすいのは運転免許や医師などの資格関係だと思います。運転免許を持っている方が亡くなってもその相続人である子どもが運転できることにはなりませんし,医師の子どもが手術できるようにはならないですよね。

 

このような例外を除いたその他の権利,義務,地位などはすべて相続の対象となります。具体的には,今回のようなアパートの賃借人(権利的に言えば「賃借権」)の地位は相続の対象になりますし,不動産の買主や売主といった地位についても相続の対象になりますし,保証人の地位も相続の対象になります。

もし,賃借権が相続の対象にならないとすると,例えば夫名義で借りていたアパートについて,夫が亡くなってしまった場合,妻や子どもは何も契約がないのにアパートに住んでいることになってしまうので出ていかなければならないことになってしまいおかしなことになってしまいます。

 

といことで,アパートの賃借人が亡くなっても賃借権は相続人に承継されることになり,賃貸借契約の解除事由(家賃の滞納や無断転貸,用法違反など)が無ければ相続人に退去を求めることはできないこととなります。

 

2 相続人全員を探し出す必要があります

 

さて,賃借権が相続されるとして,大家さんとしては誰と話をすれば良いのでしょうか。

この点,民法及び最高裁判決により,賃貸借契約を継続するのか終了するのかについては原則として相続人全員と話し合う必要があるとされています(民法544条1項最判昭和36年12月22日)。したがって,明渡しを請求するためには賃借人の相続人を全員探し出さなければなりません。具体的には,亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本等を取得して調査する必要があり,相続関係によっては亡くなった方の両親の出生から死亡まで取得しなければならないこともあるため膨大な量の戸籍謄本等が必要になるケースもあります。そこまで相続関係がややこしくなってしまうと,専門家の力を借りないと相続人を見つけ出すのは難しいかもしれません。

なお,例外としては,相続放棄をされている方は関係ありませんし,遺産分割により特定の相続人が賃借権を相続することになっているのであればその方とのみ話し合えば良いということになります。

 

3 賃料等については場合分けをして請求

 

賃借人が生前滞納していた賃料債務については相続人に対して請求することになりますし,賃借人が亡くなったあとも部屋が明渡されていないのであればその分の家賃も相続人に対して請求することになります。

一見すると同じような感じですが,法的には生前の賃料と死亡後(相続発生後)の賃料は分けて考える必要があります。

 

(1)生前の滞納賃料

賃借人が亡くなるまでに生じている賃料については,相続人が相続することになる訳ですが,金銭債務のように単純に割れるものを可分債務(可分債権)と呼び,相続人が法定相続分に応じて分割して相続することになります。

例えば,生前の滞納賃料が20万円であり,相続人が賃借人の妻と子ども2名だった場合には,妻が10万円の負債を,子どもが各5万円ずつの負債を相続することになります。

 

(2)相続発生後の賃料

相続発生後の賃料も金銭債務であるため割れるような感じがしますが,そもそも賃借権というのは単純に分数で割れるものではありません。上記の例でいえば,賃借権全体として,半分を妻が,子どもが残りを相続するのであり,各相続人はすべてを利用することが可能です。決して,「妻が寝室とキッチンを,子どもがリビングとトイレを相続する。」というように分割されるものではありません。このように単純に割れないものを不可分債務(不可分債権)と呼び,賃借権という不可分債権から生じる債務については不可分債務になると考えられています。

そして,不可分債務は基本的には連帯債務と同じです(民法430条)。

ということで,相続発生後の賃料に対して,相続人全員に対して全額請求できることになります。

 

(3)賃料相当損害金

純粋な賃料ではありませんが,相続発生後に賃貸借契約が解除されたにもかかわらず明渡がされない場合は,賃料と同額(場合によってはそれ以上)の金額を損害金として請求することができます。

この損害金についても不可分債務であり,(2)と同様,相続人全員に全額請求できることになります。

 

4 実際の事例

先日無事完了した事例を基に具体例を記載いたします。ただし,事件の特定を防止するためにフィクションが入っております。

 

(1)明渡しのご相談

大家さんが賃借人が亡くなったという連絡を受け,相続人のうちの1名に対して,「もし今後誰も利用しないのであれば室内の荷物などを搬出してほしい。また,半年程度の家賃の滞納があるのでこれも支払ってほしい」旨の話をしたそうです。しかし,相続人はのらりくらりと話を進展させず,相続発生後の家賃はもちろんのこと,生前の滞納家賃についても支払いがありませんでしたので当事務所にご依頼がありました。

 

(2)相続人の調査

上記のとおり,生前の滞納賃料については法定相続分で分割して請求しなければなりませんし,契約の解除を進めるためには相続人全員を探し出さなければなりませんでしたので戸籍謄本等の調査を行いました。

 

(3)相続人に対する請求

調査の結果判明した相続人に対して,未払い賃料の請求及び賃料の支払いがない場合は契約を解除する旨の通知を行いました。この通知が届かないケースが結構ある中,相続人全員に無事配達されました。

 

(4)相続人との交渉

相続人の代表の方より連絡があったことから交渉を行いましたが,「自分たちは契約当事者ではないから1円も支払うつもりはない」,「家具が残っていたとしても人は住んでいないのだから明渡しは完了している」など,無理筋の主張を繰り返されて一向に話が進まず,残念ながら交渉で解決することはできませんでした

 

(5)賃料の支払い及び明渡しを求める訴訟提起

相続人全員に対して賃料及び明け渡しを求める訴訟を提起しました。判決や強制執行までいくと時間も費用もかかりますので,訴訟を提起したとしてもできる限り和解で解決したいと考えていました。また,相続人全員と交渉するのは大変なので,できれば弁護士や司法書士を代理人として選任してもらえると助かるなぁなどと考えていたところ,本当に相手に代理人が選任されたため,代理人と交渉をすればよくなりました。

 

(6)和解成立

相続人の代理人と交渉を行ったところ,こちらが訴訟を提起した後に室内の動産等は搬出が終わっており,多少の減額したものの滞納賃料についても一括で支払う内容で合意しました。

 

(7)明渡しの確認と金銭の授受

相続人の代理人とともに物件の明渡しが完了していることを確認し,裁判所において未払い賃料を現金で受領して無事和解成立となりました。

 

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あくまで私の経験上だけでの話ですが,賃料が未払いとなって明渡しを請求する場合,そもそもお金がないから未払いとなっているため,裁判になってもなかなか未払い賃料は回収できません。

しかし,相続人に対する請求の場合は,頭数が増えるということもあり回収率はかなり高いと思います。

ということで,入居者が亡くなった場合の退去についてお困りの際にはぜひご相談ください。

 

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5月 23 2018

建物明渡に関する和解で必ず入れておくべき条項

先日,家賃滞納の現場をたくさん見てきたという司法書士の記事がありました。

→ 家賃滞納「2千件」現場を見た司法書士「誰もが紙一重」寄り添う理由

 

過去に私が代理人として関与させていただいた件でも,入居者は70代の方で年金のみで生活されており,頼れる親族などもいなかったため,市役所の福祉課や民生委員,警察などに相談して,何とか次の生活の場を見つける努力を行いました。ただ,入居者自身が市役所等の助力をすべて拒否されてしまったため,残念ですが任意の明渡とはならずに強制執行となってしまいました。何をどうすれば正解だったのか分かりませんが,少なくとも私は大家さんの代理人であるため,やはり最終的には大家さんの利益となるべく動くしかなく難しい問題です。

 

このように任意に明け渡していただけない場合,最終的には訴訟を行ったうえで強制執行によって明渡してもらうことになってしまいますが,強制執行は大家さんにとっても入居者の方にとってもデメリットが大きいため,ギリギリまで和解を模索して任意に明け渡していただくべく交渉を行っています。

実際に,今月も訴訟を行い判決まで行きましたが,明渡しに関して話し合いが成立して任意の明渡で解決した事件がありました。ただ,それだけでは解決とはならず,後日紛争が再燃しても困るため,必ず和解書等の書面を作成することになります。

今回は,任意に明け渡していただくこととなった際に作成する和解書に必ず設けておくべき条項についてまとめたいと思います。

 

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未払い家賃の支払いに関するもの

家賃の未払いを理由に解除となることがほとんどであるため,未払いとなっている家賃の支払い方法を定めます。

 

1 未払いとなっている家賃等の総額を認める条項

訴訟を行っていればあまり関係ないのですが,訴訟を行う前だと,この条項を入れておくことで和解後に支払いがされなかったとしても金額に争いが無くなります

具体的には,

「乙(入居者)は,甲(大家さん)に対し,本件賃貸借契約に基づく未払賃料として,金○○○円の支払義務があることを認める

という内容になります。

 

2 未払賃料の支払方法

一括にしても分割にしても,和解の時点で未払い賃料が残っていれば,その支払方法を定めます。

多くの場合に分割となりますので,支払総額,毎回の支払額,支払期限(「毎月末日限り」など),支払方法(送金先の口座の情報など)を定めることになります。

 

3 遅れた場合の処理

分割払いとなった際に支払いが遅れた場合は,残金を一括で支払う旨の条項を入れます(期限の利益喪失条項)。

また,明渡しを求めるのではなく,未払い賃料と今後の賃料を支払うことを条件に賃貸借契約を継続する場合は,一度でも遅れたときは賃貸借契約が当然に解除となる条項も入れておきます。ただし,賃貸借契約の解除は簡単ではないため,この条項が入っていたとしても絶対に解除となるわけではありません。

 

明渡に関するもの

任意に明け渡してもらう場合,明渡の確認と部屋の中にある動産類の処分が重要です。

 

1 明渡の確認

すでに明渡が完了しているのであれば,「平成○年○月○日をもって明渡したことを確認する。」という条項となりますし,引っ越し作業などの猶予期間を経て明渡しがされる場合には,「平成○年○月○日をもって明渡す。」という条項が入ります。

というのは,たとえ賃貸借契約が法的に解除されていたとしても,入居者が居住し続けている以上,勝手に室内に入ることができません。もし勝手に入ってしまうと,刑事的には住居侵入罪刑法130条)に問われる可能性がありますし,民事的にも損害賠償請求民法709条)を受ける可能性があります。また,明渡したと思っていたのに,入居者の方がまた室内に戻ってくる可能性もゼロではありません。

このようなことを防ぐために,確実に入居者の方が明渡済みであることを確認する条項が必要となります。

 

2 室内にある動産の処理

基本的には明け渡してもらう際には室内にあるテレビやタンス,ベッドなどすべての動産は入居者の方に持って行ってもらうか処分してもらうかのどちらかになるのですが,現実問題としては室内に動産を放置したまま退去される方も多いです。この場合,明らかにゴミであれば勝手に処分しても問題ありませんが,そうでない場合に勝手に処分してしまうと損害賠償請求などをされる可能性も否定できません。

それに備えて,室内の動産の所有権を放棄または譲渡する条項と室内にある動産を処分しても損害賠償請求等の一切の請求をしない旨の条項を入れておきます。これが入ることで,大家さんが動産を自由に処分できることになりますので,エアコンなどの家電製品で使えるものは処分をせずにそのまま次の入居者の方に使っていただいても構いません。

 

3 処分費用

上記のとおり,大家さんが自由に処分できるとしても業者さんに依頼すればそれなりの処分費用がかかります。こちらについても,入居者に負担してもらうような条項を入れることが多いです。

そもそもお金がなくて滞納している方が多いため,処分費用を実際に回収できる可能性は高くありませんが,それでも入れないよりは入れておいた方が良い条項です。

 

以上から,任意で明け渡しの合意ができたとしても,必ず上記のような条項を入れた書面を作成し,互いに署名,捺印された方が,後日のトラブルを防止することができるかと思います。

 

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4月 25 2018

付郵便送達と公示送達

今週,建物明渡訴訟において,付郵便送達で送達が完了した事件について期日があり,即日結審・判決がありました。

当事務所がご依頼いただいた事件だけでの割合ですのであまり当てにならないのですが,訴訟になった際の送達について,問題なく送達ができる(相手が書類を受け取る)割合は5割程度であり,3~4割程度が付郵便送達,残る1~2割が公示送達という感じです。さらに,建物明渡に限れば問題なく届くのは3~4割であり,むしろ過半数が付郵便送達や公示送達になっています

ということで,今日は付郵便送達と公示送達に絞ってまとめてみたいと思います。

なお,全体的な送達についてはこちらをご覧ください。

書類の送達

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付郵便送達と公示送達の違い

 

(1)付郵便送達(書留郵便等に付する送達)

端的にいうと,相手が送達先に住んでいるにも関わらず,裁判所から郵便された書類を受け取らず,郵便局の保管期間内に受け取らなかったため裁判所に返送されてしまったような場合に行う送達手続です。

付郵便送達が認められると,裁判所が書類を発送したときに送達が完了した(相手に書類が届いた)とみなされます。発送した瞬間に相手方に届くわけがありませんし,再度相手が受け取らない可能性もありますので,現実的には相手に書類が届かないということも考えられますが,受け取れる状況にあったにもかかわらず相手方受け取らなかったということで,ある種のペナルティとして届いたことにされてしまう手続です。

もしこのような制度が無かったとすると,相手が故意に受け取らなければいつまで経っても裁判が始まることはなく,永遠に敗訴することがないことになってしまいますからね(書類の送達が完了しないと裁判は開始しないため。)。

 

付郵便送達の場合,裁判の期日に相手が出頭しなかった場合は,こちらの主張をすべて認めたものとされ(擬制自白),証拠調べをすることなくこちら側の勝訴となる可能性が極めて高いです。ただし,付郵便送達は,相手方が送達先に住んでおり,現実的に書類を受け取る可能性も十分ありますので,裁判所に出頭されて反論されるということもあり得ます。

 

 (2)公示送達

一方,公示送達は,相手が行方不明であるためどこに郵送して良いのか分からないような場合に行う送達手続です。この送達が認められると,裁判への呼出状が裁判所の掲示板に掲示され,2週間経過すると相手に届いたことになります

付郵便送達であれば,再度郵送されてきますので訴訟を起こされたことを知りうることとなりますが,公示送達の場合は,相手が裁判所の掲示板の前を通り,掲示板を見て自分の名前を発見して裁判所に問い合わせなければなりませんので,自身が訴訟を起こされていることを知る可能性はほぼありません

したがって,相手が裁判の期日に出頭することもあり得ないため,さすがにこれだけでこちら側の主張がすべて認められるという訳ではなく,証拠を提出したうえで裁判所に判断してもらうことになります。もっとも,証拠もなく訴訟をすることもまずありませんので,公示送達の場合でもこちら側の勝訴となる可能性が高いです。

 

(3)共通点と相違点

上記送達の共通点としては,ともに相手が書類を受け取らない状態にあるためやむを得ず行う手続ですので,最初からこれらの送達方法を選択することはできず,まずは通常の送達を試みて,相手に届かなかった場合に初めて検討することになります。なお,勤務先が分かっているようであれば,先に勤務先への送達を試みる必要があります。

 

相違点としては,相手が書類の送達を知りうる状態にあるかどうかになります。つまり,相手が裁判所からの書類が届いていることを知っているにもかかわらず受け取らない場合には付郵便送達を,相手が知る由もないような状態にある場合で,こちら側も相手の所在がまったく分からない場合に公示送達を行うことになります。

ですので,相手が行方不明なのに付郵便送達をすることはできませんし,相手の所在が分かってるのに公示送達をすることもできません。このような状況で万が一付郵便送達や公示送達がなされたとしても,後日無効と判断され,裁判の結果がすべてひっくり返る可能性があります。 

 

付郵便送達か公示送達かの判断

上記のとおり,どちらを選択するかの判断は,簡単に言うと相手の所在が分かっていれば付郵便送達,分からなければ公示送達となるわけですが,この判断はそれほど容易ではありません。

というのは,「相手が受け取らない」というのが,相手が単に不在にしていただけで受け取っていないだけなのか,すでに転居してしまっていて受け取ることが事実上不可能な状況にあるのか客観的には分からないことが多いためです。

とはいえ,最終的には判断しなければならず,概ね以下のような基準で判断をしています。

 

1 郵便局の返送理由

裁判所が相手の書類を送付したものの返送されてきてしまった場合は,返送の理由の付箋が貼ってあります。

この理由が,「保管期間経過」であれば,少なくとも郵便局としてはその場所に相手が住んでいるものと認識していると考えますので付郵便の方向で考えることになります。

他方,「転居先不明」,「宛所に尋ねあたらず」という付箋が貼られている場合,相手がその住所に住んでいないということになりますので,付郵便送達はできず,転居先を探すか公示送達によることになります。

 

2 住民票の調査

必ずしも住民票の住所地に居住しているわけではありませんが,送達が出来なかった後に改めて住民票を取得しても同じところに住民票がある場合には,現在も居住していると認められやすくなります。

 

3 現地での調査

(1)住所地に訪問

相手の住所地を訪ねて相手が居住していれば確実です。私の経験上,一度だけ相手に直接出会ったことがあり,話を聞くと検査入院で不在にしていたとのことでした。

 

(2)近隣の方への聞き込み

「最近相手を見かけていないか」,「いつも何時頃帰ってきているか」等の相手の状況を聞き出すことになります。ただし,プライバシーの観点からすべてをお話しすることができないため,なかなかご協力いただけないこともあります。

 

(3)自宅及び周辺の状況

表札,郵便受けの状況,電気メーター,昼夜の状況の変化などになります。

表札に相手の名前が書いていれば,居住している可能性がかなり高くなります。

郵便受けについては,郵便物が溜まっていれば住んでいない方向に考えますが,定期的に確認し,とある日に郵便物が無くなっているとなるとまだ住んでいると考えることができます。

電気メーターについては,室内にいれば大きくメーターが動きますし,待機電力でも動いていますので,メーターが動いていれば家電などが室内にあり,まだ住んでいると考える方向に考えます。また,建物の明け渡しの場合だと,大家さんから電気等の使用の有無を電力会社等に確認していただくこともあります。まったく電気や水道が使用されていないとなると,住んでいない可能性がかなり高くなります(もっとも,先日の裁判において,未払いで電気ガス水道がすべて止められている状況においても居住の調査を行って付郵便を行った事例があります。)。

昼夜の状況の変化については,洗濯物の有無や室内の灯りの有無などになります。洗濯物が取り込まれていたり,灯りが点いているようであれば住んでいる可能性がかなり高いです。

なお,建物の明け渡しの場合においては,電気等が止められて時間が経っている場合は,万が一のことが考えられるため警察官に室内に入って安否確認を行っていただくこともあります

 

4 管理会社への問い合わせ

相手が賃貸マンション等に住んでいる場合は,管理会社に問い合わせて回答をもらうことが考えられます。

通常,管理会社が契約者の氏名などの個人情報を教えてくれることはありませんが,当該部屋において,「最近契約の更新があった」,「退去があった」などの個人情報とまではいかないような情報は教えてくれることが多いです。

 

以上を総合的に判断して,居住していると判断できる場合には付郵便送達を,そうでない場合は公示送達によることになります。

なお,公示送達の場合には,さらに戸籍の付票や不在住証明書,不動産の登記事項証明書などを取得することもあります。

 

 

付郵便送達の注意点

1 現実に届く可能性がある発送で無ければならない。

調査により確実に住んでいることが判明したため付郵便送達を行ったものの,付郵便送達を行う直前に相手が逮捕・勾留などをされており,現実的に届く可能性がゼロであった場合には,例え裁判所がその事実を知らなかったとしても,付郵便送達は無効となります。

 

2 勤務先への付郵便送達はできない。

自宅は不明であるものの,勤務先は判明しており,勤務先に送付したが受け取らないような場合であっても,勤務先に対して付郵便送達をすることはできません。この場合は公示送達をしなければなりません。

 

3 期日が延期される可能性がある

通常の送達を試みた時点で訴訟の期日が決まっていますが,郵便局の保管期間や調査などで時間がかかりますので,もともと予定していた期日が迫っていることがあります。したがいまして,付郵便送達になる際には改めて期日が設定されることがあります。なお,過去の裁判例では,付郵便送達発送から当初予定していた期日までに郵便局の保管期間(1週間)程度の期間あれば期日を変更しなくても良いとされていましたが,間に合う場合でも実際には余裕をもって延期することが多いように思います。

 

公示送達の注意点

1 上訴等の可能性

相手の所在が分かっているのに公示送達を行った場合など,相手の責任によらない事由により公示送達になってしまっていた場合には,民事訴訟法97条の規定により,判決に対して上訴することができます。

 

2 擬制自白は成立しない

上記のとおり,公示送達の場合は立証しなければなりませんので,公示送達になったとしても,証拠が無いと敗訴する可能性があります。

 

 

ということで,こちら側の主張が法的に認められるかなどを争う前に,裁判が始まるかどうかというのが重要だったりします。

貸金請求等のお金の問題については,判決が出ても直ちに解決とはならないことが多いですが,建物の明渡しにおいては判決が得られればほぼ解決しますので,特に送達の可否は重要となります。

たまたまですが,今月に入り,立て続けに付郵便送達の調査が多かったのでまとめてみました。

 

 

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3月 12 2018

楽待(不動産投資新聞)さんからの建物明渡に関する取材

アパートや区分所有のマンションなどのいわゆる収益物件の検索サイトである「楽待」さんが運営する「不動産投資新聞」のコラムの記者さんから取材を受け,お話しした内容が先日記事になりました。

 

→ 家賃が支払われない…「3カ月」超ですべきこと

 

キャプチャ

 

 

こちらのブログに書いてあることと重複する点もありますが,賃貸経営をされるうえで役に立つ情報かと思いますので,お時間がございましたらご一読いただければと思います。

 

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3月 05 2018

差押えが禁止される財産

貸金等の請求をし,相手(債務者)が支払ってくれない場合,最終的には裁判等の法的手続によって支払いを求めることになります。

ただ,それでも支払ってくれない方もいますので,その場合は強制執行の申立てを行い,相手方の財産を差押えてお金に換えて回収することになります。 この強制執行ですが,実は債務者の財産であれば何でも差し押さえて良いという訳ではなく,差押が禁止される財産があります。また,差押えは認めるものの全部の差押えはできないという財産もあります。

今回は,このような差押禁止財産等ついてまとめたいと思います。 

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動産について 

 

動産とは,ざっくり言えば不動産以外で目に見えるものです。 具体的には,テレビ,冷蔵庫,時計,鞄,自動車,船舶などの物は当然のこと,現金も動産に含まれます。 この動産のうち,生活するのに必要な財産や宗教的,教育的配慮などにより以下のものの差し押さえが禁止されています(民事執行法131条)。

一 債務者等の生活に欠くことができない衣服、農具、家具、台所用具、畳及び建具
→ 具体的にはテレビやベッド,タンス,洋服などです。
ただし,テレビが2台ある場合は,そのうち1台は差押が可能だったり,高価なブランド鞄などは差押えが可能だったりします。 

 

二 債務者等の一月間の生活に必要な食料及び燃料
→お米や野菜といった食良品に加えて,暖房器具用の灯油やガソリンなどです。正直なところ,差押えたところで金銭的な価値はほとんどないと思います。 

 

三 標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭
→民事執行施行令第1条により66万円となっているため,66万円を超える現金については差押え可能です。 

 

四 主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物
五 主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採補又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物
六 技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)
→これらは,債務者が仕事をするうえで必要なものであるため,差押が禁止されています。 

 

七 実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの
八 仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物
九 債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿及びこれらに類する書類
十 債務者又はその親族が受けた勲章その他の名誉を表章する物
→宗教的配慮や関係者以外の者が持っていても意味がないためです。 

 

十一 債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具
→教育的な配慮です。 

 

十二 発明又は著作に係る物で、まだ公表していないもの
→精神的創作活動を保護するためです。 

 

十三 債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物
→本人が生活するために必要ですし,第三者が持っていても意味が無いからです。 

 

十四 建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品
→防災設備を外してしまうと危ないからです。 

 

以上から,動産については,実は差し押さえが禁止されているものが多いことから,ほとんどのケースで動産の差押えはできないこととなります。 

 

不動産について

 

住宅ローンの組む際に自宅を担保として差し入れるように,例え所有している不動産が生活の本拠となる自宅であっても差押えが禁止されることはありません。 恐らく,不動産で差し押さえが禁止されているのは,下記のケースのみだと思われます。 

 

宗教法人法第八十三条

宗教法人の所有に係るその礼拝の用に供する建物及びその敷地で、第七章第二節の定めるところにより礼拝の用に供する建物及びその敷地である旨の登記をしたものは、不動産の先取特権、抵当権又は質権の実行のためにする場合及び破産手続開始の決定があつた場合を除くほか、その登記後に原因を生じた私法上の金銭債権のために差し押さえることができない。 

 

端的に言えば,礼拝堂などの宗教施設は,担保に入れた場合を除いて差押えができないとされています。貸した相手が宗教法人でない限り関係ないということになります。 

 

債権について 

恐らく一番多い差押えは債権だと思います。 債権というものは,特定の人が特定の相手方に何らかの行為または不作為を要求する権利であり,差押えのシーンで関係あるのは,お金を支払ってもらえる権利かと思います。

最も分かりやすいのが,金融機関にある預金債権であり,債務者がサラリーマンとして働いていらっしゃる場合には勤務先への給料債権などになります。 

 

債権の場合は,債権の相手方(第三債務者)の行為を求める(預金の差し押さえであれば金融機関から支払ってもらう必要があり,給与であれば債務者の勤務先の総務部などと話をする必要が出てくるケースもあります。)ものであるため,債権があったとしても必ず回収できるものではありませんが,一般的には支払いを拒否する金融機関や勤務先は少ないため,高い確率で支払ってもらえます。 

 

債権のうち,債務者の生活の原資になるものについては,以下のように差押えが禁止されています(民事執行法151条)。 

 

民事執行法151条
次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。
一 債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権
二 給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権 
→ 1号は保険会社との契約による給付が該当するようですが,なかなか見たことがありません。実質的には2号がほとんどであり,端的にいえば給与ということになります。つまり,給与については,いわゆる手取り金額の25%しか差し押さえてはいけないことになっています。ただし,以下のとおり例外があります。 
① 手取給与が33万円を超える場合は,33万円を超える分は全額差押えが可能です。
② 差押えの原因となった債権が生活費や養育費等の場合は,その方の生活も守らなければなりませんので,50%の差押えが可能です。 

 

また,個別の法律によって差し押さえが禁止されている場合があります。すべてを記載することはできませんが,下記のような生活に必要な給付が該当します。
国民年金(国民年金法24条)
厚生年金(厚生年金法41条)
生活保護費(生活保護法58条)
児童手当(児童手当法第15条) 

 

上記の年金や手当等はそれ自体は差し押さえは禁止されますが,いったん支給されて現金や預貯金となった場合は他の現金や預貯金と区別がつかなくなりますので差し押さえが禁止されることはありません。したがって,給与や年金が支払われるであろう日にちを狙って預貯金の差押えの申立てをすることもあります。
なお,裁判所を通すことなく直接差押ができる役所等が,このような差押禁止を回避するために児童手当等を支給した直後に差し押さえるという事件があり,このような差押えは違法であると判示しています。しかし,一般市民である私どもは直接預貯金の差し押さえができるわけではなく,あくまで裁判所に申し立てたうえで裁判所に差し押さえてもらうことになりますので,違法と判断される可能性はかなり低いと思います(どこまで通用するか分かりませんが,明確に預貯金等の原資が年金であると識別できる場合は差し押さえできないとした裁判例があります(東京地裁平成15年5月28日判決)。)。

 

まとめ

 
以上のとおり,一番確実なのは,差押禁止になることがほとんどなく,財産的価値も高い不動産を差し押えることができれば回収できる可能性は高くなります(ただし,差押が成功すれば大部分は返ってくるものの裁判所に納める費用がかなり高額です・・・。)。しかし,不動産をお持ちの方はあまり多くなく,実際に回収できるのは預貯金や給与がほとんどだと思います。 
このうち,預貯金については,金融機関名及び支店名を特定することができ,差押えた時点で口座に預貯金が入っていれば,基本的には全額回収できます。なお,あくまで差し押さえた時点でのお金が回収できるのであり,その後にその口座に入ってくる預貯金まで差し押さえられるわけではありません。 
一方,給与については,勤務先が分かれば差し押さえができますが,基本的には25%しか差し押さえができません。ただし,給与については上記の預貯金と異なり,一度差し押さえが成功すればその後債務者が退職するまでは毎月回収することができますので安定的に回収できることになります。
どの方法が回収可能性が高いかは債務者の事情によるため一概には言えませんが,経験上は,不動産の差押えまで行けばほぼ間違いなく回収可能であり,次に可能性が高いのは給与ではないかと思います。
とはいえ,本当はこのような差し押さえに至ることなく回収できるのが一番良いんですけどね・・・。  


2月 28 2018

勤務先に立て替えたお金の回収

会社が取引先から売掛金を回収できないということは多々あり,当事務所でも売掛金の回収業務として会社からご依頼いただくことがあります。この場合,債権者は会社ですので個々の担当者の方が依頼者となるわけではありません

しかし,今回のご依頼は会社ではなく,個々の担当者が依頼者となる事件でした。

通常,担当者が取引先から売掛金が回収できない場合,社内評価としては良くない評価はされるかと思いますが,法的には取引先に代わって会社に立て替えて支払う義務はありません。ただ,現実的には会社から事実上強制されたり,社内評価が下がることを避けるために担当者が会社に内緒で自発的に立て替えて支払うということもあります。

この点,会社から強制された場合は,会社の対応が大問題ですので会社に対して立て替えた分を返すよう請求することも可能ですが,今後も勤務を続けたいということになると会社とコトを構えることは避けて,取引先に立て替え分を請求することが考えられます。

今回ご依頼いただいた件は,事実上会社に強制されたものの,会社と構える気はないということで取引先に立替金を支払うよう請求したケースでした。

 

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話し合いと和解

取引先に連絡をしたところ,立て替えてもらっていることは認めたうえで,一括での支払いが困難であることから半年程度の分割でお支払いいただくことで和解が成立いたしました。

しかし,初回の支払いは予定どおりされたものの,2回目以降は支払いが滞り,連絡も取れない状況になりました。

 

少額訴訟

初回の支払いがあったことで少額訴訟の上限額(60万円)を下回ることとなり,また上記の和解書という強力な証拠がありましたので少額訴訟を提起いたしました。

少額訴訟は原則として1回で終わりますので,難しい訴訟で無ければ少額訴訟という選択肢もあります。ただし,異議を出されてしまうと通常の訴訟に移行する分の時間がかかってしまいますので,異議を出される可能性が低いものに限って少額訴訟で行う必要があります。今回は,いったんは和解が成立しており,異議が出る可能性は低いと思いましたので少額訴訟で進めました。

 

再度の和解成立

少額訴訟の期日には被告(取引先)が出廷し,再度分割で支払うことで和解が成立いたしました。裁判上の和解が成立したことにより,もし支払いが止まったとしても強制執行により回収ができることとなります。訴訟提起前に取引先の財産を調査しており,価値はそれほど高くは無いものの無担保の不動産(自宅)があることを把握していましたので,支払いが滞ることはないだろうと考えて和解しました。

 

回収

和解成立後,当初は順調だったものの半年程度で返済が遅れるようになりましたが,最終的には強制執行を行うことなく無事回収ができました。

 

依頼者としては,会社に迷惑を掛けていませんので現在も同じ会社にお勤めですし,結果としては全額回収できていますので良かったと思います。

 

上記のとおり,本来であれば売掛金は会社が取り立てるものであって,担当者が責任を負うものではありません。しかしながら,現実的には担当者が立て替えることがあろうかと思いますので,そのような場合はご相談ください。

 

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1月 22 2018

夜のお仕事の方からの回収

男女問わず,夜のお仕事の方から金銭の回収をしてほしいというご依頼が多くあります。

夜のお仕事の方は,比較的頻繁に住所や勤務先が変わることがあるためなかなか全額の回収は難しいのですが,今回,元金,利息,遅延損害金,訴訟費用までキッチリ全額の回収ができましたので,まとめておきたいと思います。なお,事件の特定を避けるため多少フィクションが入っています

 

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事案の概要

 

夜の店にお勤めの女性に対して,男性が店内で少額の金銭を貸し付けたのが始まりでした。当事者間では何度も貸し借りが繰り返されており,当初は借用書などは無かったものの次第に大きな金額になったため,借用書を作成することを条件に貸し付けるようになりました。また,女性の免許証のコピーをとっており,本名や住所は把握していました。

しかし,女性がお店を辞めてしまい,電話やメール等での連絡がまったく取れなくなったということでご相談がありました。

 

交渉等の経緯

 

まずは,相手方の自宅に督促状を発送しました。すると,すぐに連絡があり,「一括では無理であるため分割で支払いたい」とのことでしたので和解書を作成して分割で支払ってもらっていました。

↓ 6か月

半年程度は問題なく支払っていただいていたのですが,少しずつ支払いが遅れるようになり,1年後にはまったく支払いが止まってしまいました。さらに,もともと聞いていた住所から転居されていました。

↓ 3か月

住民票の調査をしたところ,転居先が分かりましたので再度督促状を送りました。その後,連絡があり交渉をしたものの結局支払いがないためやむなく訴訟を提起しました。

↓ 2か月

訴訟の期日に相手方も出廷し,分割で支払う内容で和解が成立しました。裁判上の和解であるため,相手方が支払わなかった場合は強制執行が可能となることから,和解する条件として住所や勤務先等の情報を聞き出しました。なお,和解が成立しているので直接は関係ありませんが,仮に和解ができなかったとしても,すでに和解書を作っていたので勝訴することはほぼ間違いない状況でした。

↓ 約3年

分割にて訴訟費用や利息,年14%遅延損害金も含めて全額回収いたしました。ご依頼を受けて4年以上が経過していました。

 

もともとの元金は80万円弱でしたが,最終的には110万円近く回収しており,当事務所の報酬や裁判所に納めた実費などを差し引いても元金の9割以上はお返しできました

 

 

上記のとおり夜のお仕事の方は住所や勤務先が頻繁に変わるためなかなか全額の回収が難しいです。今回の相手方は私が把握しているだけでも4回転居し,勤務先も同じく4回は変わっているのですが,律儀にすべてを教えてくれる方でしたので最後まで回収できました。相手方の状況も踏まえてしっかり話をし,信頼関係のようなものが築けたことが大きかったと思います。

また,借用書及び免許証のコピーを取っていたのはかなり大きいです。

お金の貸し借りの部分はメールなどでも立証できることがあるのですが,借用書があればかなり有利となります。さらに,一般的な知人間のお金の貸し借りであればはなかなか無いのですが,夜のお仕事の場合は相手方の住所はもちろんのこと,お名前すら分からないというケースがあります。このような場合でも回収したことはありますが,かなり難易度が上がってしまいますので最低限の情報としてご住所やお名前は聞いておかれた方が良いかと思います。

正直なところ,夜のお仕事の方から全額回収するのは容易ではありませんが,現在進行形で同様のお仕事をされている複数の方から毎月回収していますので,まったくゼロで終わるということも無いかと思います。似たような状況の方がいらっしゃいましたら,ぜひご相談ください。

 

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1月 16 2018

書類が届かない場合の法的効果や対処など

ご依頼をお受けして,相手方に対して様々な書類を送付することがあります。

分かりやすいところだと,貸金や家賃を支払ってもらえないので督促の手紙を出したり,逆に債務者側だと債権者に対して消滅時効援用の通知書を出したりします。

また,話し合いでは解決せずに訴訟になった場合,裁判所から書類が相手方に送られます。

 

このように書類でのやり取りというのは結構ある訳ですが,相手に対してこちらの意思が届いたときに法律上の効果が生じる場合,本当にこちらの意思が相手に伝わっているのか(書類を相手方が読んでいるか),その前提として相手に書類が届いているのかというのは重要になります。

 

今日はこの点についてまとめてみたいと思います。

 

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通知が必要なもの

上記のとおり,相手方に対して何らかの通知を行うことがありますが,ご依頼をお受けした場合に必ずしもすべてにおいて通知しなければならないものではありません。

例えば,平成29年12月31日までに借金を全額返済するという内容でお金を貸した場合,本日時点ですでに期限は経過しておりますので,督促の通知をしなくてもいきなり貸金の返済を求める訴訟を起こすことは可能です。ただ,弁護士や司法書士といった代理人から督促を行うことですんなり支払ってくれることも多々ありますので,いきなり訴訟を提起することは少なく,まずは督促することが多いです。

 

一方,相手に対して通知を行うことによって完了したり,通知をすることが条件(要件)になっていることがあります。

 

通知によって解決するものの例としては,「時効の援用」です。

一定期間借金の返済をしていない場合,消滅時効の援用を行うことで借金が無くなります(民法167条)。この「援用」とは,時効の成立によって利益を受ける人が不利益を受ける人に対して,「時効の利益を受けます。」ということを伝えるものであり,これによって初めて時効の効果が生じることになります(民法145条)。援用は相手に伝われば良いので,直接会って口頭で伝えても,電話やLINEで伝えても,書面で伝えてもすべてにおいて効力が生じますが,後でトラブルになることを防ぐために書面で行うことがほとんどだと思います。

つまり,借金に関して時効が完成している場合は,相手方に通知が届けば借金の支払義務が無くなりますので,基本的にはそれで解決します(ただし,時効中断事由があるなど,解決しないケースもあります。)。

 

通知をすることが条件になっているものの例としては「履行遅滞による解除」です。

例えば,賃料が未払いになっていて賃貸借契約を解除しようとしても,いきなり契約の解除をすることはできず,「家賃が遅れているのでいついつまでに支払ってください。」という通知(催告)をしなければなりません民法541条)。それでも家賃が払われない場合に,初めて解除することができます(ただし,例外があります。)。

 

通知の方法

直接会って意思を通知できれば良いのですが,通常は相手方は離れた場所にいるため,手紙や電話で意思を伝えます。このとき,後にトラブルにならないよう電話よりは手紙を選択しますし,手紙も内容証明郵便など記録として残る方法で通知をします。もちろん,電話を録音することでトラブルを防ぐことができますが,もし訴訟になった時に録音したものを証拠にするのは大変(録音の内容を反訳する必要など)なので書面の方が良いと思います。

 

何をもって相手に意思が届いた(通知した)ことになるのか

相手方が離れたところにいる場合,法律では相手に通知が届けば良いということになっています(民法97条)。

つまり,手紙が相手の家に届けば,実際に手紙の封を切って読んで内容を理解することまでは必要ないということになります。ですので,普通郵便でも相手の家に届けば通知としては問題ないことになります。ただ,普通郵便だと実際に届いたかどうかの確認ができませんし,どのような内容が書いてある書面が届いているのかを証明することができないので,相手方に通知が届いたことを立証しなければならないときは,内容証明郵便(配達証明付き)で手紙を送ることになります。

 

では,内容証明を相手方が受け取らなかった場合はどうなるでしょうか。

この点,受け取らなかった理由によって結論が異なるとされております。

 

まず,相手方は自宅にいたものの受け取りを拒否した場合は,基本的には通知が届いたことになります

これは,相手方が手紙を読もうとすれば読める状況にあったわけですから,届いたことにしても相手方に酷ではありません。

 

一方,相手方が海外旅行などに出ており,不在だったため受け取れなかった場合は通知が届いたことにはなりません。現実的に相手方は内容を知ることはできないのですから,それで通知が届いたことにされるというのはさすがに酷です。ただし,毎日自宅には戻っており,不在通知が入っているにも関わらず敢えて再配達を依頼しなかったような場合には受領拒否と変わりませんので届いたことになる場合もあります(ケースバイケースです。)。

 

では,相手方の家族が受け取った場合はどうなるかというと,これは届いたことになります

家族が受け取っているのであれば,通常はは家族が相手方に知らせることができますので,実際に相手方が読んでいなくても酷ではありません。ただし,相手方が行方不明になっているなど,家族も相手方と連絡が取れないような場合には届いたことにはなりません。

 

配達できない場合の対処法

 

まず,相手方行方不明の場合は,現実的に知らせることは困難ですので,公示による意思表示民法98条),訴訟であれば公示送達によって進めることになります。

公示送達についてはこちら → 想いよ届け!

 

次に,受け取り拒否の場合は,届いたということで進めてもらえれば大丈夫です。

 

最後に,不在で返却された場合ですが,敢えて受領しないのか,仕事が忙しくて受領できていないのか分からないため,通常は特定記録でも内容証明郵便と同内容の書面を発送します。

特定記録とは,書面の内容は証明してくれませんが,送付先のポストに入れた日時は証明してくれるものです。これにより,内容証明郵便は受け取ってくれなくても,特定記録は勝手に投函しますので,相手方が海外旅行等などで長期の留守で無い限り相手方に通知されたことになります。もちろん,配達されていても,相手方が海外旅行や服役などの理由で実際に受け取ることが不可能である場合は通知の効力は生じませんが,それは相手方が主張すべき問題ですので,とりあえずは通知は完了しているものとして進めます。

実際に,内容証明郵便を受け取らない方はかなり多いですが,受領拒否はほとんどなく,不在が大多数を占めます。したがって,訴訟になったときには特定記録の配達日時の記録を証拠として提出することが多々ありますが,少なくとも当事務所においてはこれで問題になったことは一度もありません。

 

ということで,相手方に書類を送る時は相手に届かないと何も意味が無いので,保険の意味でも内容証明郵便で送る時はまったく同内容の書面を特定記録で発送された方が良いかと思います。

 

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