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12月 16 2016

200円の損害賠償請求

昨日,下記のようなニュースがありました。

 

以下,よみうりオンライン(http://www.yomiuri.co.jp/national/20161215-OYT1T50110.html)の記事を引用します。

 

月決め駐車場に約40分間無断駐車した女性に所有者が200円の損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁(比嘉一美裁判長)が女性に200円の支払いを命じていたことがわかった。

原告は弁護士をつけずに提訴。費用は5000円以上かかったが、「年間100台くらいの無断駐車があり、やめてもらうために訴えた」と話している。

14日に言い渡された判決によると、女性は昨年3月、大阪府摂津市内の駐車場に軽乗用車を無断で止めた。女性側は「駐車場ではなく空き地。車を止めたからといって所有者に損害は発生しない」と主張。比嘉裁判長は「所有者には自分の土地を承諾なく利用されない権利がある」と、これを退け、近隣のコインパーキングの料金から「40分間」の損害額を算定した。

 

引用終わり 

 

200円の請求というのはなかなか見ませんので,思うところを書いてみたいと思います。

car_parking

  
 

費用について

裁判を起こすためには,裁判所に対して訴える目的の金額(訴額)に応じて収入印紙を納める必要があり,さらに当事者に郵送するための切手を納める必要があります(余った切手は事件終了後に返却されます。)。

記事によれば「費用は5000円以上かかった」と書かれておりますので,収入印紙が1000円,切手代が約4000円になるかと思います。

ただし,勝訴した場合は,その割合に応じて収入印紙や切手代等の訴訟費用は全額相手に支払ってもらうことができます。記事によれば,200円の支払いを求めた訴訟で判決も200円を支払えとなっているそうですので,訴訟費用は全額相手に負担してもらうことができます。

加えて,裁判所に出廷した場合,交通費と日当も訴訟費用の一部として相手に支払ってもらうことができます。

交通費は裁判所までの距離によって一律で決まっており,絶望的に安い金額であるため恐らく赤字です。例えば,当事務所から岡崎の裁判所まで往復交通費は2000円以上かかりますが,交通費は300円しか出ません・・・。また,日当も一律で決まっており,1期日当たり3950円です。

もっとも,上記はあくまで「相手に請求できる」というだけであり,請求しないことも可能です。さらに,請求しても相手が払わないこともありますので,その場合は費用をかけて強制執行をして回収するしかありません。現実問題として,訴訟費用のためだけに強制執行というのは費用倒れになってしまう可能性が十分あるかと思います。

 
 

抑止力はあるのか

記事によれば,「年間100台くらいの無断駐車があり、やめてもらうために訴えた」とのことです。

しかしながら,訴訟で求めたのは200円の支払いであり,訴えられた側としては200円を支払えばそれで終わりです(ただし,上記のとおり,別途訴訟費用の支払義務もあります。)。判決が出たからといって,直ちに警察に逮捕されるわけでもありません。

この判決を逆手にとって,「訴えられたところで200円しか払わないでも良い」との認識が広まってしまうと,果たしてこの訴訟に抑止力があるのか難しいところだと思います。

 
 

なぜ地裁だったのか

140万円以下の訴訟の場合は,簡易裁判所の管轄となっており,例外的に不動産に関する訴訟や難解な訴訟などは地方裁判所に移送されることがあります。

簡易裁判所の場合,少額訴訟であれば1期日で終わるなど簡単な手続も用意されていますが,地方裁判所だと厳格な方式によって進みますので本人訴訟の当事者にとっては簡裁の方が楽ではないかと思います。

もしかしたら,上記の例に該当して移送された結果が大阪地裁なのかもしれませんが,なぜ地裁での訴訟となったのかよくわかりません。  

 
 

罰金の看板の有効性

本件とは直接関係ありませんが,駐車場などに「無断駐車をされた場合は罰金として1万円を支払ってもらいます。」というような看板があったりします。

当然,無断駐車はダメなのですが,万が一このような事態が生じたとしても,法的には罰金1万円を支払ってもらうことはできません。理由としては,そのような合意が無いからです。ただし,まったく請求できないかというとそうではなく,本件事件のように近隣の駐車場の相場などから勘案して,止めた時間に応じた損害賠償請求を行うことは可能です。費用対効果が合うかは別ですが・・・。  

 
 

無断駐車はダメなのは当たり前なのですが,現実問題として無断駐車をされてしまっても土地の所有者の方が満足するような手続がありません。したがって,三角コーンを置いたり入口にチェーンを巻くなどして物理的に無断駐車をされないような対処をしていただくしかないと思います。 

 

 

 
 

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12月 14 2016

売掛金の回収事例

売掛金回収のご依頼をいただき,無事完了しましたので手続の流れ等を記載いたします。

ただし,当事者及び事件の特定を避けるためフィクションの部分があります。

 

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1 とあるサービス業を行う会社からのご依頼で,相手は自動車関連の業者さん(以下,「A社」といいます。)でした。A社は,ご依頼いただいた時点では普通に営業をしており,HPなども更新されていましたので,パッと見た感じでは資金繰りが悪そうな感じはしませんでした。店内の商品など差押が可能なものがたくさんありましたので,法的手続を行えば回収できる可能性は高いと思われる事案でした。

 

 まずは,内容証明郵便にて請求をしたものの回答期限までに返事が無かったのでこちらから連絡を試みたところ,A社の従業員の方から社長に伝えておく旨の回答が得られたので少しだけ待つこととし,任意での支払いに希望を託しました。しかし,1週間程度待ったものの希望は打ち砕かれ,何度連絡を試みても同じような回答ばかりで,残念ながらA社の対応は極めて不誠実でした。

 

 今回の請求額は比較的少額でしたので,「費用をかけて訴訟や強制執行を行えば高い確率で回収できると思いますが,費用対効果としてはあまり良くないと思います。」ということを説明させていただいたところ,「業界内に『あの会社は踏み倒せる』と思われれてしまうことの方が大問題だからしっかり回収してほしい。」との回答をいただき訴訟を提起しました。

 

 訴訟提起後もまったく連絡は無かったのですが,訴訟の期日が終わったその日にA社の社長から連絡があり,今まで連絡しなかったことを謝罪され,その日までの遅延損害金や訴訟費用の全額を支払うことで和解が成立しました。さらに,和解書のやり取りが終わる前に全額の入金があり,無事回収することができました。

 

ということで,訴訟は提起したものの,強制執行に至ることなく,遅延損害金や訴訟費用も含めた全額の回収ができました。

このケースでは,強制執行までいってしまうと全額回収できても半分も手元に残らないという状況でしたので,強制執行前に全額回収できて良かったです。

 

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12月 12 2016

男女間の交際に関連する費用の請求

交際されている男女間での金銭の貸し借りがある場合,交際中は特に問題ないのですが,交際が解消されることによってトラブルが生じることがあります。実際に,当事務所でご依頼いただいている事件の3割程度は男女間の金銭トラブルに関するものになります。

また,同棲をされていた男女間では,現実的なお金のやり取りではなく生活費や家財道具の購入資金を立て替えてもらったものの,その清算をしないまま一方的に交際を解消してトラブルになることもあります。

今回の事件は,現実的なお金の貸し借りではなく生活費等の清算に関するトラブルについてでしたが,無事解決しましたので手続の流れをまとめてみたいと思います。ただし,事件や当事者の特定を避けるためフィクションも含まれています。

 

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請求の内容

 

甲さんと乙は同棲しており,家賃や光熱費等の生活費は折半で負担する約束になっていたものの,乙さんがほとんど負担しないまま同棲が解消されたので,甲さんが乙さんに生活費相当額を請求するというものでした。

このような請求の場合,一般的には証拠がほとんどありません。例えば,当初の「生活費は折半」という部分について書面で合意書等が作成されることはまず無いでしょうし(もっとも,書面が無くても折半での請求は通常は可能かと思われます。),光熱費については明細などが残っているかもしれませんが,食費や日用品などについて書面が残っているということはなかなかありません。

したがって,このような請求を行うとすると,「そもそも相手に請求できるのか」,「請求できるとして,いくら請求できるのか」という点が問題となります。

今回のケースでは,このような書面は当然のごとくありませんでしたが,当事者同士で同棲解消後に「乙さんが甲さんに○○円を払う」という合意ができており,この点については書面化されていたため,請求額等については問題となりませんした。

 

手続の流れ

 

1 乙さんの転居先の住所がわかりませんでしたので,同棲していた住所の除票を取得して新住所を特定し,内容証明で書面を送付しました。乙さんから回答があり,支払義務を認めたうえで,支払回数などについて何度か交渉を重ねておりましたが,突然連絡が取れなくなり再度書面を送付しても回答がありませんでした。

 

2 支払う意思は無いものと判断し,訴訟を提起しました。証拠として合意書がありましたので,特に問題なく勝訴となりました。

 

3 乙さん自身にはほとんど財産が無いと思われますが,乙さんは派遣社員として給与を得ていることは把握していました。とはいえ,実際に給与を支払っているのは派遣元ですので,派遣先がわかるだけでは給与の差し押さえができません。そこで,当該派遣先に派遣している会社を求人情報などで探し,いくつか該当する派遣会社があったため直接連絡して確認をしましたが見つかりませんでした。そんな折,依頼者ご自身が,乙さんの本名ではないもののフェイスブックで乙さんと同じ出身地や派遣先での情報とともに派遣元も書いている方の情報を見つけたため,この情報を頼りに派遣元に確認をしたところ,見事派遣元を特定することができました。以前もフェイスブックの情報で差押に繋がる情報を見つけることができ,回収に成功しております。本当にフェイスブックは情報の宝庫です。

 

4 派遣元からの給与に対する債権執行の申立書を作成し,管轄裁判所に提出いたしました。数日後,派遣元からの陳述書が届き,勤務(派遣登録)していることが確定しました。

 

5 以降,毎月税引き後の金額の1/4相当額が派遣元から送金され,最終的には経過利息や執行費用も含めて回収することができました。

 

重要なポイント

 

今回うまくいった大きな要因の一つが合意書が作成されていたことにあります。上記のとおり,請求額を特定するためには様々な資料が必要となりますが,この点がクリアできていたのは大きかったです。

2つ目は勤務先の特定です。個人間の金銭トラブルでは,一般論としては差し押さえ可能な財産があるケースは少なく,訴訟までいってしまった場合は給与を差し押さえて回収することがメインとなりますが,勤務先が特定できないケースも多々ありますので,この点がクリアできたのは大きかったです。

 

かかった費用について

 

今回の請求額はおよそ70万円だったのに対し,郵送料や裁判所に支払う実費なども含めて約30万円でした。

やはり訴訟や強制執行までいってしまうと,多くの費用がかかってしまいますので何とか訴訟等の法的手続を執らずに回収できれば良いのですが,残念ながら強制執行までしても支払わないという方は少なからずいらっしゃいますので,このような方が相手の場合にはある程度費用がかかってしまうことを前提に強制的に回収するか,残念ながら諦められるかのどちらかになってしまいます・・・。

なお,事前に裁判所に支払う実費などはいただいておりますが,ほとんどの費用については回収した中からいただいておりますので,当面の費用がご用意いただくのが難しい場合でも一度ご相談ください。

 

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11月 29 2016

1年がかりの土地建物明渡事件

およそ1年かかりましたが,土地建物明渡事件が終了いたしました(ただし,賃料回収については継続中)。

途中で想定外のことが起こるなど,なかなか大変でしたが,顛末をまとめてみたいと思います。なお,事件の特定を避けるため,一部フィクションも含まれています。

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ご依頼内容

 

アパートの家賃及びアパートに隣接している駐車場の駐車料金についてたびたび支払いが遅れており,すでに2年分以上溜まっているので,この未払い賃料の回収及び明渡のご依頼をお受けいたしました。

司法書士の代理権は140万円以下と定められており,明渡事件については,土地と建物の固定資産評価額をもって算出することになっておりますが,土地については評価額を1/4にした金額,建物については1/2にした金額で計算することとなりますので,一軒家であれば難しいケースがあるものの,アパートの一室であれば司法書士でも対応できる場合が多いと思います。なお,未払い賃料の金額は含めなくても良いこととなっておりますので,極論を言えば,1000万円の家賃を滞納していても代理人として請求できることになります。

今回ご依頼いただいたアパートの場合,駐車場全体としては数千万円の評価額でしたが,ご依頼いただいた区画だけで計算すると数十万円程度であり,建物に関してはかなり古い建物で評価額自体は数万円程度であってたため,司法書士でもまったく問題なく代理人として対応できる金額でした。また,未払い賃料は合計すると100万円程度となりますが,上記のとおり,未払い賃料は含めない取り扱いであるため特に問題ありませんでした。

 

督促及び解除の通知

 

内容証明郵便で,賃借人及び保証人に対して,未払い賃料の請求(支払催告)及び支払いが無い場合は解除する旨の通知を致しました。本件賃貸借契約には催告は不要との特約がありましたが,争点を増やす意味は無いので,法律の規定どおり催告をしました。書類を送付した数日後に賃借人から回答があり,「今後一切支払うつもりはない。」とのことでしたので,話し合いによる解決は不可能であると判断し,訴訟を提起いたしました。

 

訴訟期日及び判決

 

訴訟の期日には,賃借人及び保証人が出廷したため,裁判所内で司法委員を交えて和解協議を行うこととなりました。ただ,賃借人は恐らくお酒に酔っていると思われるような状況であまり会話ができず,さらには裁判所の書記官や私に加えて,その場にいない大家さんを「刺して自分も死ぬ。」などという発言があったため,和解などできるはずもなく判決となり,勝訴いたしました。

 

任意の話し合い及び関係各所との調整

 

判決が出て確定したことにより,すぐにでも強制執行ができるような状況ではありましたが,以下の理由により,任意の話し合いを続け,すぐに強制執行の申立てをすることはありませんでした。

・訴訟提起後から,「包丁で刺す」,「首を吊って死ぬ」など危険な発言が相次いでいたため,強制執行まで進むと何をするかわからないような状況にあると考えられたため,まずは穏便に話し合いを進めたいという大家さんの意向があった。

 

・賃借人の危険な発言を踏まえて,大家さんの警備の問題や脅迫についての告訴について警察と相談が必要だった。

※明け渡しに関しては,このような事件の報道もありました(強制執行の恐怖

 

・賃借人が比較的高齢であったため,強制執行を進めても執行が完了しない可能性があったため,退去後の賃借人の住居について市役所の福祉課等との相談が必要だった(強制執行の手続を進めても,賃借人が病気でまったく動けないなどの理由がある場合は強制執行を進められない場合があります。)。

 

上記のうち,警察についてはかなり協力的であり,告訴をすれば逮捕できるような状況ではあるし,話し合いに行く際は同行してくれるとの署長さんからの回答も得られました。ちなみに,告訴をすれば逮捕できると回答をいただいた決め手は,私と保証人と賃借人と三者で話し合いをした際にも「殺す」などの発言をされており,それを録音していたことによります(結果として私は告訴はしないまま終わっております。)。

次に,市役所についてですが,こちらは協力的ではありませんでした。というのは,あくまで市役所は本人やその親族からの援助の要請があって初めて動けるのであり,私は賃借人からすれば親族でもない他人であり,しかも明渡に関しては対立当事者の代理人であるわけですから,やはり動けないとのことでした。市役所の立場としてはやむを得ないと思います。

 

なお,保証人との間では,毎月一定額を支払う内容で和解が成立いたしました。

 

強制執行の申立て

 

何度か話し合いを試みたものの任意での明け渡しに応じことは考えられなかったため,大家さんの意向で強制執行の申立てを行いました(当事務所は書類作成として関与していますので,すべてにおいて大家さんにも立ち会っていただいております。)。

執行手続での懸案事項としては,

(1)断行(強制的に追い出す手続)までいった場合に素直に出ていくとは考えられないため,改めて警察との調整。

(2)自動車を含めた大量の残置物の処分費用

の2つがありました。

(1)については,上記のとおり警察は事前に連絡すればこちらの要望どおりに対応してもらえるとのことであり,(2)については,自動車は中古車販売店に「価値なし」との査定書を出してもらい,別の業者に無料で引き取ってもらえましたので,その他の残置物の処分費用だけですみました。ちなみに,自動車の価値があると判断された場合は,「自動車執行」の手続を執る必要があるため,別途数十万円の費用がかかってしまいます。

 

明渡催告~断行~目的外動産の処分

 

明け渡しの強制執行の流れとしては,まずは任意に明け渡しよう「明渡催告」をし,その約1ヶ月後までに退去されない場合は強制的に追い出す「断行」を行い,その2週間~1ヶ月の間に室内にある動産(目的外動産)の競り売りをして終了となり,すべての手続に裁判所の執行官が立ち会います。

上記のとおり,賃借人の状況についても執行官に事前に知らせており,執行官も警察との連携をしていたのですが,明渡催告の前日に賃借人が何らかの理由により警察に拘束されていました・・・。これは完全に想定外でした。

したがって,賃借人不在のまますべての手続が進んだため,紆余曲折ありましたが執行手続に入ってからはスムーズに進み,残置物の処分をして明け渡し手続は終了となりました。ただ,未払い賃料に関しては,保証人から支払われているため,もうしばらく続くこととなります。

 

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10月 11 2016

時効についての注意点

何度か時効についてご質問いただくのですが,誤解されていることが少なからずございましたので,これまでにいただいたご質問で誤解ところについてまとめたいと思います。

 

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消滅時効とは

各ページにも記載しているとおり,貸金や売掛金などの債権については,一定期間経つと時効によって請求ができなくなることがあります。この「一定期間」は債権の種類によって異なり,運送費だと1年,診療報酬だと3年,一般的な売掛金や家賃だと5年,その他の債権(個人間の貸金など)は10年などとなっています。

 

時効の起算点

では,この「一定期間」のスタートはいつからでしょうか。この点,時効について規定されている民法では,「権利を行使することができる時から進行する」となっています(民法166条)。

「権利を行使することができる」というのは,端的に言えば「請求できる」という意味となります。

個人間の貸し借りであれば返済日からということになりますし,診療報酬であれば通常は当該診療日からとなりますし,売掛金などで毎月の締日などがある場合は,実際に仕事をされた日ではなく締日のあとに請求書に書いてある支払期限(支払期限を定めていなければ請求日)ということになります。また,毎月発生する家賃や管理費などは,毎月の支払日にその月の分だけがスタートすることになります。

よくある誤解が,個人間の貸し借りで「お金を貸した日」とされている場合です。例えば,平成28年10月11日に100万円を貸し,3年後の平成31年10月11日に一括で返済することになっていた場合は,平成31年10月11日にならないと返済を請求できませんのでこの日までは時効は進行しません。したがって,最速でも時効が完成するのは,返済日の10年後(貸してから13年後)である平成41年10月11日ということになります。

 

時効の援用

 

これまでに何度か記載しておりますが,消滅時効は期間が満了すれば自動的に消滅するものではなく,債務者側の時効の援用が必要とされています(民法145条)。

これは,時効によって権利が消滅することを良しとしない債務者もいるため,時効によって消滅させるかどうかを債務者に決めてもらうという趣旨です。

逆に言えば,時効期間が満了していても時効の援用がされていないようであれば,請求すること自体は可能です。当事務所でも何度か時効期間が満了している債権について支払ってもらったことがあります。

 

時効の中断

 

上記の「一定期間」が満了すると権利が消滅してしまいますので,債権者としては消滅してしまわないように時効の進行を止める「中断」の手続を進めることになります。

法律では「 請求」,「差押え、仮差押え又は仮処分」,「承認」の3つの場合に中断すると規定(民法147条)されており,例外的に「催告」をし,その後に訴訟等の裁判手続を行うことで6か月だけ時効期間が伸びることになっています(民法153条)。

このうち,よくある誤解が「請求」についてです。民法には,単に「請求」としか書かれておりませんので,口頭でも請求すれば良いようにも思えますが,この「請求」は民法149条から152条までに規定された法的手続による請求だと考えられております。したがって,電話で督促をしたり,請求書を送付するだけでは147条に規定する「請求」にはならないことになります。

なお,口頭などによる請求でも153条の「催告」に該当しますので,後に法的手続による請求をすれば,6か月は時効の完成を防ぐことはできますが,これは1度だけであり定期的に請求書を送付し続けることで永遠に時効の完成を防げるわけではありません。

 

時効の利益の放棄

 

一度だけ,借用書の中に「私は時効による利益を放棄します。」という文言が書かれたものを見たことがあります。

この点,民法にはドンピシャで「時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。」と規定されていますので,お金を借りるときや時効完成間際に消滅時効を主張しない旨の約束をしたとしても無効です(民法146条)。もちろん,無効である以上,覚書や念書といった書面を作成したとしてもダメです。

ただし,民法上禁止されているのは時効完成の放棄であり,時効完成に放棄することは自由です。だからこそ,時効完成後でも返済してもらうことがあるわけですね。

 

まとめ

以上から,よくある誤解としては,

時効がスタートするのはお金を貸した日ではなく返済日

消滅時効は,期間の経過によって自動的に消滅するのではなく,債務者の援用が必要。なので,時効完成後に返済してもらっても返済は有効。

時効中断事由の「請求」は裁判上の請求(訴訟など)をしなければならない。

④「催告」は1回だけで,繰り返し行うことで時効を中断させることはできない。

債務者が,時効完成前に時効の利益を放棄することはできない。例え,覚書や念書などが作成されていてもすべて無効です。

となります。

 

ネット上(某知恵袋)では,上記誤解に基づいて回答されているものも散見されますのでご注意ください。

 

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10月 03 2016

強制執行の恐怖

先日,横浜で強制執行の際に入居者が逮捕されるという事件が発生しました。

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以下,東京新聞(http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201609/CK2016091502000185.html)の記事を引用します。

 

十四日午後三時ごろ、横浜市南区永田みなみ台の都市再生機構(UR)「南永田団地」で、「男が包丁を持って立てこもった」と、立ち退きの強制執行に訪れた横浜地裁の執行官から一一〇番があった。約三時間後の午後五時五十分ごろ、県警捜査一課の捜査員が部屋に突入し、公務執行妨害の疑いで、この部屋に住む自称無職檀上(だんじょう)政樹容疑者(53)を現行犯逮捕した。

捜査一課などによると、人質はなく、けが人はなかった。檀上容疑者は家賃を滞納していたという。執行官らが玄関をノックしたが応じないため隣室のベランダを伝い、窓を割って入ろうとすると、檀上容疑者は「これ以上来ると爆破するぞ」などと言い、刃物を突きつけてきたという。

逮捕容疑では、同日午後二時五十分ごろ、強制執行しようとした執行官に刃物を見せるなどして公務を妨害したとされる。容疑を認めているという。現場は、京急本線井土ケ谷駅から西に約一キロの住宅街。十二棟が並ぶ団地の一角で、檀上容疑者の部屋は九階建ての三階部分。玄関から捜査員が約三時間にわたって説得を続けた。団地には規制線が張られ、帰宅できない住民ら五十人ほどが周囲の広場や道路から様子を見守った。檀上容疑者と同じ棟に住む女性会社員(72)は「六月ごろから裁判所の人が来ていたようだが、お金がないと言っていた」と話した。

 

引用終わり

 

現在進めている建物明け渡しの交渉の際に,入居者から「お前を刺して,俺はここで首を吊る。」と言われたことがありますので,警察に依頼して,強制執行の際には立ち会いをお願いいたしました。

幸い(?)強制執行当日(催告期日)には入居者本人は不在でしたので警察官の出番はありませんでしたが,立ち会っていただく大家さんや裁判所の執行官の身の安全が大事ですので,上記のようなことにならないよう今後も念には念を入れて対処していかなければならないと肝に銘じた事件でした。


8月 26 2016

臨時休業のお知らせ

平成28年8月29日及び30日について,臨時休業とさせていただきます。

上記期間にいただきましたお問い合わせにつきましては,31日に回答をさせていただきます。

大変ご迷惑をお掛け致しますが,なにとぞよろしくお願いいたします。


8月 10 2016

夏期休暇のお知らせ

大変暑い日々が続いておりますが,皆様いかがお過ごしでしょうか。

さて,当事務所では,以下のとおり夏期休暇を取らせていただくこととなりました。夏期休暇期間にいただきましたお問い合わせについては,16日以降に順次回答させていただきます。ご迷惑をお掛け致しますが,少々お待ちいただければと思います。

 

平成28年8月10日18時まで 通常業務

平成28年8月11日~15日 夏期休暇

平成28年8月16日午前9時から 通常業務

 

以上,よろしくお願いいたします。


8月 04 2016

建物明渡しの実例

先日,建物明け渡しが完了しましたので,手続の流れを記載いたします。こちらをご覧いただければ,大まかな流れをご理解いただけると思います。なお,手続上重要ではないところについては,万が一の特定を避けるためフィクションが入っております。

 

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1 事案

ご相談いただいたのは,単身者用のアパートで数年に渡って家賃を滞納されており,また日中は常に不在にしているため大家さんも1年以上お会いできていないという方の家賃回収及び明渡しでした。

すでに滞納家賃だけで数百万円をオーバーしており,かつ,相手の方の勤務先等の情報が一切なく家賃を回収できるとは思えない状況でしたので,家賃の回収というよりは早期の明渡しを進めて少しでも損害を減らすということをメインにご依頼いただきました。

 

2 解除の通知(1月上旬)

家賃を滞納しているからといって直ちに明け渡しを求めることはできず,明け渡し請求の前提として賃貸借契約を解除しなければなりません。

賃貸借契約の解除は賃借人の生活の本拠を奪うことになるため,簡単には解除はできないことになっております。とはいえ,今回に関してはすでに数年に渡って滞納しているので,解除については問題ない事案でした。

解除の基準の詳細についてはこちらをご覧ください。 → 賃料未払いの場合の解除の基準

 

また,解除の通知は相手方に届く必要があり,訴訟手続においても届いたことを立証する必要がありますので,通常は内容証明郵便(配達証明付)で送付しますが,これに加えて特定記録でも同内容の書面を送付します。これは,相手方が日中常に留守にしているとのことでしたので内容証明郵便を受け取らないということも十分考えられることから,内容証明ほどの証明力は無いものの,とりあえずいつ相手の住所に配達された(受取ではなくあくまで配達)ことは証明できるからです。

 

3 訴訟提起~判決(2月下旬)

通知には2週間以内に連絡が無ければ訴訟をする旨の記載をしておりましたが,予想どおり連絡はありませんでした。なお,内容証明郵便はやはり不在で返送されてきてしまい,特定郵便だけ配達されていました。

そこで,賃貸借契約書や特定記録の追跡記録などを証拠に訴訟提起しましたが,相手は裁判所から送付される訴状についても受け取りませんでした。訴訟手続は,相手が書類を受け取らないと進められないため,書類の受領(送達)というのは実はかなり大事なことです。とはいえ,住んでいるにもかかわらず受け取らないということを理由に訴訟が進められないというのは不当であるため,相手が間違いなくそこに住んでいるということを立証すれば,現実的に相手が受け取らなくても受け取ったものとして進めるという制度があります。これを「書留郵便に付する送達(付郵便送達)」と言います。

送達についてはこちらをご覧ください。→ 想いよ届け!【書類の送達】

 

今回,相手方は日中は常に不在にしており,しかも自宅の電気も止められているような状態でしたので,電気メーターや部屋の灯りで居住していることを立証することはできませんでしたが,移動に自動車を使っていましたので,深夜と早朝に駐車場を撮影し,自動車の移動状況で住んでいることを立証しました。厳密には,あくまで自動車の移動であって当該部屋に住んでいることの立証ではないのですが,裁判所はこれでOKとのことでした。

結局,裁判の期日に相手方が出廷することはなく,無事,明渡及び家賃数百万円の支払いを命じる勝訴判決が出ました

 

なお,司法書士は140万円を超える請求について代理することができませんが,明渡しと滞納家賃の支払いを求める訴訟の場合は,明け渡しを求める部屋の価値で判断し,家賃の金額は関係ない取り扱いになっています。そして,明け渡しを求める部屋の算定に当たっては,固定資産課税評価額の半額となっておりますので,当該部屋の評価額が280万円以下であれば仮に滞納家賃が1億円だったとしても司法書士が代理することができます

今回は昭和時代のアパートでしたので,部屋の評価額は数十万円であるのに対し,数年分の滞納家賃として数百万円の家賃を求める訴訟でしたが,問題なく私が代理人として訴訟手続しております。

 

4 再度の通知(3月中旬)

強制執行となるとかなりの費用がかかるため,判決に基づき任意の明け渡しを求める通知書を送付し,回答を待ちましたが連絡はありませんでした。

 

5 警察による安否確認(4月中旬)

2か月程度,日中どころか深夜の出入りすら無いような感じであり,かつ,暑くなってきて異臭もするようになったため,最悪の事態も考えて大家さんが警察に安否確認を依頼しました。警察官が中に入ったところ,留守でしたが製造日が新しいパンのごみがありましたので,どうやらまったく人目に付かない時間帯に出入りをされているであろうことがわかりました(異臭は弁当などの残飯でした。)。とりあえず,中で亡くなっていなくてホッとしました。

※この安否確認はたまたま行ったものであり,明渡手続において必要な手続ではありません。

 

6 明渡し及び動産執行の申立て(5月上旬)

まったく連絡が取れないため任意の明け渡しが期待できないことから,明渡し及び室内の動産を差し押さえる動産執行の申立てをしました。なお,訴訟手続と異なり,強制執行に関しては,司法書士は書類の作成はできるものの代理人にはなれないため,強制執行の際には大家さんに立ち会っていただく必要があります。

 

7 明渡催告と動産執行(6月下旬)

 

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本来であればもう少し早く明渡催告ができたはずなのですが,執行官と大家さんとの都合が合わず,申立てから1か月半ほどで明渡催告となりました。

この明渡催告は,対象の部屋に裁判所の執行官が赴き,期限を切って退去するよう催告をするものです。室内に相手方がいれば書類を交付しますが,いない場合は玄関などに貼られてしまい,とても人目について恥ずかしいと思います。

また,この時に,任意に明け渡さない場合に備えて室内の荷物の搬出や処分をしてもらう業者さんに見積もりのために来てもらいます。この業者さんは裁判所に登録(?)されている業者さんから選ぶことができますし,知り合いの業者さんがいればその方にご依頼されても構いません。今回は,過去に大家さんが明渡しで依頼したことがある業者さんがいましたので,この業者さんに来ていただきました。外からでも大量の荷物があるであろうことがわかるくらいの状況でしたので搬出や処分の費用で40~50万円程度かかることも予想できましたが,大家さんの馴染みの業者ということもあり半額以下の見積もりでした。その時に立ち会った執行官もかなり安いということを仰っていたので,明渡における業者さんの選定は重要ですね

なお,鍵がかかっている室内に立ち入るために解錠業者に依頼することもありますが,今回は大家さんが合鍵を持っていましたので解錠業者の費用はかかりませんでした。

 

さらに同時に申し立てていた動産執行については,室内に換価できそうなものはなく,残念ながら動産執行は中止となりました。

 

8 断行(7月下旬)

明け渡し催告から1か月弱の日を断行日と指定され,その前日までに明け渡すよう催告がされていましたが,任意の明け渡しはされませんでした。

そこで,再び執行官に来ていただき断行を行います。断行とは,問答無用で退去させたり室内の荷物などを搬出することとなりますが,その時も留守でしたので荷物だけを搬出することになります。また,断行後に相手が室内に入ってしまうと改めて訴訟からやり直さなければならなくなるため,入れないよう鍵を交換します。

なお,荷物はあくまで入居者のものですので,確実にゴミであるものを除いて勝手に処分をすることはできません。そこで,一定期間室内の物は倉庫などで保管しておき,それでも相手が引き取らない場合は売却することになりますが,事実上大家さんが買い取ることとなりますので,大家さんに買い取っていただいたうえで,業者さんに処分してもらって終了となります。もっとも,大家さんが買い取るとは言っても実際にお金を支払うのではなく,相手に対する債権と相殺処理することになります。

 

9 トータルの費用

今回,私は結局一度も相手の方にお会いするどころか話をすることもできませんでしたので,残念ですが滞納家賃についてはまったく回収できておりません。

したがって,滞納家賃回収の成功報酬はゼロ円でしたが,訴訟手続や強制執行の書類作成報酬などの当事務所の報酬に加えて,裁判所に支払う予納金,荷物搬出の業者さんの搬出処分費用や鍵の交換の費用などの実費もすべて含めると,合計で70万円くらいの費用がかかっております。家賃が回収できれば費用に充当することもできますが,多くのケースでほとんど家賃の回収はできませんので,家賃の回収を図るよりも早期に明け渡しを進めていただく方が結果として損失を減らすことができます。

また,今回は相手の方と最後まで連絡つきませんでしたが,断行まで行ってしまうと大きな費用がかかってしまいますので,可能な限り断行に行く前の時点で,幾ばくかのお金を支払ってでも任意に退去していただくことがベストだと思います。

 

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7月 08 2016

法律上または事実上回収できないケース

債権回収のご相談の際に,回収の方法について説明させていただきますが,その中で回収できないケースについても説明させていただいております。

回収できないケースは大きく2つに分かれており,1つ目は「法律上回収が不可能またはほぼ不可能」なケース,2つめは「事実上回収が不可能なケース」となります。

以下,この2つについて具体例を記載いたします。

 

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法律上回収が不可能またはほぼ不可能なケース

 

日本は法治国家であるため,請求するためには法律上の根拠が必要となります。日々の生活の中で厳密に法律を意識してお金の貸し借りなどをすることはないと思いますが,多くの場合は法律も常識に沿うようにできておりますので,常識内の取引であればまず問題なく請求ができます。したがって,下記に記載しているのは,事例としてはあまり多くないケースだと思っていただいて大丈夫です。

 

(1)自己破産

言葉としてはお聞きになったことがある方が多いと思いますが,相手が自己破産をしてしまうと法的には請求ができませんし,それどころか破産した後に相手方やその家族などに支払いを求めると,犯罪になってしまうことすらあります(破産法275条)。ただ,これだけだとあっさりしすぎているので,もう少し詳しく説明いたします。

 

①相手が法人の場合

売掛金の請求や未払い賃料の回収だと相手が法人というケースがあります。法人が破産した場合,会社が消滅してしまいますので破産されてしまうとどう頑張っても回収することはできず,破産手続の中で配当があることを願うしかありません。また,会社の役員が保証人であれば別ですが,そうでなければ役員に対して会社の債務を支払うよう請求することもできません。ただし,役員としての任務懈怠等があった場合には損害賠償請求ができる場合があります(会社法423条)。

 

②相手が個人の場合

相手が個人の場合,破産をしても直ちに借金が免除されるわけではなく,免責許可を得て初めて借金が免除されることになります。

数としては極めて少ないですが,破産申し立てをしても,何らかの理由で免責が許可されない場合があります。例えば,詐欺的な借入だったり,借入理由がすべてギャンブルだったり,帳簿を改ざんしていることが発覚した場合などです(破産法252条1項)。もし,免責が不許可となった場合は支払いが免除されていませんので,法的には請求することは可能です。しかも,破産手続によって時効が中断されていますので,10年間は請求が可能です(民法152条破産法124条3項民法174条の2第1項)。

ただし,破産手続を行っているような経済状況ですので,現実的に支払い能力があるかどうかは別問題ですが・・・。

 

③免責許可後の支払い

上記のとおり,免責許可がされている方に請求すること自体が犯罪になる恐れがありますが,逆に相手方から任意の支払いをされるようであればそれを受けることは問題ありません。これは,破産手続によって貸金が消滅するのではなく,自然債務になるからだと考えられています(破産法253条1項)。

→ 自然債務とは

もし,自主的に支払っていただけるようであれば,ありがたく頂戴しましょう。

 

④破産後に支払う旨の約束

「今回破産手続はするけど,あなたの分は破産手続が終わったら必ず支払うから。」と約束をされる方がいますが,たとえ覚書等の書面が作成されていても何ら効力はありません

また,破産手続開始決定後,免責許可の前または免責許可の後に,破産債権に関して支払う約束をしたとしても上記同様に無効であると考えられています。これを認めてしまうと,改めて破産債権について訴訟等で請求できることになり,破産手続が無意味になってしまうからです。

 

(2)消滅時効が完成している場合

お金の支払いを求める権利については,一定期間請求しないと時効により消滅してしまい,請求することができなくなってしまいます。一般的な個人間の貸し借りであれば10年,家賃や売掛金等の商売に関するものであれば5年,診療報酬は3年となっていまいます。

この時効ですが,実は期間が経過しただけでは消滅せず,相手方が「時効なのでもう支払いません」という意思表示をする必要があります。これを「時効の援用」と言います(民法145条)。

ですので,時効期間が経過している債権であっても,時効の援用がされていないようであればとりあえずは請求することは可能ですし,それを受けて相手が支払ってくれるのであれば問題ありません。もっとも,相手が調べれば時効の援用のことはすぐにわかりますし,仮に相手が時効の援用に気付かない間に訴訟をしても裁判官が助け船を出すことがありますので実際に回収できることはなかなかありません。

しかしながら,なぜか当事務所では何度か支払ってもらったことがあります・・・。

 

(3)違法・不法な債権の場合

民法90条に,「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は無効とする」と規定されており,前半部分は略して「公序良俗違反」と呼ばれています。

具体的には,麻薬や覚せい剤,拳銃などの禁制品の売買代金,違法な賭博の勝ち金,愛人契約のいわゆる「お手当」,ヤミ金からの借金などです。したがって,麻薬の売買代金を支払わない,賭博で勝ったのに払ってくれない,お手当を払ってくれない,ヤミ金の債務者が払ってくれない,という事情があったとしても,法律上無効なので請求することはできません。逆に,麻薬の買主が「覚せい剤の契約は無効だから支払ったお金を返せ」とか「愛人契約はむ無効だから今まで払ったお手当を返せ」ということもできません。これを「不法原因給付」と言います(民法708条)。ただ,愛人契約以外は公序良俗違反どころか犯罪ですので,そのような債権回収のご依頼が来るとは思えませんけどね。

なお,愛人契約に関連して,当事務所ではいわゆる水商売・風俗などのお店で働いている方への貸金についてご相談を受けることが多々あり,その中で相手方の反論として,「貸金は愛人契約を維持するためのお金であって不法原因給付だから返還義務が無い」と主張されたことがあります。一般論として,単にお客さんとしてお店に通っているだけであれば水商売等の方への貸金が愛人契約維持目的と判断される可能性は極めて低いと思いますが,状況次第では可能性がゼロではありませんのでご注意ください。

 

事実上回収が不可能またはほぼ不可能なケース

 

法律上,請求が可能だとしても,現実的に回収できないケースがあります。実際にご相談をいただくケースのほとんどが一般的な貸金であるため,法律上請求できないというケースはかなり少なく,請求を断念する場合はこちらの理由となることがほとんどです。

 

(1)相手方に資力がない場合

相手方が任意に支払ってくれれば良いのですが,そうでない場合は最終的には訴訟等を行い,強制執行をして回収することになります。しかし,強制執行をして押さえる財産がなければ事実上回収ができません。いわゆる「無い袖は振れない」ということであり,専門用語では,「手元不如意の抗弁(てもとふにょいのこうべん)」と呼んだりします。これは,債権回収に関して回収できないもっとも多い理由であり,この問題は相手方の経済事情によるため,一流弁護士さんにご依頼されたとしてもどうにもならないことが多いと思います。

ただし,預金や不動産などの資産が無くても,相手方がどこかで働いているようであれば,給与を差し押さえることで回収できる場合があります。

また,相手方自身に支払い能力が無くても,親族等に保証人になってもらい,その親族等に支払ってもらうということは考えられますが,親族は保証人になる義務はありませんので,しっかりと説明してご納得いただいたうえで保証人になっていただくことになります。

保証人については,こちらをご覧ください。→支払の担保となるもの

 

(2)相手が行方不明の場合

相手が行方不明だと連絡先がわかりませんので事実上請求をすることができません。

なお,相手が行方不明でも訴訟を行うことはできますし,証拠があれば勝訴することもできると思います。

→ 公示送達の訴訟

とはいえ,相手は裁判を起こされたこと自体知らないと思いますので任意の支払いは一切期待できず,強制執行以外での回収はできません。そして,行方不明になるような人の財産を把握することは極めて困難ですので,回収は難しいと思われます。

このようなケースで回収できるとすれば,親名義の不動産などがあり,すでに相続が発生しているものの登記が未了となっているような場合など,かなりレアなケースになると思います。

 

(3)相手が亡くなっており,相続人がいない場合

相続という制度は,家や預金などのプラスの財産だけでなく,借金などのマイナスの財産も相続することになっています。したがって,相手方が亡くなっていたとしてもその相続人に対して請求することができます

ところが,相続については家庭裁判所で「相続放棄」の手続をすることで相続人ではなかったことになり,同順位の相続人がいなければ次順位の相続人に相続権が移ります(配偶者は常に相続人)。具体的には,子どもが相続放棄をした場合は親に,親が相続放棄をした場合は兄弟姉妹に順次相続権が移っていきます。そして,兄弟姉妹も相続放棄をし,配偶者がいないまたは配偶者も相続放棄をしている場合は,相続人が不存在という状況が生じてしまいます(相続放棄を前提に説明をしてしておりますが,当初から子どもや兄弟がおらず,親はすでに亡くなっているという場合でも同じ状況は生じます。)。

このような場合,亡くなった方名義の財産があれば,相続財産管理人の選任申立てを行うことで相続財産から回収できる場合もありますが,相続放棄をされるような方に財産があるとは考えにくいため,事実上,回収が困難である場合が多いと思います。

 

いろいろとまとめてみましたが,事実上回収できない場合というのは結局は「相手方に財産が無い」ということに尽きます。そして,相手方の財産の有無は債権回収における一番重要な要素であるため,この点の検討をせずに債権回収を進めることはありえないこととなりますので,事前の情報収集が極めて重要となります。

 

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