5月 09 2016
建物明渡の強制執行
現在,複数の建物明渡手続を行っておりますが,残念ながら何度か話し合いを試みたもののうまくいかず訴訟になり,さらに判決が出ても明け渡してもらえず,いよいよ強制執行をしなければならないような状況になっています。判決を取ってもすぐに強制執行するのではなく,何とか話し合いで解決できないか賃借人の自宅にも行きましたが,面と向かって「殺す」と言われてしまいましたので,警察とも相談のうえ慎重に手続を進めております。
もし強制執行となると,かなりの費用がかかってしまうためできる限り任意で明渡してもらいたいのですが,どうしても明け渡しをしてくれないようであれば強制執行をしなければなりません。今回は,強制執行になった場合の費用についてまとめてみたいと思います。
裁判所に支払う費用
裁判所によっても異なりますし,明渡の部屋数や人数などによっても異なりますが,明渡のみであれば6~7万円程度の予納金を納めなければなりません。
もっとも,通常は明け渡しの強制執行とともに未払い賃料に関する動産執行も併せて行いますし,駐車場もある場合はその明渡も必要となるため,10~12万円程度の予納金を納める必要があります。なお,必要な分を除いたお金は手続終了後に返却されます。
また,細かな費用ですが,送達証明書や法人の場合の登記事項証明書等の取得など,必要書類の取得費用で数千円程度かかります。
執行補助者に対する費用
正直なところ,強制執行で一番お金がかかるのはこの部分です。
人が住んでいる以上,部屋の中にはたくさんの家財道具がありますし,場合によってはごみ屋敷になっているようなこともあります。「明け渡し」というのは部屋の中を空っぽにして出ていくことですので,賃借人が任意に出て行ってくれない場合は,こちらで部屋の中の家財道具を搬出しなければなりません。その搬出する人たちが「執行補助者」です。端的に言えば便利屋さんだったり引っ越し業者さんのような方です。
この執行補助者の費用は,安くても10~20万円,家財道具が大量にあれば100万円を超えることもあります。当事務所で過去に関与したケースでは,2階建てのメゾネットタイプのお部屋で50万円程度かかりました。本来,この費用は賃借人が負担すべきなのですが,強制執行までしなければ退去しないような人には資力がないことがほとんどであり,事実上は大家さんの負担となってしまいます。
弁護士・司法書士に対する費用
強制執行手続を弁護士等の専門家に依頼される場合,その専門家に対する報酬が発生します。
これは各弁護士・司法書士によって異なりますが,10万円~30万円程度だと思います。
その他の費用
ドアが施錠されており合鍵も無いようであれば,鍵業者の開錠費用がかかります。また,財産的価値があるものは一定期間保管しなければならず,その保管費用がかかる場合があります。さらにゴミがある場合にはゴミ処理費用などもかかります。
ということで,強制執行になってしまうと本当にお金がかかります。「盗人に追い銭」になってしまいますが,強制執行を行うくらいであれば,未払い家賃の減免をしてでも任意に出て行ってもらった方が結果的には金銭的なメリットはあると思います。