1月 18 2016
マイナンバーを絡めた詐欺的メール
当事務所のメールアドレスをネット上に公開している以上,たくさんの迷惑メール(スパム)が来ることは仕方がないので,最近はその内容を楽しむようにすらなってきていますが,本日きたメールがそれっぽい内容のように見せかけて,近年稀に見るデタラメっぷりだったので,ここでおかしい点をまとめてみたいと思います。
以下,メールが届いて心配になった方が検索でこの記事に辿り着いてくれることを願って,届いたメールの全文を引用します。
~~~~~以下,引用部分です。~~~~~~
【重要】マイナンバーに関わる大切なお知らせの為、必ず最後までお読み頂けます様お願い申し上げます。
※個人情報保護法に基づき、第三者による貴方様の氏名・住所・電話番号・マイナンバー等の閲覧を防ぐ為、本電子文書へは非公開と致します。
【本人限定:内容証明電子承認文書】
貴方様がご使用されております電気通信端末機器及びインターネットプロバイダを通じ、会員登録状態となっている従量課金制有料サイトの登録確認についてご通知致しました。
この度、貴方様が会員登録されている下記サイト運営事業者(以下、原告)より、民事訴訟に関する当組合との最終手続きが完了されました事を併せてご報告致します。
≪記≫
[原告]株式会社IKプロジェクト(届出番号_都75981103_は)
[サイト概要]懸賞、副業、一般ニュース、芸能ニュース、アニメ、ゲーム、動画レンタル、通信販売、電子書籍、投資、ギャンブル、占い、アダルト動画、出会い掲示板、投稿掲示板、オークション、旅行宿泊、リゾートホテル宿泊会員権 以上
原告の訴訟提起としては、
①現金100万円相当の懸賞報酬受取権放置
②会員登録料金の未払い
③長期延滞料金の未払い
④会員継続または退会の放置
⑤アカウント不正放置によるサーバー障害、
以上5点が挙げられております。
当組合は、訴訟前に双方の事実確認が義務付けられておりますので、貴方様に瑕疵責任の有無を確認する必要があります。
◆瑕疵責任が有る場合・・・・原告の主張通り訴訟手続き
◆瑕疵責任が無い場合・・・・原告の主張を取り下げ訴訟停止
貴方様に瑕疵責任が無く、何らかの理由で現在に至る場合、当組合より原告へ本件の事情説明を致します。
本電子文書を確認されましたら、営業時間内に当組合へご一報頂けます様お願い申し上げます。
※本電子文書は第三者機関の開封確認機能が設定されております。
尚、本電子文書に対する回答が無い場合は、原告の訴訟提起に従い管轄裁判所にて公判が開始されます。
公判日程は裁判所より貴方様の現住所または本籍地または勤務地宛へ、書留郵便が送付されます。
※裁判を欠席されますと原告の主張通りの判決が下され、執行官立会いのもと、給与、財産(動産・不動産・有価証券)等の差し押さえを含めた強制執行となります。
近年、パソコン・スマートフォン・携帯電話等の電子通信機器の急速な発展により、誤操作トラブル、未成年者の決済トラブル、契約者以外への貸与トラブル、契約トラブルが頻発しております。利用者様の知識不足がトラブルの原因となるケースが相次いでおりますので、インターネット等を利用される場合はよく内容を理解した上でご利用下さい。
【マイナンバーに関する注意】
民事訴訟及び刑事訴訟の被告人(訴えられた側)となられた方は、訴訟履歴がマイナンバーへ登録されます。
訴訟履歴がマイナンバーへ登録されますと今後一切記録を消すことが出来なくなります。
~~お問い合せ先~~
【国民消費生活組合】
・対応部署:民事紛争管理2課
・担当:安達・津田
・紛争番号:U0023859YG ※左記紛争番号をお電話にてお伝え下さい。
・部署直通番号:03-6831-8171
・営業時間:10:00~19:00 ※土日祝は対応出来ません。
~~~~~以上で引用終わり~~~~~
さて,上記メールは間違いなく詐欺的なメールであり,電話をすることで何らかの金銭の支払いを要求されると思われます。絶対に電話しないようにしてください!
上記が間違いなく詐欺メールだと判断した理由は,明らかに法的におかしいことだらけであり,まともな機関や会社からのメールとは思えないからです。と,言いますか,そもそも訴えられるような重大事を知らせる方法としてメールで知らせる業者はありませんけどね・・・。
①本人限定・内容証明電子承認文書
郵便局のサービスで内容証明郵便をネット上で行うことができる「e内容証明」というサービスがあり,また内容証明郵便には「本人限定受取」を付けることができます。しかしながら,これらのサービスはあくまで書面(郵便物)であって,メールではありません。
②株式会社IKプロジェクト(届出番号_都75981103_は)
日本に存在する会社は必ず法務局で会社の登記がしてあります。そして,この登記の有無は登記情報提供サービスにて簡単に調べることができます。また,何の届出番号なのかわかりませんが,「都」ということは東京に会社があるのだと思われます。以上を踏まえて検索したところ,東京にそのような名前の会社はありませんでしたし,それどころか日本のどこにも株式会社IKプロジェクトという会社は存在しませんでした。
③ 懸賞報酬受取権放置
どのような権利なのかわかりませんが,字面から判断するに,何らかの懸賞に応募して当選し,報酬を受け取る権利があるのでしょう。
当選した権利を放棄するのは自由であって,当選した権利を放置したことで訴えられるということはあり得ませんし,そんなので訴えられるのであれば怖くておちおち懸賞に応募もできませんね。
④ アカウント不正放置によるサーバー障害
現代社会において,いろんなサイトでアカウントを作成し,今はまったく使っていないというアカウントは無数に存在すると思います。当該サービスの規約等で一定期間利用が無い場合にアカウントを削除する措置を取る旨の定めがされている場合がありますが,それによって損害賠償請求等をされることはあり得ません。もし,そのような理由で訴えられるのであれば,ネットを使う人の大多数が訴えられることになってしまいますね。
⑤ 瑕疵責任
売買契約等において,購入した物に契約当時には気付かなかったようなキズがあり,本来の性能を全うすることができないような場合には,買主さんは売主さんに対して瑕疵担保責任を追及し,売買契約の解除等をすることができます(民法570条)。
しかし,このメールでは瑕疵責任となっており,一体何の責任なのかよくわかりません。
⑥ 公判が開始
公判とは,刑事裁判で開かれるものであり,民事訴訟の場合は口頭弁論です。まぁ,単に言い間違いという可能性もありますが,普通はこのような間違いはしないでしょうね。
⑦ 公判日程は裁判所より貴方様の現住所または本籍地または勤務地宛へ、書留郵便が送付
口頭弁論期日の呼出状は,必ず現住所に送られ,届かない場合は原告の申立てで勤務先に送られることがあります(民事訴訟法103条)が,絶対に本籍地に送られることはありません。
また,呼出状は,書留郵便ではなく特別送達という特別な郵便で送られてきます。
⑧ 民事訴訟及び刑事訴訟の被告人(訴えられた側)となられた方は、訴訟履歴がマイナンバーへ登録されます
マイナンバーを国が利用するのは,社会保障,税,災害対策の3分野に限られています。その中に訴訟手続きは入っていませんので,マイナンバーに登録されるなどということはあり得ません。
→ 総務省サイト
ちなみに,裁判所はマイナンバーと訴訟をひも付けるどころか,マイナンバーがわかる書類を提出しないよう周知しています。
⑨ 国民消費生活組合
国民生活センターや消費生活総合センターなどといった公的機関は存在しますが,国民消費生活組合という公的機関は存在しません。
以上を総合的に考慮すれば,上記メールは間違いなく詐欺的メールですので,絶対に折り返しの連絡等はされませんようお気を付け下さい<(_ _)>
※1/23追記
消費者庁においても注意喚起がされております。