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8月 10 2019

少額訴訟について

数年前までは少額訴訟は,デメリットの方が大きいと思っており,少額訴訟が使える事件でも通常の訴訟で進めていたのですが,最近は少額訴訟を選ぶことも多くなってきました。

ということで,今回は少額訴訟についてまとめてみたいと思います。

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少額訴訟とは

 

少額訴訟については民事訴訟法366条以下に規定されており,簡易裁判所の訴訟手続における特則となります。少額訴訟を提起するためには,次の2つの条件を満たしている必要があります。

 

(1)60万円以下の金銭請求であること

金銭請求でなければなりませんので,一番分かりやすいのは貸金請求になるかと思いますし,未払い賃料の請求や請負代金の請求なども金銭請求になります。しかし,賃料の未払いに基づいて明渡を求めることはできませんし,物の引き渡し(例えば「車を引き渡せ」)などは通常の訴訟にて行う必要があります。

 

(2)同じ裁判所では1年に10回まで

個人が利用することを想定した手続であるため,1年間に10回までしか少額訴訟はできません。もっとも,1年に10回以上行うのはサラ金等の貸金業者くらいかと思いますので,個人の方にはあまり関係がありません。また,あくまで同じ裁判所での上限が10回というだけですので,別の裁判所に管轄があるのであれば,10回以上少額訴訟を提起することは可能です。

 

少額訴訟の特徴(メリットやデメリットも含む)

少額訴訟を選ぶに際してメリットやデメリットがありますし,また少額訴訟特有のものもありますので,この点についてまとめてみます。

ピンク色がどちらかというと原告にとってメリットであり,紫色がどちらかというと原告にとってデメリットになり,黒のままなのはどちらでもないものになります。

 

①1期日審理の原則

裁判と聞くと,場合によっては何年もかかるイメージがあるかと思いますが,少額訴訟は1回の期日で終わりますのでかなり迅速に進みます。ただし,1回の審理で終わってしまうということは,あとで証拠を追加するということもできませんので,しっかり準備をしたうえで訴訟を提起することになります。

 

②反訴の提起ができない

これは被告側の立場になりますが,通常の訴訟の場合,訴えられた場合に訴えし返すという反訴が認められています。例えば,交通事故で治療費などの請求を受けた場合に,逆にこっちが支払ってほしいということで反訴をするというようなケースがあります。少額訴訟ではこのような反訴が認められていません。ただ,少額訴訟の手続上反訴が認められていないだけで,通常の訴訟手続で請求することは可能です。

 

③通常訴訟への移行されることがある

被告は特に理由なく,少額訴訟ではなく通常訴訟で審理すべき旨を求めることができ,その場合は必ず通常訴訟に移行します。

 

④公示送達はできない

相手が行方不明でも訴訟を行うことができ,その場合は公示送達という裁判所の掲示板に呼び出し場を貼る方法で相手方に通知をします(事実上,相手が知ることはありません。)。しかしながら,少額訴訟に関しては公示送達が認められておらず,相手が行方不明の場合は少額訴訟は選択できません。

 

⑤勝手に分割弁済にされることがある

通常の訴訟において,和解が成立しなければ一括で支払えという判決が出されますが,少額訴訟の場合は相手方の経済事情などを考慮して分割によって支払っても良い,もしくは遅延損害金は免除するというような,完全に原告が勝訴するような事案でも被告に有利な判決が出されることがあります。この判決には不服を申し立てることができません。

 

⑥控訴ができない

通常の訴訟においては,判決に不服があるときは,上級の裁判所に対して控訴することができます。しかし,少額訴訟は控訴ができないことになっており,異議の申し立てのみ認められています。異議の申し立ては,上級の裁判所ではない,判決をした当該裁判所に出すものであり,同じ裁判所が審理をします。ただし,異議後の判決についても控訴は認められておりません。

 

⑦必ず仮執行宣言が付く

強制執行をするためには判決後に判決が確定しなければなりませんが,例外的に仮執行宣言が付いている場合は判決後すぐに強制執行ができます。通常の訴訟でも仮執行宣言が付くことが多いのですが絶対ではありません。それが少額訴訟の場合は必ず仮執行宣言が付くので,迅速に強制執行に進むことができます。

 

⑧少額訴訟債権執行制度が利用できる

通常の訴訟の場合,強制執行は地方裁判所の管轄となりますが,少額訴訟債権執行については判決をした裁判所がそのまま強制執行の手続ができます。もっとも,手続の時間が早くなるかというとそれほど変わらないように思いますし,費用も特に変わりませんので,そこまでメリットがあるかというと微妙です。司法書士の立場としては,通常の強制執行は書類作成にすぎませんが,少額訴訟債権執行は完全に代理人として手続を進めることができるという違いがあります。

 

当事務所では

もちろん,個々の事件によって適切な手続がありますので一概には言えませんが,上記をご覧いただくとお分かりになるとおり,少額訴訟のメリットというのは1期日で終わるということくらいで,それ以外はあまりメリットはありません。むしろ,公示送達が使えなかったり,分割弁済の判決が出される可能性があるなどデメリットの方が大きいと思っていたのでほとんど利用していませんでした。

ただ,実際には通常訴訟への移行を求められたことはなく,判決も分割になったことはないので,やはり1回で終わるというメリットは大きいと思い最近はよく選んでいます。

また,少額訴訟は弁護士や司法書士などの専門家に依頼しなくても,ご自身でも進められるよう制度設計されており,専用の用紙も裁判所に備え付けられています。

もし,ご自身で進めたいということであれば,少額訴訟を選んでみるのもいかがでしょうか。

 

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5月 30 2019

ハンコについてあれこれ

日頃何気なく使っている,「ハンコ」や「印鑑」,重要な時に使う「実印」や「認印」,はたまた契約書などの書類にハンコを押すときの「押印」や「捺印」,複数のページになる場合の「割印」や「契印」など,ハンコに関して実は本来の意味とは違う意味で使っていることがあります。

今日は,ハンコに関する情報をまとめてみたいと思います。

 

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ハンコは印鑑ではなく印章

 

朱肉を付けて書類にポチっとするハンコ。あれは正式には「印章」と言います。もちろんハンコでも構いません。この点,「印鑑」と呼ぶこともあるかと思いますが,実は「印鑑」は誤りです。

「印鑑」というのは,名前が彫ってあるハンコの事ではなく,朱肉を付けて押したときに映る「印影」を登録している紙のことを言います。その紙が役所に保管されておりますので,「役所に登録してある印影(印鑑)の証明書」が印鑑証明書ということになります。もっとも,現在は紙で登録されていることはなく,データとして登録されています。

ただ,実際にはハンコのことを印鑑と呼ぶことが多いので,私もハンコのことを印鑑と呼んでいます。

 

実印と認印は登録の有無

 

上記のとおり,役所に印影を登録してあるハンコのことを俗に「実印」と呼び,そうでないハンコのことを「認印」と呼びます。したがって,すごく立派なハンコを作成しても役所に登録していなければ認印ですし,100円ショップで買ってきたハンコを登録すればそれが実印となります。なお,実印,認印ともに法律用語ではなく俗称となります。

また,重要な契約のときに実印での押印を求められることがあるかと思いますが,法的な効力としては実印でも認印でも効力が変わることはありませんし,もっと言えばハンコでの押印がなくても署名があれば有効な書面となります(民事訴訟法228条4項)。よく,「今日ハンコを忘れたので指で押します。」みたいなことがありますが,法的にはあってもなくても効力は同じです(ただし,本人が署名したことを否認した場合に指印で立証することはあると思います。)。

ただ,署名の場合は本当に本人が書いたのかどうかの判断が難しく,認印だと第三者が押印したものも同じ印影であるため,本人しか持っていないだろう実印を押印した方が本人の関与を立証しやすくなるため,重要な契約では実印での押印を求めることが多いと思います。

なお,法的な効力は別問題として,手続的にご本人が関与していることを証明するために必ず実印での押印を求められることがあり,その場合は必ず印鑑証明書(通常は発行から3か月以内)の添付を求められます。例えば,不動産の売買に関する登記申請の際には売主さんの印鑑証明書が必要書類となっておりますし,自動車の売買だと当事者双方の印鑑証明書の提出を求められます。

 

押印と捺印は基本的に同じ

 

ハンコを押すことを「押印」と言ったり「捺印」と言ったりしますが,どちらもハンコを押すという意味は同じでありどちらでも正しいです。両方の頭文字をとって「押捺」と呼ぶこともありますが,これも同様です。

ただ,使い方として押印は「記名押印(ゴム印やすでに印字してあるものにハンコを押す)」として使われることが多く,捺印は「署名捺印(自ら署名をしたうえでハンコを押す)」として使われることが多く,押捺は「ハンコを押すことに加えて指印を押すことも含む」と微妙に違いがありますが,いずれも「ハンコを押す」という意味としては同じですので,結局はどれでも良いということになります。

 

割印と契印は複数の紙に跨って押印

 

契約書が2ページになるときに,1ページ目の裏と2ページ目を重ね合わせてハンコを押すことがあります。一般的に「契印」や「割印」と呼ばれていますが,これは「契印」となり「割印」は誤りとなります。

契印は当事者が知らぬ間に契約書の一部が抜き取られたり加えられることを防ぐためにハンコで痕跡を残しておくことに加えて,一連一体の契約書等であることの証明にもなり,契印がないと役所での申請が通らないことがありますので結構重要な行為です。

一方,割印とは正副など同じ書類がある場合に,どちらも同じ内容の書類であることを示すために正副の書類に重なるように押印したり,関連する書類について重なるように押印することを指しますので,実生活上では割印をするケースというのはあまり多くないと思います。

なお,切手や収入印紙などが使用済みであることを示すためにハンコを押すことを「割印」と呼ぶことがありますが,これも誤りであり正しくは「消印」と呼びます。

 

ということで,雑学的な内容になってしまいましたが,この仕事をしていると間違って使ってしまうと恥ずかしいケースがありますのでまとめてみました。

 

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4月 04 2019

差押の競合

先日,給与差押えの手続を行ったところ,競合してしまいました。預貯金の競合は結構あるのですが,給与差押えでの競合はあまり無かったので,今回は競合についてまとめてみたいと思います。

 

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差押えの競合とは

 

原則として,債権を差し押さえた場合,一定期間経過後は直接取り立てて良いこととなっております(民事執行法155条1項)。したがって,預貯金を差し押さえた場合は金融機関と,給与を差し押さえた場合は債務者の勤務先と直接交渉をして支払ってもらうこととなります。

このように差し押さえが1件だけであればその債権者が独占すれば良いため特に問題とはなりませんが,複数人が同一の債権を差し押さえをすることがあります。この場合に,複数人の差押債権額の合計が債務者が有する債権額を超える場合を「競合」といいます。

 

具体的に記載すると,債権者である甲さんが,債務者である乙さんの預金を差し押さえようと考え,A銀行の預金を差し押さえたとします。ところが,丙さんも乙さんに対して債権を持っており,同一のA銀行の預金を差し押さえました。

この場合に,

(1)甲さんの債権100万円,丙さんの債権50万円,乙さんの預金が200万円という場合であれば,A銀行は甲さんと丙さんにそれぞれ全額支払えば良いだけですので競合とはなりません。

 

しかし,

(2)甲さんの債権100万円,丙さんの債権50万円,乙さんの預金が120万円という場合,A銀行は甲さんと丙さんに全額弁済することができませんので競合となります。

 

なお,租税債権等の例外を除き,「債権者平等の原則」により,早い者勝ちとなるわけではなく,金額,支払時期等に関係なく債権者は平等に扱われますので,先に差し押さえた甲さんが全額弁済を受けるということにはなりません。

 

競合した場合の処理

 

競合した場合,乙さんの預金があるA銀行は甲さん及び丙さんに弁済することはできなくなります。この場合,A銀行は法務局に預金120万円を供託しなければなりません。これを執行供託といいます。

その後,供託された120万円は裁判所の配当手続によって甲さんと丙さんに配当され,差押手続は終了となります。

 

ということで,通常の預貯金であればこれで終わるのですが,給与債権の場合は,これが毎月生じることになります。

つまり,債務者の勤務先は競合している以上,毎月手取り給与の25%(民事執行法152条1項)を法務局に供託し,裁判所は毎月配当手続を行うことになります。もっとも,現実的に毎月配当手続を行うことは大変であるため,3~4か月分の給与が供託される度に配当手続を行う裁判所が多いと思います。ただ,3~4か月に一度で良いのは配当手続であって,勤務先が毎月供託することには変わりはありませんので,勤務先は本当に大変だと思います。

 

ただでさえ,給与の差し押さえとなると手取り給与の25%しか差し押さえができず回収までにそれなりの期間を要するのに,さらに競合したとなるとさらに期間を要することになるので,やはり競合した旨の書類が届いたときはがっくりきます・・・。

なお,競合になるかどうかは差し押さえによる回収が終わるかどうかで決まります。給与の場合は給料日の問題がありますのでなかなか難しいですが,預貯金の差押えの場合は債務者に裁判所から差押えの書類が送達されてから1週間後に直接取立権が生じ,すぐに銀行に連絡して回収することができますので,競合する前に迅速に進められた方が良いかと思います。

 

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1月 08 2019

分割弁済の完走(完済)

ご依頼いただく債権回収のほとんどが分割弁済による解決になります。事前の交渉を試みても一切連絡が取れずに訴訟となり,強制執行を行うケースもありますが,それでも一括で回収できるケースはあまり多くなく,その後に連絡をいただいて分割弁済になることが多いです。

 

今回は,あくまで当事務所が関与しているだけでの話となりますが,分割弁済の完済率についてまとめたいと思います。

 

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1 全体の80~90%が分割弁済

相手方に金銭の支払いを求めた場合,本当の実情は分かりませんが,やはりお金が無いことを理由に分割弁済を求められることが多いです。こちらとしても,分割とはいえ全額返済してもらえるのであれば,不合理な長期間で無い限り分割弁済で合意しています。

 

すべての事務所に当てはまるものではありませんが当事務所では以下のような感じです。

 

(1)話が出来て一括で回収できるケース → 10%程度

(2)こちらからの連絡は完全無視で一切連絡が取れず交渉もできないケース → 5%程度

(3)相手方から連絡があり交渉するか,訴訟手続を行った後に和解して交渉するなどして分割弁済となるケース → 85%程度

 

2 分割弁済の和解の方法

分割弁済の和解(合意)には,訴訟提起前に任意で和解書のやり取りを行うケースと訴訟提起後に裁判上和解が成立するケースがあります。

前者の場合はあくまで私文書であるため強制力はないものの,書類を作成するだけですので費用は抑えられます。少なくとも,当事務所ではご依頼いただいたうえで合意が成立した場合の書面の作成自体は無料なので費用はまったくかからないことになります。

一方,後者は分割弁済が滞った場合には預貯金や給与などの強制執行ができるため強制力が強いですが,そのためには訴訟手続を行うことになるため,それなりの時間と費用がかかります

 

なお,中間の方法として公正証書で和解書を作成すれば訴訟等を行うことなく強制力が強い書面を作成することも可能ですが,当事務所はあまりこの方法は執りません。

 

3 分割弁済の完走率

一般論としては,強制執行ができる裁判上和解の方がちゃんと完済してもらえそうな気がしますが,それほど変わらないように思います。どのような書面で和解が成立したとしても,結局は相手方次第だと思います。

ただ,1つだけ確実に完走率が確率が上がる場合があり,それは強制執行後に和解をした場合です。

 

裁判上の和解が成立し,「返済に遅れた場合は強制執行をされるかもしれない」という状態であっても,普通の方は強制執行を受けたことが無いので強制執行をされることの実感がありません。ところが,実際に強制執行をしてみると,勤務先に通知が届いたり(給与の債権執行),突然自宅に執行官が来たりします(動産執行)ので,以降のレスポンスは早くなりますし,遅れることなく返済してくれることが多くなります。

 

これまた,あくまで当事務所の感覚ですが,和解後にしっかり完済するのは概ね以下のような割合です。

(1)訴訟に和解が成立した場合 → 60%程度

(2)訴訟(裁判上)の和解が成立した場合 → 70%程度

(3)強制執行後に和解が成立した場合 → 90%程度

 

つまり,強制執行後に和解が成立したのに,それでも支払いが滞る方がいらっしゃるということです・・・。もうこうなると再度強制執行するしかありませんが,そのような方は差し押さえられるような財産がなく,現実的な回収は難しくなります。

 

以上,どの程度参考になるか分かりませんが,債権回収手続をご検討いただく一助となれば幸いです。

 

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10月 24 2018

欠席判決=勝訴ではない

先日,弁護士さんの懲戒請求に絡んだ損害賠償請求で,被告(懲戒請求者)が敗訴したという記事がありました。

 

この記事に対して,「欠席判決だから意味が無い」というようなコメントがあるようです。確かに,欠席判決の場合は,被告の主張を聞かずに判断され,極めて高い確率で原告勝訴となりますが,意味が無いというものではありません。今回の訴訟は懲戒請求が不法行為に該当するかどうかの訴訟であるため,意味が無いどころかかなり影響があるものだと思います。

ということで,私は上記の懲戒請求とはあまり関係ないのですが,今回は欠席判決全般についてまとめてみたいと思います。

 

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1 通常訴訟の流れ

訴えが提起されると,裁判所から被告に対して訴状等の関係書類が送付されてきます。送付された書類の中には2つの重要な期日が書いてあり,1つが答弁書提出期限,2つ目が口頭弁論期日です。

 

答弁書とは,被告側の初回の反論の書面のことであり,「被告の請求を棄却する。との判決を求める。」だったり,「原告から借りたお金は○月○日に返済した。」など,その理由を記載することになります。

通常,答弁書提出期限は口頭弁論期日の1週間程度前が設定されており,口頭弁論期日にとりあえずの原告と被告の主張が出て,審理が始まることになります。

この答弁書提出期限はあくまで目安であり,遅れたとしても特にペナルティはありませんが,答弁書を提出せず,口頭弁論期日に欠席してしまうと後述のとおり不利益がありますので,なにはともあれ出した方が良い書類です。

 

次に,口頭弁論期日というのは,いわゆる「裁判の日」であり,裁判所に出廷する日時となります。

2回目以降の期日は当事者と裁判所が打ち合わせをして決めるのですが,初回の期日に関しては被告の予定は関係なく一方的に決められてしまいます。そこで,これに対する救済措置として,事前に上記の答弁書を提出しておけば,口頭弁論期日には出廷しなくても良いことになっています(民事訴訟法158条)。

 

2 答弁書を提出せず口頭弁論期日で反論しなかった場合

 

被告が,答弁書に反論内容を記載して口頭弁論期日を欠席したり,逆に答弁書は提出していないけど,口頭弁論期日に出て口頭で反論した場合,その場で判決できるような特殊な事情が無い限りとりあえず裁判は続行することになります。

逆に,被告が答弁書で請求をすべて認めるような記載をして口頭弁論期日を欠席した場合や口頭弁論期日に出て請求を認めるような発言をした場合,特に争うことがありませんので裁判所は判決することができます。もちろん,被告が出廷しているのであれば和解協議が行われることも多いと思います

 

では,被告が答弁書を提出せず,しかも口頭弁論期日に出廷しなかった場合はどうなるのでしょうか。

この場合,被告の真の意思は分からないのですが,法律的には裁判所は原告の主張を認めることになっています(民事訴訟法159条)。これを法律的には擬制自白と呼んでいます。

例えば,原告が「被告に対して100万円を貸した。」という主張をしている場合,擬制自白が成立することによって,裁判所は借用書や通帳など一切の証拠無しに100万円貸したことを認めて良いことになっています。

したがって,擬制自白が成立する以上,原告が勝訴する可能性が極めて高くなり,このような判決のことを俗に欠席判決と呼んでいます。

 

3 擬制自白に含まれるものと含まれないもの

 

擬制自白=原告勝訴になりそうですが,実は擬制自白の制度は事実認定にしか及ばないとされています(民事訴訟法179条)。

「事実」というのは「100万円を貸した」,「被告に殴られた」というようなものを指します。

 

これに対し,法律の解釈・適用や事実の評価などは対象外となります。

例えば,親である原告が子である被告に対して,「子が成人したら,子は親に対して毎月10万円支払うのが健全な社会だ!」と裁判所に訴えを提起し,子が何ら反論をしなかったとしても原告の主張は認められません。なぜなら,「子が成人したら親に対して10万円ずつ支払う」という法律が無いからです。

これは極端な例ですが,実際に擬制自白が成立しても法律の解釈・適用により原告が敗訴した実例があります。

平成17年(少コ)第1186号売買代金請求事件

 

上記の裁判例は,通販会社である原告が,被告に対して代金の請求をしている事件ですが,被告に擬制自白が成立しているものの,裁判所はクーリングオフが適用されるとして原告敗訴の判決をしています。

 

また,とある事実が認定されたとしても,それが法律上の不法行為に該当するかどうかは裁判所が判断することになりますし,慰謝料も裁判所が決めます

例えば,隣家の騒音がうるさくて精神上の損害を受けたとして被告を訴え,被告が答弁書を提出せず口頭弁論期日を欠席して擬制自白が成立したとしても,あくまで「隣家から音が出ている」という事実について擬制自白が成立するだけで,それが不法行為とされるほどの音量ではない場合(受忍限度の範囲内)には原告敗訴の判決が出ることになります。同様に,「平手打ちをされてけがをした」ということで1億円の損害賠償請求をし,被告の欠席等により擬制自白が成立したとしても,「被告が平手打ちをした」という事実について擬制自白が成立するだけで「慰謝料1億円」まで及ぶものではありませんので,被告が欠席したとしても慰謝料として1億円も認められることはあり得ません。

あくまで「事実」についてしか擬制自白は成立せず,騒音が不法行為に該当するか,平手打ちで受けた損害(慰謝料等)の評価額などは裁判所が決めることになります。。

 

4 まとめ

 

冒頭の懲戒請求事件について,「被告が懲戒請求をした」ということは擬制自白で認定されると思いますが,その懲戒請求が不法行為に該当するものなのか,仮に該当するとしても慰謝料がいくらになるのかは,例え擬制自白が成立したとしても,ちゃんと裁判所は判断しています。仮に被告が行った懲戒請求が不法行為に該当するようなものではなかったと裁判所が判断したのであれば,擬制自白が成立していたとしても原告敗訴の判決がなされたはずですが,原告勝訴の判決が出ていますので,懲戒請求は違法なものだったいうことになります。

ただ,まだ判決が出たばかりですので,控訴・上告がされれば結論が変わる可能性もあります。

 

なお,公示送達に関する記事でも説明しておりますが,送達が公示送達だった場合には擬制自白は成立しません

公示送達は,裁判所の掲示板に呼出状が貼られるものであり,現実的に被告は裁判を起こされていることを知るよしもありませんので,そんな中で被告欠席による擬制自白を認めることはあまりにも酷であることから,原告は証拠による立証が必要となります。

ただ,普通は証拠を踏まえたうえで訴訟を起こしていますので,公示送達でも原告勝訴になることがほとんどだと思います。

 

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10月 15 2018

給与の差押えでもなかなかスムーズにいかないケース

最近,裁判上の和解をしても支払ってもらえなくなることが多く,結果として債務者の給与を差し押さえることがあります。

給与は,債務者が退職しない限りは少ないながらも毎月回収できますので,他の差し押さえと比べても比較的回収率が高い手続ではあるのですが,ここのところ立て続けに悩ましい事態に遭遇してしまいました。

今回は給与の差し押さえについて少しまとめたいと思います。

 

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1 原則として手取り給与の25%

 

給与の差押ができる上限が定められており(民事執行法152条1項),差押債権目録に定型文句として以下の文言を記載いたします。

「給料(基本給と諸手当。ただし,通勤手当を除く。)から所得税,住民税,社会保険料を控除した残額の4分の1(ただし,上記残額が月額44万円を超える時は,その残額から33万円を控除した金額)」

 

簡単に言えば,手取り給与の4分の1(25%)を差し押さえるというものであり,手取り給与が44万円を超える場合は33万円を控除した残りの金額を全額差し押さえることができます。

例えば,手取り給与が20万円だった場合は5万円を差し押さえることができますし,手取り給与が100万円だった場合は33万円を控除した67万円を差し押さえることができます。

 

また,給与に限らずボーナス(賞与)も対象となりますし,退職した場合に支給される退職金も対象となります。

 

例外的に,養育費や婚姻費用など生活にかかわるお金の場合は手取り給与の半分を差し押さえることができます(民事執行法152条3項)。

 

2 第三債務者の協力が必要

 

給与の差し押さえをしても自動的に裁判所が債権者に振り込んでくれるわけではなく,第三債務者(通常は債務者が勤務先の会社)に話しをしたうえで毎月送金してもらわなければなりません。つまり,勤務先の協力が必要になるということです。

差押の書類は勤務先にも郵送され,届いた時から上記の25%を控除した分しか債務者たる従業員に支払ってはいけません。万が一,全額支払った場合は,対債権者との関係では支払ってないことになり,債権者に対して25%分は二重払いしなければならないことになりますので,普通は勤務先は債権者に対して支払ってくれます。

ところが,中には裁判所の命令を無視して全額従業員に支払い続ける会社があります。債権者には対抗できないので債権者に対して二重払いしなければならない旨を説明しても,「自分が法律」と思って聞く耳を持たない社長さんもおり,支払ってもらえません。そうなると,もう勤務先の会社を訴えて回収するしかありません。

 

ただ,そのような場合でも差し押さえ金額の全額について訴えることができるわけではなく,経過分しか請求ができません

上記の例にあるとおり,仮に債務者の手取り月収が20万円だった場合1ヶ月当たり差し押さえができる金額は5万円です。とすると,最初の給料日が来た時点で会社が支払ってくれなかった場合は5万円についてしか訴えることができません。したがって,50万円回収したいということであれば10ヶ月待って訴えることになりますし,100万円であれば20ヶ月待たなければなりません。

最終的には回収できる可能性はありますが,このような事態になると大変です。

 

3 競合している場合

 

同一の債務者の給与に対して複数の差押が入ることがあります。これを「競合」と言います。

競合した場合,第三債務者は法務局に供託しなければなりませんので,会社としても面倒です(民事執行法156条2項 執行供託(義務供託))。

この場合,債権者は会社から支払ってもらうのではなく,配当手続によって支払ってもらうこととなり,最終的には法務局から払い渡してもらうことになります。

また,何より困るのが競合しているということは取り分が少なくなるということです。つまり,上記の例で言えば毎月5万円ずつ回収できたものが,他の債権者と分けることになりますので,毎月2~3万円ずつしか回収できないことになってしまいます。

競合しているかどうかは勤務先の会社から送られてくる「陳述書」という書類に記載されているため,この書類が届いた時はいつもドキドキです。

 

 

このように給与を差し押さえてもなかなかすぐに回収することができないのですが,それでも預貯金等の差し押さえよりは回収可能性は高いので,今後も給与の差し押さえは生命線だと思います。

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9月 05 2018

主文に記載されている「訴訟費用」,「仮執行宣言」とは?

貸金請求や明渡請求等で訴訟をして勝訴した場合,「被告は,原告に対して100万円を支払え」,「被告は,原告に対して,別紙物件目録記載の建物を明け渡せ」など,原告が求める内容が主文に記載されます。原告の請求した内容と主文が一致している場合,原告の勝訴ということになります。

ところで,主文にはこういった原告のメインの請求のみではなく,他のこともいくつか書いてあります。この点についてのご質問をいただくことがあるため,今日はこの点についてまとめておきたいと思います。

 

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主文とは

そもそも「主文」とは,訴えに関する裁判所の結論部分を言います。上記のとおり,「100万円を支払え」,「建物を明け渡せ」などになります。

被告が100万円を支払わなければならない理由(例えば,「100万円を借りていたのに返済していない」,「交通事故によって100万円の損害が生じている」など)や建物を明け渡さなければならない理由(例えば,「家賃を3ヶ月滞納して契約が解除された」,「権原もないのに不法占有している」など)については,「事実及び理由」や「理由の要旨」という欄に記載されます。

具体的には下記のような感じです。

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訴訟費用とは

上記をご覧いただくと,第2項に「訴訟費用は,被告の負担とする。」という記載があります。

これをご覧になって,「弁護士や司法書士の費用も被告に支払ってもらえることですか?」というご質問をいただくことがあります。

ここでいう訴訟費用とは,「訴訟手続を行う上で支出された費用であって民事訴訟費用等に関する法律という法律の中に定められた範囲のもの」をいいます。

具体的には,申立て(訴え提起)のときに収入印紙を貼って支払う手数料,裁判書類の送達のための郵券などが有名ですが,それ以外にも当事者や代理人が出頭するための日当交通費宿泊費,外国語で書かれた文書の翻訳料なども訴訟費用に含まれます(同法第2条)。

ところが,この中に代理人(弁護士や司法書士)の報酬は入っていませんので,「訴訟費用」には含まれないということになります。

 

ちなみに,手数料(収入印紙)や郵券はそのまま使った額になるので良いのですが,実際の支出額と訴訟費用として認められる金額が異なる場合が結構あります。

例えば,交通費(旅費)に関しては,住所地を管轄する簡易裁判所から出廷した裁判所を管轄する簡易裁判所の移動にかかる費用となっており,それが同一の場合は一律300円となっております。

具体的には,名東区の方が名古屋簡易裁判所に出廷した場合,住所地も出廷した裁判所もともに管轄する裁判所は名古屋簡易裁判所であるため,実際には1000円以上かかったとしても一律300円しか認められませんし,もし住所地から裁判所まで500メートル以内であれば0円となっております(民事訴訟費用等に関する規則第2条)。また,当事者等が出廷した場合,日当が支払われますが,これも3950円しか出ず,仕事を休んだ方の給料相当額が出る訳でもありません。

 

それでも,支払われないよりは支払ってもらった方が良いため,勝訴した場合には請求した方が良いと思います。

なお,判決後に相手が任意に支払ってくれるのであれば問題ないのですが,そうでない場合は,訴訟費用額確定処分の申立てをしたうえで,強制執行にて回収することになります。

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仮執行宣言とは

判決に基づき強制執行を行うためには,原則として判決が確定していなければなりません。というのは,日本の裁判は三審制となっており,第1審で原告勝訴の判決がなされたとしても,控訴や上告によって覆ることがあるためです。ですので,判決が出た後に控訴・上告期間が満了したり,第三審の判決が出ることによって判決は確定し,強制執行に進むことができます。

しかしながら,訴えを起こした原告側としては第1審で勝訴判決が出たのであればすぐに支払ってもらいたいと思うのが当然ですし,ある意味三審制を悪用して,被告側が無意味に時間稼ぎをする可能性も否定できません。そこで,判決が確定していなくても強制執行を認めることがあり,これを「仮執行宣言」と呼んでいます。

あくまで「仮に」執行を認めるだけですので,強制執行で回収した後に,控訴や上告で結論が変わった場合には受領した金銭等を被告に返却しなければならないことになっています。また,お金で解決できるもののみに仮執行宣言は認められていますので,建物の明渡や登記の請求などには仮執行宣言は認められていません。

さらに,仮執行宣言は原告側の便宜のために認められているに過ぎませんので,仮執行宣言が付されたからと言って,必ず確定前に強制執行をしなければならないわけではありません。

 

以上,あまり取り上げられることが少ない,訴訟費用と仮執行宣言のお話しでした。

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8月 08 2018

公示送達が無効に!

公示送達が無効になるという興味深い事件がありましたので,記事から分かる範囲で解説し,まとめておきたいと思います。

 

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公示送達とは

 

公示送達については何度か触れておりますので,詳細については,こちらをご覧いただければと思います。

→ 想いよ届け!【書類の送達】(平成25年8月29日)

→ 公示送達の訴訟(平成26年2月14日)

→ 付郵便送達と公示送達(平成30年4月25日)

 

すごく簡単にまとめると,

(1)相手方(被告)が行方不明で裁判に関する書類が届かない

(2)裁判所の掲示板に呼出状を貼り,2週間経過すると相手に届いたことになる

(3)付郵便送達と異なり勝訴するためには証拠が必要

というものです。

 

相手の住所が分からないと裁判ができないとなると訴える側(原告)にとって酷な結果になってしまいますので,相手(被告)が行方不明である場合にはやむを得ない手続かと思いますし,裁判所としてもしっかり証拠調べをしたうえで判決を出しますので,必ずしも公示送達だからと言って原告勝訴になるわけではなく,被告に酷すぎる結果になるとも限りません。

もっとも,訴訟を提起する以上,証拠があることがほとんどですので,現実的にはほぼ原告が勝訴するかと思います。

 

今回の事件では

本日,こんな事件が報道されました。

 

→ 11年前の確定判決、異例の取り消し…東京高裁(読売)

 

以下,記事の一部を引用いたします(青字部分)。

2007年8月に確定していた民事訴訟の1審判決を取り消していたことがわかった。1審の裁判所が、被告の住所が判明しているにもかかわらず訴状を郵送せず、提訴されたことを掲示板に貼り出す「公示送達」の手続きを経て審理に入っていたことが問題視された。

(中略)

民事訴訟は、訴状が被告の手元に届いた段階で始まるとされ、送達先は原告側が確認する必要がある。男性が女性の住所地を調べたところ、表札もなく、居住が確認できなかったため、「女性は無断で引っ越した」と判断。同年6月、同区役所から取得した女性の住民票(除票)を同支部に提出し、公示送達を申し立てた。

除票には女性の転居先の住所が記載されていたが、同支部はこれを見落として男性の申し立てを認め、訴状が提出されたことを示す書面を敷地内の掲示板に貼り出した上で、同年7月に第1回口頭弁論を開いた。女性が出頭しないまま、同支部は男性の請求を認める判決を言い渡し、同年8月に確定した。

<引用終わり>

 

今回の事件では,公示送達が無効と判断されていますが,これは完全に裁判所のミスかと思われます。

記事によると,原告の男性は弁護士さんに依頼せず本人訴訟で進めています。原告は被告の住所を調べたが本人の居住が確認できず,除票を提出したうえで公示送達の申立てをしたそうです。

私どもがご依頼をお受けした場合も同様の状況にはよく遭遇します。この場合,裁判所から被告の住所の調査を指示されるため,近隣住民の方や管理会社などにお話しを伺ったり,夜に行って電気が付いていないかなどを確認します。この調査をする場所は基本的には住民票の場所であるため住民票を取得しますし,仮に転居しているのであれば除票が発行され,除票に記載されている転居先を調査することになります。

今回の記事によれば,除票に転居先の住所が記載されているとのことですので,私であれば当然ながら転居先の調査を行いますが,原告は本人訴訟であったため除票の記載にはあまり詳しくなかったものと思われます。

したがって,公示送達の申立てを受けた裁判所が原告男性に指示をして,転居先の住所を調査させるべきだったにも関わらず,それをしないまま公示送達をしてしまっているので無効という判断になっているようです。

 

具体的な手続

 

詳細が書かれていないため推測になりますが,被告の女性はもともとの裁判に対して控訴していると思われます。

というのは,控訴は判決を受け取ってから2週間以内に申し立てなければなりませんが,公示送達での送達は無効であるため,被告女性は未だ適正な送達で判決書を受け取っていない状況にあります。したがって,いつまで経っても2週間は経過しないことになり,控訴ができるのだと思います。

そして,当該控訴は有効な控訴として扱われ,今回の判決に至っています。

また,最近原告が提訴した訴訟については,恐らく二重起訴の禁止に該当し,却下されることになるのではないかと思われます(民事訴訟法142条)。

 

消滅時効はどうなるのか

 

上記のとおり私としては裁判所のミスであるため原告男性は悪くありません。ただ,すでに時効期間である10年が経過していますがこれはどうなるのでしょうか。

この点,消滅時効は訴え提起の時に中断することになっています(民法147条1号)。本件訴訟は未だもって係属中となりますので,時効も中断したままということになります。

また,東京高裁はさいたま地裁の判決を取り消して,さいたま地裁に差し戻しています。ということは,結局のところ改めて1審の審理が始まるのであり,必ずしも被告である女性が勝つとは限りませんので,原告がしっかり立証すれば改めて原告勝訴の判決がなされることは考えられます。

 

このような事件はなかなか無いのですが,上記のとおり私としては頻繁に公示送達の申立てを行っておりますので,今後もしっかり調査をしなければならないと改めて肝に銘じておきたいと思います。

 

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7月 25 2018

二段の推定

「二段の推定」というのは,民事訴訟における書類の作成に関する論点であり,民事訴訟法の勉強をすると出てくるテーマなのですが,先日,実際にこの点が争点になった訴訟がありましたので,今後の備忘も兼ねてまとめておきたいと思います。

 

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その書類は真意に沿って作成されたもの?

 

今はインターネット社会であるため,通販などであればクリック一つで物が買えてしまうため,契約書等の書類に署名をしたり押印することはありません。また,コンビニでの買い物や自動販売機での購入など,必ずしも契約する際に書類に署名等をするわけではありません

しかしながら,不動産の売買だったり,住宅ローンの契約だったり,大きなお金が動く契約に関しては,やはり契約書に署名し,実印を押印することがあろうかと思います。

何もトラブルがなければ契約書が問題になることはないのですが,契約後に何らかの問題が起こった時には,その契約書の内容によって処理されることとなりますが,その前提としてその時に作成された契約書が偽造されたものではなく当事者が正式に作成したものでなければなりません。

と,言葉で説明するだけだと簡単なのですが,この「偽造されたものではなく当事者によって正式に作成された書面である」ということを証明するのは実はなかなか難しいです。

例えば,筆跡が似ているなどある程度は推定できるかと思いますが,筆跡を似せるプロが書いた偽物かもしれません。また,契約書に署名等をするときの状況を録画するということも考えられますが,今の技術だとそれすらも編集などでどうにかできてしまいそうです。さらに,印鑑に至っては誰が押印しても同じ印影となりますので,ますます本人が関与したのかどうか分からないということも考えられます。

 

このように,「偽造されたものではなく正式に作成された書面である」ということを確定させるのは実際のところは難しいのですが,すべての取引においてこれを言い出すと社会が回っていかないのもまた事実です。

そこで,法律ではある程度画一的に判断することとなっています。

 

民事訴訟法の規定と事実上の推定

 

文書が真正に成立(作成)されたかどうかに関する条文としては以下のものがあります。

民事訴訟法228条4項 → 「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」

 

ここで言うところの「署名又は押印」は,当然ながら本人の意思に基づいてなされたものでなければなりません。

署名の場合は,自分の手で書いているので本人の意思が無いということは考えにくいのですが,押印の場合は,すでに名前が印字してある(記名がある)契約書に第三者が勝手に押印することということも考えられ,このような場合には「本人の意思に基づいた」とは言えません。したがって,押印については,ご本人が押印したか,ご本人の了承のもと第三者が押印していなければならず,書類が本物(真正に成立した)だと主張する人は,本人の意思に基づいて押印されたことを立証しなければならないのですが,現実的には大変です。

 

ところが,判例により,押印されている印鑑の印影が本人の印鑑のものである場合には,本人の意思に基づいて押印されたものであると推定されることになっています(最判昭和39年5月12日)。

 

以上により,本人の印影が捺印がされた書類については,次の二段階によって真正に成立したものと推定されることになります。

 

一段目

・本人の印鑑が押印してある → 本人の意思のもとに押印されたものと推定する。

 

二段目

・本人の意思のもとに押印された書類がある → 民事訴訟法228条4項の規定により,文書が真正に作成されたものであると推定される。

 

となり,結果としては,本人の印鑑が押印してあれば「偽造されたものではなく正式に作成された書面である」という推定を受けることになります。

なお,「本人の印鑑である」ということを確実かつ容易に立証する方法は,実印+印鑑証明書のセットです。これにより役所が本人の印鑑であることを証明してくれますが,仮に認印だったとしても,基本的には本人が押印したものであると推定してくれます。

 

これはある意味恐ろしい話で,例え認印だとしても,ご自身がいつも使っている印鑑を盗まれてしまった場合,自身のまったく関知しないところで契約書に押印されているかもしれません。

もっとも,あくまで法律上の規定は「推定する」となっているため,反証を出すことで覆すことができます。例えば,契約書に署名等をしたとされる日は海外にいたことをパスポートなどで証明したり,まさに筆跡鑑定でご自身の字ではないことを立証することも考えられます。

とはいえ,あらぬ紛争に巻き込まれかねませんので,印鑑,特に実印については大切に保管されますようお気を付けください。

 

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4月 25 2018

付郵便送達と公示送達

今週,建物明渡訴訟において,付郵便送達で送達が完了した事件について期日があり,即日結審・判決がありました。

当事務所がご依頼いただいた事件だけでの割合ですのであまり当てにならないのですが,訴訟になった際の送達について,問題なく送達ができる(相手が書類を受け取る)割合は5割程度であり,3~4割程度が付郵便送達,残る1~2割が公示送達という感じです。さらに,建物明渡に限れば問題なく届くのは3~4割であり,むしろ過半数が付郵便送達や公示送達になっています

ということで,今日は付郵便送達と公示送達に絞ってまとめてみたいと思います。

なお,全体的な送達についてはこちらをご覧ください。

書類の送達

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付郵便送達と公示送達の違い

 

(1)付郵便送達(書留郵便等に付する送達)

端的にいうと,相手が送達先に住んでいるにも関わらず,裁判所から郵便された書類を受け取らず,郵便局の保管期間内に受け取らなかったため裁判所に返送されてしまったような場合に行う送達手続です。

付郵便送達が認められると,裁判所が書類を発送したときに送達が完了した(相手に書類が届いた)とみなされます。発送した瞬間に相手方に届くわけがありませんし,再度相手が受け取らない可能性もありますので,現実的には相手に書類が届かないということも考えられますが,受け取れる状況にあったにもかかわらず相手方受け取らなかったということで,ある種のペナルティとして届いたことにされてしまう手続です。

もしこのような制度が無かったとすると,相手が故意に受け取らなければいつまで経っても裁判が始まることはなく,永遠に敗訴することがないことになってしまいますからね(書類の送達が完了しないと裁判は開始しないため。)。

 

付郵便送達の場合,裁判の期日に相手が出頭しなかった場合は,こちらの主張をすべて認めたものとされ(擬制自白),証拠調べをすることなくこちら側の勝訴となる可能性が極めて高いです。ただし,付郵便送達は,相手方が送達先に住んでおり,現実的に書類を受け取る可能性も十分ありますので,裁判所に出頭されて反論されるということもあり得ます。

 

 (2)公示送達

一方,公示送達は,相手が行方不明であるためどこに郵送して良いのか分からないような場合に行う送達手続です。この送達が認められると,裁判への呼出状が裁判所の掲示板に掲示され,2週間経過すると相手に届いたことになります

付郵便送達であれば,再度郵送されてきますので訴訟を起こされたことを知りうることとなりますが,公示送達の場合は,相手が裁判所の掲示板の前を通り,掲示板を見て自分の名前を発見して裁判所に問い合わせなければなりませんので,自身が訴訟を起こされていることを知る可能性はほぼありません

したがって,相手が裁判の期日に出頭することもあり得ないため,さすがにこれだけでこちら側の主張がすべて認められるという訳ではなく,証拠を提出したうえで裁判所に判断してもらうことになります。もっとも,証拠もなく訴訟をすることもまずありませんので,公示送達の場合でもこちら側の勝訴となる可能性が高いです。

 

(3)共通点と相違点

上記送達の共通点としては,ともに相手が書類を受け取らない状態にあるためやむを得ず行う手続ですので,最初からこれらの送達方法を選択することはできず,まずは通常の送達を試みて,相手に届かなかった場合に初めて検討することになります。なお,勤務先が分かっているようであれば,先に勤務先への送達を試みる必要があります。

 

相違点としては,相手が書類の送達を知りうる状態にあるかどうかになります。つまり,相手が裁判所からの書類が届いていることを知っているにもかかわらず受け取らない場合には付郵便送達を,相手が知る由もないような状態にある場合で,こちら側も相手の所在がまったく分からない場合に公示送達を行うことになります。

ですので,相手が行方不明なのに付郵便送達をすることはできませんし,相手の所在が分かってるのに公示送達をすることもできません。このような状況で万が一付郵便送達や公示送達がなされたとしても,後日無効と判断され,裁判の結果がすべてひっくり返る可能性があります。 

 

付郵便送達か公示送達かの判断

上記のとおり,どちらを選択するかの判断は,簡単に言うと相手の所在が分かっていれば付郵便送達,分からなければ公示送達となるわけですが,この判断はそれほど容易ではありません。

というのは,「相手が受け取らない」というのが,相手が単に不在にしていただけで受け取っていないだけなのか,すでに転居してしまっていて受け取ることが事実上不可能な状況にあるのか客観的には分からないことが多いためです。

とはいえ,最終的には判断しなければならず,概ね以下のような基準で判断をしています。

 

1 郵便局の返送理由

裁判所が相手の書類を送付したものの返送されてきてしまった場合は,返送の理由の付箋が貼ってあります。

この理由が,「保管期間経過」であれば,少なくとも郵便局としてはその場所に相手が住んでいるものと認識していると考えますので付郵便の方向で考えることになります。

他方,「転居先不明」,「宛所に尋ねあたらず」という付箋が貼られている場合,相手がその住所に住んでいないということになりますので,付郵便送達はできず,転居先を探すか公示送達によることになります。

 

2 住民票の調査

必ずしも住民票の住所地に居住しているわけではありませんが,送達が出来なかった後に改めて住民票を取得しても同じところに住民票がある場合には,現在も居住していると認められやすくなります。

 

3 現地での調査

(1)住所地に訪問

相手の住所地を訪ねて相手が居住していれば確実です。私の経験上,一度だけ相手に直接出会ったことがあり,話を聞くと検査入院で不在にしていたとのことでした。

 

(2)近隣の方への聞き込み

「最近相手を見かけていないか」,「いつも何時頃帰ってきているか」等の相手の状況を聞き出すことになります。ただし,プライバシーの観点からすべてをお話しすることができないため,なかなかご協力いただけないこともあります。

 

(3)自宅及び周辺の状況

表札,郵便受けの状況,電気メーター,昼夜の状況の変化などになります。

表札に相手の名前が書いていれば,居住している可能性がかなり高くなります。

郵便受けについては,郵便物が溜まっていれば住んでいない方向に考えますが,定期的に確認し,とある日に郵便物が無くなっているとなるとまだ住んでいると考えることができます。

電気メーターについては,室内にいれば大きくメーターが動きますし,待機電力でも動いていますので,メーターが動いていれば家電などが室内にあり,まだ住んでいると考える方向に考えます。また,建物の明け渡しの場合だと,大家さんから電気等の使用の有無を電力会社等に確認していただくこともあります。まったく電気や水道が使用されていないとなると,住んでいない可能性がかなり高くなります(もっとも,先日の裁判において,未払いで電気ガス水道がすべて止められている状況においても居住の調査を行って付郵便を行った事例があります。)。

昼夜の状況の変化については,洗濯物の有無や室内の灯りの有無などになります。洗濯物が取り込まれていたり,灯りが点いているようであれば住んでいる可能性がかなり高いです。

なお,建物の明け渡しの場合においては,電気等が止められて時間が経っている場合は,万が一のことが考えられるため警察官に室内に入って安否確認を行っていただくこともあります

 

4 管理会社への問い合わせ

相手が賃貸マンション等に住んでいる場合は,管理会社に問い合わせて回答をもらうことが考えられます。

通常,管理会社が契約者の氏名などの個人情報を教えてくれることはありませんが,当該部屋において,「最近契約の更新があった」,「退去があった」などの個人情報とまではいかないような情報は教えてくれることが多いです。

 

以上を総合的に判断して,居住していると判断できる場合には付郵便送達を,そうでない場合は公示送達によることになります。

なお,公示送達の場合には,さらに戸籍の付票や不在住証明書,不動産の登記事項証明書などを取得することもあります。

 

 

付郵便送達の注意点

1 現実に届く可能性がある発送で無ければならない。

調査により確実に住んでいることが判明したため付郵便送達を行ったものの,付郵便送達を行う直前に相手が逮捕・勾留などをされており,現実的に届く可能性がゼロであった場合には,例え裁判所がその事実を知らなかったとしても,付郵便送達は無効となります。

 

2 勤務先への付郵便送達はできない。

自宅は不明であるものの,勤務先は判明しており,勤務先に送付したが受け取らないような場合であっても,勤務先に対して付郵便送達をすることはできません。この場合は公示送達をしなければなりません。

 

3 期日が延期される可能性がある

通常の送達を試みた時点で訴訟の期日が決まっていますが,郵便局の保管期間や調査などで時間がかかりますので,もともと予定していた期日が迫っていることがあります。したがいまして,付郵便送達になる際には改めて期日が設定されることがあります。なお,過去の裁判例では,付郵便送達発送から当初予定していた期日までに郵便局の保管期間(1週間)程度の期間あれば期日を変更しなくても良いとされていましたが,間に合う場合でも実際には余裕をもって延期することが多いように思います。

 

公示送達の注意点

1 上訴等の可能性

相手の所在が分かっているのに公示送達を行った場合など,相手の責任によらない事由により公示送達になってしまっていた場合には,民事訴訟法97条の規定により,判決に対して上訴することができます。

 

2 擬制自白は成立しない

上記のとおり,公示送達の場合は立証しなければなりませんので,公示送達になったとしても,証拠が無いと敗訴する可能性があります。

 

 

ということで,こちら側の主張が法的に認められるかなどを争う前に,裁判が始まるかどうかというのが重要だったりします。

貸金請求等のお金の問題については,判決が出ても直ちに解決とはならないことが多いですが,建物の明渡しにおいては判決が得られればほぼ解決しますので,特に送達の可否は重要となります。

たまたまですが,今月に入り,立て続けに付郵便送達の調査が多かったのでまとめてみました。

 

 

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