愛知・名古屋・岐阜・三重の方の債権回収・未払い家賃・売掛金・立ち退きに関するご相談ならはなみずき司法書士事務所

お問い合わせ

お気軽にご相談ください。(相談無料)電話番号0561-61-1514 ファックス番号0561-61-1535

トップページ » ブログ

ブログ

全手続共通

2月 03 2021

専門家への報酬を相手方に請求したい(最高裁判決)

債権回収のご依頼をいただく場合、多くのケースでは相手方の責任において支払いがなされていないため、やむを得ずご依頼いただいております。当初の予定どおり支払いがされるのであれば、わざわざ費用をお支払いいただいてまで弁護士や司法書士にご依頼されることはありませんからね。

もちろん、相手方にも言い分があり、内容によっては相手方の主張の方が法的に正しいということもありますので、必ずしも全件相手方に責任があるというわけではありません。

 

さて、相手方の責任において支払いがされない場合、専門家への報酬の支払いや訴訟になった時に裁判所に納める収入印紙等の実費については本来支出しなくてもよ良かった費用な訳ですから、かかった費用についても相手方に支払ってほしいという要望をいただくことがあります。

この点、お気持ちについては十分理解できるのですが、実際にはほとんど請求ができません。こちらについて簡単にまとめたものがありますので、こちらをご覧いただければと思います。ざっくり申し上げると、「裁判所に納める実費等についてのみ請求でき、不法行為の場合に例外がある。」となります。

→ 相手に求めることのできる必要経費

 

先日、弁護士報酬を相手方に請求できるかどうかについて争われた訴訟の最高裁判決がありましたので、今回はこちらをまとめたいと思います。

 

 

1 不法行為に基づく損害賠償請求の場合

 

弁護士や司法書士等との契約は請求する方が自ら選び、当該弁護士等の間で報酬に関する契約をしているため、この費用を相手方に請求することは原則としてできません。

しかし、不法行為(例えば交通事故)によって生じた損害について相手方に損害賠償請求をする場合、弁護士等の報酬の一部を請求することができます

→ 最高裁サイト

→ 判決全文(PDF)

 

その理由としては、「相手方の故意又は過失によつて自己の権利を侵害された者が損害賠償義務者たる相手方から容易にその履行を受け得ないため、自己の権利擁護上、訴を提起することを余儀なくされた場合においては、一般人は弁護士に委任するにあらざれば、十分な訴訟活動をなし得ないのである。そして現在においては、このようなことが通常と認められるからには、訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、右不法行為と相当因果関係に立つ損害というべきである。」

 

となっており、端的に言えば、自己の権利を守るために訴訟を提起することを余儀なくされた場合、一般的には弁護士等に依頼しなければ十分な訴訟手続を行うことができないから、諸般の事情を考慮して相当と認められる額を相手方に請求することができるということになります。

そして、この金額はほとんどのケースで損害賠償額として認められた金額の1割となっております。

例えば、1億円の損害賠償請求を行い、判決では6000万円が認められ、弁護士報酬として1000万円を支払ったとします。この場合、弁護士報酬分の損害として認定されるのは6000万円の1割である600万円ということになり、差額の400万円については自己負担ということになります。

 

2 債務不履行に基づく損害賠償請求の場合

お金を貸した相手方が返済してくれない、土地の売買契約を締結したものの相手方が払ってくれない、請負契約で工事を行ったものの請負代金を支払ってくれないなど、契約した相手方が約束を守ってくれずに損害が生じる場合があります。

 

つい先日最高裁判決がされたものについては、正確には事案は異なるものの、概ね下記のような内容です。

 

(1)Aさんが、売主であるB社から土地を購入する旨の売買契約を締結した。

(2)契約の条件として、B社がAさんに引き渡す前に、B社の責任において①土地上にある建物は事前に取り壊しておく、②担保権について抹消しておく、③土地の測量を終えておく、などが定められておりました。

(3)契約して数日後にB社の代表者が行方不明になり、土地の引き渡しはもちろんのこと、上記①~③について何もされておりませんでした。

(4)Aさんは、上記問題を解決するため、弁護士に依頼し、すべての問題を解決しましたが1000万円近い報酬を支払いました

(5)Aさんは、B社の不履行によって弁護士に頼しなければならなくなり、約1000万円もの支出をしなければならなくなったのであるから、その分は売買代金と相殺する旨を主張しました(弁護士費用の約1000万円はB社が負担すべき)。

 

以上の点について、最高裁は以下のとおり判示しました。

→ 最高裁サイト

→ 判決全文(PDF)

 

契約当事者の一方が他方に対して契約上の債務の履行を求めることは,不法行為に基づく損害賠償を請求するなどの場合とは異なり,侵害された権利利益の回復を
求めるものではなく,契約の目的を実現して履行による利益を得ようとするものである。また,契約を締結しようとする者は,任意の履行がされない場合があることを考慮して,契約の内容を検討したり,契約を締結するかどうかを決定したりすることができる。加えて,土地の売買契約において売主が負う土地の引渡しや所有権移転登記手続をすべき債務は,同契約から一義的に確定するものであって,上記債務の履行を求める請求権は,上記契約の成立という客観的な事実によって基礎付けられるものである。そうすると,土地の売買契約の買主は,上記債務の履行を求めるための訴訟の提起・追行又は保全命令若しくは強制執行の申立てに関する事務を弁護士に委任した場合であっても,売主に対し,これらの事務に係る弁護士報酬を債務不履行に基づく損害賠償として請求することはできないというべきである。

 

端的に言えば、誰が請求の相手方(加害者)となるのか分からない不法行為の場合と異なり、債務不履行に基づく損害賠償請求の場合においては、契約の時点で相手方の状況などを踏まえて、契約の内容等を決めたり、そもそも契約するかどうかの判断をすることができるのであり、また、契約の内容によって相手方がなすべきことは確定しているのであって必ずしも弁護士に依頼しなければならないようなものではないから、弁護士報酬については請求できないということになります。

なかなか厳しいようですが、契約の相手方を見極める責任は契約当事者双方にあるのであるから、契約どおりに支払い等をしてくれなかったとしても、ある程度は自己責任ですよということになってしまいます。だからこそ、金融機関や消費者金融等においては、お金を貸したとしても支払ってくれないと困りますので、審査がありますよね。また、請負契約等においても、会社の状況を調べる調査機関なども存在しており、自己防衛するしかないということになります。

 

3 契約の内容において弁護士費用を相手方が負担することになっていた場合

 

契約をする際に、特約等において「債務不履行があった場合に、当事者の一方が弁護士等に依頼した場合、その費用は相手方が負担する。」というような相手方が弁護士費用を条項が定められている場合があります。

特に、マンションの管理規約において、管理費の滞納に関する請求において弁護士費用は滞納者が負担するような規定が定められていることがあります。

 

実は、この点については確定的な見解がなく、無効となる考え方もあれば有効とする考え方もあります

まず、無効とする考えについては、以下のような点が理由となります。

・必ずしも契約時において対等な立場ではなく(例えば、「金銭消費貸借契約」、「事業者と消費者との契約」等)、一方が無理やりまたは知らないうちに契約している可能性がある。なお、事業者が消費者に対して請求する場合は、消費者契約法によって無効となる可能性が高いと思います。

・弁護士報酬は、請求者と弁護士等との間の契約によって決まるので、損害は1万円しか出ていないのに、弁護士報酬が100万円という損害と弁護士報酬の関係がおかしな状況が出てくる可能性がある。

 

有効とする考えについては、以下のような理由となります。

請求された側の不履行によって請求者が費用を負担したのだから、その分は負担すべき。

・契約時において、不履行の場合の違約金(違約罰)を定めることが認められているのだから、その中に含めれば良い。

 

あくまで私見とはなりますが、ある程度合理的な金額を請求するのであり、請求された側にかなりの落ち度がある場合には有効となり、損害額と比べて弁護士費用があまりにも過大となるような場合には無効と判断されるのではないかと思います。

 

なお、高裁判決とはなりますが、相手方への請求(管理費の滞納をした人への請求)を認めた裁判例があります。

→ 平成26年 4月16日東京高裁判決(PDF)

 

判決理由として、

区分所有者に管理費等の滞納がある場合において、被控訴人が弁護士に法的手続を依頼することが必要になったときは、その費用を他の区分所有者に負担させるのではなく、当該区分所有者に負担させることを予め定めておくことにより、迅速かつ公正な問題解決を図るものである。この趣旨からすれば、被控訴人が委任契約に基づき弁護士に対し支払義務を負う一切の費用を当該区分所有者に負担させるものと解するのが相当であって、弁護士費用の額が著しく合理性を欠くなど特段の事情がない限り、当該区分所有者がその全額の支払義務を負うものというべきである。

としており、弁護士費用を相手方に請求することを認めています。

 

4 まとめ

 

以上から、弁護士報酬等の相手方への請求については以下のとおりです。

①原則として請求できない。

②不法行為に基づく損害賠償請求の場合は、訴訟において認められた損害額の1割程度を請求できる。

③契約において特約がある場合は、認められる場合がある。

 

 【司法書士の債権回収最前線】目次はこちら


1月 21 2021

付郵便送達や公示送達における調査

任意の交渉がまとまらず、または交渉すらできない場合、最終的には訴訟等の法的手続を行うことになります。

訴訟を提起する場合、請求する側である原告が訴状等の関係書類を作成し、裁判所に提出することから始まります。ただ、この時点で裁判所に受付はされているものの裁判が開始されている状態にはなっておらず、訴状等の関係書類が請求される側である被告に到達したときに正式に始まることになります。これを係属といいます。

したがって、被告に訴状等が送達される(被告が書類を受け取る)ということはかなり重要なことなのですが、大企業であればそのような心配は無いものの、被告が個人だったり、社員数名の小さな会社だと留守などで送達されないことが結構あります。特に建物の明渡請求における被告は夜逃げしている場合もあり受け取らない可能性が高い傾向にあります。

 

このように被告に訴状等が送達されて初めて訴訟が正式に始まることになるので、故意に被告が受け取らないような事態を想定して、送達にもいくつかの方法が定められています。

送達の種類については過去にまとめていますので、こちらをご覧ください。 → 想いよ届け!【書類の送達】

 

いくつかある送達の中でも付郵便送達公示送達は、実際には被告が受け取っていないのに受け取ったことにしてしまうというかなり強力な手段であるため、それなりの調査をしなければなりません。

今回は、この調査についてまとめたいと思います。

 

 

1 役所での調査

基本的には被告の戸籍謄本や住民票の調査となります。

私ども司法書士等の士業については、ご依頼いただいた事件に関するものに限り、第三者の戸籍謄本や住民票等を取得することができますので、現住所や前住所等が分かれば比較的容易に調査できます(なお、あくまでご依頼いただいた事件に関するもに限って取得できるだけであり、無制限に取得できるものではありませんし、「住所の調査のみ」というご依頼をお受けすることもできません)。。

 

この点、士業以外の方であっても、正当な理由があれば、第三者の戸籍謄本や住民票を取得することができます(戸籍法10条の2住民基本台帳法12条の3)。

ただし、請求者の本人確認ができる書類(運転免許証等)のほか、請求する理由がわかる疎明資料(貸金請求であれば借用書、賃料請求であれば賃貸借契約書、売掛金請求であれば請求書など)が必要となります。

なお、一般的に貸金請求等で戸籍謄本が必要になるケースは少ないので、通常は戸籍謄本等は取得できませんが、相手方が亡くなっている場合には相続人に請求することになりますので、そのような場合に限り戸籍謄本は取得できることになります。

 

2 現地調査

実際に被告が当該住所にいるのかを確認するために現地調査を行います。

一番確実なのは、訪ねて行って被告と実際に出会えれば、それで終わりです。過去に何度か被告本人がいたことがあり、「裁判所に提出する必要があるので」と説明し、承諾を得たうえで写真撮影をしています。そのときに、「後日、改めて裁判所から書類が届くので、今度は受け取ってくださいね。」と説明するのですが、それでも受け取らない人が多いです。

 

ただ、実際には会えないことが多いため、住所地周辺を調査します。具体的には、電気メーターやガスメーターの状況、郵便受の状況(郵便物が溢れていないか等)、洗濯物の有無、夜間であれば明かりの有無などになります。オートロックのマンションだと建物内には入れませんので、集合ポストや洗濯物、夜間の明かりくらいしかできないことになります。これだと1日では判断できないので、何度か現地調査をする必要が出てきます。

 

また、戸建て住宅の場合は隣家の方にお話しを伺うこともありますし、アパート等であれば管理会社に電話して確認することもあります。

戸建て住宅だと、「〇〇さんと連絡を取りたいのですが、最近隣家の〇〇さんはご自宅に戻られていますか?」という感じで聞くと「いつもは何時頃帰ってきてるよ。」なんて教えてくれることがあります。

賃貸の管理会社においては個人情報の関係もありますので、なかなか詳細は教えてくれないことの方が多いですが、「〇〇〇号室は入居者の募集はされてますか?」みたいな聞き方であれば状況を教えてくれることもあります。

 

いずれにしても、確実な方法がありますので、その都度判断して調べるしか無いですね。

 

3 調査報告書

上記のとおり調査が終わった後に、調査結果を報告する書類を作成します。

裁判所のフォーマットは比較的簡素なものになっていますが、実際にはかなり詳しく記載しています。というのは、この報告書をもって「居住しているか・いないか」を裁判所が判断することになりますので、その判断ができる程度に情報提供をしなければならないからです。

したがって、報告書に加えて写真や取得した資料なども併せて提出する必要もあります。

あとは、裁判所の判断次第となりますが、場合によっては追加調査を指示されることもあります。

 

4 調査会社

ちなみに、このような現地調査等を行う業者さんも存在します。私は依頼したことはありませんが、場所によって3万円から15万円とのことですので、被告が遠方に居住している場合は依頼するメリットがあるかと思います。

 

 【司法書士の債権回収最前線】目次はこちら


1月 04 2021

不動産の強制競売について

債権回収を行う際、当然ですが、まずは相手方と交渉を行い、話し合いによって一括または分割で支払ってもらうことがベストです。結果として、回収できる金額が一番大きく、訴訟費用や強制執行に関する費用がまったくかからないためです。

 

しかし、相手方が交渉に応じない、または交渉をしても合意できない場合は残念ですが、訴訟等の法的手続を執らざるを得ません。訴訟提起後にも訴訟上の和解をすることはありますが、当事務所でお受けしている事件の多くは、相手方が訴訟手続自体を無視して判決まで至ります。

 

ここまで来てしまうとあまり良くありません。

財産があれば、差押えて回収することができますが、訴訟手続を無視するような方に差し押さえができるような財産があるケースはほとんど無いからです。

この点、財産が無かったとしても勤務先が分かるようであれば給料を差押えて回収することができます(ただし、概ね手取り給与の25%です。)。一方、預貯金の口座を差押えても口座にお金が入っていることはほとんどなく、動産執行をしてもめぼしい財産はまずありません。

あとは、繰り返し強制執行を行うか、どうにかして財産を見つけていただくか、粘り強く交渉を続けるか、という話になってしまいます。

 

ところで、上記のとおり判決まで行ってしまうとなかなか全額回収が難しくなるのですが、ほぼ確実に回収できるケースがあります。それが不動産執行(不動産の強制競売)です。

財産価値がある不動産であれば少なくとも数百万円は配当に回ります。そして、当事務所の業務の性質上、数百万円、数千万円の債権回収を行うことはありませんので、まず間違いなく全額回収ができます。

とはいえ、100万円前後の負債のために不動産を失っても良いと考える人は多くありませんので、不動産を持っている人を相手に訴訟手続をする場合は、その時点で和解ができることがほとんどなのですが、稀に不動産をお持ちなのに訴訟手続を無視し、競売手続に進んだケースが何度かあります。当事務所でも、現在進行形で競売手続が進んでいる案件があります。

 

ということで、今回は不動産競売の流れ等についてまとめたいと思います。

 

 

競売申立の前提

 

競売申立を行う前提として、判決等の債務名義を取得している必要があります。

また、当たり前ですが、相手方名義の不動産があることが必要です。

この点、相手方の親族や会社などの第三者名義になっているものは差し押さえることができません。売掛金など会社が相手の場合に社長個人の不動産を差押えたいというお話がありますが、名義が法人と個人では別であるためこちらも差押えることはできません。このような状況で社長個人の財産を差押えるためには、会社に対する債務について社長個人に連帯保証をしてもらっており、かつ、社長個人に対する判決等の債務名義が必要になります。

 

さらに、実質的な問題として、不動産に価値があることが必要です。

例えば、山奥にある土地や建物については、競売になっても価値が無いと判断されることがあり、競売費用にも満たない場合は裁判所の職権で競売が取り消されてしまいます。競売申立の際に70万円以上の予納金等の実費を納めていますので、逆に損失が増えてしまいます(ただし、予納金等の大部分は還付されます。)。

 

また、担保権者等がいる場合も注意が必要です。

もし、不動産の価値が2000万円あったとしても、住宅ローンに関する抵当権や税金の差し押さえなどがあり、抵当権者や差押債権者の債権額が2500万円あるのであれば、結果として1円も入ってこないことになりますので無意味です。もっとも、不動産の価値を正確に算出することは難しいですし、住宅ローンの残債額や税金の滞納額などを事前に調査することはできませんので、不動産業者に相談したり、借入時期や差し押さえの内容を見て推測するしかありません。

例えば、住宅ローンを組んだのが20年前であれば返済によりかなり減っていると思いますが、数年前だとほとんど減っていないと思います(返済方式の主流である元利均等払だと借入当初の数年はほとんどが利息に充当されています。)。また、税金の差押えについても、役所が県税事務所であれば自動車税や県民税、商売をされている方であれば事業税や消費税になり、商売をされている方だとかなりの額になることが予想されます。市税事務所であれば、固定資産税や市民税等であり、かなりざっくりですがある程度推測することができます。

 

このような担保権や差し押さえの有無に関する情報は不動産の登記事項証明書を取得することによって調べることができます。

なお、当事務所では、任意売却や差押関係に強い不動産業者と提携しておりますので、こちらを相談しながら進めていきます。

 

申立てから配当まで

 

競売手続のキモは上記がほとんどであり、いったん申立てをしてしまえば、あとは裁判所(及び執行官)が主導して進めてくれますのであまりやることはありませんが、不動産を強制的に売却してしまうという相手方にとってかなりのダメージとなる手続ですので、極めて慎重に手続は進むこととなり時間がかかります。

ざっくりとした流れとしては、①申立て → ②開始決定 → ③現況調査と評価 → ④入札や開札 → ⑤代金納付 → ⑥配当 となり、早くても半年程度、長いと1年程度かかります

配当の時点で利息等を計算した「債権計算書」を裁判所に提出し、あとは競売申立に要した費用などを含めて配当され、終了となります。

 

なお、申立ての時点で少なくとも70万円の予納金に加えて、登記事項証明書等の必要書類の取得費用や差し押さえの登記のための登録免許税などの実費もかかりますので、予納金と合計すると申立て時点で72万円~75万円程度の費用がかかりますが、大部分は配当の中で返ってきます。

 

和解による取下げや任意売却による終了

 

競売の申立てをしたとしても、必ず強制的に売却されるわけではなく、途中で終わることもあります。

①取下げ

競売手続中に相手方から全額を一括で支払う等の打診があり、和解して取り下げることがあります。上記のとおり最低でも半年以上はかかりますので、和解で解決できるのはベストですし、相手方としても不動産を失わなくて済むのでどちらにとっても良い結論になります。なお、競売手続に要した費用も合わせて支払ってもらわないと和解しませんので、債権者が損をすることはありません。

 

②任意売却

任意売却とは、競売ではなく通常の売買で不動産を処分することを言います。一般的に競売だと価格が低くなる傾向がありますので、任意売却によって少しでも高く売りたいというケースもありますし、競売だと誰が落札するかは分からないので、相手方が今後も使用するために相手方の親族等が買い、その親族から賃借して居住し続けたいとの理由で、競売申立後に任意売却になることがあります。

この場合も、上記の和解と同様に、任意売却の際に競売申立費用も含めて全額を一括で支払ってもらいますので、競売手続が進むよりもこちらの方が良い結果となります。

 

 

 

そもそも当事務所が行う業務の相手方が不動産を持っていること自体が少なく、さらには競売になっても配当が得られるようなケースは極めて少ないため、なかなか不動産競売まで進まないのが実情ですが、もし該当する場合は、ある程度時間がかかるというデメリットがあるものの、手続に乗せられるようであればほぼ確実に全額回収できるのでかなり良い結果が期待できます。

 

 【司法書士の債権回収最前線】目次はこちら


12月 19 2020

複数の債権がある場合に一部弁済があった場合の時効更新

相手に対して何かをしてもらう権利を「債権」もしくは「請求権」と言います。一番分かりやすいのが、「貸した100万円を返済してくれ」という貸金債権だと思います。

他にも、「売買代金の100万円を支払ってくれ」という売買代金債権だったり、「工事代金を支払ってくれ」という請負代金債権や「慰謝料を支払ってくれ」という損害賠償債権なんていうのもあります。さらに、お金に限らず、「買った物を引き渡してくれ」という引渡債権というのもあります。

 

このような債権というのは、一定期間が経過し、債務者がもう支払いませんという意思表示(時効の援用)をすると消滅してしまいます(民法145条)

今年の4月の民法改正により基本的には消滅時効の期間が5年に統一されましたので、今年の4月1日以降に発生した債権の返済期日から5年経過後に債務者が時効の援用をすると債権は消滅することとなります。

 

一方、債権者としては時効で消滅してしまうと困るので、時効の進行をリセットさせることができます。このリセットのことを従前は「時効の中断」と呼んでおり、今年の改正から「時効の更新」に名前が変わりましたが、基本的には同一の制度です。

時候の更新にはいくつかありますが、その中でも「債務承認」が圧倒的に一番多いと思います。

債務者が「確かにその借金があることに間違いありません。」と表明することはもちろん、借金の一部を返済することも債務承認に当たります(借金があるからこそ返済しているので、借金の返済をすることは債務承認をしていることになります。)。

したがって、少額でも定期的に返済を受けているようであれば、永遠に消滅時効は完成しないということになります。

 

 

と、かなり前振りが長くなったのですが、先日この債務承認についての最高裁判決があり、債権回収に関連がある分野となりますので、備忘録も兼ねてまとめておきたいと思います。

 

 

架空の事案

 

①AさんがBさんに対して、令和3年1月1日に、半年後の7月1日に返済する約束で100万円を貸しました(以下、「第一貸付」といいます。)。

②半年経過したもののBさんは返済できる状況にはなく返済されませんでした。

③Bさんが困っているということで、Aさんは、Bさんに対し、令和4年1月1日に半年後の7月1日に返済する約束で50万円を貸しました(以下、「第二貸付」といいます。)。

④その後もBさんは返済ができていませんでした。

令和7年1月1日、Bさんは全額返せるほどのお金は無かったものの、とりあえず30万円は用意できたので30万円を返済しました。

⑥その後も、返済ができずにいたところ、堪忍袋の緒が切れたAさんが令和10年1月1日に残額の120万円を支払うよう訴訟を提起しました。

⑦Bさんは、第二貸付については時効になっているので支払う必要はないと反論。

 

 

複数の債権がある場合の処理

 

まず、Bさんが平成7年に30万円を返済した場合、第一貸付の100万円の借金に充当するか、第二貸付の50万円の借金に充当するかを指定することができますが、その指定をしていないので、30万円は第一貸付の返済に充てられることとなります(民法488条)。

したがって、訴え提起時点では第一貸付の100万円のうち70万円が残っており、第二貸付の50万円が全額残っていることになります。

 

まとめると、

①第一貸付→返済期日は令和3年7月1日だが、令和7年1月1日に30万円が返済され、70万円残っている。

②第二貸付→返済期日は令和4年7月1日で、50万円残っている。

となります。

 

時効更新の処理

 

さて、令和10年にAさんは訴えを提起しております。この時点で第一貸付の返済期日からすでに6年半が経っておりますが、令和7年に返済を受けて時効更新がされているため、結果として第一貸付の残額70万円について時効によって消滅していないことは間違いありません。

しかし、第二貸付の50万円については、返済期日である令和4年7月1日から5年半が経過しており、弁済も受けていないので時効になってしまうというBさんの主張は正しいようにも思えます。

今回、この点についての最高裁判決が出ました。

 

最高裁判決の内容

→ 最高裁サイト

→ 判決全文

 

最高裁は、以下のとおり理由を述べて、令和4年の50万円についても時効により消滅していないとしました。

なお、「中断」となっているのは、現在の「更新」となります。

 

同一の当事者間に数個の金銭消費貸借契約に基づく各元本債務が存在する場合において,借主が弁済を充当すべき債務を指定することなく全債務を完済するのに足りない額の弁済をしたときは,当該弁済は,特段の事情のない限り,上記各元本債務の承認(民法147条3号)として消滅時効を中断する効力を有すると解するのが相当である(大審院昭和13年(オ)第222号同年6月25日判決・大審院判決全集5輯14号4頁参照)。なぜなら,上記の場合,借主は,自らが契約当事者となっている数個の金銭消費貸借契約に基づく各元本債務が存在することを認識しているのが通常であり,弁済の際にその弁済を充当すべき債務を指定することができるのであって,借主が弁済を充当すべき債務を指定することなく弁済をすることは,特段の事情のない限り,上記各元本債務の全てについて,その存在を知っている旨を表示するものと解されるからである。

 

結論

 

ということで、複数の貸金があり、弁済充当の指定なく一部の返済があったときには、複数の貸金全体について債務承認によって時効が更新されることとなり、債権者としては良い結論ということになります。

上記の事案で言うと、Aさんは第一貸付の70万円だけでなく、第二貸付の50万円についても請求できることとなります。

なお、原審の東京高裁では、第二貸付の50万円には充当されていないので消滅時効が完成するという趣旨の判決しており、最高裁でひっくり返るという事件でした。

 

 【司法書士の債権回収最前線】目次はこちら


10月 21 2020

財産開示手続の実効性が向上するかも

判決を取っても相手が支払わない場合,相手が持っている不動産,預貯金,給与などを差押えて強制的に回収することになります。

しかし,裁判所が財産を見つけて差押えてくれるわけではありませんので,こちら側で差し押さえるべき財産を特定する必要があります。

 

 

でもこれって,結構難しいですよね。不動産であればある程度どうにかなるかもしれませんが,預貯金については知り合いでなければ普通は知りませんし,勤務先なども同様です。警察のように家宅捜索などをすることはできませんので,財産が見つからず諦めざるを得ないということもあります。

 

この点,財産開示手続という方法が民事執行法に定められ,相手に対して持っている財産を明らかにするよう命じる手続があります。ただ,罰則が「30万円以下の過料」という比較的軽い行政罰しかないため,あまり実効性がありませんでした。

当事務所でも何度か財産開示手続を進めたことはありますが,開示されたことは一度もありませんでした。

→ 強制執行後の手続(財産開示)

→ 財産開示手続開始決定

→ 再び財産開示手続をやってみる

 

これを受けて,新しい手続である「第三者からの情報取得手続」が定められ,一定の要件を満たすと,公的機関や金融機関などから情報を得ることができます

→ 強制執行をしても回収できない場合

 

さらに,今年4月の法改正により,財産開示命令を無視した場合の「30万円以下の過料」が「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」とかなり重くなりました。

そして昨日(令和2年10月21日),財産開示命令を無視したという民事執行法違反の容疑で書類送検されたそうです。

 

以下,毎日新聞2020年10月21日 09時53分の記事の一部を引用

 

借金を返済せず、強制執行に向けた財産開示手続きで裁判所から命じられた出頭に正当な理由なく応じなかったとして、神奈川県警は20日、開成町の男性介護士(34)を民事執行法違反の疑いで書類送検した。県警によると、財産開示手続きの違反に刑事罰を科した改正法が4月に施行されて全国初の検挙という。

送検容疑は、横浜地裁小田原支部が財産開示のために決定していた8月14日の出頭に、正当な理由なく応じなかったとしている。松田署によると、男性介護士は2016年ごろに東京都内に住む30代の男性会社員から数万円を借りたが、まったく返済していなかった。

(中略)

 同法は改正前、財産開示手続きに応じなかったり、虚偽の陳述をしたりした場合は「30万円以下の過料」で、軽いとの指摘があった。実効性を高めるため、改正時に6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金の刑事罰に強化された。

(以上で引用終わり)

 

そもそも30万円以下の過料から最悪の場合懲役刑まで変わったことについて知っている人はほとんどいないと思いますが,裁判所からの通知にはその旨が記載されていますので,これを機に,財産開示手続が活用できるようになるかもしれませんね。

 

 【司法書士の債権回収最前線】目次はこちら


7月 11 2020

強制執行をしても回収できない場合

債務者と交渉をして,分割弁済などで話ががまとまれば,その内容にしたがって返済を受けることになります。

もし,債務者と交渉をしてもまとまらない場合,またはそもそも交渉自体ができない場合は訴訟等の法的手続を進めていくことになります。

訴訟を提起しても必ず判決になる訳ではなく,訴訟の中で話し合いがまとまるケースも多々あります。訴訟手続の内容にもよりますが,貸金請求で被告が裁判所に出廷した場合は,8割以上が和解になって解決していると思います。

ただ,訴訟になっても被告が無視する場合や被告が出廷しても満足な和解ができない場合は,判決ということになります。

私が取り扱っている業務においては,「判決になるとすんなり支払う」ということはほとんどなく,判決後にやっと連絡がきて和解することもありますが,強制執行に進むことの方が多いです。

 

強制執行という手続は,債務者の財産を差押えて強制的に現金化して回収するという手続である以上,債務者が何らかの財産を持っていなければなりません。この「財産」は現時点で持っているものであるのが原則ですが,「将来受け取る予定の給与」などを差押えることも可能です。当事務所では,一番回収率が高いのは,まさに給与を差押えた場合です。

もっとも,債務者が何らかの財産を持っていたとしても,その財産として何があるのかを把握しなければ強制執行の手続ができません

例えば,預貯金であれば「銀行名と支店名」,不動産であれば「所在及び地番または家屋番号」,給与であれば勤務先などになります。

強制執行で一番難しいのは,この「財産として何があるのか」を把握することです。

この財産の把握について,従前は「財産開示手続」という制度を使っており,私も過去に何回か申し立ての手続きをしたことがあります。(今も財産開示手続はあります。)。

ただ,この手続きの最大の欠陥は,債務者に対して「財産として何があるのか開示せよ」との裁判所の命令が出たとしても,強制的に財産を開示させることはできず,開示しなかった場合には「30万円以下の過料」という罰金のようなものが科せられるに過ぎませんでした(※現在は,6か月以下の懲役または50万円以下の罰金に改正されました。)。

この過料はあくまで国に入るお金なので債権者としては,まったく回収できません。

 

なお,上記のとおり財産開示手続を何度か行っておりますが,一度も開示されたことはありませんでした。ただし,そのうち何度かは幸いにして「全額弁済するので取り下げてほしい」ということで回収できましたが,完全に無視され,過料の処分をするよう上申書を出しただけで終わった事件もあります。

 

このように財産開示手続ではなかなか債務者の財産が開示されることはなかったのですが,令和2年4月1日に民事執行法が改正され,一定程度債務者の財産に関する情報提供を求める手続が始まりました。

 

本日は,この点について,当事務所の業務と関係ある部分についてまとめたいと思います。

 

 

1 第三者からの情報取得手続

概要としては,「把握している財産に対して強制執行をしても回収できない債務者について,銀行等に口座の有無や預金額,法務局等に不動産,市区町村等に勤務先などの情報提供を求めることができる手続」ということになります。

 

2 手続をするための要件

口座の情報などは間違いなく個人情報になりますのでそう簡単に開示されるものではなく,その開示を求めるためには,法律の規定に沿った手続を踏まなければなりません。

 

(1)執行力のある債務名義を有していること

一番分かりやすいのが判決書正本であり,訴訟中に和解が成立した場合の和解調書なども債務名義になり得ます。

これは,裁判手続等を経て,債務者に対して債権があることを裁判所が認めた場合にのみ手続を認めるという趣旨であり,借用書や契約書などの書面があるだけではこの手続はできないということになります。

 

(2)強制執行を開始するための条件を満たしていること

端的にいうと,債務名義の正本が債務者に送達されていることや債務者が破産や民事再生等をしていないことになります。通常は債務名義が手元にあれば満たしていますので,それほど気にする必要はありません。

 

(3)現状で強制執行をしてもうまくいかない場合であること

すでに把握している情報で強制執行をすれば回収できるような場合にこの手続を使う必要はありませんので,強制執行をしても回収できないような場合でないとこの手続はできません。

具体的には,①6か月以内に強制執行をしたが回収できなかったこと②把握している財産に対して今から強制執行をしても回収できないことを疎明すること,のどちらかが必要です。

強制執行をして回収できなかったというのは,配当手続(または弁済金交付)までいったものの全額回収できなかった場合であり,回収できなかったことは明らかですので特に問題になりませんが,把握している財産に今から強制執行をしても回収できないことを疎明するためには,実際に強制執行をしてみるかそれなりの調査が必要になります。

過去に同じ要件である財産開示手続を行った場合には,自宅の不動産の登記簿謄本や口座を把握していない理由などを記載して競売申立をしても回収できないことが明らかである等の疎明を行いました。

なお,強制執行をしたもののほとんど現金化できずに諦めて取り下げる場合は①には該当せず,②の方の要件を充足する必要があります。その場合でも,強制執行を取り下げたことが1つの疎明資料になります。

 

(4)財産開示手続を先に行うこと

基本的には財産開示手続を先行する必要は無いのですが,不動産の情報及び勤務先の情報を得る場合に限り,3年以内に財産開示手続を先行させていなければならないことになっています。

 

3 手続をして得られる情報

この手続きを行っても,すべての財産の情報が開示されるわけではありません。例えば,債務者が知人に対して貸金債権を持っていたとしても,それは普通は分かりませんし,高級時計や絵画などの動産も管理している機関等はありませんので,情報を得ることができません。

この手続で得られる情報は以下の情報のみとなります。

 

(1)預貯金の情報

裁判所から申立人が指定した金融機関に対して,情報提供を求める書類を発送し,口座の有無や預貯金額等の情報が提供されます。なお,全国津々浦々の金融機関から回答が来るわけではなく,あくまで申立人が指定した金融機関からだけですので,ある程度は目星を付けておく必要があります。

 

(2)上場会社の株式や投資信託等

証券会社等に情報提供を求め,銘柄や株数などの情報が提供されます。

 

(3)給与債権

市区町村等に情報提供を求め,勤務先の情報を提供してもらいます。ただし,勤務先の情報を提供してもらえる債権は,養育費や婚姻費用など民事執行法151条の2第1項各号に掲げる義務に係る請求権及び人の生命や身体の侵害に関する損害賠償請求権に限られていますので,通常の貸金債権では勤務先の情報提供をしてもらうことはできません

したがって,公正証書(執行証書)で養育費の支払いについて合意しているのに相手方が支払ってこない場合に,相手方の勤務先を調査するということが現実的には多いかと思います。

 

なお,従前は差押えの書類が債務者に届いてから1週間経過後から回収ができましたが,今回の改正により給与については養育費や婚姻費用など民事執行法151条の2第1項に規定する債権以外の債権による差押えの場合は4週間経過後からとなりました。

 

(4)不動産

法務局に情報提供を求め,不動産の所在や地番等の情報提供をしてもらうことができます。

ただし,こちらはまだ法律が施行されていないため,本記事を書いている時点(令和2年11月時点)では不動産に関する情報提供を求めることはできません。こちらは,令和3年5月以降に施行される予定となっています。

 

4 まとめ

以上から,当事務所が行っている貸金請求等においては,一番回収できる可能性が高い給与の情報を得ることはできませんので,預貯金や株式等の情報を提供をしてもらい,その預貯金等を差押えて回収を図ることとなります。

もっとも,あくまで口座の情報を提供してもらえるだけであり,必ずしも口座に預貯金があるとは限りませんので,この手続を行ったとしても回収できない可能性もあります。とはいえ,やみくもに差し押さえをするよりは,回収できる可能性は高まりますので,手続を進める意味はあると思います。

なお,当事務所の報酬は1回目の申立てについては5万円(2回目以降は3万円)+消費税となります。また,別途実費が必要となり、情報提供を求める相手方1機関ごとに概ね5000円程度となります。

 

 【司法書士の債権回収最前線】目次はこちら


1月 17 2020

消滅時効に関する改正

債権回収をするに当たって,当然確認する点としては消滅時効です。

令和2年4月1日から施行される民法の改正に当たり,時効に関する点も改正されることとなり,中には用語自体も変わったりしているので,まとめておきたいと思います。

 

 

消滅時効とは

 

以前この点についてまとめておりますので,こちらをご覧いただければと思います。

→ 時効についての注意点

 

改正の内容

1 消滅時効の期間を一律に

時効によって権利が消滅するための期間は,原則として10年になります。ですので,友人にお金を貸した場合,返済予定日から10年経過すると時効になってしまいます。

これに対し,銀行が融資をしたように,商売としてお金を貸した場合には5年で時効になってしまいます。現実的に銀行ではあまりありませんが,消費者金融や信販会社からの借金について,5年が経過したことで消滅時効の通知を送ることが結構あります。

さらに,債権の種類によっても時効の期間が個別に定められており,工事の請負代金は3年間,弁護士の報酬は2年間,飲食代(いわゆる「ツケ」)は1年間というようにややこしい規定になっておりました。

今回,この短期消滅時効について一律に「権利を行使できると知ったときから5年間(もしくは権利の行使ができるとき10年間)」に改正されます。

したがって,今までは飲み屋のツケは1年支払わなければ時効となりましたが,改正後は5年間となりますので,飲食店の経営者や工事業者としては請求できる期間が長くなり良い改正ということになりますが,個人間の貸し借りの場合は5年になってしまいますので良くない改正ということになります。

なお,不法行為に基づく損害賠償請求は基本的に従前どおりとなりますが,生命身体に対する侵害については「損害及び加害者を知ったときから3年」だったものが「損害及び加害者を知ったときから5年」になりました。

 

2 用語の変更(更新と完成猶予)

債権者としては時効が完成してしまっては困りますので,債権者側から時効の進行をリセットする「中断」という手続きがありました。具体的には訴訟を提起したり,債務者に債務の存在を認めてもらう(債務承認)と方法です。

この「中断」が「更新」になりました。文字として,中断だと一旦停止というニュアンスがありますが,中断はリセットという意味ですので,更新の方がより分かりやすいかと思います。

また,一時的に時効の進行をストップさせる「停止」という制度がありました。これは,大地震などが起こり,現実的に時効の中断ができないようなときには,地震が収まってから2週間は時効が完成しないという制度です(民法161条)。この停止も「完成猶予」という用語に変わり,期間も3か月に伸びました

 

具体的に説明させていただくと,令和2年12月31日の経過をもって時効が完成してしまう場合に,令和2年11月30日に債務者が承認して時効が更新された場合は改めてこの日から5年が経過するまでは時効が完成しないことになります。

また,同じ状況で令和2年11月30日に地震が起こり,令和3年1月10日に影響が無くなった場合には,ここから3か月が経過するまでは時効の完成が猶予されることになります。

 

3 改正の影響を受ける債権

 

民法が改正されるのは今年の4月1日からですが,前日までに発生した債権については従前のままとなります。

ですので,令和2年1月17日に発生した個人間の貸し借りに関しては,5年ではなく10年ということになります。

 

 【司法書士の債権回収最前線】目次はこちら


12月 26 2019

回収が大変な「売掛金」と「未払い賃料」

今月に入り,売掛金の回収及び未払い賃料の回収(建物明渡請求)のご依頼が続いております。

この2つの債権回収は,経験上うまくいくとすぐに回収できるものの,すぐに解決できない場合は最後まで回収できないケースが多いです。

以下,この点についてまとめたいと思います。

 

 

売掛金の回収

 

売掛金というのは,端的に言えば商売上の取引によって生じたものです。今後とも引き続き取引を行う意思があるようであれば,できる限り滞ることはなく支払うのが通常です。ですので,相手によっては,単に通知を出しただけで100万円単位の金額をすぐに支払ってくれることもあります。

しかし,相手が払いたくても払えないような経済状況まで来てしまっているよう場合,通知書を出しただけで回収できるどころか,訴訟をしたとしてもお金がないので回収するのが大変ということになります。

この点,個人間の金銭トラブルであれば,相手方が給与を得ていることが多く,その給与を差し押さえれば時間はかかるものの少しずつ回収ができます。しかし,売掛金の場合だと,相手が法人だと法人そのものの財産を差し押さえなければならないものの,法人成りしたような会社だとあまり財産がありませんで差し押さえられる財産がほとんどありません。また,相手が個人事業主だった場合は給料を差し押さえるということが考えられませんので,この点から回収が難しくなります。

とはいえ,手続をしても無駄かというとそういう訳でもありません。例えば,預金口座にほとんどお金が入っていなかった場合はその口座を差し押さえても現実的にはまったく回収できませんが,相手がその預金口座がある銀行から融資を受けているような場合,差押えが入ると取引を切られることになりますので大問題になります。すると,どこからか返済金を用立てて支払ってくれるということもあります。その他,資金繰りをどうにかして,分割で支払ってくれるというケースもありますので,手続を進める意味はあるかと思います。

 

未払い賃料の回収

ご依頼いただく際にいつもお話しするのですが,未払い賃料について現実的な解決方法は「すぐにでも入居者を退去させたうえで,新しい入居者から賃料を得る。」だと思います。

自宅というのは生きてくうえで絶対に必要な場所であり,入居者の誰もが賃料を支払わなければ最終的に追い出されるということは認識しています。それすらも払えないような状況にあるのであれば,今後の家賃に加えて,延滞している賃料を分割で回収するというのは現実的ではありません。特殊な事情(例えば,交通事故などで一時的に働けなかった。)があるようであれば別ですが,特に何もないのに支払えないようであれば回収は難しいと思います。

ですので,その方からの家賃は諦めたうえで早く正常な家賃を別の方からもらう方が結果としては良い方向に進むと思います。

なお,入居者自身からの回収は難しいですが,保証人がいる場合は比較的早期に解決できる場合があります。過去にも,入居者は年配の方で,そのお子さんが保証人でしたが,保証人に連絡しただけで100万円単位の未払い賃料を回収したこともあります。また,数年かけて全額回収したケースとなりますが,こちらも入居者本人ではなく保証人から支払ってもらいました。

 

ということで,売掛金の回収や未払い賃料について,一般論としては全額を回収することはなかなか難しいと思いますが,当事務所は着手金なしで進めることもできますので,諦める前に一度ご検討いただければと思います。

 

 【司法書士の債権回収最前線】目次はこちら


10月 21 2019

相手方からの質問

貸金請求などで相手方に対して郵便で督促などを行うと,その際に相手方から質問を受けることがあります。

私は依頼者側の立場ですので,当然ながら依頼者の不利益になるようなことは話しませんが,かといって相手方を騙すようなこともしませんので,可能な限り回答できることは回答しています。

 

 

「遅延損害金も支払う必要があるか」

督促をしているということはすでに期限を過ぎていますので,遅延損害金に関する約定がなかったとしても,法的には当然に請求することができます。したがって,請求することには何ら問題はないのですが,依頼者によっては「一括であれば離縁損害金は請求しなくても良い」と仰っていただけることがありますので,この点は質問してもらった方が良いかと思います。もっとも,当然には放棄はできませんので,依頼者が納得できるほどの条件が必要になってきます。

 

 

「自分も弁護士や司法書士に依頼すれば良いのか」

この点は,私は判断する立場にないためご自身でお考えいただくしかない旨を伝えておりますが,一般論としては弁護士や司法書士を入れていただいた方が交渉がスムーズに進みますので,本音としてはぜひ依頼してほしいと思っています。

なお,訴訟手続を無視し続け,すでに判決が確定した後に同様の質問を受けることがあります。もちろん,依頼されるのはご自身の自由ですのでどのようにされても構わないのですが,判決が確定した後に当該判決をひっくり返すのは特別な事情が無い限り不可能ですので,あまりお勧めしません。

 

 

「払わなかったらどうなるのか」

一般論としては,法的手続に進む旨を伝えますが,こちらが想定している具体的な手続(例えば「判決を取って〇〇銀行の預貯金を差し押さえる予定」など)をお伝えすることはありません。

ただ,明渡請求の場合は,はっきりと「このままの状況が続くと,法的手続を執って最終的には強制的に明け渡していただくこととなります。」と伝えます。これにより,自ら退去してもらえる可能性が大きくなるためです。

 

「時効ではないのか」

それほど多くはありませんが,長期間家賃を滞納されている場合に,一部の家賃について消滅時効が完成していることがありますが,このような場合でも当事務所では全額請求します。というのは消滅時効は,あくまで債務者(賃借人)の時効の援用があって初めて効果が生じますので,消滅時効完成分についても請求することは問題ないからです。当然ながら,相手方から消滅時効の援用がされればその分は請求しませんが,今のところそのような事例に該当したことはありません。

では,いつ聞かれるかというと,貸金の返済を数年放置した後に請求した際に「時効ではないのか」と聞かれることがあります。個人間の貸金は10年間時効にはなりませんので,この質問を受けて実際に時効だったことは一度もありません。したがって,「時効は完成しておりません」と回答しています。

なお,本当に時効が完成している場合に,援用ではなく質問を受けた場合には「私は回答する立場ではないので,お近くの弁護士や司法書士にご相談ください。」と回答すると思います。

 

相手方と無用なケンカをする必要はないためできる回答いたしますが,いずれにしてもこの点は依頼者の方の要望次第となりますので,回答しにくい質問については適宜相談させていただきます。

 

 【司法書士の債権回収最前線】目次はこちら


8月 10 2019

少額訴訟について

数年前までは少額訴訟は,デメリットの方が大きいと思っており,少額訴訟が使える事件でも通常の訴訟で進めていたのですが,最近は少額訴訟を選ぶことも多くなってきました。

ということで,今回は少額訴訟についてまとめてみたいと思います。

auction_hammer

 

少額訴訟とは

 

少額訴訟については民事訴訟法366条以下に規定されており,簡易裁判所の訴訟手続における特則となります。少額訴訟を提起するためには,次の2つの条件を満たしている必要があります。

 

(1)60万円以下の金銭請求であること

金銭請求でなければなりませんので,一番分かりやすいのは貸金請求になるかと思いますし,未払い賃料の請求や請負代金の請求なども金銭請求になります。しかし,賃料の未払いに基づいて明渡を求めることはできませんし,物の引き渡し(例えば「車を引き渡せ」)などは通常の訴訟にて行う必要があります。

 

(2)同じ裁判所では1年に10回まで

個人が利用することを想定した手続であるため,1年間に10回までしか少額訴訟はできません。もっとも,1年に10回以上行うのはサラ金等の貸金業者くらいかと思いますので,個人の方にはあまり関係がありません。また,あくまで同じ裁判所での上限が10回というだけですので,別の裁判所に管轄があるのであれば,10回以上少額訴訟を提起することは可能です。

 

少額訴訟の特徴(メリットやデメリットも含む)

少額訴訟を選ぶに際してメリットやデメリットがありますし,また少額訴訟特有のものもありますので,この点についてまとめてみます。

ピンク色がどちらかというと原告にとってメリットであり,紫色がどちらかというと原告にとってデメリットになり,黒のままなのはどちらでもないものになります。

 

①1期日審理の原則

裁判と聞くと,場合によっては何年もかかるイメージがあるかと思いますが,少額訴訟は1回の期日で終わりますのでかなり迅速に進みます。ただし,1回の審理で終わってしまうということは,あとで証拠を追加するということもできませんので,しっかり準備をしたうえで訴訟を提起することになります。

 

②反訴の提起ができない

これは被告側の立場になりますが,通常の訴訟の場合,訴えられた場合に訴えし返すという反訴が認められています。例えば,交通事故で治療費などの請求を受けた場合に,逆にこっちが支払ってほしいということで反訴をするというようなケースがあります。少額訴訟ではこのような反訴が認められていません。ただ,少額訴訟の手続上反訴が認められていないだけで,通常の訴訟手続で請求することは可能です。

 

③通常訴訟への移行されることがある

被告は特に理由なく,少額訴訟ではなく通常訴訟で審理すべき旨を求めることができ,その場合は必ず通常訴訟に移行します。

 

④公示送達はできない

相手が行方不明でも訴訟を行うことができ,その場合は公示送達という裁判所の掲示板に呼び出し場を貼る方法で相手方に通知をします(事実上,相手が知ることはありません。)。しかしながら,少額訴訟に関しては公示送達が認められておらず,相手が行方不明の場合は少額訴訟は選択できません。

 

⑤勝手に分割弁済にされることがある

通常の訴訟において,和解が成立しなければ一括で支払えという判決が出されますが,少額訴訟の場合は相手方の経済事情などを考慮して分割によって支払っても良い,もしくは遅延損害金は免除するというような,完全に原告が勝訴するような事案でも被告に有利な判決が出されることがあります。この判決には不服を申し立てることができません。

 

⑥控訴ができない

通常の訴訟においては,判決に不服があるときは,上級の裁判所に対して控訴することができます。しかし,少額訴訟は控訴ができないことになっており,異議の申し立てのみ認められています。異議の申し立ては,上級の裁判所ではない,判決をした当該裁判所に出すものであり,同じ裁判所が審理をします。ただし,異議後の判決についても控訴は認められておりません。

 

⑦必ず仮執行宣言が付く

強制執行をするためには判決後に判決が確定しなければなりませんが,例外的に仮執行宣言が付いている場合は判決後すぐに強制執行ができます。通常の訴訟でも仮執行宣言が付くことが多いのですが絶対ではありません。それが少額訴訟の場合は必ず仮執行宣言が付くので,迅速に強制執行に進むことができます。

 

⑧少額訴訟債権執行制度が利用できる

通常の訴訟の場合,強制執行は地方裁判所の管轄となりますが,少額訴訟債権執行については判決をした裁判所がそのまま強制執行の手続ができます。もっとも,手続の時間が早くなるかというとそれほど変わらないように思いますし,費用も特に変わりませんので,そこまでメリットがあるかというと微妙です。司法書士の立場としては,通常の強制執行は書類作成にすぎませんが,少額訴訟債権執行は完全に代理人として手続を進めることができるという違いがあります。

 

当事務所では

もちろん,個々の事件によって適切な手続がありますので一概には言えませんが,上記をご覧いただくとお分かりになるとおり,少額訴訟のメリットというのは1期日で終わるということくらいで,それ以外はあまりメリットはありません。むしろ,公示送達が使えなかったり,分割弁済の判決が出される可能性があるなどデメリットの方が大きいと思っていたのでほとんど利用していませんでした。

ただ,実際には通常訴訟への移行を求められたことはなく,判決も分割になったことはないので,やはり1回で終わるというメリットは大きいと思い最近はよく選んでいます。

また,少額訴訟は弁護士や司法書士などの専門家に依頼しなくても,ご自身でも進められるよう制度設計されており,専用の用紙も裁判所に備え付けられています。

もし,ご自身で進めたいということであれば,少額訴訟を選んでみるのもいかがでしょうか。

 

 【司法書士の債権回収最前線】目次はこちら


次のページ »

個人間の金銭トラブル

売掛金の回収

診療報酬

未払い賃料・立ち退き

管理費滞納

保全・強制執行

ブログ。司法書士の債権回収最前線。

名古屋債権回収相談室

〒480-1116
愛知県長久手市杁ヶ池106番地2
1階

はなみずき司法書士事務所

お気軽にご相談ください。(相談無料)電話番号0561-61-1514 ファックス番号0561-61-1535

対応地域

名古屋市、岐阜県、愛知県、三重県

このページのトップへ