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全手続共通

7月 11 2020

強制執行をしても回収できない場合

債務者と交渉をして,分割弁済などで話ががまとまれば,その内容にしたがって返済を受けることになります。

もし,債務者と交渉をしてもまとまらない場合,またはそもそも交渉自体ができない場合は訴訟等の法的手続を進めていくことになります。

訴訟を提起しても必ず判決になる訳ではなく,訴訟の中で話し合いがまとまるケースも多々あります。訴訟手続の内容にもよりますが,貸金請求で被告が裁判所に出廷した場合は,8割以上が和解になって解決していると思います。

ただ,訴訟になっても被告が無視する場合や被告が出廷しても満足な和解ができない場合は,判決ということになります。

私が取り扱っている業務においては,「判決になるとすんなり支払う」ということはほとんどなく,判決後にやっと連絡がきて和解することもありますが,強制執行に進むことの方が多いです。

 

強制執行という手続は,債務者の財産を差押えて強制的に現金化して回収するという手続である以上,債務者が何らかの財産を持っていなければなりません。この「財産」は現時点で持っているものであるのが原則ですが,「将来受け取る予定の給与」などを差押えることも可能です。当事務所では,一番回収率が高いのは,まさに給与を差押えた場合です。

もっとも,債務者が何らかの財産を持っていたとしても,その財産として何があるのかを把握しなければ強制執行の手続ができません

例えば,預貯金であれば「銀行名と支店名」,不動産であれば「所在及び地番または家屋番号」,給与であれば勤務先などになります。

強制執行で一番難しいのは,この「財産として何があるのか」を把握することです。

この財産の把握について,従前は「財産開示手続」という制度を使っており,私も過去に何回か申し立ての手続きをしたことがあります。(今も財産開示手続はあります。)。

ただ,この手続きの最大の欠陥は,債務者に対して「財産として何があるのか開示せよ」との裁判所の命令が出たとしても,強制的に財産を開示させることはできず,開示しなかった場合には「30万円以下の過料」という罰金のようなものが科せられるに過ぎません。この過料はあくまで国に入るお金なので債権者としては,まったく回収できません。

なお,上記のとおり財産開示手続を何度か行っておりますが,一度も開示されたことはありませんでした。ただし,そのうち何度かは幸いにして「全額弁済するので取り下げてほしい」ということで回収できましたが,完全に無視され,過料の処分をするよう上申書を出しただけで終わった事件もあります。

 

このように財産開示手続ではなかなか債務者の財産が開示されることはなかったのですが,令和2年4月1日に民事執行法が改正され,一定程度債務者の財産に関する情報提供を求める手続が始まりました。

 

本日は,この点について,当事務所の業務と関係ある部分についてまとめたいと思います。

 

 

1 第三者からの情報取得手続

概要としては,「把握している財産に対して強制執行をしても回収できない債務者について,銀行等に口座の有無や預金額,法務局等に不動産,市区町村等に勤務先などの情報提供を求めることができる手続」ということになります。

 

2 手続をするための要件

口座の情報などは間違いなく個人情報になりますのでそう簡単に開示されるものではなく,その開示を求めるためには,法律の規定に沿った手続を踏まなければなりません。

 

(1)執行力のある債務名義を有していること

一番分かりやすいのが判決書正本であり,訴訟中に和解が成立した場合の和解調書なども債務名義になり得ます。

これは,裁判手続等を経て,債務者に対して債権があることを裁判所が認めた場合にのみ手続を認めるという趣旨であり,借用書や契約書などの書面があるだけではこの手続はできないということになります。

 

(2)強制執行を開始するための条件を満たしていること

端的にいうと,債務名義の正本が債務者に送達されていることや債務者が破産や民事再生等をしていないことになります。通常は債務名義が手元にあれば満たしていますので,それほど気にする必要はありません。

 

(3)現状で強制執行をしてもうまくいかない場合であること

すでに把握している情報で強制執行をすれば回収できるような場合にこの手続を使う必要はありませんので,強制執行をしても回収できないような場合でないとこの手続はできません。

具体的には,①6か月以内に強制執行をしたが回収できなかったこと②把握している財産に対して今から強制執行をしても回収できないことを疎明すること,のどちらかが必要です。

強制執行をして回収できなかったというのは,配当手続(または弁済金交付)までいったものの全額回収できなかった場合であり,回収できなかったことは明らかですので特に問題になりませんが,把握している財産に今から強制執行をしても回収できないことを疎明するためには,実際に強制執行をしてみるかそれなりの調査が必要になります。

過去に同じ要件である財産開示手続を行った場合には,自宅の不動産の登記簿謄本や口座を把握していない理由などを記載して競売申立をしても回収できないことが明らかである等の疎明を行いました。

なお,強制執行をしたもののほとんど現金化できずに諦めて取り下げる場合は①には該当せず,②の方の要件を充足する必要があります。その場合でも,強制執行を取り下げたことが1つの疎明資料になります。

 

 

(4)財産開示手続を先に行うこと

基本的には財産開示手続を先行する必要は無いのですが,不動産の情報及び勤務先の情報を得る場合に限り,3年以内に財産開示手続を先行させていなければならないことになっています。

 

3 手続をして得られる情報

この手続きを行っても,すべての財産の情報が開示されるわけではありません。例えば,債務者が知人に対して貸金債権を持っていたとしても,それは普通は分かりませんし,高級時計や絵画などの動産も管理している機関等はありませんので,情報を得ることができません。

この手続で得られる情報は以下のとおりです。

 

(1)預貯金の情報

裁判所から申立人が指定した金融機関に対して,情報提供を求める書類を発送し,口座の有無や預貯金額等の情報が提供されます。なお,全国津々浦々の金融機関から回答が来るわけではなく,あくまで申立人が指定した金融機関からだけですので,ある程度は当たりを付けておく必要があります。

 

(2)上場会社の株式や投資信託等

証券会社等に情報提供を求め,銘柄や株数などの情報が提供されます。

 

(3)給与債権

市区町村等に情報提供を求め,勤務先の情報を提供してもらいます。ただし,勤務先の情報を提供してもらえる債権は,養育費や婚姻費用など民事執行法151条の2第1項各号に掲げる義務に係る請求権及び人の生命や身体の侵害に関する損害賠償請求権に限られていますので,通常の貸金債権では勤務先の情報提供をしてもらうことはできません

したがって,公正証書(執行証書)で養育費の支払いについて合意しているのに相手方が支払ってこない場合に,相手方の勤務先を調査するということが現実的には多いかと思います。

 

なお,従前は差押えの書類が債務者に届いてから1週間経過後から回収ができましたが,今回の改正により給与については養育費や婚姻費用など民事執行法151条の2第1項に規定する債権以外の債権による差押えの場合は4週間経過後からとなりました。

 

(4)不動産

法務局に情報提供を求め,不動産の所在や地番等の情報提供をしてもらうことができます。

ただし,こちらはまだ法律が施行されていないため,現時点では不動産に関する情報提供を求めることはできません。令和3年5月以降に施行される予定となっています。

 

4 まとめ

以上から,当事務所が行っている貸金請求等においては,一番回収できる可能性が高い給与の情報を得ることはできませんので,預貯金や株式等の情報を提供をしてもらい,その預貯金等を差押えて回収を図ることとなります。

もっとも,あくまで口座の情報を提供してもらえるだけであり,必ずしも口座に預貯金があるとは限りませんので,この手続を行ったとしても回収できない可能性もあります。とはいえ,やみくもに差し押さえをするよりは,回収できる可能性は高まりますので,手続を進める意味はあると思います。

なお,当事務所の報酬は1回の申立てにつき3万円(消費税別)となり,別途実費が必要となります。
実費としては,情報提供を求める相手方1人(社)当たり概ね5000円前後となります。

 

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1月 17 2020

消滅時効に関する改正

債権回収をするに当たって,当然確認する点としては消滅時効です。

令和2年4月1日から施行される民法の改正に当たり,時効に関する点も改正されることとなり,中には用語自体も変わったりしているので,まとめておきたいと思います。

 

 

消滅時効とは

 

以前この点についてまとめておりますので,こちらをご覧いただければと思います。

→ 時効についての注意点

 

改正の内容

1 消滅時効の期間を一律に

時効によって権利が消滅するための期間は,原則として10年になります。ですので,友人にお金を貸した場合,返済予定日から10年経過すると時効になってしまいます。

これに対し,銀行が融資をしたように,商売としてお金を貸した場合には5年で時効になってしまいます。現実的に銀行ではあまりありませんが,消費者金融や信販会社からの借金について,5年が経過したことで消滅時効の通知を送ることが結構あります。

さらに,債権の種類によっても時効の期間が個別に定められており,工事の請負代金は3年間,弁護士の報酬は2年間,飲食代(いわゆる「ツケ」)は1年間というようにややこしい規定になっておりました。

今回,この短期消滅時効について一律に「権利を行使できると知ったときから5年間(もしくは権利の行使ができるとき10年間)」に改正されます。

したがって,今までは飲み屋のツケは1年支払わなければ時効となりましたが,改正後は5年間となりますので,飲食店の経営者や工事業者としては請求できる期間が長くなり良い改正ということになりますが,個人間の貸し借りの場合は5年になってしまいますので良くない改正ということになります。

なお,不法行為に基づく損害賠償請求は基本的に従前どおりとなりますが,生命身体に対する侵害については「損害及び加害者を知ったときから3年」だったものが「損害及び加害者を知ったときから5年」になりました。

 

2 用語の変更(更新と完成猶予)

債権者としては時効が完成してしまっては困りますので,債権者側から時効の進行をリセットする「中断」という手続きがありました。具体的には訴訟を提起したり,債務者に債務の存在を認めてもらう(債務承認)と方法です。

この「中断」が「更新」になりました。文字として,中断だと一旦停止というニュアンスがありますが,中断はリセットという意味ですので,更新の方がより分かりやすいかと思います。

また,一時的に時効の進行をストップさせる「停止」という制度がありました。これは,大地震などが起こり,現実的に時効の中断ができないようなときには,地震が収まってから2週間は時効が完成しないという制度です(民法161条)。この停止も「完成猶予」という用語に変わり,期間も3か月に伸びました

 

具体的に説明させていただくと,令和2年12月31日の経過をもって時効が完成してしまう場合に,令和2年11月30日に債務者が承認して時効が更新された場合は改めてこの日から5年が経過するまでは時効が完成しないことになります。

また,同じ状況で令和2年11月30日に地震が起こり,令和3年1月10日に影響が無くなった場合には,ここから3か月が経過するまでは時効の完成が猶予されることになります。

 

3 改正の影響を受ける債権

 

民法が改正されるのは今年の4月1日からですが,前日までに発生した債権については従前のままとなります。

ですので,令和2年1月17日に発生した個人間の貸し借りに関しては,5年ではなく10年ということになります。

 

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12月 26 2019

回収が大変な「売掛金」と「未払い賃料」

今月に入り,売掛金の回収及び未払い賃料の回収(建物明渡請求)のご依頼が続いております。

この2つの債権回収は,経験上うまくいくとすぐに回収できるものの,すぐに解決できない場合は最後まで回収できないケースが多いです。

以下,この点についてまとめたいと思います。

 

 

売掛金の回収

 

売掛金というのは,端的に言えば商売上の取引によって生じたものです。今後とも引き続き取引を行う意思があるようであれば,できる限り滞ることはなく支払うのが通常です。ですので,相手によっては,単に通知を出しただけで100万円単位の金額をすぐに支払ってくれることもあります。

しかし,相手が払いたくても払えないような経済状況まで来てしまっているよう場合,通知書を出しただけで回収できるどころか,訴訟をしたとしてもお金がないので回収するのが大変ということになります。

この点,個人間の金銭トラブルであれば,相手方が給与を得ていることが多く,その給与を差し押さえれば時間はかかるものの少しずつ回収ができます。しかし,売掛金の場合だと,相手が法人だと法人そのものの財産を差し押さえなければならないものの,法人成りしたような会社だとあまり財産がありませんで差し押さえられる財産がほとんどありません。また,相手が個人事業主だった場合は給料を差し押さえるということが考えられませんので,この点から回収が難しくなります。

とはいえ,手続をしても無駄かというとそういう訳でもありません。例えば,預金口座にほとんどお金が入っていなかった場合はその口座を差し押さえても現実的にはまったく回収できませんが,相手がその預金口座がある銀行から融資を受けているような場合,差押えが入ると取引を切られることになりますので大問題になります。すると,どこからか返済金を用立てて支払ってくれるということもあります。その他,資金繰りをどうにかして,分割で支払ってくれるというケースもありますので,手続を進める意味はあるかと思います。

 

未払い賃料の回収

ご依頼いただく際にいつもお話しするのですが,未払い賃料について現実的な解決方法は「すぐにでも入居者を退去させたうえで,新しい入居者から賃料を得る。」だと思います。

自宅というのは生きてくうえで絶対に必要な場所であり,入居者の誰もが賃料を支払わなければ最終的に追い出されるということは認識しています。それすらも払えないような状況にあるのであれば,今後の家賃に加えて,延滞している賃料を分割で回収するというのは現実的ではありません。特殊な事情(例えば,交通事故などで一時的に働けなかった。)があるようであれば別ですが,特に何もないのに支払えないようであれば回収は難しいと思います。

ですので,その方からの家賃は諦めたうえで早く正常な家賃を別の方からもらう方が結果としては良い方向に進むと思います。

なお,入居者自身からの回収は難しいですが,保証人がいる場合は比較的早期に解決できる場合があります。過去にも,入居者は年配の方で,そのお子さんが保証人でしたが,保証人に連絡しただけで100万円単位の未払い賃料を回収したこともあります。また,数年かけて全額回収したケースとなりますが,こちらも入居者本人ではなく保証人から支払ってもらいました。

 

ということで,売掛金の回収や未払い賃料について,一般論としては全額を回収することはなかなか難しいと思いますが,当事務所は着手金なしで進めることもできますので,諦める前に一度ご検討いただければと思います。

 

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10月 21 2019

相手方からの質問

貸金請求などで相手方に対して郵便で督促などを行うと,その際に相手方から質問を受けることがあります。

私は依頼者側の立場ですので,当然ながら依頼者の不利益になるようなことは話しませんが,かといって相手方を騙すようなこともしませんので,可能な限り回答できることは回答しています。

 

 

「遅延損害金も支払う必要があるか」

督促をしているということはすでに期限を過ぎていますので,遅延損害金に関する約定がなかったとしても,法的には当然に請求することができます。したがって,請求することには何ら問題はないのですが,依頼者によっては「一括であれば離縁損害金は請求しなくても良い」と仰っていただけることがありますので,この点は質問してもらった方が良いかと思います。もっとも,当然には放棄はできませんので,依頼者が納得できるほどの条件が必要になってきます。

 

 

「自分も弁護士や司法書士に依頼すれば良いのか」

この点は,私は判断する立場にないためご自身でお考えいただくしかない旨を伝えておりますが,一般論としては弁護士や司法書士を入れていただいた方が交渉がスムーズに進みますので,本音としてはぜひ依頼してほしいと思っています。

なお,訴訟手続を無視し続け,すでに判決が確定した後に同様の質問を受けることがあります。もちろん,依頼されるのはご自身の自由ですのでどのようにされても構わないのですが,判決が確定した後に当該判決をひっくり返すのは特別な事情が無い限り不可能ですので,あまりお勧めしません。

 

 

「払わなかったらどうなるのか」

一般論としては,法的手続に進む旨を伝えますが,こちらが想定している具体的な手続(例えば「判決を取って〇〇銀行の預貯金を差し押さえる予定」など)をお伝えすることはありません。

ただ,明渡請求の場合は,はっきりと「このままの状況が続くと,法的手続を執って最終的には強制的に明け渡していただくこととなります。」と伝えます。これにより,自ら退去してもらえる可能性が大きくなるためです。

 

「時効ではないのか」

それほど多くはありませんが,長期間家賃を滞納されている場合に,一部の家賃について消滅時効が完成していることがありますが,このような場合でも当事務所では全額請求します。というのは消滅時効は,あくまで債務者(賃借人)の時効の援用があって初めて効果が生じますので,消滅時効完成分についても請求することは問題ないからです。当然ながら,相手方から消滅時効の援用がされればその分は請求しませんが,今のところそのような事例に該当したことはありません。

では,いつ聞かれるかというと,貸金の返済を数年放置した後に請求した際に「時効ではないのか」と聞かれることがあります。個人間の貸金は10年間時効にはなりませんので,この質問を受けて実際に時効だったことは一度もありません。したがって,「時効は完成しておりません」と回答しています。

なお,本当に時効が完成している場合に,援用ではなく質問を受けた場合には「私は回答する立場ではないので,お近くの弁護士や司法書士にご相談ください。」と回答すると思います。

 

相手方と無用なケンカをする必要はないためできる回答いたしますが,いずれにしてもこの点は依頼者の方の要望次第となりますので,回答しにくい質問については適宜相談させていただきます。

 

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8月 10 2019

少額訴訟について

数年前までは少額訴訟は,デメリットの方が大きいと思っており,少額訴訟が使える事件でも通常の訴訟で進めていたのですが,最近は少額訴訟を選ぶことも多くなってきました。

ということで,今回は少額訴訟についてまとめてみたいと思います。

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少額訴訟とは

 

少額訴訟については民事訴訟法366条以下に規定されており,簡易裁判所の訴訟手続における特則となります。少額訴訟を提起するためには,次の2つの条件を満たしている必要があります。

 

(1)60万円以下の金銭請求であること

金銭請求でなければなりませんので,一番分かりやすいのは貸金請求になるかと思いますし,未払い賃料の請求や請負代金の請求なども金銭請求になります。しかし,賃料の未払いに基づいて明渡を求めることはできませんし,物の引き渡し(例えば「車を引き渡せ」)などは通常の訴訟にて行う必要があります。

 

(2)同じ裁判所では1年に10回まで

個人が利用することを想定した手続であるため,1年間に10回までしか少額訴訟はできません。もっとも,1年に10回以上行うのはサラ金等の貸金業者くらいかと思いますので,個人の方にはあまり関係がありません。また,あくまで同じ裁判所での上限が10回というだけですので,別の裁判所に管轄があるのであれば,10回以上少額訴訟を提起することは可能です。

 

少額訴訟の特徴(メリットやデメリットも含む)

少額訴訟を選ぶに際してメリットやデメリットがありますし,また少額訴訟特有のものもありますので,この点についてまとめてみます。

ピンク色がどちらかというと原告にとってメリットであり,紫色がどちらかというと原告にとってデメリットになり,黒のままなのはどちらでもないものになります。

 

①1期日審理の原則

裁判と聞くと,場合によっては何年もかかるイメージがあるかと思いますが,少額訴訟は1回の期日で終わりますのでかなり迅速に進みます。ただし,1回の審理で終わってしまうということは,あとで証拠を追加するということもできませんので,しっかり準備をしたうえで訴訟を提起することになります。

 

②反訴の提起ができない

これは被告側の立場になりますが,通常の訴訟の場合,訴えられた場合に訴えし返すという反訴が認められています。例えば,交通事故で治療費などの請求を受けた場合に,逆にこっちが支払ってほしいということで反訴をするというようなケースがあります。少額訴訟ではこのような反訴が認められていません。ただ,少額訴訟の手続上反訴が認められていないだけで,通常の訴訟手続で請求することは可能です。

 

③通常訴訟への移行されることがある

被告は特に理由なく,少額訴訟ではなく通常訴訟で審理すべき旨を求めることができ,その場合は必ず通常訴訟に移行します。

 

④公示送達はできない

相手が行方不明でも訴訟を行うことができ,その場合は公示送達という裁判所の掲示板に呼び出し場を貼る方法で相手方に通知をします(事実上,相手が知ることはありません。)。しかしながら,少額訴訟に関しては公示送達が認められておらず,相手が行方不明の場合は少額訴訟は選択できません。

 

⑤勝手に分割弁済にされることがある

通常の訴訟において,和解が成立しなければ一括で支払えという判決が出されますが,少額訴訟の場合は相手方の経済事情などを考慮して分割によって支払っても良い,もしくは遅延損害金は免除するというような,完全に原告が勝訴するような事案でも被告に有利な判決が出されることがあります。この判決には不服を申し立てることができません。

 

⑥控訴ができない

通常の訴訟においては,判決に不服があるときは,上級の裁判所に対して控訴することができます。しかし,少額訴訟は控訴ができないことになっており,異議の申し立てのみ認められています。異議の申し立ては,上級の裁判所ではない,判決をした当該裁判所に出すものであり,同じ裁判所が審理をします。ただし,異議後の判決についても控訴は認められておりません。

 

⑦必ず仮執行宣言が付く

強制執行をするためには判決後に判決が確定しなければなりませんが,例外的に仮執行宣言が付いている場合は判決後すぐに強制執行ができます。通常の訴訟でも仮執行宣言が付くことが多いのですが絶対ではありません。それが少額訴訟の場合は必ず仮執行宣言が付くので,迅速に強制執行に進むことができます。

 

⑧少額訴訟債権執行制度が利用できる

通常の訴訟の場合,強制執行は地方裁判所の管轄となりますが,少額訴訟債権執行については判決をした裁判所がそのまま強制執行の手続ができます。もっとも,手続の時間が早くなるかというとそれほど変わらないように思いますし,費用も特に変わりませんので,そこまでメリットがあるかというと微妙です。司法書士の立場としては,通常の強制執行は書類作成にすぎませんが,少額訴訟債権執行は完全に代理人として手続を進めることができるという違いがあります。

 

当事務所では

もちろん,個々の事件によって適切な手続がありますので一概には言えませんが,上記をご覧いただくとお分かりになるとおり,少額訴訟のメリットというのは1期日で終わるということくらいで,それ以外はあまりメリットはありません。むしろ,公示送達が使えなかったり,分割弁済の判決が出される可能性があるなどデメリットの方が大きいと思っていたのでほとんど利用していませんでした。

ただ,実際には通常訴訟への移行を求められたことはなく,判決も分割になったことはないので,やはり1回で終わるというメリットは大きいと思い最近はよく選んでいます。

また,少額訴訟は弁護士や司法書士などの専門家に依頼しなくても,ご自身でも進められるよう制度設計されており,専用の用紙も裁判所に備え付けられています。

もし,ご自身で進めたいということであれば,少額訴訟を選んでみるのもいかがでしょうか。

 

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5月 30 2019

ハンコについてあれこれ

日頃何気なく使っている,「ハンコ」や「印鑑」,重要な時に使う「実印」や「認印」,はたまた契約書などの書類にハンコを押すときの「押印」や「捺印」,複数のページになる場合の「割印」や「契印」など,ハンコに関して実は本来の意味とは違う意味で使っていることがあります。

今日は,ハンコに関する情報をまとめてみたいと思います。

 

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ハンコは印鑑ではなく印章

 

朱肉を付けて書類にポチっとするハンコ。あれは正式には「印章」と言います。もちろんハンコでも構いません。この点,「印鑑」と呼ぶこともあるかと思いますが,実は「印鑑」は誤りです。

「印鑑」というのは,名前が彫ってあるハンコの事ではなく,朱肉を付けて押したときに映る「印影」を登録している紙のことを言います。その紙が役所に保管されておりますので,「役所に登録してある印影(印鑑)の証明書」が印鑑証明書ということになります。もっとも,現在は紙で登録されていることはなく,データとして登録されています。

ただ,実際にはハンコのことを印鑑と呼ぶことが多いので,私もハンコのことを印鑑と呼んでいます。

 

実印と認印は登録の有無

 

上記のとおり,役所に印影を登録してあるハンコのことを俗に「実印」と呼び,そうでないハンコのことを「認印」と呼びます。したがって,すごく立派なハンコを作成しても役所に登録していなければ認印ですし,100円ショップで買ってきたハンコを登録すればそれが実印となります。なお,実印,認印ともに法律用語ではなく俗称となります。

また,重要な契約のときに実印での押印を求められることがあるかと思いますが,法的な効力としては実印でも認印でも効力が変わることはありませんし,もっと言えばハンコでの押印がなくても署名があれば有効な書面となります(民事訴訟法228条4項)。よく,「今日ハンコを忘れたので指で押します。」みたいなことがありますが,法的にはあってもなくても効力は同じです(ただし,本人が署名したことを否認した場合に指印で立証することはあると思います。)。

ただ,署名の場合は本当に本人が書いたのかどうかの判断が難しく,認印だと第三者が押印したものも同じ印影であるため,本人しか持っていないだろう実印を押印した方が本人の関与を立証しやすくなるため,重要な契約では実印での押印を求めることが多いと思います。

なお,法的な効力は別問題として,手続的にご本人が関与していることを証明するために必ず実印での押印を求められることがあり,その場合は必ず印鑑証明書(通常は発行から3か月以内)の添付を求められます。例えば,不動産の売買に関する登記申請の際には売主さんの印鑑証明書が必要書類となっておりますし,自動車の売買だと当事者双方の印鑑証明書の提出を求められます。

 

押印と捺印は基本的に同じ

 

ハンコを押すことを「押印」と言ったり「捺印」と言ったりしますが,どちらもハンコを押すという意味は同じでありどちらでも正しいです。両方の頭文字をとって「押捺」と呼ぶこともありますが,これも同様です。

ただ,使い方として押印は「記名押印(ゴム印やすでに印字してあるものにハンコを押す)」として使われることが多く,捺印は「署名捺印(自ら署名をしたうえでハンコを押す)」として使われることが多く,押捺は「ハンコを押すことに加えて指印を押すことも含む」と微妙に違いがありますが,いずれも「ハンコを押す」という意味としては同じですので,結局はどれでも良いということになります。

 

割印と契印は複数の紙に跨って押印

 

契約書が2ページになるときに,1ページ目の裏と2ページ目を重ね合わせてハンコを押すことがあります。一般的に「契印」や「割印」と呼ばれていますが,これは「契印」となり「割印」は誤りとなります。

契印は当事者が知らぬ間に契約書の一部が抜き取られたり加えられることを防ぐためにハンコで痕跡を残しておくことに加えて,一連一体の契約書等であることの証明にもなり,契印がないと役所での申請が通らないことがありますので結構重要な行為です。

一方,割印とは正副など同じ書類がある場合に,どちらも同じ内容の書類であることを示すために正副の書類に重なるように押印したり,関連する書類について重なるように押印することを指しますので,実生活上では割印をするケースというのはあまり多くないと思います。

なお,切手や収入印紙などが使用済みであることを示すためにハンコを押すことを「割印」と呼ぶことがありますが,これも誤りであり正しくは「消印」と呼びます。

 

ということで,雑学的な内容になってしまいましたが,この仕事をしていると間違って使ってしまうと恥ずかしいケースがありますのでまとめてみました。

 

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4月 04 2019

差押の競合

先日,給与差押えの手続を行ったところ,競合してしまいました。預貯金の競合は結構あるのですが,給与差押えでの競合はあまり無かったので,今回は競合についてまとめてみたいと思います。

 

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差押えの競合とは

 

原則として,債権を差し押さえた場合,一定期間経過後は直接取り立てて良いこととなっております(民事執行法155条1項)。したがって,預貯金を差し押さえた場合は金融機関と,給与を差し押さえた場合は債務者の勤務先と直接交渉をして支払ってもらうこととなります。

このように差し押さえが1件だけであればその債権者が独占すれば良いため特に問題とはなりませんが,複数人が同一の債権を差し押さえをすることがあります。この場合に,複数人の差押債権額の合計が債務者が有する債権額を超える場合を「競合」といいます。

 

具体的に記載すると,債権者である甲さんが,債務者である乙さんの預金を差し押さえようと考え,A銀行の預金を差し押さえたとします。ところが,丙さんも乙さんに対して債権を持っており,同一のA銀行の預金を差し押さえました。

この場合に,

(1)甲さんの債権100万円,丙さんの債権50万円,乙さんの預金が200万円という場合であれば,A銀行は甲さんと丙さんにそれぞれ全額支払えば良いだけですので競合とはなりません。

 

しかし,

(2)甲さんの債権100万円,丙さんの債権50万円,乙さんの預金が120万円という場合,A銀行は甲さんと丙さんに全額弁済することができませんので競合となります。

 

なお,租税債権等の例外を除き,「債権者平等の原則」により,早い者勝ちとなるわけではなく,金額,支払時期等に関係なく債権者は平等に扱われますので,先に差し押さえた甲さんが全額弁済を受けるということにはなりません。

 

競合した場合の処理

 

競合した場合,乙さんの預金があるA銀行は甲さん及び丙さんに弁済することはできなくなります。この場合,A銀行は法務局に預金120万円を供託しなければなりません。これを執行供託といいます。

その後,供託された120万円は裁判所の配当手続によって甲さんと丙さんに配当され,差押手続は終了となります。

 

ということで,通常の預貯金であればこれで終わるのですが,給与債権の場合は,これが毎月生じることになります。

つまり,債務者の勤務先は競合している以上,毎月手取り給与の25%(民事執行法152条1項)を法務局に供託し,裁判所は毎月配当手続を行うことになります。もっとも,現実的に毎月配当手続を行うことは大変であるため,3~4か月分の給与が供託される度に配当手続を行う裁判所が多いと思います。ただ,3~4か月に一度で良いのは配当手続であって,勤務先が毎月供託することには変わりはありませんので,勤務先は本当に大変だと思います。

 

ただでさえ,給与の差し押さえとなると手取り給与の25%しか差し押さえができず回収までにそれなりの期間を要するのに,さらに競合したとなるとさらに期間を要することになるので,やはり競合した旨の書類が届いたときはがっくりきます・・・。

なお,競合になるかどうかは差し押さえによる回収が終わるかどうかで決まります。給与の場合は給料日の問題がありますのでなかなか難しいですが,預貯金の差押えの場合は債務者に裁判所から差押えの書類が送達されてから1週間後に直接取立権が生じ,すぐに銀行に連絡して回収することができますので,競合する前に迅速に進められた方が良いかと思います。

 

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1月 08 2019

分割弁済の完走(完済)

ご依頼いただく債権回収のほとんどが分割弁済による解決になります。事前の交渉を試みても一切連絡が取れずに訴訟となり,強制執行を行うケースもありますが,それでも一括で回収できるケースはあまり多くなく,その後に連絡をいただいて分割弁済になることが多いです。

 

今回は,あくまで当事務所が関与しているだけでの話となりますが,分割弁済の完済率についてまとめたいと思います。

 

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1 全体の80~90%が分割弁済

相手方に金銭の支払いを求めた場合,本当の実情は分かりませんが,やはりお金が無いことを理由に分割弁済を求められることが多いです。こちらとしても,分割とはいえ全額返済してもらえるのであれば,不合理な長期間で無い限り分割弁済で合意しています。

 

すべての事務所に当てはまるものではありませんが当事務所では以下のような感じです。

 

(1)話が出来て一括で回収できるケース → 10%程度

(2)こちらからの連絡は完全無視で一切連絡が取れず交渉もできないケース → 5%程度

(3)相手方から連絡があり交渉するか,訴訟手続を行った後に和解して交渉するなどして分割弁済となるケース → 85%程度

 

2 分割弁済の和解の方法

分割弁済の和解(合意)には,訴訟提起前に任意で和解書のやり取りを行うケースと訴訟提起後に裁判上和解が成立するケースがあります。

前者の場合はあくまで私文書であるため強制力はないものの,書類を作成するだけですので費用は抑えられます。少なくとも,当事務所ではご依頼いただいたうえで合意が成立した場合の書面の作成自体は無料なので費用はまったくかからないことになります。

一方,後者は分割弁済が滞った場合には預貯金や給与などの強制執行ができるため強制力が強いですが,そのためには訴訟手続を行うことになるため,それなりの時間と費用がかかります

 

なお,中間の方法として公正証書で和解書を作成すれば訴訟等を行うことなく強制力が強い書面を作成することも可能ですが,当事務所はあまりこの方法は執りません。

 

3 分割弁済の完走率

一般論としては,強制執行ができる裁判上和解の方がちゃんと完済してもらえそうな気がしますが,それほど変わらないように思います。どのような書面で和解が成立したとしても,結局は相手方次第だと思います。

ただ,1つだけ確実に完走率が確率が上がる場合があり,それは強制執行後に和解をした場合です。

 

裁判上の和解が成立し,「返済に遅れた場合は強制執行をされるかもしれない」という状態であっても,普通の方は強制執行を受けたことが無いので強制執行をされることの実感がありません。ところが,実際に強制執行をしてみると,勤務先に通知が届いたり(給与の債権執行),突然自宅に執行官が来たりします(動産執行)ので,以降のレスポンスは早くなりますし,遅れることなく返済してくれることが多くなります。

 

これまた,あくまで当事務所の感覚ですが,和解後にしっかり完済するのは概ね以下のような割合です。

(1)訴訟に和解が成立した場合 → 60%程度

(2)訴訟(裁判上)の和解が成立した場合 → 70%程度

(3)強制執行後に和解が成立した場合 → 90%程度

 

つまり,強制執行後に和解が成立したのに,それでも支払いが滞る方がいらっしゃるということです・・・。もうこうなると再度強制執行するしかありませんが,そのような方は差し押さえられるような財産がなく,現実的な回収は難しくなります。

 

以上,どの程度参考になるか分かりませんが,債権回収手続をご検討いただく一助となれば幸いです。

 

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10月 24 2018

欠席判決=勝訴ではない

先日,弁護士さんの懲戒請求に絡んだ損害賠償請求で,被告(懲戒請求者)が敗訴したという記事がありました。

 

この記事に対して,「欠席判決だから意味が無い」というようなコメントがあるようです。確かに,欠席判決の場合は,被告の主張を聞かずに判断され,極めて高い確率で原告勝訴となりますが,意味が無いというものではありません。今回の訴訟は懲戒請求が不法行為に該当するかどうかの訴訟であるため,意味が無いどころかかなり影響があるものだと思います。

ということで,私は上記の懲戒請求とはあまり関係ないのですが,今回は欠席判決全般についてまとめてみたいと思います。

 

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1 通常訴訟の流れ

訴えが提起されると,裁判所から被告に対して訴状等の関係書類が送付されてきます。送付された書類の中には2つの重要な期日が書いてあり,1つが答弁書提出期限,2つ目が口頭弁論期日です。

 

答弁書とは,被告側の初回の反論の書面のことであり,「被告の請求を棄却する。との判決を求める。」だったり,「原告から借りたお金は○月○日に返済した。」など,その理由を記載することになります。

通常,答弁書提出期限は口頭弁論期日の1週間程度前が設定されており,口頭弁論期日にとりあえずの原告と被告の主張が出て,審理が始まることになります。

この答弁書提出期限はあくまで目安であり,遅れたとしても特にペナルティはありませんが,答弁書を提出せず,口頭弁論期日に欠席してしまうと後述のとおり不利益がありますので,なにはともあれ出した方が良い書類です。

 

次に,口頭弁論期日というのは,いわゆる「裁判の日」であり,裁判所に出廷する日時となります。

2回目以降の期日は当事者と裁判所が打ち合わせをして決めるのですが,初回の期日に関しては被告の予定は関係なく一方的に決められてしまいます。そこで,これに対する救済措置として,事前に上記の答弁書を提出しておけば,口頭弁論期日には出廷しなくても良いことになっています(民事訴訟法158条)。

 

2 答弁書を提出せず口頭弁論期日で反論しなかった場合

 

被告が,答弁書に反論内容を記載して口頭弁論期日を欠席したり,逆に答弁書は提出していないけど,口頭弁論期日に出て口頭で反論した場合,その場で判決できるような特殊な事情が無い限りとりあえず裁判は続行することになります。

逆に,被告が答弁書で請求をすべて認めるような記載をして口頭弁論期日を欠席した場合や口頭弁論期日に出て請求を認めるような発言をした場合,特に争うことがありませんので裁判所は判決することができます。もちろん,被告が出廷しているのであれば和解協議が行われることも多いと思います

 

では,被告が答弁書を提出せず,しかも口頭弁論期日に出廷しなかった場合はどうなるのでしょうか。

この場合,被告の真の意思は分からないのですが,法律的には裁判所は原告の主張を認めることになっています(民事訴訟法159条)。これを法律的には擬制自白と呼んでいます。

例えば,原告が「被告に対して100万円を貸した。」という主張をしている場合,擬制自白が成立することによって,裁判所は借用書や通帳など一切の証拠無しに100万円貸したことを認めて良いことになっています。

したがって,擬制自白が成立する以上,原告が勝訴する可能性が極めて高くなり,このような判決のことを俗に欠席判決と呼んでいます。

 

3 擬制自白に含まれるものと含まれないもの

 

擬制自白=原告勝訴になりそうですが,実は擬制自白の制度は事実認定にしか及ばないとされています(民事訴訟法179条)。

「事実」というのは「100万円を貸した」,「被告に殴られた」というようなものを指します。

 

これに対し,法律の解釈・適用や事実の評価などは対象外となります。

例えば,親である原告が子である被告に対して,「子が成人したら,子は親に対して毎月10万円支払うのが健全な社会だ!」と裁判所に訴えを提起し,子が何ら反論をしなかったとしても原告の主張は認められません。なぜなら,「子が成人したら親に対して10万円ずつ支払う」という法律が無いからです。

これは極端な例ですが,実際に擬制自白が成立しても法律の解釈・適用により原告が敗訴した実例があります。

平成17年(少コ)第1186号売買代金請求事件

 

上記の裁判例は,通販会社である原告が,被告に対して代金の請求をしている事件ですが,被告に擬制自白が成立しているものの,裁判所はクーリングオフが適用されるとして原告敗訴の判決をしています。

 

また,とある事実が認定されたとしても,それが法律上の不法行為に該当するかどうかは裁判所が判断することになりますし,慰謝料も裁判所が決めます

例えば,隣家の騒音がうるさくて精神上の損害を受けたとして被告を訴え,被告が答弁書を提出せず口頭弁論期日を欠席して擬制自白が成立したとしても,あくまで「隣家から音が出ている」という事実について擬制自白が成立するだけで,それが不法行為とされるほどの音量ではない場合(受忍限度の範囲内)には原告敗訴の判決が出ることになります。同様に,「平手打ちをされてけがをした」ということで1億円の損害賠償請求をし,被告の欠席等により擬制自白が成立したとしても,「被告が平手打ちをした」という事実について擬制自白が成立するだけで「慰謝料1億円」まで及ぶものではありませんので,被告が欠席したとしても慰謝料として1億円も認められることはあり得ません。

あくまで「事実」についてしか擬制自白は成立せず,騒音が不法行為に該当するか,平手打ちで受けた損害(慰謝料等)の評価額などは裁判所が決めることになります。。

 

4 まとめ

 

冒頭の懲戒請求事件について,「被告が懲戒請求をした」ということは擬制自白で認定されると思いますが,その懲戒請求が不法行為に該当するものなのか,仮に該当するとしても慰謝料がいくらになるのかは,例え擬制自白が成立したとしても,ちゃんと裁判所は判断しています。仮に被告が行った懲戒請求が不法行為に該当するようなものではなかったと裁判所が判断したのであれば,擬制自白が成立していたとしても原告敗訴の判決がなされたはずですが,原告勝訴の判決が出ていますので,懲戒請求は違法なものだったいうことになります。

ただ,まだ判決が出たばかりですので,控訴・上告がされれば結論が変わる可能性もあります。

 

なお,公示送達に関する記事でも説明しておりますが,送達が公示送達だった場合には擬制自白は成立しません

公示送達は,裁判所の掲示板に呼出状が貼られるものであり,現実的に被告は裁判を起こされていることを知るよしもありませんので,そんな中で被告欠席による擬制自白を認めることはあまりにも酷であることから,原告は証拠による立証が必要となります。

ただ,普通は証拠を踏まえたうえで訴訟を起こしていますので,公示送達でも原告勝訴になることがほとんどだと思います。

 

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10月 15 2018

給与の差押えでもなかなかスムーズにいかないケース

最近,裁判上の和解をしても支払ってもらえなくなることが多く,結果として債務者の給与を差し押さえることがあります。

給与は,債務者が退職しない限りは少ないながらも毎月回収できますので,他の差し押さえと比べても比較的回収率が高い手続ではあるのですが,ここのところ立て続けに悩ましい事態に遭遇してしまいました。

今回は給与の差し押さえについて少しまとめたいと思います。

 

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1 原則として手取り給与の25%

 

給与の差押ができる上限が定められており(民事執行法152条1項),差押債権目録に定型文句として以下の文言を記載いたします。

「給料(基本給と諸手当。ただし,通勤手当を除く。)から所得税,住民税,社会保険料を控除した残額の4分の1(ただし,上記残額が月額44万円を超える時は,その残額から33万円を控除した金額)」

 

簡単に言えば,手取り給与の4分の1(25%)を差し押さえるというものであり,手取り給与が44万円を超える場合は33万円を控除した残りの金額を全額差し押さえることができます。

例えば,手取り給与が20万円だった場合は5万円を差し押さえることができますし,手取り給与が100万円だった場合は33万円を控除した67万円を差し押さえることができます。

 

また,給与に限らずボーナス(賞与)も対象となりますし,退職した場合に支給される退職金も対象となります。

 

例外的に,養育費や婚姻費用など生活にかかわるお金の場合は手取り給与の半分を差し押さえることができます(民事執行法152条3項)。

 

2 第三債務者の協力が必要

 

給与の差し押さえをしても自動的に裁判所が債権者に振り込んでくれるわけではなく,第三債務者(通常は債務者が勤務先の会社)に話しをしたうえで毎月送金してもらわなければなりません。つまり,勤務先の協力が必要になるということです。

差押の書類は勤務先にも郵送され,届いた時から上記の25%を控除した分しか債務者たる従業員に支払ってはいけません。万が一,全額支払った場合は,対債権者との関係では支払ってないことになり,債権者に対して25%分は二重払いしなければならないことになりますので,普通は勤務先は債権者に対して支払ってくれます。

ところが,中には裁判所の命令を無視して全額従業員に支払い続ける会社があります。債権者には対抗できないので債権者に対して二重払いしなければならない旨を説明しても,「自分が法律」と思って聞く耳を持たない社長さんもおり,支払ってもらえません。そうなると,もう勤務先の会社を訴えて回収するしかありません。

 

ただ,そのような場合でも差し押さえ金額の全額について訴えることができるわけではなく,経過分しか請求ができません

上記の例にあるとおり,仮に債務者の手取り月収が20万円だった場合1ヶ月当たり差し押さえができる金額は5万円です。とすると,最初の給料日が来た時点で会社が支払ってくれなかった場合は5万円についてしか訴えることができません。したがって,50万円回収したいということであれば10ヶ月待って訴えることになりますし,100万円であれば20ヶ月待たなければなりません。

最終的には回収できる可能性はありますが,このような事態になると大変です。

 

3 競合している場合

 

同一の債務者の給与に対して複数の差押が入ることがあります。これを「競合」と言います。

競合した場合,第三債務者は法務局に供託しなければなりませんので,会社としても面倒です(民事執行法156条2項 執行供託(義務供託))。

この場合,債権者は会社から支払ってもらうのではなく,配当手続によって支払ってもらうこととなり,最終的には法務局から払い渡してもらうことになります。

また,何より困るのが競合しているということは取り分が少なくなるということです。つまり,上記の例で言えば毎月5万円ずつ回収できたものが,他の債権者と分けることになりますので,毎月2~3万円ずつしか回収できないことになってしまいます。

競合しているかどうかは勤務先の会社から送られてくる「陳述書」という書類に記載されているため,この書類が届いた時はいつもドキドキです。

 

 

このように給与を差し押さえてもなかなかすぐに回収することができないのですが,それでも預貯金等の差し押さえよりは回収可能性は高いので,今後も給与の差し押さえは生命線だと思います。

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