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7月 11 2017

少額訴訟債権執行をやってみました。

貸金請求などで訴訟をしたり裁判上で和解が成立した場合には判決書や和解調書が作成され,これらの書類があれば相手の財産を強制的に差し押さえて現金化して,回収を図ることとなります。

 

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この差し押さえの対象となる財産として,確実かつ早期に回収できるのが預貯金です。もちろん,口座にお金が入っていなければ空振りに終わってしまうのですが,お金が入っていれば金融機関が支払いを拒否することは通常あり得ませんので,比較的早期に回収することができます()。

動産執行は現実的に換価できる財産が見つかるケースはほとんどなく,不動産執行は回収の可能性はかなり高いですが,手続完了まで1年近くにかかることがあります。

 

預貯金のように目に見えない権利を差し押さえる手続が「債権執行」であり,預貯金以外にも給与や売掛金などを差し押さえる手続もあるため,差し押さえ手続の中で一番多く使われる手続が債権執行だと思います。

 

さて,この債権執行に限らず,基本的にすべての強制執行手続は地方裁判所の手続であるため,私ども司法書士では代理することができず,書面を作成することができるのみとなります(もっとも,差押手続は最初の書類作成がほぼすべてなので,基本的には書類作成だけで問題なく手続を終えることができます。)。

この債権執行のうち,簡易裁判所における「少額訴訟」の判決に基づく債権執行(これを「少額訴訟債権執行」といいます。)に限り,簡易裁判所で債権執行の手続を行うこともできるとされているため,私ども司法書士も代理人として債権執行を行うことができます。とはいえ,なかなか少額訴訟を選択しない()ため少額訴訟債権執行を行うことも無かったのですが,先日ご依頼を受けた事件が少額訴訟債権執行ができる手続だったため進めてみました。

少額訴訟は,証拠の提出が制限されていたり,被告の異議が出たり,勝手に遅延損害金の免除や分割払いの判決になるなど原告にとって不利益なことがあるため,あまり選択しません。

 

手続を進めた感想としては,正直なところ通常の債権執行と手続自体はほぼ変わらず,手続を行うのが地方裁判所か簡易裁判所(正確には裁判所書記官)かの違いくらいしかないため,一般の方にとって手続しやすいものかと聞かれると決して手続しやすいものではないかと思います。手続費用も通常の債権執行と変わらないため,金銭的なメリットもありませんでした。

 

ということで,敢えて少額訴訟債権執行を進めるメリットはあまりないかと思いますので,次の機会は無いような気がします・・・。

 

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6月 22 2017

訴え提起前の和解(即決和解)

借金に関する契約書については特に形式が決まっているわけではありませんので,自分で手書きで作成しても良いですし,文房具屋さんなどに売っている定型のものを使っても大丈夫です。 

 

この点,借金に限らず,お金の支払いに関する書面を公証役場にて作成し,執行認諾文言を入れることで,裁判をしなくてもいきなり強制執行ができるような書面が出来上がります。この書面は,一般的に「執行証書」や「執行認諾文言付公正証書」などと呼ばれています。ちなみに,上記の「執行認諾文言」とは,文字どおり「強制執行されることを承諾します」という趣旨の文章が書かれているものとなり,たとえ公正証書で金銭消費貸借契約書などを作成したとしても,執行認諾文言が入っていなければ強制執行はできません。 

 

このような,執行証書は債権者としてはかなり便利な書類ではありますが,実は金銭の支払い(その他代替物など)に関するものしか強制執行ができません民事執行法第22条5号)。

例えば,建物の明け渡しだったり,物の引き渡しだったり,登記手続への協力だったりといった金銭の支払い等に関するもの以外は公正証書で合意書などを作成してもその公正証書では強制執行ができず,改めて訴訟を提起し,主張や証拠として提出して裁判所から判決をもらったうえで,やっと強制執行にたどり着くことになります。

建物の明け渡しなどでは,「本来はすぐに退去してもらえるけど,○月までに全額を支払えば,その後も住んで良いですよ。ただし,支払いが遅れた場合にはすぐに出て行ってくださいね。」というような話し合いが成立することはよくありますが,上記のとおり公正証書で合意しても明渡の強制執行はできませんし,かといって,和解をするために訴訟を提起するのも何かおかしな話です。

 

そのようなときのために訴え提起前の和解(即決和解)という制度があります(民事訴訟法275条)。

今年に入って半分近くが経過していますが,先日とある裁判所に即決和解の申立てをしたところ事件番号が第1号でしたのであまり使われていない制度かと思われることから,今回は即決和解についてまとめておきたいと思います。

 

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即決和解を行うための条件

 

1 和解が成立していること

当たり前ですが,当事者間で和解(話し合い)が成立していることが必要です。話し合いが決裂しているのであれば訴訟や調停を行うこととなります。

 

2 当事者が裁判所に出頭できること

書面による和解ができないことになっておりますので,当事者が裁判所に出頭する必要がありますが,裁判所の許可があれば親族などが代理人として出頭することも可能です。もちろん,弁護士や司法書士(ただし,140万円以下)を代理人とすることも可能です。

 

即決和解のメリット・デメリット

公正証書の作成や訴訟などの法的手続と比較した場合の即決和解のメリット・デメリットを記載いたします。

 

1 金銭の支払以外についても強制執行が可能

上記のとおり,執行証書では金銭の支払いに関するもののみ強制執行が可能ですが,即決和解では金銭の支払以外に関しても強制執行が可能です。もちろん,金銭の支払に関するものも可能です。

 

2 公正証書よりは時間がかかり,訴訟よりは早い

公正証書の場合は,公証人との予定があえば,最速で1~2日で書面を作成することができます。一方,訴訟となった場合は最短でも2~3か月はかかりますし,相手が争ってくれば解決まで年単位の時間がかかる可能性もります。

この点,即決和解は,当事者の呼び出しや申立書の内容の調査などの時間がかかりますので,およそ1か月程度の時間がかかります。

 

3 費用が安い

公正証書の場合は,和解する金額にもよりますが1万円から数万円程度の実費がかかります。訴訟に関しても金額によって差ありますが,同じく数万円の実費がかかります。

この点,即決和解は争いになっている金額に関係なく一律2000円の収入印紙と当事者に送達するための郵券代のみとなりますので,3000円あれば十分足りると思います。ただし,弁護士や司法書士の依頼した場合には報酬が別途かかります。

 

4 管轄が限定される

公正証書については特に管轄はありませんので,全国どこの公証役場でも作成可能です。訴訟に関しては,金銭の支払を求める場合は,債権者または債務者どちらかの住所を管轄する裁判所で行うことができますので,債務者が遠方に住んでいる場合でも,債権者の住所地を管轄する裁判所を選択することもできます。

この点,即決和解に関しては,相手方(通常は債務者)の住所地を管轄する簡易裁判所(140万円以上でも簡裁。)に限定されていますので,債務者が遠方に住んでいる場合は移動が大変かもしれません。

 

5 債務者に不出頭のペナルティがない

訴訟の場合,理由なく裁判所に出頭せず書面も提出しない場合は,債務者(被告)が言い分をすべて認めたものとして,債権者(原告)が勝訴となる場合がありますので,被告としては無視することなく対応しなければなりません。

この点,即決和解に関しては,万が一出頭しなくても出頭しなかったことに対するペナルティはありませんので,口頭での和解が成立していても,和解直前になって一方的に破棄されるという可能性があります

 

以上のように,即決和解には一長一短がありますが,条件が合えば,安価で強力な書面が出来ますので,和解ができそうな場合であれば即決和解という方法もお考えいただいてはいかがでしょうか。

 

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6月 19 2017

動産執行って効果ある?

最近はあまり見かけなくなりましたが,以前はドラマなどで,「自宅の中に勝手に人が上り込んで,赤い紙などをタンスやテレビなどにペタペタ貼られて差し押さえられてしまう。」なんて描写がありました。

実際にはこんなことはあり得ないのですが,「裁判所の執行官が事前連絡なく家にやってきて,様々なものを差し押さえる。」ということは現実にあり,このような差し押さえを「動産執行」といいます。

今日はこの動産執行について掘り下げて書いてみようと思います。

 

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動産執行では,ほとんど差し押さえができない。

 

本サイトの「裁判を始める前と裁判が終わった後にとる手続」のところにも記載しておりますが,自宅内にあるすべての財産を差し押さえることができるわけではなく,「差押禁止財産」という文字どおり差押が禁止されている財産があります(民事執行法131条)。むしろ,実際は原則と例外が逆転しており,大多数が差押ができない財産となっています。以下,差押が禁止されている財産について列挙していきます。

【債務者等の生活に欠くことができない衣服,寝具,家具,台所用具,畳及び建具】
→これが一番差し押さえ禁止にひっかかるもので,ほぼすべての生活道具の差し押さえが禁止されています。したがって,タンスやテレビなど生活に必要なものは原則として差し押さえをすることができません。もっとも,「原則として」と記載した通り,例外もあります。例えば,価値のあるテレビが何台もあるようであれば,2台目以降は差し押さえることが可能ですし,高価なブランド食器などは差し押さえができる場合があります。
生活必需品には該当しない物としては,高級腕時計や貴金属,ゴルフクラブ,絵画などになります。
【債務者等の一月間の生活に必要な食料及び燃料】
→文字どおりそのままで,食料や灯油などは差し押さえができません。そして,仮に差し押さえができたとしても,食料などは価値が低いため現実的にも差し押さえるメリットはないと思います。
【標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭】
→預貯金は債権執行となりますが,現金は動産執行の対象となります。しかし,66万円までの現金は差押が禁止されています(民事執行法施行令1条)。
ちなみに,現金については,一般家庭というより店舗や事務所などの動産執行の際に差し押さえができる場合があります。以前,過払金の返還事件が多かった時に,とある消費者金融のATM内の現金を差し押さえるということが多くみられました。
【主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物】
【主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物】
【技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)】
→端的に言うと,このようなものが差し押さえられてしまうと,債務者が収入を得る術がなくなってしまいますので,禁止されています。
その他,下記のものも禁止されています。債務者にとってなくてはならないものである反面,債権者としては財産価値がなく差し押さえても現実的な回収ができませんので意味がありません。
【実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの】,【仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物】,【債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿及びこれらに類する書類】,【債務者又はその親族が受けた勲章その他の名誉を表章する物】,【債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具】,【発明又は著作に係る物で、まだ公表していないもの】,【債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物】,【建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品】

留守だと意味がない

 
動産執行は,執行官が債務者の自宅に赴く手続であるため,基本的には在宅している時間帯を狙って訪ねてもらいます。執行官の都合もありますが,かなり融通を効かせてくれて,朝の7時台に訪ねてもらったこともあります。それでも留守の場合は原則としては自宅に入れませんので空振りとなってしまいます。ただし,債務者宅の開錠費用や立会人の費用(概ね1.5万円から2万円程度)を支払うことで,債務者が留守の場合でも自宅に立ち入ってくれます。もっとも,上記のとおり現実的な回収は難しいので,開錠費用や立会人費用を支払ってまで強制的に自宅に入るメリットがあるかどうかを検討する必要があります。 
また,裁判所によっては,留守だった場合でも執行官が来た旨の書面を入れてくれることもありますが,私が関与させていただいた件では,執行官は留守の場合はそのまま帰ってしまうため,インターホンに画像が残っていない限り,債務者は執行官が来たことに気づきません。とすると,留守だとあまり何の意味も無い手続ということになってしまいます。 

動産執行にかかる費用

裁判所によって異なることがありますが,3万円から5万円程度の予納金を支払い,余りがあれば返金されます。これに加えて,弁護士や司法書士に依頼された場合には,代理人報酬や書類作成報酬がかかります。
執行官から聞いたところによると,留守だった場合だと2000円程度の費用がかかるそうですので,5回訪ねてもらっても1万円程度で済むことから,1度や2度留守だったとしても繰り返し自宅を訪ねてもらった方が良いかもしれませんね。 

本気度を見せる効果としては意味があるかも

本人が在宅している場合,執行官と直接会うこととなりますので,それなりのインパクトがあります。
上記のとおり,多くのケースで差押はできませんので,動産執行そのもので回収することはかなり難しいと思いますが,執行官が自宅に来たことで,「本気だ」ということが伝わり,任意の返済が期待できることがあります。実際に,当事務所で関与させていただいた件でも,動産執行自体は不能でしたがその後に本人から連絡があり分割弁済で和解できたケースもあります
ということで,手続きそのものでの回収は難しいですが,かといってまったく無駄ではなく,費用もそれほどかからないので,めぼしい財産が無い場合は動産執行の申立てをするということも選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。

4月 14 2017

民法改正による債権回収への影響

先日,民法の債権分野に関する大改正が衆院を通過し,今国会で成立する見込みとなりました。

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以下,時事通信社2017年4月12日20時15分配信の記事を引用します。

債権や契約分野の規定を見直す民法改正案が12日の衆院法務委員会で、与党や共産党、日本維新の会の賛成多数で可決された。13日の衆院本会議で可決、参院に送付され、今国会で成立する見通し。「約款」規定の新設などが柱で、3年間の周知期間を経て、2020年をめどに施行される。債権規定の抜本改正は1896(明治29)年に民法が制定されて以来初めて。約120年にわたる社会経済情勢の変化に対応させた。インターネット通販の利用規約などは約款で取引内容を定めるのが一般的で、現行の民法には約款に関する規定がなく、購入後トラブルとなるケースが多い。改正案では、消費者側の「利益を一方的に害する」約款条項は無効とする。

引用終わり

 

民法自体は,戦後の相続分野の改正や成年後見制度(旧禁治産者)など何度か改正されておりましたが,契約や連帯保証などといった債権分野については120年前に民法が施行されて初めての改正となります。

債権分野の改正は債権回収に直結する部分ですので,少し気が早いですが改正部分について私自身の備忘録の意味も含めてまとめたいと思います。

ちなみに,あくまで衆院を通過しただけですので,正式に改正されたわけではなく,さらに実際に施行されるまでには上記のとおり3年ほどの時間がありますので,すぐに影響が出るものではありません

 

第1 消滅時効

 

今は,一般的な債権(個人間の貸し借り等)は10年,商取引による債権(売掛金等)だと5年が経過すると時効により消滅してしまいます。さらに,債権の種類によっては1年(飲食代・運送費等)だったり3年(工事代金,診療報酬等)だったりと,短期に消滅してしまうものもあります。

このように債権の種類によって時効期間が違うと,いったいいつ債権が消滅するのかわからくなってしまうという弊害があります。

今回の改正によって次のとおり改正されます。

 

1 債権の種類に関係なく,債権者が権利を行使できることを知った時から5年または知らなくても権利を行使することができるときから10年経過した場合には消滅時効が完成する。ただし,不法行為に基づく損害賠償請求権は知った時から3年または行使できる時から20年であり,さらに生命身体侵害に関するものに限り知った時から5年または行使できるときから20年となります。

不法行為に関する例外があるものの,基本的には知った時から5年または行使できる時から10年で消滅してしまいます。したがって,現行法では1年ないし5年で消滅してしまう債権については債権者にとって有利ということになりますが,当初から10年だったものについては「知った時から5年」に該当してしまうと債権者にとっては不利になってしまいます。なお,「権利を行使できることを知った時」がいつであるかについての立証責任は債務者側にあります。

 

2 時効の猶予・更新制度が新たにでき,書面で権利について協議する旨の合意をすれば消滅時効の完成が一定期間猶予されるという制度もできました。

まず現行法の時効の停止や中断に関するものが時効の猶予・更新というものに再構築されただけであまり影響はないかと思いますが,権利について協議をしている間は時効の完成を猶予することができる制度が新しくできました。現行法だと,支払い方法などについて話し合いをしているだけでは中断事由には該当しませんでしたので,中断させるためには訴訟を提起するか債務者に債務承認をしてもらう必要がありました。今回新しくできた制度は,話し合い中は時効の完成を一時的に猶予することができるので,時効中断のために訴訟に踏み切らなくてもじっくり話し合いができるというメリットがあります。ただし,いつまでの時効完成が猶予されるというのはおかしいので,最長で1年となっております。

 

第2 保証人

改正によって,保証人のかなり保護が図られております。

 

1 事業資金の個人保証は原則として公正証書が必要。

保証人になろうとする方は,金融機関と事前に保証契約を締結する前に,保証する意思を公正証書で表明しなければならなくなり,口頭で保証契約の内容を公証人に伝える必要があります。恐ろしくハードルが高いです。

ただし,会社の役員や大株主などが会社の債務を保証する場合はこの限りではありません。また,事業資金ではない場合も関係はありません。

 

2 根保証の場合の極度額の設定

例えば,賃貸借契約の場合,借主に生じた債務についてすべて保証すると,かなり長期間の間,どれくらいの金額になるのかわからないような保証をすることになります。このような包括的な保証のことを根保証といいます。

改正後については,保証額の上限である「極度額」を必ず定めなければならず,極度額を定めなかった場合は,(根)保証契約自体が無効となってしまいますので注意が必要です。

 

第3 (金銭)消費貸借契約

 

細かい話になってしまいますが,お金の貸し借りである「金銭消費貸借契約」は,現実的にお金を渡すことが契約の要素となっておりますので,お金を現実的に渡す前に契約書を書いても貸主には「貸す義務」というものは存在しませんでした(現実的にお金を渡していないため,契約自体不成立。)。しかし,改正によって,書面で契約することを条件として現実にお金を渡さなくても合意があれば契約が成立することとなったため,貸主に「貸す義務」が生じるケースがあります。貸すか貸さないか迷っている間に契約書を書いてしまうなんて方はなかなかいらっしゃらないと思いますが,念のため注意です。

 

第4 賃貸借契約

建物や土地に関する賃貸借契約について,敷金返還や賃借人の原状回復義務などについてトラブルがあったため明確化されました。

1 敷金について

基本的には判例の考え方が明文化されただけであるため,特に大きな変更はありません。例えば,「敷金の返還時期は明け渡し完了後」だったり,「賃借人の方から敷金を未払い賃料に充当することを請求することはできない」などです。

 

2 原状回復義務

これまた判例どおりですが,通常損耗や経年劣化によるものはすべて賃貸人負担であり,賃借人の負担とすることはできません。ただし,契約書の特約として賃借人が負担することとなっていればそれは有効ですが,賃借人にしっかり説明し,明確に特約を合意していることが必要となりますのでハードルは相当高いと思います。

 

他にも改正点はたくさんありますが,債権回収に関係がありそうな部分に絞ってまとめてみました。

今後も新たな情報が入り次第,まとめていきたいと思います。

 

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3月 03 2017

訴訟提起後の対応

訴訟を提起したとしても,必ずしもすべてが判決になることはなく,他の結論で終わることがあります。この点,稀に勘違いされていらっしゃる方がおみえですので,まとめておきたいと思います。

 

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和解成立による取下げ

 

いったん訴訟を提起したとしても,判決が出て確定するまでは取り下げることが可能です。

訴訟提起前に話し合いをしていた相手方があまりにも強行で和解ができないような状況だったとしても,訴訟を提起することで一転して和解ができることがあります。また,訴訟提起前にはまったく連絡が取れなかったような方でも訴訟を提起したことによって連絡があり,話し合いができる場合があります。

訴訟外で話し合いができ,和解に関する合意ができるようであれば訴訟を取り下げるということもあります。

ただ,訴訟を取り下げてしまうと,和解に関する合意書を作成したとしても執行力がないため,次に記載の訴訟内による和解を選択することが多いです。

 

訴訟内での和解成立

 

当事者が双方とも出廷した場合,簡易裁判所の場合は司法委員という職員が間に入って和解交渉をすることがあります。ここで話し合いがまとまるようであれば,あとは裁判官の面前で和解をして終了となります。

上記の裁判外での和解でも訴訟内での和解でも結局は話し合いによって合意した内容で返済等がされるため,返済等に滞りがなければどちらでも良いのですが,訴訟内で和解が成立した場合は和解調書という書類が作成され,万が一返済等が滞った場合にはこの和解調書に基づいて強制執行を行うことが可能となっています。したがって,債権者の立場としては訴訟内で和解をした方良いということになります。

なお,和解については当事者双方が出廷することが原則となっておりますが,簡易裁判所においては「和解に代わる決定」という制度があり,事前に当事者同士で和解ができているようであれば,その内容を裁判所に伝えることが,どちらか一方の出廷,または双方の出廷が無くても和解と同様の効果のある書面を作成してもらうことができます(民事訴訟法275条の2)。ちなみに,和解に代わる決定において,どちらか一方の出廷が必要なのか双方とも出廷が不要なのかは裁判官や裁判所によって取り扱いが異なるためよくわかりません。例えば,名古屋簡裁や瀬戸簡裁,春日井簡裁などは当事者どちらかの出廷が必要とされることが多いですが,半田簡裁だと双方とも出廷しなくても良いとされることが多いように思います。この和解に代わる決定も和解調書同様,返済等が滞った場合には強制執行を行うことができます。

 

判決

 

訴訟内で和解が成立せず,また取下げもしないようであれば最終的には判決になります。昨日も裁判所に出廷しましたが,和解に至ることなく判決となってしまいました。

判決の言い渡しがあり,裁判所から判決書が送達されて2週間以内に控訴されなければ,当該判決は確定しすることとなり,勝訴判決である場合は判決に基づいて強制執行を行うことができます。

なお,多くのケースで「仮執行宣言」が付されており,確定しなくてもすぐに強制執行手続を進めることができます。ちなみに,少額訴訟においては請求を認める判決の場合は必ず仮執行宣言が付されることとなっております(民事訴訟法376条)。

もちろん,判決が出ても必ず強制執行をしなければならないものではなく,判決後に改めて話し合いをして分割弁済で和解するということも可能です。実際に,強制執行をしても回収が難しいケースの場合は判決後に和解して分割で返済してもらっているケースもあります。

 

以上から,訴訟を行っても必ず判決になるのではなく,和解で解決することがありますし,仮に判決になったとしてもその後に和解することもありますので,訴訟を行ったとしても強制執行までしなければならないケースはそれほどありません。しかし,中にはどうしても支払わない方もいらっしゃいますので,そうすると財産を探し出し強制執行を進めざるを得ません・・・。

 

 

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10月 11 2016

時効についての注意点

何度か時効についてご質問いただくのですが,誤解されていることが少なからずございましたので,これまでにいただいたご質問で誤解ところについてまとめたいと思います。

 

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消滅時効とは

各ページにも記載しているとおり,貸金や売掛金などの債権については,一定期間経つと時効によって請求ができなくなることがあります。この「一定期間」は債権の種類によって異なり,運送費だと1年,診療報酬だと3年,一般的な売掛金や家賃だと5年,その他の債権(個人間の貸金など)は10年などとなっています。

 

時効の起算点

では,この「一定期間」のスタートはいつからでしょうか。この点,時効について規定されている民法では,「権利を行使することができる時から進行する」となっています(民法166条)。

「権利を行使することができる」というのは,端的に言えば「請求できる」という意味となります。

個人間の貸し借りであれば返済日からということになりますし,診療報酬であれば通常は当該診療日からとなりますし,売掛金などで毎月の締日などがある場合は,実際に仕事をされた日ではなく締日のあとに請求書に書いてある支払期限(支払期限を定めていなければ請求日)ということになります。また,毎月発生する家賃や管理費などは,毎月の支払日にその月の分だけがスタートすることになります。

よくある誤解が,個人間の貸し借りで「お金を貸した日」とされている場合です。例えば,平成28年10月11日に100万円を貸し,3年後の平成31年10月11日に一括で返済することになっていた場合は,平成31年10月11日にならないと返済を請求できませんのでこの日までは時効は進行しません。したがって,最速でも時効が完成するのは,返済日の10年後(貸してから13年後)である平成41年10月11日ということになります。

 

時効の援用

 

これまでに何度か記載しておりますが,消滅時効は期間が満了すれば自動的に消滅するものではなく,債務者側の時効の援用が必要とされています(民法145条)。

これは,時効によって権利が消滅することを良しとしない債務者もいるため,時効によって消滅させるかどうかを債務者に決めてもらうという趣旨です。

逆に言えば,時効期間が満了していても時効の援用がされていないようであれば,請求すること自体は可能です。当事務所でも何度か時効期間が満了している債権について支払ってもらったことがあります。

 

時効の中断

 

上記の「一定期間」が満了すると権利が消滅してしまいますので,債権者としては消滅してしまわないように時効の進行を止める「中断」の手続を進めることになります。

法律では「 請求」,「差押え、仮差押え又は仮処分」,「承認」の3つの場合に中断すると規定(民法147条)されており,例外的に「催告」をし,その後に訴訟等の裁判手続を行うことで6か月だけ時効期間が伸びることになっています(民法153条)。

このうち,よくある誤解が「請求」についてです。民法には,単に「請求」としか書かれておりませんので,口頭でも請求すれば良いようにも思えますが,この「請求」は民法149条から152条までに規定された法的手続による請求だと考えられております。したがって,電話で督促をしたり,請求書を送付するだけでは147条に規定する「請求」にはならないことになります。

なお,口頭などによる請求でも153条の「催告」に該当しますので,後に法的手続による請求をすれば,6か月は時効の完成を防ぐことはできますが,これは1度だけであり定期的に請求書を送付し続けることで永遠に時効の完成を防げるわけではありません。

 

時効の利益の放棄

 

一度だけ,借用書の中に「私は時効による利益を放棄します。」という文言が書かれたものを見たことがあります。

この点,民法にはドンピシャで「時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。」と規定されていますので,お金を借りるときや時効完成間際に消滅時効を主張しない旨の約束をしたとしても無効です(民法146条)。もちろん,無効である以上,覚書や念書といった書面を作成したとしてもダメです。

ただし,民法上禁止されているのは時効完成の放棄であり,時効完成に放棄することは自由です。だからこそ,時効完成後でも返済してもらうことがあるわけですね。

 

まとめ

以上から,よくある誤解としては,

時効がスタートするのはお金を貸した日ではなく返済日

消滅時効は,期間の経過によって自動的に消滅するのではなく,債務者の援用が必要。なので,時効完成後に返済してもらっても返済は有効。

時効中断事由の「請求」は裁判上の請求(訴訟など)をしなければならない。

④「催告」は1回だけで,繰り返し行うことで時効を中断させることはできない。

債務者が,時効完成前に時効の利益を放棄することはできない。例え,覚書や念書などが作成されていてもすべて無効です。

となります。

 

ネット上(某知恵袋)では,上記誤解に基づいて回答されているものも散見されますのでご注意ください。

 

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7月 08 2016

法律上または事実上回収できないケース

債権回収のご相談の際に,回収の方法について説明させていただきますが,その中で回収できないケースについても説明させていただいております。

回収できないケースは大きく2つに分かれており,1つ目は「法律上回収が不可能またはほぼ不可能」なケース,2つめは「事実上回収が不可能なケース」となります。

以下,この2つについて具体例を記載いたします。

 

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法律上回収が不可能またはほぼ不可能なケース

 

日本は法治国家であるため,請求するためには法律上の根拠が必要となります。日々の生活の中で厳密に法律を意識してお金の貸し借りなどをすることはないと思いますが,多くの場合は法律も常識に沿うようにできておりますので,常識内の取引であればまず問題なく請求ができます。したがって,下記に記載しているのは,事例としてはあまり多くないケースだと思っていただいて大丈夫です。

 

(1)自己破産

言葉としてはお聞きになったことがある方が多いと思いますが,相手が自己破産をしてしまうと法的には請求ができませんし,それどころか破産した後に相手方やその家族などに支払いを求めると,犯罪になってしまうことすらあります(破産法275条)。ただ,これだけだとあっさりしすぎているので,もう少し詳しく説明いたします。

 

①相手が法人の場合

売掛金の請求や未払い賃料の回収だと相手が法人というケースがあります。法人が破産した場合,会社が消滅してしまいますので破産されてしまうとどう頑張っても回収することはできず,破産手続の中で配当があることを願うしかありません。また,会社の役員が保証人であれば別ですが,そうでなければ役員に対して会社の債務を支払うよう請求することもできません。ただし,役員としての任務懈怠等があった場合には損害賠償請求ができる場合があります(会社法423条)。

 

②相手が個人の場合

相手が個人の場合,破産をしても直ちに借金が免除されるわけではなく,免責許可を得て初めて借金が免除されることになります。

数としては極めて少ないですが,破産申し立てをしても,何らかの理由で免責が許可されない場合があります。例えば,詐欺的な借入だったり,借入理由がすべてギャンブルだったり,帳簿を改ざんしていることが発覚した場合などです(破産法252条1項)。もし,免責が不許可となった場合は支払いが免除されていませんので,法的には請求することは可能です。しかも,破産手続によって時効が中断されていますので,10年間は請求が可能です(民法152条破産法124条3項民法174条の2第1項)。

ただし,破産手続を行っているような経済状況ですので,現実的に支払い能力があるかどうかは別問題ですが・・・。

 

③免責許可後の支払い

上記のとおり,免責許可がされている方に請求すること自体が犯罪になる恐れがありますが,逆に相手方から任意の支払いをされるようであればそれを受けることは問題ありません。これは,破産手続によって貸金が消滅するのではなく,自然債務になるからだと考えられています(破産法253条1項)。

→ 自然債務とは

もし,自主的に支払っていただけるようであれば,ありがたく頂戴しましょう。

 

④破産後に支払う旨の約束

「今回破産手続はするけど,あなたの分は破産手続が終わったら必ず支払うから。」と約束をされる方がいますが,たとえ覚書等の書面が作成されていても何ら効力はありません

また,破産手続開始決定後,免責許可の前または免責許可の後に,破産債権に関して支払う約束をしたとしても上記同様に無効であると考えられています。これを認めてしまうと,改めて破産債権について訴訟等で請求できることになり,破産手続が無意味になってしまうからです。

 

(2)消滅時効が完成している場合

お金の支払いを求める権利については,一定期間請求しないと時効により消滅してしまい,請求することができなくなってしまいます。一般的な個人間の貸し借りであれば10年,家賃や売掛金等の商売に関するものであれば5年,診療報酬は3年となっていまいます。

この時効ですが,実は期間が経過しただけでは消滅せず,相手方が「時効なのでもう支払いません」という意思表示をする必要があります。これを「時効の援用」と言います(民法145条)。

ですので,時効期間が経過している債権であっても,時効の援用がされていないようであればとりあえずは請求することは可能ですし,それを受けて相手が支払ってくれるのであれば問題ありません。もっとも,相手が調べれば時効の援用のことはすぐにわかりますし,仮に相手が時効の援用に気付かない間に訴訟をしても裁判官が助け船を出すことがありますので実際に回収できることはなかなかありません。

しかしながら,なぜか当事務所では何度か支払ってもらったことがあります・・・。

 

(3)違法・不法な債権の場合

民法90条に,「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は無効とする」と規定されており,前半部分は略して「公序良俗違反」と呼ばれています。

具体的には,麻薬や覚せい剤,拳銃などの禁制品の売買代金,違法な賭博の勝ち金,愛人契約のいわゆる「お手当」,ヤミ金からの借金などです。したがって,麻薬の売買代金を支払わない,賭博で勝ったのに払ってくれない,お手当を払ってくれない,ヤミ金の債務者が払ってくれない,という事情があったとしても,法律上無効なので請求することはできません。逆に,麻薬の買主が「覚せい剤の契約は無効だから支払ったお金を返せ」とか「愛人契約はむ無効だから今まで払ったお手当を返せ」ということもできません。これを「不法原因給付」と言います(民法708条)。ただ,愛人契約以外は公序良俗違反どころか犯罪ですので,そのような債権回収のご依頼が来るとは思えませんけどね。

なお,愛人契約に関連して,当事務所ではいわゆる水商売・風俗などのお店で働いている方への貸金についてご相談を受けることが多々あり,その中で相手方の反論として,「貸金は愛人契約を維持するためのお金であって不法原因給付だから返還義務が無い」と主張されたことがあります。一般論として,単にお客さんとしてお店に通っているだけであれば水商売等の方への貸金が愛人契約維持目的と判断される可能性は極めて低いと思いますが,状況次第では可能性がゼロではありませんのでご注意ください。

 

事実上回収が不可能またはほぼ不可能なケース

 

法律上,請求が可能だとしても,現実的に回収できないケースがあります。実際にご相談をいただくケースのほとんどが一般的な貸金であるため,法律上請求できないというケースはかなり少なく,請求を断念する場合はこちらの理由となることがほとんどです。

 

(1)相手方に資力がない場合

相手方が任意に支払ってくれれば良いのですが,そうでない場合は最終的には訴訟等を行い,強制執行をして回収することになります。しかし,強制執行をして押さえる財産がなければ事実上回収ができません。いわゆる「無い袖は振れない」ということであり,専門用語では,「手元不如意の抗弁(てもとふにょいのこうべん)」と呼んだりします。これは,債権回収に関して回収できないもっとも多い理由であり,この問題は相手方の経済事情によるため,一流弁護士さんにご依頼されたとしてもどうにもならないことが多いと思います。

ただし,預金や不動産などの資産が無くても,相手方がどこかで働いているようであれば,給与を差し押さえることで回収できる場合があります。

また,相手方自身に支払い能力が無くても,親族等に保証人になってもらい,その親族等に支払ってもらうということは考えられますが,親族は保証人になる義務はありませんので,しっかりと説明してご納得いただいたうえで保証人になっていただくことになります。

保証人については,こちらをご覧ください。→支払の担保となるもの

 

(2)相手が行方不明の場合

相手が行方不明だと連絡先がわかりませんので事実上請求をすることができません。

なお,相手が行方不明でも訴訟を行うことはできますし,証拠があれば勝訴することもできると思います。

→ 公示送達の訴訟

とはいえ,相手は裁判を起こされたこと自体知らないと思いますので任意の支払いは一切期待できず,強制執行以外での回収はできません。そして,行方不明になるような人の財産を把握することは極めて困難ですので,回収は難しいと思われます。

このようなケースで回収できるとすれば,親名義の不動産などがあり,すでに相続が発生しているものの登記が未了となっているような場合など,かなりレアなケースになると思います。

 

(3)相手が亡くなっており,相続人がいない場合

相続という制度は,家や預金などのプラスの財産だけでなく,借金などのマイナスの財産も相続することになっています。したがって,相手方が亡くなっていたとしてもその相続人に対して請求することができます

ところが,相続については家庭裁判所で「相続放棄」の手続をすることで相続人ではなかったことになり,同順位の相続人がいなければ次順位の相続人に相続権が移ります(配偶者は常に相続人)。具体的には,子どもが相続放棄をした場合は親に,親が相続放棄をした場合は兄弟姉妹に順次相続権が移っていきます。そして,兄弟姉妹も相続放棄をし,配偶者がいないまたは配偶者も相続放棄をしている場合は,相続人が不存在という状況が生じてしまいます(相続放棄を前提に説明をしてしておりますが,当初から子どもや兄弟がおらず,親はすでに亡くなっているという場合でも同じ状況は生じます。)。

このような場合,亡くなった方名義の財産があれば,相続財産管理人の選任申立てを行うことで相続財産から回収できる場合もありますが,相続放棄をされるような方に財産があるとは考えにくいため,事実上,回収が困難である場合が多いと思います。

 

いろいろとまとめてみましたが,事実上回収できない場合というのは結局は「相手方に財産が無い」ということに尽きます。そして,相手方の財産の有無は債権回収における一番重要な要素であるため,この点の検討をせずに債権回収を進めることはありえないこととなりますので,事前の情報収集が極めて重要となります。

 

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6月 06 2016

養育費不払い,口座を裁判所が特定

先日,このような記事がありました。
横行する養育費不払い、債務者口座を裁判所特定(YOMIURI ONLINE 2016年06月04日 07時06分)
 

以下,上記の記事について引用いたします。
 

強制執行を容易にするため、裁判所が金融機関に口座情報を照会して回答させる仕組みで、早ければ今秋にも法制審議会(法相の諮問機関)に民事執行法の改正を諮問する。不払いに苦しんできた離婚女性や犯罪被害者など多くの債権者の救済につながる可能性がある。裁判所の判決や調停で支払い義務が確定したのに債務者が支払いに応じない場合、民事執行法は、裁判所が強制執行で債務者の財産を差し押さえられると定めている。だが、現行制度では債権者側が自力で債務者の財産の所在を特定しなければならず、預貯金の場合は金融機関の支店名まで突き止める必要がある。

 

以上で引用終わり

 

上記の記事を踏まえて,今回は差し押さえについてまとめてみたいと思います。

 

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差押えについて

 

養育費に限らず,相手の財産を差し押さえるためには,いろいろな書類や情報が必要となりますが,そのうち重要なものについて記載いたします。

 

(1)債務名義

債務名義とは,そのほとんどは裁判所が発行する書類で,公的に権利があることを認めている書面です。一番有名なのは「被告は原告に対して100万円を支払え」というような判決の正本になります。判決以外だと,裁判上の和解をした時の和解調書というものも多くあります。また,裁判所が作った書類ではありませんが,執行認諾文言付の公正証書も債務名義となります。

養育費の支払ということは必ず離婚が絡んできますので,債務名義として多いのは離婚調停を行ったときの調停調書が債務名義になることが多いでしょうし,裁判までいっていれば離婚訴訟の判決正本ということもあると思います。また,協議離婚をする際に作成した公正証書ということも多いでしょう。

なお,債務名義は裁判所または公証人が関与したもの以外はありえませんので,当事者が作った「離婚協議書」などでは差し押さえはできません。したがって,離婚協議書しかお手元にない場合に差し押さえまで進もうとなると,離婚協議書を相手方の協力を得て公正証書にするか,養育費請求の調停を申し立てて債務名義を作ることになります。もちろん,差し押さえなどせずに,調停などで合意した養育費を支払ってくれれば問題ないんですけどね・・・。

 

(2)相手方の財産に関する情報

相手方の財産を差し押さえる場合,その財産は債権者(財産を差し押さえる側)が自ら見つけ出して特定する必要があります。

勤務先の給料を差し押さえる場合は,どの会社にお勤めなのかを探し出さなければなりません。この点,正社員であればまったく問題ないのですが,派遣社員だと実際に働いているところから給料をもらっていないこともありますので,空振りに終わってしまうこともあります。

また,不動産であれば番地等まで調べる必要がありますし,預金口座であれば銀行名と支店名までは特定する必要があります。

上記の読売新聞の記事は,まさにこの部分であり,裁判所が債務者の預金口座を特定してくれるというものです。一般論として,相手がどの金融機関に口座を持っているかを調べることは困難であるため,その意味ではこの制度は役に立つと思います。ただ,実効性があるかどうかはかなり微妙だと思います。

というのは,勘違いをされていらっしゃる方が多いのですが,預金の差し押さえというのは,あくまで差し押さえた瞬間に口座に入っている預金を差し押さえることができるだけであって,以降,その口座に入ってくる預金のすべてを差し押さえることができるわけではありません。

例えば,A銀行が債務者の給与振込口座になっており,給与が毎月25日だとします。もし,25日に給料がすべて口座に入り,全額引き出され,翌26日に差し押さえの書類が金融機関に届いた場合,空になった口座を差し押さえたことになりますので残念ながらお金は回収できません。また,あくまでその26日の差し押さえしか効力がないため,翌月の給与が振り込まれてもその分から回収することはできません。

ですので,このような方法で現実的に回収できるのは,定期預金など,ちゃんとした資産がありながら不払いをしているような場合であり,財産として預金を持っていないような人であれば口座の特定ができたとしても現実的には回収できません。そして,養育費の不払いとなる原因の多くが,「そもそもお金がない」という理由ですので,上記のとおり,実効性があるかどうかは微妙だと思います。

 

給与差し押さえの例外

 

上記の例だと,A銀行に給与が支払われる前に,そもそも給与自体を差し押さえてしまえば回収できることになります。しかも,預金と異なり給与の差し押さえは全額回収しきるまで効力が及ぶため,債務者が勤務先を退職しない限り,ずっと差し押さえの効力が及びます。ただ,給料の差し押さえには大きな問題があります。それが25%基準です。

いわゆるサラリーマンの方にとって,給与というのは生活していくうえで一番大事なものです。確かに支払いをしない債務者も悪いのですが,給与を全額取上げてしまうと生活ができなくなってしまいます。そこで,法律では,社会保険料や税金などを控除したいわゆる手取り給与のうち1/4(25%)までしか差し押さえができないことになっています(民事執行法152条1項)。ですので,債務者の給与次第ではありますが,多くのケースで毎月数万円ずつしか回収できませんので,かなりの時間がかかることになります。

 

ところがところが,これにもいくつか例外があります。

 

①手取りが33万円を超える場合は全額差し押さえ可能

33万円あれば十分生活ができるでしょう,ということで33万円を超える分については全額差し押さえが可能です。例えば,手取りが50万円の場合は17万円を差し押さえることができ,もし手取りが100万円であれば67万円を差し押さえることができます。

 

②役員報酬は全額差し押さえ可能

過去の事例でも記載しておりますが,給与と役員報酬は別に考えられており,取締役や監査役など,会社の役員としての報酬は全額差し押さえることができることになっています。役員報酬で生活している人も多数いるので全額差し押さえられた人は生活できなくなってしまうのではないかと思いますが,法律的には全額差し押さえ可能となっております。

 

③養育費や婚姻費用などの特例

上記2つは一般的な差し押さえの例外ですが,養育費など扶養義務に関する債権については,例外的に1/2を差し押さえて良いことになっています(民事執行法152条3項)。

 

当事務所が業務として養育費関連のご依頼をお受けすることはあまりありませんが,友人・知人からはよく質問を受ける分野です。当事務所でも強制執行の手続きなどでお手伝いすることができる場合もありますし,専門の弁護士さんを紹介させていただくこともできますので,お気軽にご相談いただければと思います。

 

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3月 11 2016

期間の計算方法

先日,平成18年2月1日に最終取引がある債権について,時効になってしまうのを防ぐために平成28年2月1日に提訴したところ,被告から10年が経過しているから時効で債権は消滅している旨の主張がありました。

法律を扱う職業の者としては,期間の計算というのは当然の常識として知っているのですが,一般の方だとよくわからないという部分もあるかと思いますので,今日はこれについてまとめてみたいと思います。

 

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期間計算については,民法138条から143条までに規定があります。

それをまとめると以下のとおりです。

(1)時間によって定めた時は,その時から計算する。

例えば,平成28年3月4日午後1時に「今10万円借りたけど,必ず3時間後に返します。」という約束をした場合,平成28年3月4日の午後4時が期限となります。

こんな例を出したものの,金銭の貸し借りで時間単位で借りるということはないと思いますが,レンタカーやカラオケボックスなど時間単位で計算することが多いものにはこの考えを用いることとなります。日常生活における感覚と何も変わらないと思います。

 

(2)日,週,月,年単位で約束した場合は,初日は計算に含まないで計算する。ただし,午前0時からスタートする時のみ計算に含む。

法律用語では,これを「初日不算入(しょじつふさんにゅう)」と言います。

例えば,平成28年3月4日午後1時にお金を借り,1週間後に返済する約束をした場合,いつまでに返せばよいでしょうか。

上記のとおり0時スタート以外は初日不算入なので,借りた日の翌日である平成28年3月5日から計算すると,3月11日の24時でキッカリ1週間となります。したがって,この場合は,平成28年3月11日24時までに返済しなければならないということになります。

また,月で定めた場合は,30日で終わる月でも31日で終わる月でも関係なく,「翌月」という計算になります。したがって,平成28年3月4日午後1時にお金を借り,1か月後に返済する約束をした場合は,4月4日の24時までに返済しなければならないということになります。

 

【例外】

この初日不算入にはいくつか例外があります。大事なのは,①と②です。

①0時からスタートする場合

条文に規定されているとおり,0時からスタートする場合は初日を参入します。

例えば,ウィークリーマンションなどで,平成28年3月4日の午後1時に契約はしたけど,「賃貸期間は平成28年3月10日から1週間」と定めた場合は,3月10日の0時から3月16日24時までということになります。ただし,契約に別段の規定(例えば,「契約期間は最終日の19時までとする」というような規定)があればそれによります。

②利息の計算方法

金銭の貸し借りによって発生する利息は0時キッカリにお金を借りていなくても,その日の分の利息が付きます。その理由は,借主はお金を借りたその日からそのお金を利用できるからです。

この点については,法律に規定はありませんが,最高裁判決で認められています。

最高裁サイト

判決全文(PDF)

 

③その他,国会の会期,懲役などの刑期の計算など

国会法14条→国会の会期は召集日から起算する。

刑法24条→受刑の初日は時間にかかわらず一日として計算する。

 

(3)対応する日がない場合はどうするのか

今年は閏年ですので,2月29日が存在します。また,平年でも30日で終わる月や31日で終わる月があり,この日が絡むとちょっとだけ難しくなります。

 

①平成28年2月28日に「1年後に返す」という約束でお金を借りた場合,いつが返済期限となるか。

 

この処理は,民法143条に規定されています。

「週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。

 

まず,初日不算入なので,平成28年2月29日から起算し,その1年後の日の前日の24時に満了することなりますが,1年後である平成29年2月29日は存在しません。この点,条文には,「最後の月に応答する日がないときはその月の末日に満了する。」と規定されていますので,平成29年2月28日の24時に満了することとなり,この日までに返済しなければなりません。

 

②平成28年2月28日に「1か月後に返す」という約束でお金を借りた場合,いつが返済期限となるか。

初日不算入なので,平成28年2月29日から起算し,その1か月後である平成28年3月29日の前日である3月28日の24時に満了することとなり,この日までに返済しなければなりません。

 

ちなみに,閏年でない場合は数日ずれることになります。

③平成29年2月28日に「1か月後に返す」という約束でお金を借りた場合,いつが返済期限となるか。

初日不算入なので,平成29年3月1日から起算し,その1か月後である平成29年4月1日の前日である3月31日の24時に満了することとなり,この日までに返済しなければなりません。

つまり,閏年か平年かで返済期限が3日ずれることになります。

 

④平成28年1月30日に「1か月後に返す」という約束でお金を借りた場合,いつが返済期限となるか。

初日不算入なので,平成28年1月31日から起算しますが,その1か月後である平成28年2月31日は存在しませんので,その月の末日である平成28年2月29日24時が返済期限となります。

ちなみに,平成28年1月29日にお金を借りても同じ結論となり借りた日が1日違うにもかかわらず,1か月後は同じ日になります。

 

これを踏まえて最初の話に戻ると,平成18年2月1日は初日不算入なので,翌日の平成18年2月2日から計算し,満了日は平成28年2月1日の24時となります。そして,2月1日に提訴しているということは,当然24時よりも前ですので,ギリギリ時効にはなりません。

もっとも,時効ギリギリだということはわかっていたことから事前に内容証明で催告をしていますので,いずれにしても被告の主張には理由がありません(民法153条)。

とはいえ,1日違うだけで結論が正反対になってしまうこともありますので,期間計算については慎重にされた方が良いかと思います。

 

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2月 05 2016

支払督促で異議が出なかった場合

訴訟や調停など,法的手続きにはいくつか種類があり,その中に「支払督促」という手続きがあります。

※その他の手続や支払督促の概要についてはこちらの記事をご覧ください。

→ 法的手続あれこれ

 

一般論として,支払督促が最後まで完了する可能性は高くないため当事務所ではあまり使わないのですが,今回最後まで異議が出ずに手続が終了ました(とは言っても回収はできていません)ので,ご自身で手続をされる方のために簡単な流れを書いてみたいと思います。

 

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支払督促とは

 

訴訟や調停などは,原則として双方とも裁判所に出廷して色んな書類を提出しつつ,話し合いをしたり,主張を繰り広げて進めていく手続です。

一方,支払督促とは,裁判所(正確には裁判所書記官)が申立人(債権者)の言い分だけに基づいて相手方(債務者)に請求書を発送してくれるというものです。詳しくは後程説明いたしますが,順調に進めば裁判等を行うことなく強制執行手続きに進むことができますので,相手に差し押さえが可能な財産があり,スムーズに手続きが進むようであれば使える手続だと思います。スムーズに進めばですが・・・。

 

支払督促の申立て

裁判所に申立てをすると,裁判所は書類の形式的な審査はしますが,請求の当否については審査をしませんので証拠なども必要ありません。一時期,振り込め詐欺で支払督促が悪用されたことがありますが,これもこの証拠が不要で申立人の言い分に基づいて発送されることに目を付けられてなされたものです。

また,申立ても郵送でできますので裁判所に一度も行く必要がありませんし,申し立て時に納める収入印紙も通常の訴訟と比べると半分となっておりますので,良いことづくめのようにも思えます。

 

相手方への送達及び異議

 

書類に不備がなければ,裁判所は特別送達という方法で相手方に発送します。相手がすんなり受け取ってくれれば問題ありませんが,相手が受け取らない場合は所在確認等が必要になります。なお,支払督促においては公示送達は使えませんので,行方不明の場合は支払督促以外の手続を検討しなければなりません

※送達についてはこちらをご覧ください。

→ 想いよ届け!【書類の送達】

 

相手に支払督促の書類が送達されると,裁判所から申立人宛に送達通知書というハガキが送られてきます。

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相手方は支払督促が届いた場合,異議を出すことができます(督促異議)。異議を出すことに理由は必要ありませんので,かなり高い確率で異議は出されるもんだと思っておいた方が良いと思います。

相手方から異議が出ると,通常の訴訟に移行することになり,支払督促手続はここで終了となります。

この「異議」という制度により,かなり多くのケースで支払督促が途中で終わってしまい訴訟に移行してしまいます。とすると,最初から訴訟を提起した方が早いですし通常の訴訟だと管轄も選べるため支払督促はあまり使いません。

※支払督促の管轄は,相手方住所地の簡裁ですが,金銭の支払いを求める訴訟の場合は,こちらの住所地を管轄する簡裁で進めることができます。

 

仮執行宣言の申立て

 

相手方に支払督促が届いてから2週間以内に異議が出なかった場合,2週間経過後から30日以内に限り仮執行宣言の申立てをすることができます。

仮執行宣言の申立てをすると,以下のような仮執行宣言付支払督促正本が申立人と相手方の双方に送付されます。つまり,相手方には,2回書類が届くことになります。

ちなみに,下記画像は表紙のみであり,2ページ目以降に当事者の記載や請求金額の記載などがあります。

 

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仮執行宣言付支払督促正本の送達と確定

 

仮執行宣言付支払督促が相手方に届いた時点で強制執行をすることは可能です。また,こちらが相手に届いて2週間経過した時点で仮執行宣言付支払督促が確定し,通常の訴訟で勝訴したのと同じような効果が得られることになります。相手方に書類が送達された場合,最初の支払督促同様,いつ届いたのかがハガキで通知されますのでいつ確定するかもわかります。

なお,なかなか無い話だと思いますが,当初の支払督促が相手方に届いた後に,債務者が行方不明になってしまった場合,仮執行宣言付支払督促の送達は公示送達によることも可能です。

Scan0535

 

その後の回収は・・・

 

仮にすべてが上手くいったとしても,強制執行ができるというだけであり,実際に回収できるかどうかは相手方の資力によります。特に,支払督促が異議も出ずに確定してしまうような相手方だと資力が低い可能性が高く,実際に役に立つかどうかはしっかり検討してから申立てをしなければなりません。

ちなみに上記の事例は,すぐには回収できる見込みはないものの消滅時効が迫っていたため時効を中断させるために行ったものであり,また管轄は支払督促でも通常の訴訟でも名古屋簡裁以外の選択肢はありませんでしたので,支払督促を行った次第です。

これにより,時効が確定の時から10年になりますので,相手方の状況が変わればいつでも強制執行をして回収することが可能になります。あとは,状況が好転することを願うばかりです。

 

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