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全手続共通

10月 24 2018

欠席判決=勝訴ではない

先日,弁護士さんの懲戒請求に絡んだ損害賠償請求で,被告(懲戒請求者)が敗訴したという記事がありました。

 

この記事に対して,「欠席判決だから意味が無い」というようなコメントがあるようです。確かに,欠席判決の場合は,被告の主張を聞かずに判断され,極めて高い確率で原告勝訴となりますが,意味が無いというものではありません。今回の訴訟は懲戒請求が不法行為に該当するかどうかの訴訟であるため,意味が無いどころかかなり影響があるものだと思います。

ということで,私は上記の懲戒請求とはあまり関係ないのですが,今回は欠席判決全般についてまとめてみたいと思います。

 

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1 通常訴訟の流れ

訴えが提起されると,裁判所から被告に対して訴状等の関係書類が送付されてきます。送付された書類の中には2つの重要な期日が書いてあり,1つが答弁書提出期限,2つ目が口頭弁論期日です。

 

答弁書とは,被告側の初回の反論の書面のことであり,「被告の請求を棄却する。との判決を求める。」だったり,「原告から借りたお金は○月○日に返済した。」など,その理由を記載することになります。

通常,答弁書提出期限は口頭弁論期日の1週間程度前が設定されており,口頭弁論期日にとりあえずの原告と被告の主張が出て,審理が始まることになります。

この答弁書提出期限はあくまで目安であり,遅れたとしても特にペナルティはありませんが,答弁書を提出せず,口頭弁論期日に欠席してしまうと後述のとおり不利益がありますので,なにはともあれ出した方が良い書類です。

 

次に,口頭弁論期日というのは,いわゆる「裁判の日」であり,裁判所に出廷する日時となります。

2回目以降の期日は当事者と裁判所が打ち合わせをして決めるのですが,初回の期日に関しては被告の予定は関係なく一方的に決められてしまいます。そこで,これに対する救済措置として,事前に上記の答弁書を提出しておけば,口頭弁論期日には出廷しなくても良いことになっています(民事訴訟法158条)。

 

2 答弁書を提出せず口頭弁論期日で反論しなかった場合

 

被告が,答弁書に反論内容を記載して口頭弁論期日を欠席したり,逆に答弁書は提出していないけど,口頭弁論期日に出て口頭で反論した場合,その場で判決できるような特殊な事情が無い限りとりあえず裁判は続行することになります。

逆に,被告が答弁書で請求をすべて認めるような記載をして口頭弁論期日を欠席した場合や口頭弁論期日に出て請求を認めるような発言をした場合,特に争うことがありませんので裁判所は判決することができます。もちろん,被告が出廷しているのであれば和解協議が行われることも多いと思います

 

では,被告が答弁書を提出せず,しかも口頭弁論期日に出廷しなかった場合はどうなるのでしょうか。

この場合,被告の真の意思は分からないのですが,法律的には裁判所は原告の主張を認めることになっています(民事訴訟法159条)。これを法律的には擬制自白と呼んでいます。

例えば,原告が「被告に対して100万円を貸した。」という主張をしている場合,擬制自白が成立することによって,裁判所は借用書や通帳など一切の証拠無しに100万円貸したことを認めて良いことになっています。

したがって,擬制自白が成立する以上,原告が勝訴する可能性が極めて高くなり,このような判決のことを俗に欠席判決と呼んでいます。

 

3 擬制自白に含まれるものと含まれないもの

 

擬制自白=原告勝訴になりそうですが,実は擬制自白の制度は事実認定にしか及ばないとされています(民事訴訟法179条)。

「事実」というのは「100万円を貸した」,「被告に殴られた」というようなものを指します。

 

これに対し,法律の解釈・適用や事実の評価などは対象外となります。

例えば,親である原告が子である被告に対して,「子が成人したら,子は親に対して毎月10万円支払うのが健全な社会だ!」と裁判所に訴えを提起し,子が何ら反論をしなかったとしても原告の主張は認められません。なぜなら,「子が成人したら親に対して10万円ずつ支払う」という法律が無いからです。

これは極端な例ですが,実際に擬制自白が成立しても法律の解釈・適用により原告が敗訴した実例があります。

平成17年(少コ)第1186号売買代金請求事件

 

上記の裁判例は,通販会社である原告が,被告に対して代金の請求をしている事件ですが,被告に擬制自白が成立しているものの,裁判所はクーリングオフが適用されるとして原告敗訴の判決をしています。

 

また,とある事実が認定されたとしても,それが法律上の不法行為に該当するかどうかは裁判所が判断することになりますし,慰謝料も裁判所が決めます

例えば,隣家の騒音がうるさくて精神上の損害を受けたとして被告を訴え,被告が答弁書を提出せず口頭弁論期日を欠席して擬制自白が成立したとしても,あくまで「隣家から音が出ている」という事実について擬制自白が成立するだけで,それが不法行為とされるほどの音量ではない場合(受忍限度の範囲内)には原告敗訴の判決が出ることになります。同様に,「平手打ちをされてけがをした」ということで1億円の損害賠償請求をし,被告の欠席等により擬制自白が成立したとしても,「被告が平手打ちをした」という事実について擬制自白が成立するだけで「慰謝料1億円」まで及ぶものではありませんので,被告が欠席したとしても慰謝料として1億円も認められることはあり得ません。

あくまで「事実」についてしか擬制自白は成立せず,騒音が不法行為に該当するか,平手打ちで受けた損害(慰謝料等)の評価額などは裁判所が決めることになります。。

 

4 まとめ

 

冒頭の懲戒請求事件について,「被告が懲戒請求をした」ということは擬制自白で認定されると思いますが,その懲戒請求が不法行為に該当するものなのか,仮に該当するとしても慰謝料がいくらになるのかは,例え擬制自白が成立したとしても,ちゃんと裁判所は判断しています。仮に被告が行った懲戒請求が不法行為に該当するようなものではなかったと裁判所が判断したのであれば,擬制自白が成立していたとしても原告敗訴の判決がなされたはずですが,原告勝訴の判決が出ていますので,懲戒請求は違法なものだったいうことになります。

ただ,まだ判決が出たばかりですので,控訴・上告がされれば結論が変わる可能性もあります。

 

なお,公示送達に関する記事でも説明しておりますが,送達が公示送達だった場合には擬制自白は成立しません

公示送達は,裁判所の掲示板に呼出状が貼られるものであり,現実的に被告は裁判を起こされていることを知るよしもありませんので,そんな中で被告欠席による擬制自白を認めることはあまりにも酷であることから,原告は証拠による立証が必要となります。

ただ,普通は証拠を踏まえたうえで訴訟を起こしていますので,公示送達でも原告勝訴になることがほとんどだと思います。

 

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10月 15 2018

給与の差押えでもなかなかスムーズにいかないケース

最近,裁判上の和解をしても支払ってもらえなくなることが多く,結果として債務者の給与を差し押さえることがあります。

給与は,債務者が退職しない限りは少ないながらも毎月回収できますので,他の差し押さえと比べても比較的回収率が高い手続ではあるのですが,ここのところ立て続けに悩ましい事態に遭遇してしまいました。

今回は給与の差し押さえについて少しまとめたいと思います。

 

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1 原則として手取り給与の25%

 

給与の差押ができる上限が定められており(民事執行法152条1項),差押債権目録に定型文句として以下の文言を記載いたします。

「給料(基本給と諸手当。ただし,通勤手当を除く。)から所得税,住民税,社会保険料を控除した残額の4分の1(ただし,上記残額が月額44万円を超える時は,その残額から33万円を控除した金額)」

 

簡単に言えば,手取り給与の4分の1(25%)を差し押さえるというものであり,手取り給与が44万円を超える場合は33万円を控除した残りの金額を全額差し押さえることができます。

例えば,手取り給与が20万円だった場合は5万円を差し押さえることができますし,手取り給与が100万円だった場合は33万円を控除した67万円を差し押さえることができます。

 

また,給与に限らずボーナス(賞与)も対象となりますし,退職した場合に支給される退職金も対象となります。

 

例外的に,養育費や婚姻費用など生活にかかわるお金の場合は手取り給与の半分を差し押さえることができます(民事執行法152条3項)。

 

2 第三債務者の協力が必要

 

給与の差し押さえをしても自動的に裁判所が債権者に振り込んでくれるわけではなく,第三債務者(通常は債務者が勤務先の会社)に話しをしたうえで毎月送金してもらわなければなりません。つまり,勤務先の協力が必要になるということです。

差押の書類は勤務先にも郵送され,届いた時から上記の25%を控除した分しか債務者たる従業員に支払ってはいけません。万が一,全額支払った場合は,対債権者との関係では支払ってないことになり,債権者に対して25%分は二重払いしなければならないことになりますので,普通は勤務先は債権者に対して支払ってくれます。

ところが,中には裁判所の命令を無視して全額従業員に支払い続ける会社があります。債権者には対抗できないので債権者に対して二重払いしなければならない旨を説明しても,「自分が法律」と思って聞く耳を持たない社長さんもおり,支払ってもらえません。そうなると,もう勤務先の会社を訴えて回収するしかありません。

 

ただ,そのような場合でも差し押さえ金額の全額について訴えることができるわけではなく,経過分しか請求ができません

上記の例にあるとおり,仮に債務者の手取り月収が20万円だった場合1ヶ月当たり差し押さえができる金額は5万円です。とすると,最初の給料日が来た時点で会社が支払ってくれなかった場合は5万円についてしか訴えることができません。したがって,50万円回収したいということであれば10ヶ月待って訴えることになりますし,100万円であれば20ヶ月待たなければなりません。

最終的には回収できる可能性はありますが,このような事態になると大変です。

 

3 競合している場合

 

同一の債務者の給与に対して複数の差押が入ることがあります。これを「競合」と言います。

競合した場合,第三債務者は法務局に供託しなければなりませんので,会社としても面倒です(民事執行法156条2項 執行供託(義務供託))。

この場合,債権者は会社から支払ってもらうのではなく,配当手続によって支払ってもらうこととなり,最終的には法務局から払い渡してもらうことになります。

また,何より困るのが競合しているということは取り分が少なくなるということです。つまり,上記の例で言えば毎月5万円ずつ回収できたものが,他の債権者と分けることになりますので,毎月2~3万円ずつしか回収できないことになってしまいます。

競合しているかどうかは勤務先の会社から送られてくる「陳述書」という書類に記載されているため,この書類が届いた時はいつもドキドキです。

 

 

このように給与を差し押さえてもなかなかすぐに回収することができないのですが,それでも預貯金等の差し押さえよりは回収可能性は高いので,今後も給与の差し押さえは生命線だと思います。

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9月 05 2018

主文に記載されている「訴訟費用」,「仮執行宣言」とは?

貸金請求や明渡請求等で訴訟をして勝訴した場合,「被告は,原告に対して100万円を支払え」,「被告は,原告に対して,別紙物件目録記載の建物を明け渡せ」など,原告が求める内容が主文に記載されます。原告の請求した内容と主文が一致している場合,原告の勝訴ということになります。

ところで,主文にはこういった原告のメインの請求のみではなく,他のこともいくつか書いてあります。この点についてのご質問をいただくことがあるため,今日はこの点についてまとめておきたいと思います。

 

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主文とは

そもそも「主文」とは,訴えに関する裁判所の結論部分を言います。上記のとおり,「100万円を支払え」,「建物を明け渡せ」などになります。

被告が100万円を支払わなければならない理由(例えば,「100万円を借りていたのに返済していない」,「交通事故によって100万円の損害が生じている」など)や建物を明け渡さなければならない理由(例えば,「家賃を3ヶ月滞納して契約が解除された」,「権原もないのに不法占有している」など)については,「事実及び理由」や「理由の要旨」という欄に記載されます。

具体的には下記のような感じです。

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訴訟費用とは

上記をご覧いただくと,第2項に「訴訟費用は,被告の負担とする。」という記載があります。

これをご覧になって,「弁護士や司法書士の費用も被告に支払ってもらえることですか?」というご質問をいただくことがあります。

ここでいう訴訟費用とは,「訴訟手続を行う上で支出された費用であって民事訴訟費用等に関する法律という法律の中に定められた範囲のもの」をいいます。

具体的には,申立て(訴え提起)のときに収入印紙を貼って支払う手数料,裁判書類の送達のための郵券などが有名ですが,それ以外にも当事者や代理人が出頭するための日当交通費宿泊費,外国語で書かれた文書の翻訳料なども訴訟費用に含まれます(同法第2条)。

ところが,この中に代理人(弁護士や司法書士)の報酬は入っていませんので,「訴訟費用」には含まれないということになります。

 

ちなみに,手数料(収入印紙)や郵券はそのまま使った額になるので良いのですが,実際の支出額と訴訟費用として認められる金額が異なる場合が結構あります。

例えば,交通費(旅費)に関しては,住所地を管轄する簡易裁判所から出廷した裁判所を管轄する簡易裁判所の移動にかかる費用となっており,それが同一の場合は一律300円となっております。

具体的には,名東区の方が名古屋簡易裁判所に出廷した場合,住所地も出廷した裁判所もともに管轄する裁判所は名古屋簡易裁判所であるため,実際には1000円以上かかったとしても一律300円しか認められませんし,もし住所地から裁判所まで500メートル以内であれば0円となっております(民事訴訟費用等に関する規則第2条)。また,当事者等が出廷した場合,日当が支払われますが,これも3950円しか出ず,仕事を休んだ方の給料相当額が出る訳でもありません。

 

それでも,支払われないよりは支払ってもらった方が良いため,勝訴した場合には請求した方が良いと思います。

なお,判決後に相手が任意に支払ってくれるのであれば問題ないのですが,そうでない場合は,訴訟費用額確定処分の申立てをしたうえで,強制執行にて回収することになります。

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仮執行宣言とは

判決に基づき強制執行を行うためには,原則として判決が確定していなければなりません。というのは,日本の裁判は三審制となっており,第1審で原告勝訴の判決がなされたとしても,控訴や上告によって覆ることがあるためです。ですので,判決が出た後に控訴・上告期間が満了したり,第三審の判決が出ることによって判決は確定し,強制執行に進むことができます。

しかしながら,訴えを起こした原告側としては第1審で勝訴判決が出たのであればすぐに支払ってもらいたいと思うのが当然ですし,ある意味三審制を悪用して,被告側が無意味に時間稼ぎをする可能性も否定できません。そこで,判決が確定していなくても強制執行を認めることがあり,これを「仮執行宣言」と呼んでいます。

あくまで「仮に」執行を認めるだけですので,強制執行で回収した後に,控訴や上告で結論が変わった場合には受領した金銭等を被告に返却しなければならないことになっています。また,お金で解決できるもののみに仮執行宣言は認められていますので,建物の明渡や登記の請求などには仮執行宣言は認められていません。

さらに,仮執行宣言は原告側の便宜のために認められているに過ぎませんので,仮執行宣言が付されたからと言って,必ず確定前に強制執行をしなければならないわけではありません。

 

以上,あまり取り上げられることが少ない,訴訟費用と仮執行宣言のお話しでした。

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8月 08 2018

公示送達が無効に!

公示送達が無効になるという興味深い事件がありましたので,記事から分かる範囲で解説し,まとめておきたいと思います。

 

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公示送達とは

 

公示送達については何度か触れておりますので,詳細については,こちらをご覧いただければと思います。

→ 想いよ届け!【書類の送達】(平成25年8月29日)

→ 公示送達の訴訟(平成26年2月14日)

→ 付郵便送達と公示送達(平成30年4月25日)

 

すごく簡単にまとめると,

(1)相手方(被告)が行方不明で裁判に関する書類が届かない

(2)裁判所の掲示板に呼出状を貼り,2週間経過すると相手に届いたことになる

(3)付郵便送達と異なり勝訴するためには証拠が必要

というものです。

 

相手の住所が分からないと裁判ができないとなると訴える側(原告)にとって酷な結果になってしまいますので,相手(被告)が行方不明である場合にはやむを得ない手続かと思いますし,裁判所としてもしっかり証拠調べをしたうえで判決を出しますので,必ずしも公示送達だからと言って原告勝訴になるわけではなく,被告に酷すぎる結果になるとも限りません。

もっとも,訴訟を提起する以上,証拠があることがほとんどですので,現実的にはほぼ原告が勝訴するかと思います。

 

今回の事件では

本日,こんな事件が報道されました。

 

→ 11年前の確定判決、異例の取り消し…東京高裁(読売)

 

以下,記事の一部を引用いたします(青字部分)。

2007年8月に確定していた民事訴訟の1審判決を取り消していたことがわかった。1審の裁判所が、被告の住所が判明しているにもかかわらず訴状を郵送せず、提訴されたことを掲示板に貼り出す「公示送達」の手続きを経て審理に入っていたことが問題視された。

(中略)

民事訴訟は、訴状が被告の手元に届いた段階で始まるとされ、送達先は原告側が確認する必要がある。男性が女性の住所地を調べたところ、表札もなく、居住が確認できなかったため、「女性は無断で引っ越した」と判断。同年6月、同区役所から取得した女性の住民票(除票)を同支部に提出し、公示送達を申し立てた。

除票には女性の転居先の住所が記載されていたが、同支部はこれを見落として男性の申し立てを認め、訴状が提出されたことを示す書面を敷地内の掲示板に貼り出した上で、同年7月に第1回口頭弁論を開いた。女性が出頭しないまま、同支部は男性の請求を認める判決を言い渡し、同年8月に確定した。

<引用終わり>

 

今回の事件では,公示送達が無効と判断されていますが,これは完全に裁判所のミスかと思われます。

記事によると,原告の男性は弁護士さんに依頼せず本人訴訟で進めています。原告は被告の住所を調べたが本人の居住が確認できず,除票を提出したうえで公示送達の申立てをしたそうです。

私どもがご依頼をお受けした場合も同様の状況にはよく遭遇します。この場合,裁判所から被告の住所の調査を指示されるため,近隣住民の方や管理会社などにお話しを伺ったり,夜に行って電気が付いていないかなどを確認します。この調査をする場所は基本的には住民票の場所であるため住民票を取得しますし,仮に転居しているのであれば除票が発行され,除票に記載されている転居先を調査することになります。

今回の記事によれば,除票に転居先の住所が記載されているとのことですので,私であれば当然ながら転居先の調査を行いますが,原告は本人訴訟であったため除票の記載にはあまり詳しくなかったものと思われます。

したがって,公示送達の申立てを受けた裁判所が原告男性に指示をして,転居先の住所を調査させるべきだったにも関わらず,それをしないまま公示送達をしてしまっているので無効という判断になっているようです。

 

具体的な手続

 

詳細が書かれていないため推測になりますが,被告の女性はもともとの裁判に対して控訴していると思われます。

というのは,控訴は判決を受け取ってから2週間以内に申し立てなければなりませんが,公示送達での送達は無効であるため,被告女性は未だ適正な送達で判決書を受け取っていない状況にあります。したがって,いつまで経っても2週間は経過しないことになり,控訴ができるのだと思います。

そして,当該控訴は有効な控訴として扱われ,今回の判決に至っています。

また,最近原告が提訴した訴訟については,恐らく二重起訴の禁止に該当し,却下されることになるのではないかと思われます(民事訴訟法142条)。

 

消滅時効はどうなるのか

 

上記のとおり私としては裁判所のミスであるため原告男性は悪くありません。ただ,すでに時効期間である10年が経過していますがこれはどうなるのでしょうか。

この点,消滅時効は訴え提起の時に中断することになっています(民法147条1号)。本件訴訟は未だもって係属中となりますので,時効も中断したままということになります。

また,東京高裁はさいたま地裁の判決を取り消して,さいたま地裁に差し戻しています。ということは,結局のところ改めて1審の審理が始まるのであり,必ずしも被告である女性が勝つとは限りませんので,原告がしっかり立証すれば改めて原告勝訴の判決がなされることは考えられます。

 

このような事件はなかなか無いのですが,上記のとおり私としては頻繁に公示送達の申立てを行っておりますので,今後もしっかり調査をしなければならないと改めて肝に銘じておきたいと思います。

 

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7月 25 2018

二段の推定

「二段の推定」というのは,民事訴訟における書類の作成に関する論点であり,民事訴訟法の勉強をすると出てくるテーマなのですが,先日,実際にこの点が争点になった訴訟がありましたので,今後の備忘も兼ねてまとめておきたいと思います。

 

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その書類は真意に沿って作成されたもの?

 

今はインターネット社会であるため,通販などであればクリック一つで物が買えてしまうため,契約書等の書類に署名をしたり押印することはありません。また,コンビニでの買い物や自動販売機での購入など,必ずしも契約する際に書類に署名等をするわけではありません

しかしながら,不動産の売買だったり,住宅ローンの契約だったり,大きなお金が動く契約に関しては,やはり契約書に署名し,実印を押印することがあろうかと思います。

何もトラブルがなければ契約書が問題になることはないのですが,契約後に何らかの問題が起こった時には,その契約書の内容によって処理されることとなりますが,その前提としてその時に作成された契約書が偽造されたものではなく当事者が正式に作成したものでなければなりません。

と,言葉で説明するだけだと簡単なのですが,この「偽造されたものではなく当事者によって正式に作成された書面である」ということを証明するのは実はなかなか難しいです。

例えば,筆跡が似ているなどある程度は推定できるかと思いますが,筆跡を似せるプロが書いた偽物かもしれません。また,契約書に署名等をするときの状況を録画するということも考えられますが,今の技術だとそれすらも編集などでどうにかできてしまいそうです。さらに,印鑑に至っては誰が押印しても同じ印影となりますので,ますます本人が関与したのかどうか分からないということも考えられます。

 

このように,「偽造されたものではなく正式に作成された書面である」ということを確定させるのは実際のところは難しいのですが,すべての取引においてこれを言い出すと社会が回っていかないのもまた事実です。

そこで,法律ではある程度画一的に判断することとなっています。

 

民事訴訟法の規定と事実上の推定

 

文書が真正に成立(作成)されたかどうかに関する条文としては以下のものがあります。

民事訴訟法228条4項 → 「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」

 

ここで言うところの「署名又は押印」は,当然ながら本人の意思に基づいてなされたものでなければなりません。

署名の場合は,自分の手で書いているので本人の意思が無いということは考えにくいのですが,押印の場合は,すでに名前が印字してある(記名がある)契約書に第三者が勝手に押印することということも考えられ,このような場合には「本人の意思に基づいた」とは言えません。したがって,押印については,ご本人が押印したか,ご本人の了承のもと第三者が押印していなければならず,書類が本物(真正に成立した)だと主張する人は,本人の意思に基づいて押印されたことを立証しなければならないのですが,現実的には大変です。

 

ところが,判例により,押印されている印鑑の印影が本人の印鑑のものである場合には,本人の意思に基づいて押印されたものであると推定されることになっています(最判昭和39年5月12日)。

 

以上により,本人の印影が捺印がされた書類については,次の二段階によって真正に成立したものと推定されることになります。

 

一段目

・本人の印鑑が押印してある → 本人の意思のもとに押印されたものと推定する。

 

二段目

・本人の意思のもとに押印された書類がある → 民事訴訟法228条4項の規定により,文書が真正に作成されたものであると推定される。

 

となり,結果としては,本人の印鑑が押印してあれば「偽造されたものではなく正式に作成された書面である」という推定を受けることになります。

なお,「本人の印鑑である」ということを確実かつ容易に立証する方法は,実印+印鑑証明書のセットです。これにより役所が本人の印鑑であることを証明してくれますが,仮に認印だったとしても,基本的には本人が押印したものであると推定してくれます。

 

これはある意味恐ろしい話で,例え認印だとしても,ご自身がいつも使っている印鑑を盗まれてしまった場合,自身のまったく関知しないところで契約書に押印されているかもしれません。

もっとも,あくまで法律上の規定は「推定する」となっているため,反証を出すことで覆すことができます。例えば,契約書に署名等をしたとされる日は海外にいたことをパスポートなどで証明したり,まさに筆跡鑑定でご自身の字ではないことを立証することも考えられます。

とはいえ,あらぬ紛争に巻き込まれかねませんので,印鑑,特に実印については大切に保管されますようお気を付けください。

 

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4月 25 2018

付郵便送達と公示送達

今週,建物明渡訴訟において,付郵便送達で送達が完了した事件について期日があり,即日結審・判決がありました。

当事務所がご依頼いただいた事件だけでの割合ですのであまり当てにならないのですが,訴訟になった際の送達について,問題なく送達ができる(相手が書類を受け取る)割合は5割程度であり,3~4割程度が付郵便送達,残る1~2割が公示送達という感じです。さらに,建物明渡に限れば問題なく届くのは3~4割であり,むしろ過半数が付郵便送達や公示送達になっています

ということで,今日は付郵便送達と公示送達に絞ってまとめてみたいと思います。

なお,全体的な送達についてはこちらをご覧ください。

書類の送達

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付郵便送達と公示送達の違い

 

(1)付郵便送達(書留郵便等に付する送達)

端的にいうと,相手が送達先に住んでいるにも関わらず,裁判所から郵便された書類を受け取らず,郵便局の保管期間内に受け取らなかったため裁判所に返送されてしまったような場合に行う送達手続です。

付郵便送達が認められると,裁判所が書類を発送したときに送達が完了した(相手に書類が届いた)とみなされます。発送した瞬間に相手方に届くわけがありませんし,再度相手が受け取らない可能性もありますので,現実的には相手に書類が届かないということも考えられますが,受け取れる状況にあったにもかかわらず相手方受け取らなかったということで,ある種のペナルティとして届いたことにされてしまう手続です。

もしこのような制度が無かったとすると,相手が故意に受け取らなければいつまで経っても裁判が始まることはなく,永遠に敗訴することがないことになってしまいますからね(書類の送達が完了しないと裁判は開始しないため。)。

 

付郵便送達の場合,裁判の期日に相手が出頭しなかった場合は,こちらの主張をすべて認めたものとされ(擬制自白),証拠調べをすることなくこちら側の勝訴となる可能性が極めて高いです。ただし,付郵便送達は,相手方が送達先に住んでおり,現実的に書類を受け取る可能性も十分ありますので,裁判所に出頭されて反論されるということもあり得ます。

 

 (2)公示送達

一方,公示送達は,相手が行方不明であるためどこに郵送して良いのか分からないような場合に行う送達手続です。この送達が認められると,裁判への呼出状が裁判所の掲示板に掲示され,2週間経過すると相手に届いたことになります

付郵便送達であれば,再度郵送されてきますので訴訟を起こされたことを知りうることとなりますが,公示送達の場合は,相手が裁判所の掲示板の前を通り,掲示板を見て自分の名前を発見して裁判所に問い合わせなければなりませんので,自身が訴訟を起こされていることを知る可能性はほぼありません

したがって,相手が裁判の期日に出頭することもあり得ないため,さすがにこれだけでこちら側の主張がすべて認められるという訳ではなく,証拠を提出したうえで裁判所に判断してもらうことになります。もっとも,証拠もなく訴訟をすることもまずありませんので,公示送達の場合でもこちら側の勝訴となる可能性が高いです。

 

(3)共通点と相違点

上記送達の共通点としては,ともに相手が書類を受け取らない状態にあるためやむを得ず行う手続ですので,最初からこれらの送達方法を選択することはできず,まずは通常の送達を試みて,相手に届かなかった場合に初めて検討することになります。なお,勤務先が分かっているようであれば,先に勤務先への送達を試みる必要があります。

 

相違点としては,相手が書類の送達を知りうる状態にあるかどうかになります。つまり,相手が裁判所からの書類が届いていることを知っているにもかかわらず受け取らない場合には付郵便送達を,相手が知る由もないような状態にある場合で,こちら側も相手の所在がまったく分からない場合に公示送達を行うことになります。

ですので,相手が行方不明なのに付郵便送達をすることはできませんし,相手の所在が分かってるのに公示送達をすることもできません。このような状況で万が一付郵便送達や公示送達がなされたとしても,後日無効と判断され,裁判の結果がすべてひっくり返る可能性があります。 

 

付郵便送達か公示送達かの判断

上記のとおり,どちらを選択するかの判断は,簡単に言うと相手の所在が分かっていれば付郵便送達,分からなければ公示送達となるわけですが,この判断はそれほど容易ではありません。

というのは,「相手が受け取らない」というのが,相手が単に不在にしていただけで受け取っていないだけなのか,すでに転居してしまっていて受け取ることが事実上不可能な状況にあるのか客観的には分からないことが多いためです。

とはいえ,最終的には判断しなければならず,概ね以下のような基準で判断をしています。

 

1 郵便局の返送理由

裁判所が相手の書類を送付したものの返送されてきてしまった場合は,返送の理由の付箋が貼ってあります。

この理由が,「保管期間経過」であれば,少なくとも郵便局としてはその場所に相手が住んでいるものと認識していると考えますので付郵便の方向で考えることになります。

他方,「転居先不明」,「宛所に尋ねあたらず」という付箋が貼られている場合,相手がその住所に住んでいないということになりますので,付郵便送達はできず,転居先を探すか公示送達によることになります。

 

2 住民票の調査

必ずしも住民票の住所地に居住しているわけではありませんが,送達が出来なかった後に改めて住民票を取得しても同じところに住民票がある場合には,現在も居住していると認められやすくなります。

 

3 現地での調査

(1)住所地に訪問

相手の住所地を訪ねて相手が居住していれば確実です。私の経験上,一度だけ相手に直接出会ったことがあり,話を聞くと検査入院で不在にしていたとのことでした。

 

(2)近隣の方への聞き込み

「最近相手を見かけていないか」,「いつも何時頃帰ってきているか」等の相手の状況を聞き出すことになります。ただし,プライバシーの観点からすべてをお話しすることができないため,なかなかご協力いただけないこともあります。

 

(3)自宅及び周辺の状況

表札,郵便受けの状況,電気メーター,昼夜の状況の変化などになります。

表札に相手の名前が書いていれば,居住している可能性がかなり高くなります。

郵便受けについては,郵便物が溜まっていれば住んでいない方向に考えますが,定期的に確認し,とある日に郵便物が無くなっているとなるとまだ住んでいると考えることができます。

電気メーターについては,室内にいれば大きくメーターが動きますし,待機電力でも動いていますので,メーターが動いていれば家電などが室内にあり,まだ住んでいると考える方向に考えます。また,建物の明け渡しの場合だと,大家さんから電気等の使用の有無を電力会社等に確認していただくこともあります。まったく電気や水道が使用されていないとなると,住んでいない可能性がかなり高くなります(もっとも,先日の裁判において,未払いで電気ガス水道がすべて止められている状況においても居住の調査を行って付郵便を行った事例があります。)。

昼夜の状況の変化については,洗濯物の有無や室内の灯りの有無などになります。洗濯物が取り込まれていたり,灯りが点いているようであれば住んでいる可能性がかなり高いです。

なお,建物の明け渡しの場合においては,電気等が止められて時間が経っている場合は,万が一のことが考えられるため警察官に室内に入って安否確認を行っていただくこともあります

 

4 管理会社への問い合わせ

相手が賃貸マンション等に住んでいる場合は,管理会社に問い合わせて回答をもらうことが考えられます。

通常,管理会社が契約者の氏名などの個人情報を教えてくれることはありませんが,当該部屋において,「最近契約の更新があった」,「退去があった」などの個人情報とまではいかないような情報は教えてくれることが多いです。

 

以上を総合的に判断して,居住していると判断できる場合には付郵便送達を,そうでない場合は公示送達によることになります。

なお,公示送達の場合には,さらに戸籍の付票や不在住証明書,不動産の登記事項証明書などを取得することもあります。

 

 

付郵便送達の注意点

1 現実に届く可能性がある発送で無ければならない。

調査により確実に住んでいることが判明したため付郵便送達を行ったものの,付郵便送達を行う直前に相手が逮捕・勾留などをされており,現実的に届く可能性がゼロであった場合には,例え裁判所がその事実を知らなかったとしても,付郵便送達は無効となります。

 

2 勤務先への付郵便送達はできない。

自宅は不明であるものの,勤務先は判明しており,勤務先に送付したが受け取らないような場合であっても,勤務先に対して付郵便送達をすることはできません。この場合は公示送達をしなければなりません。

 

3 期日が延期される可能性がある

通常の送達を試みた時点で訴訟の期日が決まっていますが,郵便局の保管期間や調査などで時間がかかりますので,もともと予定していた期日が迫っていることがあります。したがいまして,付郵便送達になる際には改めて期日が設定されることがあります。なお,過去の裁判例では,付郵便送達発送から当初予定していた期日までに郵便局の保管期間(1週間)程度の期間あれば期日を変更しなくても良いとされていましたが,間に合う場合でも実際には余裕をもって延期することが多いように思います。

 

公示送達の注意点

1 上訴等の可能性

相手の所在が分かっているのに公示送達を行った場合など,相手の責任によらない事由により公示送達になってしまっていた場合には,民事訴訟法97条の規定により,判決に対して上訴することができます。

 

2 擬制自白は成立しない

上記のとおり,公示送達の場合は立証しなければなりませんので,公示送達になったとしても,証拠が無いと敗訴する可能性があります。

 

 

ということで,こちら側の主張が法的に認められるかなどを争う前に,裁判が始まるかどうかというのが重要だったりします。

貸金請求等のお金の問題については,判決が出ても直ちに解決とはならないことが多いですが,建物の明渡しにおいては判決が得られればほぼ解決しますので,特に送達の可否は重要となります。

たまたまですが,今月に入り,立て続けに付郵便送達の調査が多かったのでまとめてみました。

 

 

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3月 05 2018

差押えが禁止される財産

貸金等の請求をし,相手(債務者)が支払ってくれない場合,最終的には裁判等の法的手続によって支払いを求めることになります。

ただ,それでも支払ってくれない方もいますので,その場合は強制執行の申立てを行い,相手方の財産を差押えてお金に換えて回収することになります。 この強制執行ですが,実は債務者の財産であれば何でも差し押さえて良いという訳ではなく,差押が禁止される財産があります。また,差押えは認めるものの全部の差押えはできないという財産もあります。

今回は,このような差押禁止財産等ついてまとめたいと思います。 

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動産について 

 

動産とは,ざっくり言えば不動産以外で目に見えるものです。 具体的には,テレビ,冷蔵庫,時計,鞄,自動車,船舶などの物は当然のこと,現金も動産に含まれます。 この動産のうち,生活するのに必要な財産や宗教的,教育的配慮などにより以下のものの差し押さえが禁止されています(民事執行法131条)。

一 債務者等の生活に欠くことができない衣服、農具、家具、台所用具、畳及び建具
→ 具体的にはテレビやベッド,タンス,洋服などです。
ただし,テレビが2台ある場合は,そのうち1台は差押が可能だったり,高価なブランド鞄などは差押えが可能だったりします。 

 

二 債務者等の一月間の生活に必要な食料及び燃料
→お米や野菜といった食良品に加えて,暖房器具用の灯油やガソリンなどです。正直なところ,差押えたところで金銭的な価値はほとんどないと思います。 

 

三 標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭
→民事執行施行令第1条により66万円となっているため,66万円を超える現金については差押え可能です。 

 

四 主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物
五 主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採補又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物
六 技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)
→これらは,債務者が仕事をするうえで必要なものであるため,差押が禁止されています。 

 

七 実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの
八 仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物
九 債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿及びこれらに類する書類
十 債務者又はその親族が受けた勲章その他の名誉を表章する物
→宗教的配慮や関係者以外の者が持っていても意味がないためです。 

 

十一 債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具
→教育的な配慮です。 

 

十二 発明又は著作に係る物で、まだ公表していないもの
→精神的創作活動を保護するためです。 

 

十三 債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物
→本人が生活するために必要ですし,第三者が持っていても意味が無いからです。 

 

十四 建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品
→防災設備を外してしまうと危ないからです。 

 

以上から,動産については,実は差し押さえが禁止されているものが多いことから,ほとんどのケースで動産の差押えはできないこととなります。 

 

不動産について

 

住宅ローンの組む際に自宅を担保として差し入れるように,例え所有している不動産が生活の本拠となる自宅であっても差押えが禁止されることはありません。 恐らく,不動産で差し押さえが禁止されているのは,下記のケースのみだと思われます。 

 

宗教法人法第八十三条

宗教法人の所有に係るその礼拝の用に供する建物及びその敷地で、第七章第二節の定めるところにより礼拝の用に供する建物及びその敷地である旨の登記をしたものは、不動産の先取特権、抵当権又は質権の実行のためにする場合及び破産手続開始の決定があつた場合を除くほか、その登記後に原因を生じた私法上の金銭債権のために差し押さえることができない。 

 

端的に言えば,礼拝堂などの宗教施設は,担保に入れた場合を除いて差押えができないとされています。貸した相手が宗教法人でない限り関係ないということになります。 

 

債権について 

恐らく一番多い差押えは債権だと思います。 債権というものは,特定の人が特定の相手方に何らかの行為または不作為を要求する権利であり,差押えのシーンで関係あるのは,お金を支払ってもらえる権利かと思います。

最も分かりやすいのが,金融機関にある預金債権であり,債務者がサラリーマンとして働いていらっしゃる場合には勤務先への給料債権などになります。 

 

債権の場合は,債権の相手方(第三債務者)の行為を求める(預金の差し押さえであれば金融機関から支払ってもらう必要があり,給与であれば債務者の勤務先の総務部などと話をする必要が出てくるケースもあります。)ものであるため,債権があったとしても必ず回収できるものではありませんが,一般的には支払いを拒否する金融機関や勤務先は少ないため,高い確率で支払ってもらえます。 

 

債権のうち,債務者の生活の原資になるものについては,以下のように差押えが禁止されています(民事執行法151条)。 

 

民事執行法151条
次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。
一 債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権
二 給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権 
→ 1号は保険会社との契約による給付が該当するようですが,なかなか見たことがありません。実質的には2号がほとんどであり,端的にいえば給与ということになります。つまり,給与については,いわゆる手取り金額の25%しか差し押さえてはいけないことになっています。ただし,以下のとおり例外があります。 
① 手取給与が33万円を超える場合は,33万円を超える分は全額差押えが可能です。
② 差押えの原因となった債権が生活費や養育費等の場合は,その方の生活も守らなければなりませんので,50%の差押えが可能です。 

 

また,個別の法律によって差し押さえが禁止されている場合があります。すべてを記載することはできませんが,下記のような生活に必要な給付が該当します。
国民年金(国民年金法24条)
厚生年金(厚生年金法41条)
生活保護費(生活保護法58条)
児童手当(児童手当法第15条) 

 

上記の年金や手当等はそれ自体は差し押さえは禁止されますが,いったん支給されて現金や預貯金となった場合は他の現金や預貯金と区別がつかなくなりますので差し押さえが禁止されることはありません。したがって,給与や年金が支払われるであろう日にちを狙って預貯金の差押えの申立てをすることもあります。
なお,裁判所を通すことなく直接差押ができる役所等が,このような差押禁止を回避するために児童手当等を支給した直後に差し押さえるという事件があり,このような差押えは違法であると判示しています。しかし,一般市民である私どもは直接預貯金の差し押さえができるわけではなく,あくまで裁判所に申し立てたうえで裁判所に差し押さえてもらうことになりますので,違法と判断される可能性はかなり低いと思います(どこまで通用するか分かりませんが,明確に預貯金等の原資が年金であると識別できる場合は差し押さえできないとした裁判例があります(東京地裁平成15年5月28日判決)。)。

 

まとめ

 
以上のとおり,一番確実なのは,差押禁止になることがほとんどなく,財産的価値も高い不動産を差し押えることができれば回収できる可能性は高くなります(ただし,差押が成功すれば大部分は返ってくるものの裁判所に納める費用がかなり高額です・・・。)。しかし,不動産をお持ちの方はあまり多くなく,実際に回収できるのは預貯金や給与がほとんどだと思います。 
このうち,預貯金については,金融機関名及び支店名を特定することができ,差押えた時点で口座に預貯金が入っていれば,基本的には全額回収できます。なお,あくまで差し押さえた時点でのお金が回収できるのであり,その後にその口座に入ってくる預貯金まで差し押さえられるわけではありません。 
一方,給与については,勤務先が分かれば差し押さえができますが,基本的には25%しか差し押さえができません。ただし,給与については上記の預貯金と異なり,一度差し押さえが成功すればその後債務者が退職するまでは毎月回収することができますので安定的に回収できることになります。
どの方法が回収可能性が高いかは債務者の事情によるため一概には言えませんが,経験上は,不動産の差押えまで行けばほぼ間違いなく回収可能であり,次に可能性が高いのは給与ではないかと思います。
とはいえ,本当はこのような差し押さえに至ることなく回収できるのが一番良いんですけどね・・・。  


1月 16 2018

書類が届かない場合の法的効果や対処など

ご依頼をお受けして,相手方に対して様々な書類を送付することがあります。

分かりやすいところだと,貸金や家賃を支払ってもらえないので督促の手紙を出したり,逆に債務者側だと債権者に対して消滅時効援用の通知書を出したりします。

また,話し合いでは解決せずに訴訟になった場合,裁判所から書類が相手方に送られます。

 

このように書類でのやり取りというのは結構ある訳ですが,相手に対してこちらの意思が届いたときに法律上の効果が生じる場合,本当にこちらの意思が相手に伝わっているのか(書類を相手方が読んでいるか),その前提として相手に書類が届いているのかというのは重要になります。

 

今日はこの点についてまとめてみたいと思います。

 

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通知が必要なもの

上記のとおり,相手方に対して何らかの通知を行うことがありますが,ご依頼をお受けした場合に必ずしもすべてにおいて通知しなければならないものではありません。

例えば,平成29年12月31日までに借金を全額返済するという内容でお金を貸した場合,本日時点ですでに期限は経過しておりますので,督促の通知をしなくてもいきなり貸金の返済を求める訴訟を起こすことは可能です。ただ,弁護士や司法書士といった代理人から督促を行うことですんなり支払ってくれることも多々ありますので,いきなり訴訟を提起することは少なく,まずは督促することが多いです。

 

一方,相手に対して通知を行うことによって完了したり,通知をすることが条件(要件)になっていることがあります。

 

通知によって解決するものの例としては,「時効の援用」です。

一定期間借金の返済をしていない場合,消滅時効の援用を行うことで借金が無くなります(民法167条)。この「援用」とは,時効の成立によって利益を受ける人が不利益を受ける人に対して,「時効の利益を受けます。」ということを伝えるものであり,これによって初めて時効の効果が生じることになります(民法145条)。援用は相手に伝われば良いので,直接会って口頭で伝えても,電話やLINEで伝えても,書面で伝えてもすべてにおいて効力が生じますが,後でトラブルになることを防ぐために書面で行うことがほとんどだと思います。

つまり,借金に関して時効が完成している場合は,相手方に通知が届けば借金の支払義務が無くなりますので,基本的にはそれで解決します(ただし,時効中断事由があるなど,解決しないケースもあります。)。

 

通知をすることが条件になっているものの例としては「履行遅滞による解除」です。

例えば,賃料が未払いになっていて賃貸借契約を解除しようとしても,いきなり契約の解除をすることはできず,「家賃が遅れているのでいついつまでに支払ってください。」という通知(催告)をしなければなりません民法541条)。それでも家賃が払われない場合に,初めて解除することができます(ただし,例外があります。)。

 

通知の方法

直接会って意思を通知できれば良いのですが,通常は相手方は離れた場所にいるため,手紙や電話で意思を伝えます。このとき,後にトラブルにならないよう電話よりは手紙を選択しますし,手紙も内容証明郵便など記録として残る方法で通知をします。もちろん,電話を録音することでトラブルを防ぐことができますが,もし訴訟になった時に録音したものを証拠にするのは大変(録音の内容を反訳する必要など)なので書面の方が良いと思います。

 

何をもって相手に意思が届いた(通知した)ことになるのか

相手方が離れたところにいる場合,法律では相手に通知が届けば良いということになっています(民法97条)。

つまり,手紙が相手の家に届けば,実際に手紙の封を切って読んで内容を理解することまでは必要ないということになります。ですので,普通郵便でも相手の家に届けば通知としては問題ないことになります。ただ,普通郵便だと実際に届いたかどうかの確認ができませんし,どのような内容が書いてある書面が届いているのかを証明することができないので,相手方に通知が届いたことを立証しなければならないときは,内容証明郵便(配達証明付き)で手紙を送ることになります。

 

では,内容証明を相手方が受け取らなかった場合はどうなるでしょうか。

この点,受け取らなかった理由によって結論が異なるとされております。

 

まず,相手方は自宅にいたものの受け取りを拒否した場合は,基本的には通知が届いたことになります

これは,相手方が手紙を読もうとすれば読める状況にあったわけですから,届いたことにしても相手方に酷ではありません。

 

一方,相手方が海外旅行などに出ており,不在だったため受け取れなかった場合は通知が届いたことにはなりません。現実的に相手方は内容を知ることはできないのですから,それで通知が届いたことにされるというのはさすがに酷です。ただし,毎日自宅には戻っており,不在通知が入っているにも関わらず敢えて再配達を依頼しなかったような場合には受領拒否と変わりませんので届いたことになる場合もあります(ケースバイケースです。)。

 

では,相手方の家族が受け取った場合はどうなるかというと,これは届いたことになります

家族が受け取っているのであれば,通常はは家族が相手方に知らせることができますので,実際に相手方が読んでいなくても酷ではありません。ただし,相手方が行方不明になっているなど,家族も相手方と連絡が取れないような場合には届いたことにはなりません。

 

配達できない場合の対処法

 

まず,相手方行方不明の場合は,現実的に知らせることは困難ですので,公示による意思表示民法98条),訴訟であれば公示送達によって進めることになります。

公示送達についてはこちら → 想いよ届け!

 

次に,受け取り拒否の場合は,届いたということで進めてもらえれば大丈夫です。

 

最後に,不在で返却された場合ですが,敢えて受領しないのか,仕事が忙しくて受領できていないのか分からないため,通常は特定記録でも内容証明郵便と同内容の書面を発送します。

特定記録とは,書面の内容は証明してくれませんが,送付先のポストに入れた日時は証明してくれるものです。これにより,内容証明郵便は受け取ってくれなくても,特定記録は勝手に投函しますので,相手方が海外旅行等などで長期の留守で無い限り相手方に通知されたことになります。もちろん,配達されていても,相手方が海外旅行や服役などの理由で実際に受け取ることが不可能である場合は通知の効力は生じませんが,それは相手方が主張すべき問題ですので,とりあえずは通知は完了しているものとして進めます。

実際に,内容証明郵便を受け取らない方はかなり多いですが,受領拒否はほとんどなく,不在が大多数を占めます。したがって,訴訟になったときには特定記録の配達日時の記録を証拠として提出することが多々ありますが,少なくとも当事務所においてはこれで問題になったことは一度もありません。

 

ということで,相手方に書類を送る時は相手に届かないと何も意味が無いので,保険の意味でも内容証明郵便で送る時はまったく同内容の書面を特定記録で発送された方が良いかと思います。

 

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7月 11 2017

少額訴訟債権執行をやってみました。

貸金請求などで訴訟をしたり裁判上で和解が成立した場合には判決書や和解調書が作成され,これらの書類があれば相手の財産を強制的に差し押さえて現金化して,回収を図ることとなります。

 

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この差し押さえの対象となる財産として,確実かつ早期に回収できるのが預貯金です。もちろん,口座にお金が入っていなければ空振りに終わってしまうのですが,お金が入っていれば金融機関が支払いを拒否することは通常あり得ませんので,比較的早期に回収することができます()。

動産執行は現実的に換価できる財産が見つかるケースはほとんどなく,不動産執行は回収の可能性はかなり高いですが,手続完了まで1年近くにかかることがあります。

 

預貯金のように目に見えない権利を差し押さえる手続が「債権執行」であり,預貯金以外にも給与や売掛金などを差し押さえる手続もあるため,差し押さえ手続の中で一番多く使われる手続が債権執行だと思います。

 

さて,この債権執行に限らず,基本的にすべての強制執行手続は地方裁判所の手続であるため,私ども司法書士では代理することができず,書面を作成することができるのみとなります(もっとも,差押手続は最初の書類作成がほぼすべてなので,基本的には書類作成だけで問題なく手続を終えることができます。)。

この債権執行のうち,簡易裁判所における「少額訴訟」の判決に基づく債権執行(これを「少額訴訟債権執行」といいます。)に限り,簡易裁判所で債権執行の手続を行うこともできるとされているため,私ども司法書士も代理人として債権執行を行うことができます。とはいえ,なかなか少額訴訟を選択しない()ため少額訴訟債権執行を行うことも無かったのですが,先日ご依頼を受けた事件が少額訴訟債権執行ができる手続だったため進めてみました。

少額訴訟は,証拠の提出が制限されていたり,被告の異議が出たり,勝手に遅延損害金の免除や分割払いの判決になるなど原告にとって不利益なことがあるため,あまり選択しません。

 

手続を進めた感想としては,正直なところ通常の債権執行と手続自体はほぼ変わらず,手続を行うのが地方裁判所か簡易裁判所(正確には裁判所書記官)かの違いくらいしかないため,一般の方にとって手続しやすいものかと聞かれると決して手続しやすいものではないかと思います。手続費用も通常の債権執行と変わらないため,金銭的なメリットもありませんでした。

 

ということで,敢えて少額訴訟債権執行を進めるメリットはあまりないかと思いますので,次の機会は無いような気がします・・・。

 

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6月 22 2017

訴え提起前の和解(即決和解)

借金に関する契約書については特に形式が決まっているわけではありませんので,自分で手書きで作成しても良いですし,文房具屋さんなどに売っている定型のものを使っても大丈夫です。 

 

この点,借金に限らず,お金の支払いに関する書面を公証役場にて作成し,執行認諾文言を入れることで,裁判をしなくてもいきなり強制執行ができるような書面が出来上がります。この書面は,一般的に「執行証書」や「執行認諾文言付公正証書」などと呼ばれています。ちなみに,上記の「執行認諾文言」とは,文字どおり「強制執行されることを承諾します」という趣旨の文章が書かれているものとなり,たとえ公正証書で金銭消費貸借契約書などを作成したとしても,執行認諾文言が入っていなければ強制執行はできません。 

 

このような,執行証書は債権者としてはかなり便利な書類ではありますが,実は金銭の支払い(その他代替物など)に関するものしか強制執行ができません民事執行法第22条5号)。

例えば,建物の明け渡しだったり,物の引き渡しだったり,登記手続への協力だったりといった金銭の支払い等に関するもの以外は公正証書で合意書などを作成してもその公正証書では強制執行ができず,改めて訴訟を提起し,主張や証拠として提出して裁判所から判決をもらったうえで,やっと強制執行にたどり着くことになります。

建物の明け渡しなどでは,「本来はすぐに退去してもらえるけど,○月までに全額を支払えば,その後も住んで良いですよ。ただし,支払いが遅れた場合にはすぐに出て行ってくださいね。」というような話し合いが成立することはよくありますが,上記のとおり公正証書で合意しても明渡の強制執行はできませんし,かといって,和解をするために訴訟を提起するのも何かおかしな話です。

 

そのようなときのために訴え提起前の和解(即決和解)という制度があります(民事訴訟法275条)。

今年に入って半分近くが経過していますが,先日とある裁判所に即決和解の申立てをしたところ事件番号が第1号でしたのであまり使われていない制度かと思われることから,今回は即決和解についてまとめておきたいと思います。

 

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即決和解を行うための条件

 

1 和解が成立していること

当たり前ですが,当事者間で和解(話し合い)が成立していることが必要です。話し合いが決裂しているのであれば訴訟や調停を行うこととなります。

 

2 当事者が裁判所に出頭できること

書面による和解ができないことになっておりますので,当事者が裁判所に出頭する必要がありますが,裁判所の許可があれば親族などが代理人として出頭することも可能です。もちろん,弁護士や司法書士(ただし,140万円以下)を代理人とすることも可能です。

 

即決和解のメリット・デメリット

公正証書の作成や訴訟などの法的手続と比較した場合の即決和解のメリット・デメリットを記載いたします。

 

1 金銭の支払以外についても強制執行が可能

上記のとおり,執行証書では金銭の支払いに関するもののみ強制執行が可能ですが,即決和解では金銭の支払以外に関しても強制執行が可能です。もちろん,金銭の支払に関するものも可能です。

 

2 公正証書よりは時間がかかり,訴訟よりは早い

公正証書の場合は,公証人との予定があえば,最速で1~2日で書面を作成することができます。一方,訴訟となった場合は最短でも2~3か月はかかりますし,相手が争ってくれば解決まで年単位の時間がかかる可能性もります。

この点,即決和解は,当事者の呼び出しや申立書の内容の調査などの時間がかかりますので,およそ1か月程度の時間がかかります。

 

3 費用が安い

公正証書の場合は,和解する金額にもよりますが1万円から数万円程度の実費がかかります。訴訟に関しても金額によって差ありますが,同じく数万円の実費がかかります。

この点,即決和解は争いになっている金額に関係なく一律2000円の収入印紙と当事者に送達するための郵券代のみとなりますので,3000円あれば十分足りると思います。ただし,弁護士や司法書士の依頼した場合には報酬が別途かかります。

 

4 管轄が限定される

公正証書については特に管轄はありませんので,全国どこの公証役場でも作成可能です。訴訟に関しては,金銭の支払を求める場合は,債権者または債務者どちらかの住所を管轄する裁判所で行うことができますので,債務者が遠方に住んでいる場合でも,債権者の住所地を管轄する裁判所を選択することもできます。

この点,即決和解に関しては,相手方(通常は債務者)の住所地を管轄する簡易裁判所(140万円以上でも簡裁。)に限定されていますので,債務者が遠方に住んでいる場合は移動が大変かもしれません。

 

5 債務者に不出頭のペナルティがない

訴訟の場合,理由なく裁判所に出頭せず書面も提出しない場合は,債務者(被告)が言い分をすべて認めたものとして,債権者(原告)が勝訴となる場合がありますので,被告としては無視することなく対応しなければなりません。

この点,即決和解に関しては,万が一出頭しなくても出頭しなかったことに対するペナルティはありませんので,口頭での和解が成立していても,和解直前になって一方的に破棄されるという可能性があります

 

以上のように,即決和解には一長一短がありますが,条件が合えば,安価で強力な書面が出来ますので,和解ができそうな場合であれば即決和解という方法もお考えいただいてはいかがでしょうか。

 

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