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個人間トラブル

9月 17 2020

風俗業界の方からの回収事例②

先日,5年以上の長期に渡る回収手続が無事完了いたしました。

貸した金額のおよそ半分,当事務所の費用も考慮すると3割程度しか回収できていないのですが,こういった事例もあるということで紹介させていただきます。ただし,事件の特定を防ぐために,一部フィクションを入れています。

 

1 前提

当事務所の依頼者は男性の方で相手方が女性です。

依頼者は,とある風俗店で相手方からサービスを受けて以降,たびたびお店を訪れては相手方を指名するようになりました。その後,LINEの交換などをして,店内だけでなく,店外で個人的にも会うようになり,泊まりで旅行をするような関係になりました。しかし,恋愛関係ではなく,あくまで金銭が伴う関係ということで,その都度依頼者は相手方に金銭を渡していました。

 

とあるとき,相手方から借金を申し込まれ,複数回に渡り合計100万円超の金額を貸しました

その後,相手方はすぐにお店を辞め,LINEなどの連絡も一切取れなくなり,当然ながら返済もありませんでしたので,当事務所にご依頼がありました。

 

 

2 手続について

一般的な債権回収と同様に,相手方の住所の調査,内容証明郵便の送付を行いましたが,連絡がありませんでした。

以前も記載しておりますが,水商売や風俗業界の方が相手となる場合,そもそも住所や本名が分からないということがあり,その場合は何もできないため貸さないのがベストですが,どうしても貸さざるを得ないときは免許証など本人確認ができる資料を取得しておくべきです。なお,司法書士ではできませんが,弁護士さんは携帯電話番号が分かれば相手方の住所や氏名が分かる場合があります(それ相応の費用がかかります。)。

 

その時点で,相手方の財産や職業などは何も分からない状況だったのですが,このままでは何も進展がないということで訴訟を提起しました。

 

3 訴訟手続

提訴すると,相手方が代理人弁護士を選任しておりました。ただ,事情を聴くとどうやら相手方は法テラスを利用していることが分かりました。

法テラス(日本司法支援センター)とは,国の組織(法務省所管の法人)であり,生活保護やシングルマザーなど,比較的資力が乏しい方でも裁判手続が行えるように費用を立て替えてくれる制度であり,場合によっては立て替えてもらった費用の償還(返済)が免除されることがあります。当事務所でも病気や生活保護を受けていらっしゃる方の自己破産や明渡し請求への対抗のご依頼を受けたときに法テラスを利用して手続を行ったことが何度かあります(いずれも償還免除となり,依頼者の費用負担は0円でした。)。

 

つまり,法テラスを利用している時点で相手方に財産がない可能性がかなり高く,仮に判決を取ったとしても強制執行をして回収できる可能性が低いこととなります。

そんな事情を踏まえ,相手方との間で,「請求額の約半分を分割で支払い,万が一支払いが遅れた場合は,請求額全額を一括で支払う。」という内容で和解が成立いたしました。

依頼者としては,和解案のとおり回収できたとしても半分になってしまいますが,判決になってもほとんど回収できない可能性が高く,一方で,相手方としても遅れることなく返済すれば半額で済むわけですから双方にメリットある内容でした。もっとも,遅れた場合は請求額全額を一括弁済という条項が入っておりますが,そもそも強制執行をしても回収できる可能性は低いのですが,それでも法律上は全額一括弁済を求めることができるようになりますので,相手方が遅れることなく支払うための一定程度のプレッシャーにはなったと思います。

 

4 回収

その後,長期に渡り分割弁済を受けており,先日和解額の全額(請求額の約半分)を回収して終了となりました。

 

ご依頼を当初からすれば全額の回収をご希望されているので,そういう意味では失敗だったかもしれませんし,訴訟手続まで進めたことにより,半分だけでも回収できているので,そういう意味では成功と言えるかもしれません。

ただ,一般論として,水商売や風俗業界にお勤めされている方からの回収はなかなか難しいのが実情(住所・氏名が分からない,相手の職が不安定,差し押さえられる財産がない,など)であり,私としては半分でも回収できたことは良かったと思います。

 

以上,こんなケースもあるという事例紹介でした。

 

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4月 07 2020

風俗店勤務の方からの回収

同時に2人の方に対する個人的な貸金の回収のご依頼をお受けしたところ,2人とも風俗店勤務の方でした。

一般論として,風俗店勤務の方は身元がはっきりしていない方が多く,場合によってはご住所どころかお名前(本名)すらご存知ないというケースもあり,このような場合にはなかなか回収が難しいのが実情です。

今回の依頼者については2人とも免許証の画像を保存していたため,回収することができました。

事件の特定を避けるため多少のフィクションが入りますが,回収の経緯を記載いたしますので,参考にしていただければと思います。

 

1 Aさんに対する請求

(1)依頼者がAさんに対して貸し付けた金額の3割程度は任意に返済されていたものの,残る7割の返済をしないまま連絡不能となっていました。

 

(2)残されていた免許証の画像からAさんの現在の住所を調査すると一軒家に転居しており,夫やお子さんなどご家族と一緒に暮らしていることが分かりました。そこで,当該住所宛に内容証明郵便にて督促状を郵送したところ連絡があり,完済するまでの利息を付加したうえで20回分割での和解が成立しました。

 

(3)その後,一度も遅れることなく分割弁済があり,無事完済となりました。

 

驚くほどスムーズに解決したのですが,やはり仕事の内容的にご家族に知られることは避けたいはずであり,そうなると訴訟などの法的手続を執られると困ることがスムーズに解決した要因かと思います。

なお,私どもが相手方の家族に対して請求したり,相手方の仕事の内容などプライバシーに関する情報を相手方の家族や勤務先等の関係者に対して通知することはありません(ただし,家族が連帯保証人になっている場合は請求します。)。

 

2 Bさんに対する請求

(1)依頼者がBさんに対して貸し付けた金銭は,1円も返済されないまま連絡不能となりました。

 

(2)そこで,Aさん同様現在の住所を調査したところ住所は変わっておらず,その住所に対して内容証明郵便にて督促状を送付しましたが,不在で返送されてきてしまい,実際にそこに住んでいるかどうかが分からない状況でした。

 

(3)その後も連絡を試みましたが連絡が取れないため悩んでいたところ,依頼者が,Bさんが別の風俗店で働いているという情報を入手したため,当該店舗に対して手紙を送付しました。当該店舗からは,「少し前にBさんは退職している」との回答がありましたが,その際に新しい住所の情報を入手することができ,再度新しい住所に督促状を発送しました。その督促状については受け取っているためそこにBさんが住んでいることは分かったものの連絡はありませんでした。

 

(4)任意での交渉は難しいと判断し,訴訟を提起いたしました。訴状の送達は問題なくできましたが,Bさんからは反論もなく出廷もしませんでしたので,全面勝訴となりました。

 

(5)Bさんの財産はまったく把握できていませんでしたので,Bさんの自宅に動産執行を行いました。これは動産執行自体で回収することは難しいものの,裁判所の執行官がBさんに会えれば,こちらに連絡するよう伝えてもらえる場合があるからです。この作戦は無事奏功し,ついにBさんから連絡がありました

 

(6)Bさんは,これまでのことについて謝罪し,完済までの利息を付加したうえで分割にて全額支払う内容で和解が成立いたしました。

 

(7)その後の分割弁済は,途中で何度か遅れることはありましたが事前に遅れる旨の連絡があり,また転居や転職した際にも随時報告があるなど,当初とは打って変わって誠実な対応でした。そして,最終的に無事完済となりました。

 

差押えるべき財産を把握しておらず,訴訟をしても回収できないリスクがありましたがなんとか無事解決できて良かったです。中には動産執行をしても連絡がない相手方もいますので,解決できたことは幸運であったと思います。

 

3 まとめ

このように,請求する相手方が風俗店勤務の方でも話ができれば全額回収できるケースも多々あります。ただ,最初に記載したとおり,連絡が取れないどころか住所やお名前がまったく分からないとなると回収するのは極めて難しいのもまた事実です。

ですので,貸さないというのが一番良いのですが,どうしても貸さなければならないような場合には,最低限相手方の住所とお名前だけは免許証や保険証などの公的な書類で確認するようにしてください(私ども司法書士ではできませんが,弁護士さんにおいては携帯電話の番号が分かれば住所が調べられる場合もあります(弁護士会照会)。)。

 

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2月 19 2019

離婚に伴う慰謝料請求(最高裁判決)

本日,債権回収に関する最高裁判決が出たので,簡単にまとめておきたいと思います。

なお,当事務所では,離婚に伴う慰謝料請求などの不法行為に基づく損害賠償請求に関する債権回収は行っておりませんので,そのようなご相談をいただいた際にはその分野に長けている弁護士さんを紹介させていただきます。

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前提事情

 

・甲さん(夫)は,Aさん(妻)と婚姻し,2人の子どもをもうけました。

・Aさんは,とある会社に入社し,その会社でBさん(浮気相手)と親密な関係になりました。

・約1年後,上記の事情を甲さんは知りましたが,すでに上記の関係は解消されており,甲さんとAさんは離婚することなく夫婦関係を継続していましたのでAさんとBさんには慰謝料の請求はしませんでした

・その約4年後,Aさんは甲さんと別れることを決意し,離婚調停が行われた結果,甲さんとAさんは離婚しました。

・甲さんは,Bさんに対して離婚に伴う慰謝料の支払いを求める訴えを提起しました。

・地裁及び高裁は甲さんの主張を認めてBさんに対して支払うよう判決を出しましたが,それを不服としてBさんが上告しました。

 

前提知識

1 慰謝料の種類

一口に離婚に伴う慰謝料といっても,実は2つの慰謝料があります。

(1)離婚自体慰謝料

離婚によって,配偶者(夫や妻)という立場を失うことになってしまうことに対する慰謝料です。離婚しなければ当然この慰謝料は発生しません。

ですので,浮気した夫に対して慰謝料を請求したいけど離婚はしないという場合,離婚していない訳ですからこの離婚自体慰謝料は請求できないことになります。

また,この離婚自体慰謝料を第三者に請求できるかどうかについては,いろんな考え方があったわけですが,地裁と高裁は請求できると考えており,本日この点についての最高裁判決が出ました

 

(2)離婚原因慰謝料

離婚の原因を作った人に対して請求できる慰謝料です。一番わかりやすいのが浮気ですが,それ以外にもDVだったり,性交渉の不存在だったりします。

これは必ずしも離婚することが必要なのではありませんので,浮気した夫に対して慰謝料を請求したいけど離婚はしないという場合であっても請求できますし,配偶者が第三者とともに原因を作っている場合は当該第三者(例えば浮気相手)に対しても請求できます

 

2 消滅時効

離婚に伴う慰謝料は,不法行為に基づく損害賠償請求ですので,被害者(浮気されたり,暴力を受けた配偶者)がその加害者や被害の事実を知ってから3年間またはその事実があってから20年間が経過すると時効により消滅してしまい請求できなくなってしまいます民法724条)。

したがって,上記の離婚自体慰謝料については離婚のときから3年間,離婚原因慰謝料は浮気の事実や浮気相手を知ってから3年間経過後には慰謝料は請求できなくなってしまいます。

 

最高裁判決

さて,これを受けて最高裁は,ざっくりというと以下のとおり判示しました(ただし,私の解釈ですので誤っている可能性もあります。)。

最高裁サイト

判決全文(PDF)

 

離婚原因慰謝料(不貞行為による慰謝料)については,当然ながら浮気相手にも請求できる

・一方で,離婚にするかどうかは当該夫婦の間で決められるべき事柄であって夫婦にも様々な事情があるのだから,浮気相手が直ちに当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任(離婚自体慰謝料)を負うことはない

・もっとも,例外的に浮気相手が配偶者と浮気するだけでなく,夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚させたと評価できるような特段の事情があれば第三者も離婚自体慰謝料を負うことはある。

・本件では,AさんとBさんの浮気が発覚した時点ではすでに浮気関係は解消されており,Bさんが甲さんとAさんを敢えて離婚させたような事情は無い。

・よって,Bさんは甲さんに対して慰謝料を支払う必要は無い。

 

大事なところ

本判決では,浮気相手については,離婚自体慰謝料については原則として支払う必要は無いと言っているだけで,離婚原因慰謝料(不貞行為による慰謝料)については当然支払義務はあります。ただ,本件においては,甲さんがAさんとBさんの浮気を知ってから4年後に離婚しているため,「浮気の事実と浮気相手を知ってから3年」が経過していることから,消滅時効により請求できないだけです。

決して,浮気の慰謝料について,浮気相手が支払わなくても良いという判決ではありませんのでご注意ください。

この点,浮気しておいて結局支払わなくても良いのかと思われる方も多いと思いますが,もし離婚自体慰謝料を第三者に請求できるとなると,離婚自体慰謝料の消滅時効の起算点は離婚のときですから,仮に20歳のときに浮気をしたもののすぐに解消したが80歳の時に離婚したような場合,浮気相手は一度の浮気で60年前の責任を取らされることになってしまい,殺人の慰謝料ですら最長20年で時効(除斥期間)になってしまうことと比較すると責任が重すぎてしまいます

繰り返しとなりますが,離婚原因慰謝料は第三者にも請求できるわけですから,こちらで解決していただければ良いのではないかと思います。

 

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1月 22 2018

夜のお仕事の方からの回収

男女問わず,夜のお仕事の方から金銭の回収をしてほしいというご依頼が多くあります。

夜のお仕事の方は,比較的頻繁に住所や勤務先が変わることがあるためなかなか全額の回収は難しいのですが,今回,元金,利息,遅延損害金,訴訟費用までキッチリ全額の回収ができましたので,まとめておきたいと思います。なお,事件の特定を避けるため多少フィクションが入っています

 

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事案の概要

 

夜の店にお勤めの女性に対して,男性が店内で少額の金銭を貸し付けたのが始まりでした。当事者間では何度も貸し借りが繰り返されており,当初は借用書などは無かったものの次第に大きな金額になったため,借用書を作成することを条件に貸し付けるようになりました。また,女性の免許証のコピーをとっており,本名や住所は把握していました。

しかし,女性がお店を辞めてしまい,電話やメール等での連絡がまったく取れなくなったということでご相談がありました。

 

交渉等の経緯

 

まずは,相手方の自宅に督促状を発送しました。すると,すぐに連絡があり,「一括では無理であるため分割で支払いたい」とのことでしたので和解書を作成して分割で支払ってもらっていました。

↓ 6か月

半年程度は問題なく支払っていただいていたのですが,少しずつ支払いが遅れるようになり,1年後にはまったく支払いが止まってしまいました。さらに,もともと聞いていた住所から転居されていました。

↓ 3か月

住民票の調査をしたところ,転居先が分かりましたので再度督促状を送りました。その後,連絡があり交渉をしたものの結局支払いがないためやむなく訴訟を提起しました。

↓ 2か月

訴訟の期日に相手方も出廷し,分割で支払う内容で和解が成立しました。裁判上の和解であるため,相手方が支払わなかった場合は強制執行が可能となることから,和解する条件として住所や勤務先等の情報を聞き出しました。なお,和解が成立しているので直接は関係ありませんが,仮に和解ができなかったとしても,すでに和解書を作っていたので勝訴することはほぼ間違いない状況でした。

↓ 約3年

分割にて訴訟費用や利息,年14%遅延損害金も含めて全額回収いたしました。ご依頼を受けて4年以上が経過していました。

 

もともとの元金は80万円弱でしたが,最終的には110万円近く回収しており,当事務所の報酬や裁判所に納めた実費などを差し引いても元金の9割以上はお返しできました

 

 

上記のとおり夜のお仕事の方は住所や勤務先が頻繁に変わるためなかなか全額の回収が難しいです。今回の相手方は私が把握しているだけでも4回転居し,勤務先も同じく4回は変わっているのですが,律儀にすべてを教えてくれる方でしたので最後まで回収できました。相手方の状況も踏まえてしっかり話をし,信頼関係のようなものが築けたことが大きかったと思います。

また,借用書及び免許証のコピーを取っていたのはかなり大きいです。

お金の貸し借りの部分はメールなどでも立証できることがあるのですが,借用書があればかなり有利となります。さらに,一般的な知人間のお金の貸し借りであればはなかなか無いのですが,夜のお仕事の場合は相手方の住所はもちろんのこと,お名前すら分からないというケースがあります。このような場合でも回収したことはありますが,かなり難易度が上がってしまいますので最低限の情報としてご住所やお名前は聞いておかれた方が良いかと思います。

正直なところ,夜のお仕事の方から全額回収するのは容易ではありませんが,現在進行形で同様のお仕事をされている複数の方から毎月回収していますので,まったくゼロで終わるということも無いかと思います。似たような状況の方がいらっしゃいましたら,ぜひご相談ください。

 

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12月 16 2016

200円の損害賠償請求

昨日,下記のようなニュースがありました。

 

以下,よみうりオンライン(http://www.yomiuri.co.jp/national/20161215-OYT1T50110.html)の記事を引用します。

 

月決め駐車場に約40分間無断駐車した女性に所有者が200円の損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁(比嘉一美裁判長)が女性に200円の支払いを命じていたことがわかった。

原告は弁護士をつけずに提訴。費用は5000円以上かかったが、「年間100台くらいの無断駐車があり、やめてもらうために訴えた」と話している。

14日に言い渡された判決によると、女性は昨年3月、大阪府摂津市内の駐車場に軽乗用車を無断で止めた。女性側は「駐車場ではなく空き地。車を止めたからといって所有者に損害は発生しない」と主張。比嘉裁判長は「所有者には自分の土地を承諾なく利用されない権利がある」と、これを退け、近隣のコインパーキングの料金から「40分間」の損害額を算定した。

 

引用終わり 

 

200円の請求というのはなかなか見ませんので,思うところを書いてみたいと思います。

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費用について

裁判を起こすためには,裁判所に対して訴える目的の金額(訴額)に応じて収入印紙を納める必要があり,さらに当事者に郵送するための切手を納める必要があります(余った切手は事件終了後に返却されます。)。

記事によれば「費用は5000円以上かかった」と書かれておりますので,収入印紙が1000円,切手代が約4000円になるかと思います。

ただし,勝訴した場合は,その割合に応じて収入印紙や切手代等の訴訟費用は全額相手に支払ってもらうことができます。記事によれば,200円の支払いを求めた訴訟で判決も200円を支払えとなっているそうですので,訴訟費用は全額相手に負担してもらうことができます。

加えて,裁判所に出廷した場合,交通費と日当も訴訟費用の一部として相手に支払ってもらうことができます。

交通費は裁判所までの距離によって一律で決まっており,絶望的に安い金額であるため恐らく赤字です。例えば,当事務所から岡崎の裁判所まで往復交通費は2000円以上かかりますが,交通費は300円しか出ません・・・。また,日当も一律で決まっており,1期日当たり3950円です。

もっとも,上記はあくまで「相手に請求できる」というだけであり,請求しないことも可能です。さらに,請求しても相手が払わないこともありますので,その場合は費用をかけて強制執行をして回収するしかありません。現実問題として,訴訟費用のためだけに強制執行というのは費用倒れになってしまう可能性が十分あるかと思います。

 
 

抑止力はあるのか

記事によれば,「年間100台くらいの無断駐車があり、やめてもらうために訴えた」とのことです。

しかしながら,訴訟で求めたのは200円の支払いであり,訴えられた側としては200円を支払えばそれで終わりです(ただし,上記のとおり,別途訴訟費用の支払義務もあります。)。判決が出たからといって,直ちに警察に逮捕されるわけでもありません。

この判決を逆手にとって,「訴えられたところで200円しか払わないでも良い」との認識が広まってしまうと,果たしてこの訴訟に抑止力があるのか難しいところだと思います。

 
 

なぜ地裁だったのか

140万円以下の訴訟の場合は,簡易裁判所の管轄となっており,例外的に不動産に関する訴訟や難解な訴訟などは地方裁判所に移送されることがあります。

簡易裁判所の場合,少額訴訟であれば1期日で終わるなど簡単な手続も用意されていますが,地方裁判所だと厳格な方式によって進みますので本人訴訟の当事者にとっては簡裁の方が楽ではないかと思います。

もしかしたら,上記の例に該当して移送された結果が大阪地裁なのかもしれませんが,なぜ地裁での訴訟となったのかよくわかりません。  

 
 

罰金の看板の有効性

本件とは直接関係ありませんが,駐車場などに「無断駐車をされた場合は罰金として1万円を支払ってもらいます。」というような看板があったりします。

当然,無断駐車はダメなのですが,万が一このような事態が生じたとしても,法的には罰金1万円を支払ってもらうことはできません。理由としては,そのような合意が無いからです。ただし,まったく請求できないかというとそうではなく,本件事件のように近隣の駐車場の相場などから勘案して,止めた時間に応じた損害賠償請求を行うことは可能です。費用対効果が合うかは別ですが・・・。  

 
 

無断駐車はダメなのは当たり前なのですが,現実問題として無断駐車をされてしまっても土地の所有者の方が満足するような手続がありません。したがって,三角コーンを置いたり入口にチェーンを巻くなどして物理的に無断駐車をされないような対処をしていただくしかないと思います。 

 

 

 
 

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12月 12 2016

男女間の交際に関連する費用の請求

交際されている男女間での金銭の貸し借りがある場合,交際中は特に問題ないのですが,交際が解消されることによってトラブルが生じることがあります。実際に,当事務所でご依頼いただいている事件の3割程度は男女間の金銭トラブルに関するものになります。

また,同棲をされていた男女間では,現実的なお金のやり取りではなく生活費や家財道具の購入資金を立て替えてもらったものの,その清算をしないまま一方的に交際を解消してトラブルになることもあります。

今回の事件は,現実的なお金の貸し借りではなく生活費等の清算に関するトラブルについてでしたが,無事解決しましたので手続の流れをまとめてみたいと思います。ただし,事件や当事者の特定を避けるためフィクションも含まれています。

 

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請求の内容

 

甲さんと乙は同棲しており,家賃や光熱費等の生活費は折半で負担する約束になっていたものの,乙さんがほとんど負担しないまま同棲が解消されたので,甲さんが乙さんに生活費相当額を請求するというものでした。

このような請求の場合,一般的には証拠がほとんどありません。例えば,当初の「生活費は折半」という部分について書面で合意書等が作成されることはまず無いでしょうし(もっとも,書面が無くても折半での請求は通常は可能かと思われます。),光熱費については明細などが残っているかもしれませんが,食費や日用品などについて書面が残っているということはなかなかありません。

したがって,このような請求を行うとすると,「そもそも相手に請求できるのか」,「請求できるとして,いくら請求できるのか」という点が問題となります。

今回のケースでは,このような書面は当然のごとくありませんでしたが,当事者同士で同棲解消後に「乙さんが甲さんに○○円を払う」という合意ができており,この点については書面化されていたため,請求額等については問題となりませんした。

 

手続の流れ

 

1 乙さんの転居先の住所がわかりませんでしたので,同棲していた住所の除票を取得して新住所を特定し,内容証明で書面を送付しました。乙さんから回答があり,支払義務を認めたうえで,支払回数などについて何度か交渉を重ねておりましたが,突然連絡が取れなくなり再度書面を送付しても回答がありませんでした。

 

2 支払う意思は無いものと判断し,訴訟を提起しました。証拠として合意書がありましたので,特に問題なく勝訴となりました。

 

3 乙さん自身にはほとんど財産が無いと思われますが,乙さんは派遣社員として給与を得ていることは把握していました。とはいえ,実際に給与を支払っているのは派遣元ですので,派遣先がわかるだけでは給与の差し押さえができません。そこで,当該派遣先に派遣している会社を求人情報などで探し,いくつか該当する派遣会社があったため直接連絡して確認をしましたが見つかりませんでした。そんな折,依頼者ご自身が,乙さんの本名ではないもののフェイスブックで乙さんと同じ出身地や派遣先での情報とともに派遣元も書いている方の情報を見つけたため,この情報を頼りに派遣元に確認をしたところ,見事派遣元を特定することができました。以前もフェイスブックの情報で差押に繋がる情報を見つけることができ,回収に成功しております。本当にフェイスブックは情報の宝庫です。

 

4 派遣元からの給与に対する債権執行の申立書を作成し,管轄裁判所に提出いたしました。数日後,派遣元からの陳述書が届き,勤務(派遣登録)していることが確定しました。

 

5 以降,毎月税引き後の金額の1/4相当額が派遣元から送金され,最終的には経過利息や執行費用も含めて回収することができました。

 

重要なポイント

 

今回うまくいった大きな要因の一つが合意書が作成されていたことにあります。上記のとおり,請求額を特定するためには様々な資料が必要となりますが,この点がクリアできていたのは大きかったです。

2つ目は勤務先の特定です。個人間の金銭トラブルでは,一般論としては差し押さえ可能な財産があるケースは少なく,訴訟までいってしまった場合は給与を差し押さえて回収することがメインとなりますが,勤務先が特定できないケースも多々ありますので,この点がクリアできたのは大きかったです。

 

かかった費用について

 

今回の請求額はおよそ70万円だったのに対し,郵送料や裁判所に支払う実費なども含めて約30万円でした。

やはり訴訟や強制執行までいってしまうと,多くの費用がかかってしまいますので何とか訴訟等の法的手続を執らずに回収できれば良いのですが,残念ながら強制執行までしても支払わないという方は少なからずいらっしゃいますので,このような方が相手の場合にはある程度費用がかかってしまうことを前提に強制的に回収するか,残念ながら諦められるかのどちらかになってしまいます・・・。

なお,事前に裁判所に支払う実費などはいただいておりますが,ほとんどの費用については回収した中からいただいておりますので,当面の費用がご用意いただくのが難しい場合でも一度ご相談ください。

 

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11月 20 2015

貸金請求でよくあるご質問

法律を扱うものとしては,当たり前だと思っていることでも一般の方の中にはかなり誤解されていることがたくさんあり,ここ数日同じようなご質問をいただいたのでまとめてみます。

 

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親兄弟,その他の親族に請求することはできません

 

よく貸金請求の際に,「本人に払ってもらえなかったら親に払ってもらえますよね?」とご質問いただくことがありますが,残念ながら例え親兄弟であっても別人格ですので,本人以外の人に請求することはできません

ただし,以下の場合には請求することができます。

 

① 保証人になっている場合

親兄弟が貸金について保証人になっているのであれば,親兄弟として請求するのではなく,保証人として請求することができます。

保証人について

 

② 本人が亡くなっている場合

借主本人が亡くなっている場合は,その相続人に対してであれば請求することはできます。この点,相続人が相続放棄をしていると支払義務はありませんので結果としては請求できませんが,そのようなことは外部にはわかりませんので,とりあえず請求してみることになります。

 

③ 日常家事債務の場合

借金の理由が日常家事に該当する場合は,配偶者に請求できる場合があります。

日常家事債務について

 

借用書の有効性

 

個人間の貸金の場合,非常にざっくりとした借用書を取っていることがありますが,その借用書の有効性についてかなり心配されている方が多いように思います。

実は,借用書が無効であるケースがそんなに多くなく,概ね有効な借用書になっていると思います。ただし,借用書が無効ではないことと証拠の証拠力の問題はまったく別問題ですので,借用書があれば必ず訴訟に勝てるというとそうでもありません。

以下,よくご質問いただく点を記載いたします。

 

① 収入印紙が貼っていない

借用書は印紙税法の「消費貸借に関する契約書」に該当しますので,金額に応じて収入印紙を貼付する必要があります。

タックスアンサー(国税庁サイト)

しかしながら,印紙が貼っていないことと契約書の有効性には関係ありませんので,収入印紙が貼っていなくてもその借用書は有効です。

正直なところ,私は個人間の借用書で収入印紙が貼ってあるものを見たことはありません・・・。このような借用書でも当然裁判の証拠として提出していますし,その借用書を根拠に何度も勝訴しています。

とはいえ,印紙を貼るのは法的な義務ですし,もし印紙を貼らないまま税務署に見つかると本来納める額の3倍を納めなければなりませんので,必ず借用書には収入印紙を貼りましょう。

 

② 印鑑がない,または拇印である

日本社会において,印鑑,特に実印は重要視されていますので,書類にはご捺印いただいた方が良いですが署名があれば問題ありません。もちろん,署名+実印でのご捺印であれば借用書の成立に争いがある場合でもかなり有利になると思いますので,ご捺印いただくに越したことはありませんが,ご捺印いただくことによって契約が有効になるわけではありませんので,ご捺印が必須という訳ではありません。

なお,拇印については,実印同様,唯一無二の印影(?)であるため,指紋の鑑定などを行えば本人が関与したことの証明になるとは思いますが,拇印をもらうよりは署名の方が良いと思います。なお,拇印があることによるデメリットはありませんので,例え拇印であってももらえるのであればもらっておいた方が良いと思います。

 

③ 貸付の日ではない日に借用書を作成してもらった

借用書は,必ず貸付の日に作成しなければならないという決まりはありませんので,事後的にもらっても問題ありません

借金があることを認めた上で分割で支払う場合などにおいては,「債務承認弁済契約書」という契約書を作成するくらいですので,事後的に書類をいただくというのはよくあることです。

 

督促しないまま訴訟

 

これは貸主というよりは借主の質問としてよく聞かれるお話ですが,督促をまったくしていない,もしくはあまりしていない状況で訴訟を起こした場合に「まったく交渉していないのに訴えるなんておかしい」と言われることがあります。

期限が到来しているのであれば,法律上当然に支払義務があるのであり,督促して交渉することは義務ではありません。したがって,期限到来後したのであれば一切督促せずに訴えることはできますし,保証人などに請求することもできます。ただ,むやみに訴えるのは訴訟が必要でないケースでも訴訟をしてしまうことになるので,事前の督促は法律上の義務ではないものの,やはり事前に督促はした方が良いと思います。当事務所でも,いきなり訴訟を起こすことはなく,必ず事前に書面で通知をして回答が無い場合や回答があっても交渉がまとまらないときに初めて訴訟を提起しています。

 

公正証書で作れば必ず回収できる

 

正確には,「金銭の支払いを求める内容の執行認諾文言付公正証書」であれば,裁判をすることなく強制執行ができますので,万が一延滞があったときには迅速に執行手続に進むことができますし,公正証書で作成したことそれ自体の効果として延滞が少なくなるということはあるかと思います。

しかし,最終的に強制執行ができるだけであって,相手にまったく財産がなければ強制執行で差し押さえる財産も無いので,公正証書であっても回収できないことは多々あります。

 

預金口座はずっと差し押さえられる

 

強制執行をする場合,一番多いと思われるものが金融機関の預金口座を差し押さえる方法です。給与の場合は,給与を支払うべき会社が協力してくれないケースもありますが,金融機関が協力してくれないということはあり得ませんので,口座にお金さえ入っていれば確実に回収することができます。

預金を差し押さえた場合,差し押さえることができるのは,その瞬間に口座に入っている預金のみであって,差し押さえ後に入金されたものについては対象となりません

この点,給与振込口座を押さえれば自動的に口座に入金される給与の全額回収できると思われている方がいらっしゃいましたが,そのような回収はできません・・・。

したがって,預金口座を差し押さえる場合は,口座にお金が入っていそうな日を狙って申立てをすることになります。

 

ということで,また新たなご質問ありましたら随時更新していきたいと思います。

 

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11月 16 2015

貸金回収の実例(後編)

前回の記事の続きとなります。

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個人に対する強制執行

 

勝訴判決を得ることはできましたが,その時点でもBさんの預金口座やその他の財産を見つけられていませんでしたので,とりあえず確実に支払われていると思われる給与(役員報酬)を差し押さえることとしました。正直なところ,給与を差し押さえても会社が支払ってくれるとは思えませんでしたが,もし無視された場合には取立訴訟を行うことで最終的にはA社の財産を差し押さえることができますので,Bさんの財産を探すよりも簡単です。

なお,強制執行手続に関しては司法書士は代理人となることはできません(ただし,少額訴訟債権執行を除く)が,書類の作成をすることはできますので,当事務所は書類作成者として関与しております。

 

会社に対する取立訴訟

 

給与の差押え手続をしたものの予想通り,A社からは何ら連絡はなく,月日が流れていきました。そこで,4か月ほど経過した時点でA社に対する取立訴訟を行うこととしました。もちろん,事前にA社に何度か電話をしましたが,担当者不在&折り返し無しが続いたので,もうA社からの支払いはまったく期待できない状況でした。

 

ここでいくつか補足致します。

まず,今回差し押さえたのは正確には給与ではなく役員報酬となります。

給与の場合,全額を差し押さえてしまうと差し押さえられた人の生活ができなくなってしまいますので,原則として給与の手取り額の1/4しか差し押さえが出来ないこととなっています(民事執行法152条1項2号)。具体的には,総支給が30万円で,税金等が控除されて24万円であれば6万円しか差し押さえができないことになります。

しかし,役員報酬は正確には給与ではないため,このような制限がなく全額差し押さえることが可能です。この理由は,契約形態が雇用契約ではなく委任契約であること,取締役は役員報酬だけで生活が成り立っている訳ではないことが挙げられていますが,役員報酬で生活している方はたくさんいるので,正直なところ説得力のある理由ではないと思います・・・。

 

それはさておき,差し押さえる側としては全額押さえられるのは良いことですので全額の支払いを求めますが,毎月支払われない都度訴訟をやっても不経済ですので数か月待つことになります。

例えば,請求額が100万円で,役員報酬が毎月20万円だとすると,20万円が支払われなかった時点で20万円については取立訴訟を起こすことは可能ですが,翌月も支払われない場合は別途手続をしなければなりません。しかし,5か月待ってから取立訴訟をすれば一度の手続で済みます。

今回の事件は4か月経った時点で全額回収できる金額になりましたので,すぐに取立訴訟を提起しました。なお,この取立訴訟に関しては,強制執行手続の一環ではありますが,140万円以下であれば簡易裁判所の管轄となりますので司法書士が代理して訴訟を進めることは可能です。

 

取立訴訟に対するA社の対応

 

A社に対する訴訟を提起したものの,実は本気で反論されてしまうとどうなるかわからない事情もありました。

というのは,実際にBさんに対して毎月いくらの役員報酬が支払われているか確実には把握していませんでしたので,もしかしたら株主総会決議をして役員報酬がゼロになっていると反論される可能性もあり得ます。株主総会を行った場合は株主総会議事録を作成することになりますが,この書類はA社が作成する書類ですので,本当はそのような決議はされていない場合でも,さもあったかのように証拠を作出することができてしまいます

この点については,顧問税理士とも打ち合わせをして,訴訟提起後に税務署に対する調査嘱託等(民事訴訟法186条)を行うことで,仮にそのような証拠が出されても「実際は役員報酬を支払っている」との立証はできると思っていましたが,ウソではなく本当に役員報酬がゼロになっているとどうにもなりません。

また,会社に対する訴訟となると従業員の生活もかかってきますので,しっかり反論がなされて長期的な戦いになることも想定されました。

 

 

 

が,まさかの何も反論無しでしたので,特に証拠を提出することもなく勝訴判決が出てしまいました。顧問税理士と何度も打ち合わせをしたり,税務署にも相談したり,各方面色んな証拠関係の調査をしましたが,良い意味で無駄な労力となりました。

 

会社財産に対する差押え

 

さて,これでいよいよ会社の財産を差し押さえることができるようになりました。A社の財産で差押えが可能なものとして考えられるのは,社内にある動産,事務所の賃貸借契約の際に入れているであろう保証金,金融機関の預金,取引先に対する売掛金などがありました。

しかしながら,社内の人間であれば財産的価値があるものや換価が簡単なものがわかるでしょうが,外部の人間ではそう簡単にはいきません。

 

・動産

一般的に価値はありませんし,どのような動産が社内にあるのかわかりませんし,何より動産執行は債権執行と比べて裁判所に納める予納金が高いので費用倒れになる可能性が十分あります。

 

・保証金

金額的には差し押さえができれば一括で回収できそうな金額の保証金が入れられていると思いますが,A社が退去するまで返還されませんし,万が一賃貸借契約の特約で100%償却となっていれば,まったく意味がありませんので,実効性が高いとは言えません。

 

・預金

口座にお金が入っていれば,銀行が拒否することはないので確実に回収できます。しかし,差し押さえのためには支店を特定する必要があります。この点,A社のHPには取引銀行名は書いてあったものの,支店名までは書いてなかったので,支店名の特定がカギとなりますし,もし差し押さえができても口座にお金が入っていなければ空振りになってしまいます。

 

・売掛金

売掛金は,まず取引先がどこなのかを突き止める必要がありますし,さらに,どういう売掛金なのかを特定しなければなりませんので一番大変です。ただ,もし主要取引先の売掛金を差し押さえられるとA社は取引を打ち切られ,最悪の場合倒産の恐れも出てきてしまうので,もし,特定ができればかなり大きな情報となります。

 

差押え財産の特定

 

最近は,フェイスブックやツイッターなどのSNSをやっていない人の方が少ないのではないかと思えるくらいSNSを利用されている方が多いですが,個人ではなく会社名義でのSNSもたくさんあります。また,今では少し廃れ気味ですが会社や社長のブログもあったりもします。

そこで,差し押さえが可能な財産を探すべくA社名義及びBさん個人のツイッター,フェイスブック,ブログなどを片っ端から全部読みました。そこから,さらに従業員のツイッターまで探し当て,隅から隅まで読みました。もう,ある意味「自分はネットストーカーなのかも」と思えるくらい読みました。

その結果,2つの大きな情報を見つけました。

 

1つは取引銀行の支店名です。Bさん個人の数年前のブログに書いてありました。

もう1つは取引先です。Bさんのフェイスブックに取引先であるC社主催のイベントに参加された記事が載っており,C社のフェイスブックにも同様の記載がありました。また,恐らくではありますが,そのC社との取引が打ち切られると倒産するレベルの取引先であることもわかりました。もっとも,上記のとおり売掛金を差し押さえるためにはC社という取引先がわかるだけではダメで,どういう売掛金かを特定しなければなりませんので,C社という名前が判明しただけではまだ次へ進めません。

 

預金の差押え

 

ということで,多くのお金が入っていそうな給料日前の日付を狙ってA社名義の預金口座に関する強制執行の申立書を作成しました。

その結果,見事差押えは成功したものの,全額を回収するには至りませんでした

ただ,それよりも良かったのは,これを機にBさんから電話が掛かってくるようになり,やっとまともな交渉ができるようになりました

その交渉の中で,Bさんとしては「3回程度の分割で全額支払うから,保証金やC社への売掛金の差し押さえはしないでほしい」との要望がなされ,こちらとしては,「保証人を付けてもらい,さらにC社との契約書を開示すること」を要望し,無事和解が成立しました。

これで,売掛金の差し押さえに必要な情報がすべて揃いましたが,上記のとおり売掛金の差し押さえはA社の倒産を招いてしまう恐れもあったので,できる限り分割で支払ってくれることを期待していました。

 

売掛金の差押え

 

分割の支払いで和解したはずですが,残念ながら約束通りの入金はありませんでしたので,依頼者より依頼を受けて,売掛金に関する強制執行の申立書を作成しました。

その結果,こちらの請求額を超える売掛金がありましたので,申立てから10日程度で全額が支払われ,事件は終了となりました

なお,これ以降,A社,Bさん及びC社とは話をしておりませんので,A社とC社との関係がどうなったのかわかりませんが,A社から受領したC社との契約書には,差し押さえがあったときには契約を解除することができる旨の規定がありましたので,もしかしたら取引を打ち切られているかもしれません・・・。

 

回収率

訴訟を2回(Bさん個人への貸金請求訴訟及びA社への取立訴訟)行っており,強制執行の申立書を3回(役員報酬,預金口座,売掛金)作成しておりますので,その分の司法書士報酬はかかっておりますが,2回分の訴訟費用(収入印紙や郵券等),3回分の執行費用(収入印紙や郵券等)については,強制執行手続の中で全額回収しておりますので,各手続の実費は実質タダになっています

さらに,訴訟期間中も貸金に対する利息は付いていきますので,実際に回収した金額から報酬等を差し引いた実質的な回収率は約75%でした

今回の事件は着手金あり(成功報酬15%)でお受けしましたが,もし着手金なし(成功報酬25%)だと実質的な回収率は約65%となっていましたので,今回の依頼者については着手金ありにされて正解でした。もっとも,回収までに時間がかかっておりますので,回収できない間は着手金ありにされたことを後悔されていたかもしれませんが,最終的にはご期待に沿うことができて良かったです。

 

すべての事件について必ず回収できることを保証するものではありませんが,可能な限り回収すべく手続を進めていきますので,同じようにお困りの方は一度ご相談いただければと思います。

 

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11月 06 2015

貸金回収の実例(前編)

長きにわたる貸金の回収が無事終わりました。

本当にいろいろすんなりいかないことが多く,途中はどうなることかと思いましたが,無事全額回収することができましたのでどのような手続を踏んだのかまとめてみたいと思います。

ただし,法的な観点と無関係なところはフィクションを入れております。

 

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前提事情

 

ご依頼をお受けしたのはもう2年ほど前になります。相手は中小企業であるA社の社長Bさんでしたが,資金繰りがあまりうまくいっておらず友人や知人にBさんが個人的に借り入れをしているようで,依頼者の方も同様にA社ではなくBさん個人に貸付けをしていました。また,簡単なものではありますが借用書もありました

A社は社長であるBさん個人が友人や知人から借り入れをしているくらいですので,役員報酬もほぼ全額を会社に対する貸付金として処理しているようでした(実質的には役員報酬ゼロ)。また,預貯金はほぼ無さそうでしたし,その他に差押えができそうな資産はこちらではわからない状況でした。したがって,仮に法的手続を進めたとしても差し押さえられる財産は給与(役員報酬)くらいとなりますが,そもそもA社の社長がBさんな訳ですからA社相手に給与を差し押さえ手続をしても,それすら無視されるであろうことは容易に予想できる状況でした。

以上から,法的手続を進めても時間も費用もかかるうえ,実効性が薄いので可能な限り任意の交渉で回収すべく動くことになりました。

 

受任通知及び交渉

 

まず,借用書に記載された住所にBさんが今も住んでいるのかを確認するため住民票を取得しましたが,変更は無かったのでBさん個人に受任した旨と返済を求める旨の通知書を送りました。ところが,実際は転居しており返送されてきてしまいました。会社の代表者(代表取締役・有限会社の場合は取締役)については,会社の登記簿にも住所の記載がありますので,念のためA社の登記簿を取得しましたが住民票の住所と同じ住所であったため,やむなくA社宛に再送付しました。

こちらについては問題なく配達され,到着後2週間ほど待ちましたが残念ながらまったく回答はありませんでした。また,こちらからA社に連絡をしましたが,従業員の方に折り返しをお願いしても一度も連絡はありませんでした。

 

訴訟提起

 

上記のとおり,差し押さえができそうな財産が給与しかなかったため訴訟をしても費用倒れになる可能性はありましたが,訴訟を起こすことでBさんが裁判所に出頭することも考えられるので,どちらかと言うと判決を取るためというよりも話し合いをしたいということで訴訟を起こしました。この点,調停という選択肢もありましたが,それまでの対応を考えると調停を無視される可能性が高く,無視された場合は時間も費用も無駄になってしまうため,訴訟を選択しました。

なお,Bさんの住所は住民票上の住所しかわからないので,被告の住所は住民票上の住所を記載し,送達先として会社の住所を記載しました(住民票上の住所には住んでいない旨の上申書も提出しています。)。

 

訴訟の期日及び判決

 

無事,会社宛に送達され訴訟の期日を迎えましたが,Bさんは出頭せず,かつ反論の書面を出さなかったため数日後に判決となりました。

相手が出頭せず,かつ反論の書面を出されない場合,「擬制自白」といってこちらの主張をすべて認めたことになります(民事訴訟法159条)。そうすると,証拠は必要ありませんし,まず間違いなく勝訴判決が出ることになります。実は,借用書の記載だけでは不十分なところがあったので,本気で反論されたときに備えてメールやLINEを証拠として出す準備もしていたのですがすべて不要となりました。

そして,数日後,無事勝訴判決が出ました。

 

再度の交渉と次の手続

 

判決には仮執行宣言が付いていたので,すぐに強制執行を行うこともできましたが,まずは話し合いを優先し,判決が確定したのを確認してから話し合いを求める手紙を送りました。

本来,強制執行を行うためには判決が確定しなければなりませんが,判決が確定する前に「仮」に強制「執行」をすることを認める「宣言」が付いている場合には判決確定前に強制執行の手続を行うことができます。また,判決確定を待ったのは,判決確定前に交渉をして難航したときに,万が一控訴されると時間も費用もかかってしまうため,判決確定まで待つこととしました。

 

しかしながら,これに対する回答は無かったため,やむなく強制執行の手続に進むこととなりました。

 

長くなったので,「貸金回収の実例(後編)」に続きます。

 

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9月 14 2015

完璧な借用書

当事務所では,トラブルになった後の債権回収業務のみならず,トラブルが起こらないようにするため,各事情に応じた借用書や金銭消費貸借契約書,債務承認弁済契約書など,各種の書類の作成も行っております。

 

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このような契約書を作成するのは,後日のトラブルの防止及びトラブルになったときの処理の基準を決めるためにあります。

例えば,お金の貸し借りで言えば,借用書があれば,「借りた」,「借りていない」のトラブルは防げると思います。借りていなければ借用書なんて存在しないですからね。また,返済日や利息が書いてあるはずですので,この点についてのトラブルも防ぐことができます。

さらに,返済に遅れた際の処理(遅延損害金利率の発生や期限の利益の喪失等)を定めておけば,通常通りの返済が無かった場合についても契約書の内容によって処理すれば良いことになります。

 

ただ,どれだけ契約書を完璧に作ったとしても防げないトラブルがあります。それは返済そのものです。

どれだけ,著名な弁護士さんが作成した立派な契約書だろうが,究極的には裁判所が作成した和解調書だろうが,まったく財産が無い人からはお金を回収することはできませんので,こればっかりはどうにもならないこともあります。厳しい言い方になってしまいますが,やはりそのような人に貸す前にしっかり貸すかどうかの判断をするしかありません。

 

なぜ,このようなことを書いたかというと,「回収できないのはどうしても困るので,絶対に回収できる契約書(借用書)を作成してほしい」とのご相談があったからです。その回答としては,「もちろん可能な限り回収しやすい内容で作りますが,最終的には相手の資力によるため,絶対に回収できるというような契約書は存在しないです・・・。」となってしまいます。

 

なお,回収の可能性を上げるためには,契約書の記載も大事ですが,担保を取るということも検討された方が良いかと思います。

実際に,担保を取れるような状況にある方は少ないとは思いますが,身近な人に保証人になってもらうなどして,回収の可能性を上げていくしかないですね・・・。

この担保については,過去に記事を書いておりますので,こちらをご覧いただければと思います。

→ 支払の担保となるもの

 

 

最後に,金銭消費貸借契約証書などの書類作成にかかる費用としては,文字数やページ数に関係なく,原則として一律3万円となっております。「原則」と書いたものの今のところ3万円以外のケースはありませんが,あまりにもページが多くなる時は相談させていただくこともあるかと思います。

 

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