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8月 04 2016

建物明渡しの実例

4:01 PM 家賃滞納

先日,建物明け渡しが完了しましたので,手続の流れを記載いたします。こちらをご覧いただければ,大まかな流れをご理解いただけると思います。なお,手続上重要ではないところについては,万が一の特定を避けるためフィクションが入っております。

 

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1 事案

ご相談いただいたのは,単身者用のアパートで数年に渡って家賃を滞納されており,また日中は常に不在にしているため大家さんも1年以上お会いできていないという方の家賃回収及び明渡しでした。

すでに滞納家賃だけで数百万円をオーバーしており,かつ,相手の方の勤務先等の情報が一切なく家賃を回収できるとは思えない状況でしたので,家賃の回収というよりは早期の明渡しを進めて少しでも損害を減らすということをメインにご依頼いただきました。

 

2 解除の通知(1月上旬)

家賃を滞納しているからといって直ちに明け渡しを求めることはできず,明け渡し請求の前提として賃貸借契約を解除しなければなりません。

賃貸借契約の解除は賃借人の生活の本拠を奪うことになるため,簡単には解除はできないことになっております。とはいえ,今回に関してはすでに数年に渡って滞納しているので,解除については問題ない事案でした。

解除の基準の詳細についてはこちらをご覧ください。 → 賃料未払いの場合の解除の基準

 

また,解除の通知は相手方に届く必要があり,訴訟手続においても届いたことを立証する必要がありますので,通常は内容証明郵便(配達証明付)で送付しますが,これに加えて特定記録でも同内容の書面を送付します。これは,相手方が日中常に留守にしているとのことでしたので内容証明郵便を受け取らないということも十分考えられることから,内容証明ほどの証明力は無いものの,とりあえずいつ相手の住所に配達された(受取ではなくあくまで配達)ことは証明できるからです。

 

3 訴訟提起~判決(2月下旬)

通知には2週間以内に連絡が無ければ訴訟をする旨の記載をしておりましたが,予想どおり連絡はありませんでした。なお,内容証明郵便はやはり不在で返送されてきてしまい,特定郵便だけ配達されていました。

そこで,賃貸借契約書や特定記録の追跡記録などを証拠に訴訟提起しましたが,相手は裁判所から送付される訴状についても受け取りませんでした。訴訟手続は,相手が書類を受け取らないと進められないため,書類の受領(送達)というのは実はかなり大事なことです。とはいえ,住んでいるにもかかわらず受け取らないということを理由に訴訟が進められないというのは不当であるため,相手が間違いなくそこに住んでいるということを立証すれば,現実的に相手が受け取らなくても受け取ったものとして進めるという制度があります。これを「書留郵便に付する送達(付郵便送達)」と言います。

送達についてはこちらをご覧ください。→ 想いよ届け!【書類の送達】

 

今回,相手方は日中は常に不在にしており,しかも自宅の電気も止められているような状態でしたので,電気メーターや部屋の灯りで居住していることを立証することはできませんでしたが,移動に自動車を使っていましたので,深夜と早朝に駐車場を撮影し,自動車の移動状況で住んでいることを立証しました。厳密には,あくまで自動車の移動であって当該部屋に住んでいることの立証ではないのですが,裁判所はこれでOKとのことでした。

結局,裁判の期日に相手方が出廷することはなく,無事,明渡及び家賃数百万円の支払いを命じる勝訴判決が出ました

 

なお,司法書士は140万円を超える請求について代理することができませんが,明渡しと滞納家賃の支払いを求める訴訟の場合は,明け渡しを求める部屋の価値で判断し,家賃の金額は関係ない取り扱いになっています。そして,明け渡しを求める部屋の算定に当たっては,固定資産課税評価額の半額となっておりますので,当該部屋の評価額が280万円以下であれば仮に滞納家賃が1億円だったとしても司法書士が代理することができます

今回は昭和時代のアパートでしたので,部屋の評価額は数十万円であるのに対し,数年分の滞納家賃として数百万円の家賃を求める訴訟でしたが,問題なく私が代理人として訴訟手続しております。

 

4 再度の通知(3月中旬)

強制執行となるとかなりの費用がかかるため,判決に基づき任意の明け渡しを求める通知書を送付し,回答を待ちましたが連絡はありませんでした。

 

5 警察による安否確認(4月中旬)

2か月程度,日中どころか深夜の出入りすら無いような感じであり,かつ,暑くなってきて異臭もするようになったため,最悪の事態も考えて大家さんが警察に安否確認を依頼しました。警察官が中に入ったところ,留守でしたが製造日が新しいパンのごみがありましたので,どうやらまったく人目に付かない時間帯に出入りをされているであろうことがわかりました(異臭は弁当などの残飯でした。)。とりあえず,中で亡くなっていなくてホッとしました。

※この安否確認はたまたま行ったものであり,明渡手続において必要な手続ではありません。

 

6 明渡し及び動産執行の申立て(5月上旬)

まったく連絡が取れないため任意の明け渡しが期待できないことから,明渡し及び室内の動産を差し押さえる動産執行の申立てをしました。なお,訴訟手続と異なり,強制執行に関しては,司法書士は書類の作成はできるものの代理人にはなれないため,強制執行の際には大家さんに立ち会っていただく必要があります。

 

7 明渡催告と動産執行(6月下旬)

 

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本来であればもう少し早く明渡催告ができたはずなのですが,執行官と大家さんとの都合が合わず,申立てから1か月半ほどで明渡催告となりました。

この明渡催告は,対象の部屋に裁判所の執行官が赴き,期限を切って退去するよう催告をするものです。室内に相手方がいれば書類を交付しますが,いない場合は玄関などに貼られてしまい,とても人目について恥ずかしいと思います。

また,この時に,任意に明け渡さない場合に備えて室内の荷物の搬出や処分をしてもらう業者さんに見積もりのために来てもらいます。この業者さんは裁判所に登録(?)されている業者さんから選ぶことができますし,知り合いの業者さんがいればその方にご依頼されても構いません。今回は,過去に大家さんが明渡しで依頼したことがある業者さんがいましたので,この業者さんに来ていただきました。外からでも大量の荷物があるであろうことがわかるくらいの状況でしたので搬出や処分の費用で40~50万円程度かかることも予想できましたが,大家さんの馴染みの業者ということもあり半額以下の見積もりでした。その時に立ち会った執行官もかなり安いということを仰っていたので,明渡における業者さんの選定は重要ですね

なお,鍵がかかっている室内に立ち入るために解錠業者に依頼することもありますが,今回は大家さんが合鍵を持っていましたので解錠業者の費用はかかりませんでした。

 

さらに同時に申し立てていた動産執行については,室内に換価できそうなものはなく,残念ながら動産執行は中止となりました。

 

8 断行(7月下旬)

明け渡し催告から1か月弱の日を断行日と指定され,その前日までに明け渡すよう催告がされていましたが,任意の明け渡しはされませんでした。

そこで,再び執行官に来ていただき断行を行います。断行とは,問答無用で退去させたり室内の荷物などを搬出することとなりますが,その時も留守でしたので荷物だけを搬出することになります。また,断行後に相手が室内に入ってしまうと改めて訴訟からやり直さなければならなくなるため,入れないよう鍵を交換します。

なお,荷物はあくまで入居者のものですので,確実にゴミであるものを除いて勝手に処分をすることはできません。そこで,一定期間室内の物は倉庫などで保管しておき,それでも相手が引き取らない場合は売却することになりますが,事実上大家さんが買い取ることとなりますので,大家さんに買い取っていただいたうえで,業者さんに処分してもらって終了となります。もっとも,大家さんが買い取るとは言っても実際にお金を支払うのではなく,相手に対する債権と相殺処理することになります。

 

9 トータルの費用

今回,私は結局一度も相手の方にお会いするどころか話をすることもできませんでしたので,残念ですが滞納家賃についてはまったく回収できておりません。

したがって,滞納家賃回収の成功報酬はゼロ円でしたが,訴訟手続や強制執行の書類作成報酬などの当事務所の報酬に加えて,裁判所に支払う予納金,荷物搬出の業者さんの搬出処分費用や鍵の交換の費用などの実費もすべて含めると,合計で70万円くらいの費用がかかっております。家賃が回収できれば費用に充当することもできますが,多くのケースでほとんど家賃の回収はできませんので,家賃の回収を図るよりも早期に明け渡しを進めていただく方が結果として損失を減らすことができます。

また,今回は相手の方と最後まで連絡つきませんでしたが,断行まで行ってしまうと大きな費用がかかってしまいますので,可能な限り断行に行く前の時点で,幾ばくかのお金を支払ってでも任意に退去していただくことがベストだと思います。

 

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