5月 10 2016
滞納管理費の回収の実例
先日,滞納管理費の回収がすべて完了いたしましたので,まとめておきたいと思います。
管理会社の支払督促
今回のご相談は,マンションの管理組合さんではなく,管理組合さんから委託を受けた管理会社さんからのご相談でした。
管理会社さんの方ですでに内容証明郵便による督促を行うとともに,直接ご自宅に手紙での督促も行ったそうですが返事は無かったようです。また,たまにエントランスなどでお会いできることがあったようですが,目が合うと逃げてしまい,その後は居留守を使われているようで話し合いはまったくできないようでした。そこで,管理会社さんが滞納者(Aさん)を相手に支払督促の申立てを行いました。
この「支払督促」ですが,以前も記載したとおり,多くのケースで異議が出てしまって通常訴訟に移行してしまうため,私としてはあまり選択しません。
今回もAさんから異議が出たため通常訴訟に移行し,この訴訟から私が代理人として動くこととなりました。
請求の修正等
支払督促は,裁判所においてある定型の用紙に記入するだけで手続を進めることができますが,あまり内容を知らない方が進めてしまうと微妙に請求が漏れていたり,請求する時期が誤っていたりします。
今回も,管理規約では遅れた月から毎月遅延損害金が付く内容になっていましたが,支払督促では支払督促をしたときから遅延損害金を請求することになっていたので,少しですが請求額が少なくなっていました。その他,軽微な修正などをして改めて書面を提出します。ちなみに,すこぶる細かい話ですが,通常の訴訟では,原告が訴状を提出し,被告が答弁書を提出した後は,すべて「準備書面」という書面を提出します。ただ,支払督促が通常訴訟に移行した後に出す書類についてだけ「訴状に代わる準備書面」という書類を提出します。
口頭弁論期日~判決
裁判の期日には,Aさんも出廷し,和解の話し合いがありましたが,具体的な支払い案が示されなかったため和解は成立せずに判決となりました。そして,特に反論もありませんでしたので,無事勝訴判決となりました。
強制執行からの返済
たまたまかもしれませんが,当事務所がご依頼をお受けする滞納管理費の回収の場合,不動産に担保が付いていないか,担保が付いていてもかなり昔の抵当権であるため担保価値が十分ある不動産をお持ちの方ばかりです。したがって,判決さえ取れれば,時間はかかるものの滞納管理費の回収については不動産競売することで間違いなく回収できています。また,管理費の滞納をされる方は騒音や異臭等の問題を起こしているケースが多く,滞納管理費の回収ということはもちろんですが,競売によって強制的に退去してもらうという点も重視して不動産競売を希望される組合さんが多いです。
もっとも,あくまで不動産競売は滞納管理費を回収するための手続ですので,滞納分が支払われた場合は競売を継続することはできません。
今回は判決後に支払いを求める書面を送付したものの回答が無かったため不動産競売に進むために書類の取得を進めていましたが,申立ての直前にAさんより連絡があり,支払日までの利息を含めて全額お支払いいただいたため無事(?)解決となりました。
今後は管理費の滞納が無いことを願うばかりです。
回収割合
上記は,着手金0円プランでご依頼いただきましたので,回収した金額の25%+訴訟費用をいただき,実質的な回収割合(請求額から債権回収費用を差し引いた回収割合)は約65%でした。なお,事後的に管理組合さんは債権回収手続にかかった費用も滞納者に請求して全額支払ってもらったそうですので最終的な自己負担は0だったようです。
過去にも記載しましが,一般的に管理等の金額はあまり大きな金額ではないにもかかわらず,その支払いがされないというのは経済的にかなり厳しい状況にあると思われます。とすると,管理費が3か月程度たまってしまうと,自力での解決は困難になる可能性が高いと思います。また,比較的管理費の督促は緩い傾向にありますので,滞納者も管理費の支払いは後回しにしていることが多いです。ですので,管理費の滞納については1か月の遅れでもかなり厳しめに督促していただき,早急に滞納を解消されるよう進めてください。
ただ,それでも解決が難しい場合は,ぜひ当事務所にご相談いただければと思います。