7月 29 2013
滞納管理費の請求実例②
(3)訴訟提起
少額訴訟を選択し,翌日訴状を提出しました。その後裁判所より期日の連絡があり,提訴日から約1か月後に裁判の期日が入りました。
実は,個人の方が相手の訴訟の場合,この後に問題が起こることがあります。それが,「送達」です。
送達とは,簡単に言うと,裁判関係書類を相手に届けることを言いますが,これがうまくいかないケースが多いこと多いこと。
例えば,留守にしていてたまたま受け取れなかったという方もいれば,故意に受け取りを拒否する方もいますし,もっと言えば,知らぬ間に転居していて届かないということもあります。裁判は必ず相手に訴状等が送達されていないと進められないことになっていますので,送達というのは裁判を行う上で極めて重要な問題です。
ただ,今回に関しては,それまで内容証明郵便など,ちゃんと届いていたのでこの点は心配していませんでしたし,実際に問題なく送達されました。
そして,裁判当日を迎えます。それまでに,何回分割程度であれば和解しても良いという話し合いもしていましたので,出頭さえしてくれれば,十分和解できるだろうと考えていましたが,なんと出頭しませんでした・・・。
相手が反論の書面を出していれば結論はわかりませんが,少なくとも裁判書類がちゃんと送達されており,かつ,反論の書面を提出せず,かつ,出頭しない場合は,すべての言い分を認めたこととなってしまいます(擬制自白)。これにより,まず間違いなく勝訴判決が出ます。仮に反論の書面が提出されていたとしても,管理費等が未払いなのは間違いないので結論は変わらなかったと思います。
ということで,即日判決となり勝訴となりました。
(4)最終通告
さて,いよいよ強制執行が現実味を帯びてきました。
出頭してさえくれれば穏便に(とは言っても裁判はしていますが)解決することができたのですが,裁判所の呼び出しすら無視となると,正直なところ和解は厳しいかもしれません。ただ,それでも和解の希望は捨てたくなかったので,管理会社及び当方から相手に対し最終通告書を送付しました。
その内容は,
「管理費等の支払いがない場合は強制的に家を売却して退去してもらいますよ。」
という内容です。
というのは,
①調査をした結果,勤務先の特定ができなかった。
②預金口座自体はいくつか判明したが,現実問題として預金がたくさんあるとは思えない。
③仮に,今回の滞納分を支払ってもらったとしても,また滞納する可能性が高いので,正直なところ管理組合としてもAさんに退去してほしいと思っている。
④現在のマンションの市場価格は3000万円前後であり,登記簿上の負担は固定資産税の滞納分のみ(おそらく200万円程度)であるため,競売費用を立て替えても十分回収は可能である。
との理由によるものです。
できれば和解したかったのですが,残念ながら最終通告書についても回答はありませんでした。
したがって,不動産競売の手続に移ることとなりました。
(5)強制執行
不動産競売になった場合,少なくとも今回の場合は余剰価値がたっぷりあったことから100%回収できることに疑いの余地はありませんでしたので,給与や預金の差し押さえと比べて回収可能性が高いのがメリットです。
一方,名古屋地裁の場合,申立費用は予納金として70万円以上の費用をまずは立て替えなければならないという点,及び競売が終わるまで1年前後の時間がかかるというのがデメリットです。
もっとも,申立てさえしてしまえば,あとは裁判所の方ですべて進めてくれるため,待っていれば勝手に終わるというのもメリットかもしれません。唯一やることとしては,競売が終わるころにその時点の遅延損害金を計算して債権計算書を提出するくらいですかね。
(6)回収
最終的には申立てをしてから約1年後,裁判所から立て替えた約70万円等も含めて銀行振り込みがあり,訴訟をした時点での滞納管理費は無事全額回収となりました。また,訴訟以降の管理費等についても,競売によって落札した新所有者が全額支払ってくれましたので,管理組合としては滞納開始から競売終了時点までの管理費等は全額回収したことになります(滞納管理費等は,所有者が変わった場合でも新所有者に請求できることになっています(区分所有法8条,7条1項))。
正直なところ,私には理解しがたいこともありました。
というのは,Aさんが話し合いに応じてくれればAさんはマンションを失わずに済みましたし,仮にマンションを売却するにしても競売ではなく普通に不動産業者さんを通して売却した方が手元に残る金額は多かったからです。何より,追われるように出ていくことも無かったはずです。単純に損得では理解できない考えや悩みなどがあったのかもしれません。
なお,そのマンションはいったん競売専門の不動産業者が落札し,1か月ほどかけてリフォームして販売されていますが,まだ新所有者は決まっていないようです。