12月 03 2013
契約違反による賃貸借契約の解除(その2)
前回の続きです。
5 用法違反の場合
用法違反,つまり賃貸借契約時に「住居」や「事務所」として使用目的を決めて賃貸したにも関わらず目的外の使用をした場合です。端的に言えば住居として賃貸したのに飲食店をやっているなどです。
具体的な裁判例としては,住居の一部を教会として利用したり,麻雀店をゲームセンターとして利用した場合に解除が認められています。
もっとも,これも特別な事情があれば解除できないことになります。例えば,住居としてプログラマーの方に賃貸し,プログラマーの方が自宅のパソコンでプログラミングしていた場合,形式上は自宅を仕事場として使っていることになりますが,特に来客もなく改装等もしていないのであれば解除することは難しいと思います。
なお,当初そのような契約をしていたとしても当事者が合意すれば問題ありません。
実は,私が約10年前に開業したときは事務所を借りるまでの数か月程度ですが自宅である賃貸マンションの一室を事務所として使っていました。その際,大家さんとの間で事務所として使う旨の覚書を作成しておりましたので問題になることはありませんでした。
6 無断改装
例えば,賃貸人の許可なく壁をぶち抜いて,2部屋を1部屋に改装したりすると,契約違反で解除できることになります。
これもまた特別な事情があれば解除できないことになりますが,その具体例としては,便座を変えるだけのウォシュレットを設置したり,神棚を作る程度であれば退去する際に容易に原状回復ができますのでこれをもって解除するのは難しいと思います。
7 近隣住民に迷惑をかけている場合
迷惑行為禁止の特約があれば完璧ですが,仮に迷惑行為をした場合は解除する旨の特約が無かったとしても迷惑行為が甚だしい場合にはそれをもって解除することができます。
迷惑行為の具体例としては,テレビ,ピアノなどの騒音,部屋の中で騒いだ際の振動,ゴミを放置する等の不衛生な行為などです。
ただし,迷惑行為はあくまで程度問題であるため,迷惑行為があれば必ず解除できるというわけではありません。人が生活している以上,多少の騒音,震動,生活臭などはあるからです。したがって,この点については,上記の通り「迷惑行為が甚だしい」という場合に限定されるため,ケースバイケースになってくると思います。
8 まとめ
以上のとおり,いくつか契約違反等による解除を記載しましたが,共通するポイントは次の通りです。
①原則として催告が必要
賃料の未払いにしても,ペットの飼育にしても,まずは支払いを求める,ペットの飼育を止めるよう求めるといった催告が必要です。催告をしたにも関わらずそれに従わなかったときに初めて解除という話が出てきます。
②特別な事情がある場合は解除は認められない
賃料未払いではなかなか想定しがたいですが,いずれの場合でも「そんな事情があるのであればしょうがないよね」というような特別な事情があれば形式的に契約違反だったとしても解除は認められないことになります。ただし,特別な事情があることは賃借人が主張・立証しなければなりませんのでハードルは高いです。
③一番良いのは合意解除
今回いくつか例示したものは最終的に裁判になった場合に勝てるか負けるかという点を記載しています。しかしながら,裁判をするとお金も時間もかかり,賃貸人にとって何もメリットはありません。
そうであれば,賃借人と話し合いをもって,お互い合意のもと解除するのがベストです。したがって,いきなり法的手段をとるのではなく,まずは「話し合い」。これに尽きると思います。
とはいっても,そう簡単に解決しないから裁判があるんですけどね・・・。