9月 18 2021
未払い賃料を保証人から全額回収。でも今後は注意。
賃貸借契約を締結される際、最近だと家賃保証会社との契約が必須になっているところもあり、そのような場合には個人の保証人は無しで契約できるとことも多いかと思います。
一方で、昔ながらのところだと親族や知人を保証人にしてもらい、賃貸借契約を締結することもまだまだ多く存在すると思います。
先日、賃借人本人が支払わらず、数年分の未払い賃料の支払いを求めて賃借人本人及び保証人も合わせて訴えを提起し、最終的には保証人から数年分の未払い賃料全額を回収することができました。
従前であれば特筆すべきことは特に無いのですが、法律改正によって変わった部分もありますので、この点についてまとめたいと思います。
1 従前の契約は青天井
上記のとおり賃貸借契約を締結する際に保証人をつけてもらった場合、賃借人本人が賃料を支払わない場合は、保証人に対して全額請求することができます。また、賃料に限らず、明渡しの際の原状回復費用なども請求することができますし、賃貸借契約の中で特別な定めがない限り、金額も関係なく全額請求することができました。
また、通常は賃貸借契約は短いと1年程度、長くても4年程度になっていることが多いと思いますが、ほとんどのケースで契約期間満了後も自動的に更新するような内容になっていると思います。その場合も、特に保証人と改めて契約をしなくても、引き続き請求できるような内容になっております。
2 民法改正
昨年(令和2年)4月1日に民法の一部が改正され、保証人に関することについて大きく変更されました。
大きな枠組みとしては、こちらにまとめております。
また、賃貸借契約の保証に関する部分については、こちらにまとめております。
端的にまとめると、
①根保証契約に関する保証人が保証すべき金額の上限(極度額)を定めなければならず、その定めがない場合は保証自体が無効になってしまう。
②極度額を定めた場合は、極度額を超える金額は保証されない。
③賃借人や保証人が死亡した場合には、その時点で保証契約が終了し、その後の賃料等は保証されない。
④賃貸借契約が自動的に更新される場合は、従前の保証契約は有効ですが、合意による更新(更新に当たって再度書類を作成する場合等)については、改正後の民法が適用される。
となります。
このうち、一番重要なのは①であり、定めが無ければ保証人自体が不存在となってしまいますので、かなり大きな問題になってしまいます。
また、④については現在契約中のすべての契約に関わってくる話ですので、すぐに問題にはならないかと思いますが、自動更新ではない場合は改正後の民法が適用されますので、更新の際に極度額を設定しなければなりません。
最初に記載した保証人から回収した事案については、令和2年4月以降に更新されているものの更新に当たって特に書面を交わしておらず自動更新だったため、保証人に対して数年分の未払い賃料を請求することができました。
このように、更新によって保証人に対して請求できなくなる可能性もありますので、この点は十分確認をしていただき、お取引のある管理会社や仲介会社にご確認いただいた方が良いと思います。