8月 06 2021
相手が偽名だったケースで全額回収
先日、相手が偽名を使っていた事件について、無事全額回収できました。
もちろん、すべての事件で回収できるというものではありませんが、このような回収もあるということでまとめたいと思います。
ただし、実際の事件の特定を防ぐために、下記の内容にはフィクションが入っております。
1 前提
ネットで知り合った女性(A子さん)に、病院の治療費や両親の葬儀費用、生活費などの名目でお金を貸していました。ただ、A子さんは過去に債務整理を行っていて銀行預金が持てなくなっていることから、姉であるB子さんの名義の口座に送金してほしいとのことで、依頼者はB子さん名義の口座に送金していました。
また、A子さんの自宅の住所を聞いており、亡くなった両親名義の自宅になっているとのことでした。
その後、返済期日になっても返済されないため、話し合いのために会う約束をしても、子どもの病気だったり、急な仕事だったりで、直前にドタキャンされてばかりで、返済期日経過後には一度もA子さんと会えていませんでした。
2 当方で執った手続
(1)A子さんの住所の調査
A子さんのお名前と住所で住民票の調査を行いましたが、存在しませんでした。そこで、B子さんのお名前で住所の調査をしたところ、住民票を取得することができました。
(2)自宅への訪問
B子さんの住所は確定しましたので、B子さんの自宅を訪ねてみました。すると、B子さんは不在だったものの年配の方が対応され、B子さんは外出していてすぐには戻ってこない旨の回答がありましたので、少なくともB子さんがここに住んでいることは分かりました。また、対応された方はB子さんの母親でした。
さらに、A子さんについても質問してみましたが、そのような人は知らないとの回答でした。
とりあえずは事情を知っているであろうB子さんと話をしてみないと始まらないので、私の名刺をB子さんの母親に渡し、できればご連絡をいただきたい旨をお伝えいただくこととなりました。
そもそも「債務整理を行っているため銀行口座を持てない」との言い訳があったようですが、実際にはそのようなことはなく債務整理をしていても口座の開設は可能ですし、「亡くなった両親名義の自宅に住んでいる」とのことでしたが、実際にはB子さんの母親が対応されていましたので、A子さんはかなりの嘘をついており、A子さんの姉とされているB子さんが実はA子さん本人ではないか、つまり「A子」というのはB子さんの偽名でないか、との疑いが強くなりました。
(3)B子さんからの連絡
その後、B子さんから当事務所に対して、連絡がありました。当方としては直球で「A子さんというのはB子さんあなたではありませんか?」と確認したところ、意外にもその事実をすんなり認めました。
(4)分割弁済の和解
全額一括での返済は難しいとのことで、分割弁済の和解をすることとなりました。また、A子さんなのかB子さんなのかも確定しておかなければなりませんので、直接お会いして免許証などを確認し、さらに家族構成や勤務先等を聞いたうえで和解書にご署名等をいただくこととなり、実際に確認したうえで和解しました。
(5)和解の不履行及び法的手続
残念ながら一度も和解に基づく返済をしていただくことができず、訴訟を行いましたが一切対応されることなく勝訴となりました。
その後、勤務先の情報を得ていたため、給与を差し押さえるための強制執行の申立書を当方で作成して提出したところ、無事給与の差押えができました。
給与の差押えは、いわゆる手取り給与の25%しか回収できませんので、満額回収するのに3年近くかかりましたが、先日無事全額を回収することができました。
今回は、「A子」という名前は偽名であったものの、実際の住所は本当であったことや、姉の名前と言っていた「B子」が実際はA子さんの本名だったため人物の特定ができましたが、虚偽の住所や名前だった場合には回収は難しかったと思います。
以上、相手方が偽名だった場合の事案でした。