6月 03 2021
勤務先の同僚への請求
「以前同僚だった人にお金を貸したが、約束の日には返してもらえず、相手方が転勤になってからは連絡も取れない」というご相談から始まりました。
ご相談いただく内容の中に、同僚への貸金というのは結構あるものの、「会社に迷惑を掛けたくない」、「大事にしたくない」等の理由で実際に手続をされないケースもあり、また、同僚であるがゆえに借用書などの証拠がないケースも多いです。
さらに、それほど多額の貸金ではないことも多く、費用倒れとまではいかないものの法的手続きを行うとあまりメリットがないケースもあります。
上記のご相談に関しては、同じ会社ではあるもののすでに転勤しているため職場では会うことが無いため人間関係的にはまったく問題ありませんでした。加えて、借用書を取っており、最大の良かった点としてはともに大きな会社にお勤めだったため任意での回収ができなくても、最終的には給与を差押えて回収できる見込みが高いものでした。
ただ、貸金の額があまり大きくなかったため、費用対効果が低い旨の説明をさせていただきましたが、「お金ではなく、逃げたことが許せない。最悪赤字になっても構わない。」ということでしたので、最終的には強制執行まで行うことを前提に手続を開始いたしました。
こちらについては、次のような流れで解決しております。なお、事件の特定を防ぐため、一定程度のフィクションが入っています。
1 住所の調査及び督促の通知
これは全件に共通することですが、通知書を送付する前に住所の確認を行い、その住所宛に督促に関する通知書を発送します。その通知書の中には、「〇月〇日までに支払いがない場合は法的手続きを執る」旨の記載がされており、それまでに連絡が来るケースもたくさんあります。
ただ、本件に関しては期限までに連絡がなく、相手方が遠方だったため訴訟を提起しました。
2 訴訟及び判決
証拠書類として借用書がありましたので反論されても十分勝訴できる内容でしたが、相手方は裁判所の呼び出しもすべて無視しており、すぐに勝訴判決が出ました。
3 強制執行の申立て
上記判決には仮執行宣言が付されていたため、判決の確定を待つことなく給与を差し押さえる旨の強制執行の申立てを行いました。
4 競合
給与の差押えをしたのが、1人であれば手取り給与の25%を毎月支払ってもらうことができます。
しかし、2人以上が差し押さえた場合、債権額に応じて配当を受けることになります。この複数名が差し押さえている状況を「競合」と言います。
今回の相手方は自動車ローンなども滞納していたようで、差押えが競合してしまいました。これにより、数か月に一度の割合で配当を受けることになります。
5 全額の回収
実は、上記の手続開始は平成時代に始まったものでしたが、何度かの配当を経て最終的には回収することができました。
当初のスタートは「お金ではなく、逃げたことが許せない。最悪赤字になっても構わない。」ということで、費用対効果は度外視で手続を進めさせていただきましたが、当事務所の報酬等をいただいても、貸金の半分程度はお手元に返ってきています。逆に言えば、手続をしても半分しか返ってきていないということですので、果たしてこれで良かったのかは分かりませんが、何はともあれ赤字になることなく手続が終えられて良かったです。
今回のポイントは、
①同僚とは言え、転勤により人間関係を気にする必要が無かった。
②借用書があった。
③大手企業にお勤めだったため、強制執行での回収可能性が高かった。
の3点にあると思います。もちろん、これらの条件を満たしていなくても回収できないことはありませんが、特に②と③は他のご依頼においても重要です。
以上、勤務先の同僚への貸金請求についてでした。