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5月 27 2021

駐車場代の滞納で不動産を失う…

8:00 PM 家賃滞納

先日、駐車場の滞納による、賃料の回収及び明渡し手続が完了いたしました。

約1年に渡る手続きとなりましたが満額以上の回収ができ、最高の結果になったと思います。すべてのご依頼がこのように上手く行くわけではありませんが、こういうケースもあるということで記載してみたいと思います。ただし、事件の特定を防ぐため、フィクションも入っています。

 

 

1 未払い賃料の請求及び明渡の催告

 

賃貸借契約に限った手続ではありませんが、賃料未払いを理由として賃貸借契約を解除するためには、未払い賃料の請求及び支払いがない場合は契約を解除する旨の催告をする必要があります(民法541条)。

さらに、賃貸借契約における特殊事情として、一般的には1か月分の延滞では解除はできず、最低でも3か月以上は滞納していないと解除は難しいとされています。

詳細はこちら → 賃料未払いの場合の解除の基準

 

今回は、3か月どころか年単位で延滞していたため、この点はまったく問題ありませんでした。

 

2 訴訟提起及び判決

催告をしたものの反応は無かったため訴訟を提起しました。さらに、相手方は裁判所の呼び出しに応じることは無く裁判を欠席したためすぐに勝訴判決が出ました。

なお、賃貸借契約書に、「契約解除後の賃料相当損害金は通常の賃料の2倍になる」旨の規定があり、こちらも認められました。つまり、賃料が仮に5万円だった場合に、契約解除後も明け渡しをしない場合は毎月10万円を請求できることになります。

 

3 明渡しの強制執行

住居の明渡しに関する強制執行は、生活の本拠を強制的に奪うことになるため慎重に進められるのですが、今回は駐車場の明渡しであったため初回の期日で明渡しが完了しました(ただし、一定期間に限り自動車を取りに来た場合は引き渡せるよう保管をしました。)。

駐車してあった自動車は数年前に車検が切れており、執行官からは無価値と判断されたため、保管期間経過後はこちらで処分して良いこととなりました。

自動車の処分については無料で引き取ってくれる業者さんがいるため、こちらについては費用を気にする必要はあまりなく、裁判所に納める強制執行の費用の数万円だけで済むこととなります。

 

4 執行費用額確定処分

あまり大きな金額ではありませんが、それでも数万円の費用がかかるため、自動車の明渡しに関する費用を確定するための手続を行います。これをしておくと、相手方の財産を差し押さえたときに、明渡しの強制執行に関する費用も回収することができます

 

5 不動産競売の申立て

実は訴訟を行っている時点で、相手方には相続で取得した不動産があることを突き止めていました。また、税金の滞納による差し押さえが入っており、すぐには売却されないであろうこともわかっていました。

これを受けて、知り合いの任意売却等を行う不動産業者に相談したところ、税金の滞納分を差し引いても全額回収できる可能性が極めて高いということで不動産競売の申立てを行いました。

不動産競売は、申し立てをする時点で70万円以上の費用を立て替える必要がありますし、申し立てをしてから回収できるまでに半年以上の時間がかかってしまいますが、資産価値さえあればかなり高い確率で回収できるため、不動産を見つけたときはすぐに依頼者に連絡しました。また、すべてではないものの70万円以上の費用も大部分は回収できますので、実質的な費用負担はそれほど大きくありません。

 

6 開札直前での任意売却

不動産競売の手続が着々と進んでおり、すでに入札も始まっていました。あと数日で開札というタイミングで、とある不動産業者が買い取り、全額を支払うので差し押さえを取り下げてほしいとの連絡がありました。これを受けて、上記のとおりの裁判所に納めた費用、明渡しの強制執行の費用、滞納していた賃料、さらには解除から明渡しまでの2倍の賃料相当損害金に至るまで完全に回収し、競売は取り下げました

 

 

当初は、未払いの賃料の回収はかなり難しいということで手続が始まっており、数十万円の赤字になることを想定してスタートしたのですが、賃料どころか賃料相当損害金まで回収できたことによって、当事務所の費用を控除しても80万円以上のお金が手元に入りましたので手続としては大成功だったと思います。

ところで、駐車場の賃料となると通常のアパートやマンションと比べるとそれほど大きな金額ではありませんので、滞納が年単位になったとしても100万円単位にはなりません。そんな金額なのに、相手方はなぜ不動産を失うまで放置していたのか今でも謎のままです。

 

最後に、訴訟手続や相手方との交渉は司法書士の代理権の範囲内ですが、明渡しの強制執行や不動産競売の申立てについては書類作成のみでの関与となります。このうち、明渡しについては私は代理人ではありませんので、賃貸人(依頼者)の方に立ち会っていただく必要がありますが、不動産競売は申立てをしてしまえばあとは裁判所が手続を進めてくれるので書類作成だけでも特段不都合はありません。

 

以上、未払い賃料の回収についてでした。

 

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