4月 07 2020
風俗店勤務の方からの回収
同時に2人の方に対する個人的な貸金の回収のご依頼をお受けしたところ,2人とも風俗店勤務の方でした。
一般論として,風俗店勤務の方は身元がはっきりしていない方が多く,場合によってはご住所どころかお名前(本名)すらご存知ないというケースもあり,このような場合にはなかなか回収が難しいのが実情です。
今回の依頼者については2人とも免許証の画像を保存していたため,回収することができました。
事件の特定を避けるため多少のフィクションが入りますが,回収の経緯を記載いたしますので,参考にしていただければと思います。
1 Aさんに対する請求
(1)依頼者がAさんに対して貸し付けた金額の3割程度は任意に返済されていたものの,残る7割の返済をしないまま連絡不能となっていました。
(2)残されていた免許証の画像からAさんの現在の住所を調査すると一軒家に転居しており,夫やお子さんなどご家族と一緒に暮らしていることが分かりました。そこで,当該住所宛に内容証明郵便にて督促状を郵送したところ連絡があり,完済するまでの利息を付加したうえで20回分割での和解が成立しました。
(3)その後,一度も遅れることなく分割弁済があり,無事完済となりました。
驚くほどスムーズに解決したのですが,やはり仕事の内容的にご家族に知られることは避けたいはずであり,そうなると訴訟などの法的手続を執られると困ることがスムーズに解決した要因かと思います。
なお,私どもが相手方の家族に対して請求したり,相手方の仕事の内容などプライバシーに関する情報を相手方の家族や勤務先等の関係者に対して通知することはありません(ただし,家族が連帯保証人になっている場合は請求します。)。
2 Bさんに対する請求
(1)依頼者がBさんに対して貸し付けた金銭は,1円も返済されないまま連絡不能となりました。
(2)そこで,Aさん同様現在の住所を調査したところ住所は変わっておらず,その住所に対して内容証明郵便にて督促状を送付しましたが,不在で返送されてきてしまい,実際にそこに住んでいるかどうかが分からない状況でした。
(3)その後も連絡を試みましたが連絡が取れないため悩んでいたところ,依頼者が,Bさんが別の風俗店で働いているという情報を入手したため,当該店舗に対して手紙を送付しました。当該店舗からは,「少し前にBさんは退職している」との回答がありましたが,その際に新しい住所の情報を入手することができ,再度新しい住所に督促状を発送しました。その督促状については受け取っているためそこにBさんが住んでいることは分かったものの連絡はありませんでした。
(4)任意での交渉は難しいと判断し,訴訟を提起いたしました。訴状の送達は問題なくできましたが,Bさんからは反論もなく出廷もしませんでしたので,全面勝訴となりました。
(5)Bさんの財産はまったく把握できていませんでしたので,Bさんの自宅に動産執行を行いました。これは動産執行自体で回収することは難しいものの,裁判所の執行官がBさんに会えれば,こちらに連絡するよう伝えてもらえる場合があるからです。この作戦は無事奏功し,ついにBさんから連絡がありました。
(6)Bさんは,これまでのことについて謝罪し,完済までの利息を付加したうえで分割にて全額支払う内容で和解が成立いたしました。
(7)その後の分割弁済は,途中で何度か遅れることはありましたが事前に遅れる旨の連絡があり,また転居や転職した際にも随時報告があるなど,当初とは打って変わって誠実な対応でした。そして,最終的に無事完済となりました。
差押えるべき財産を把握しておらず,訴訟をしても回収できないリスクがありましたがなんとか無事解決できて良かったです。中には動産執行をしても連絡がない相手方もいますので,解決できたことは幸運であったと思います。
3 まとめ
このように,請求する相手方が風俗店勤務の方でも話ができれば全額回収できるケースも多々あります。ただ,最初に記載したとおり,連絡が取れないどころか住所やお名前がまったく分からないとなると回収するのは極めて難しいのもまた事実です。
ですので,貸さないというのが一番良いのですが,どうしても貸さなければならないような場合には,最低限相手方の住所とお名前だけは免許証や保険証などの公的な書類で確認するようにしてください(私ども司法書士ではできませんが,弁護士さんにおいては携帯電話の番号が分かれば住所が調べられる場合もあります(弁護士会照会)。)。