1月 17 2020
消滅時効に関する改正
債権回収をするに当たって,当然確認する点としては消滅時効です。
令和2年4月1日から施行される民法の改正に当たり,時効に関する点も改正されることとなり,中には用語自体も変わったりしているので,まとめておきたいと思います。
消滅時効とは
以前この点についてまとめておりますので,こちらをご覧いただければと思います。
改正の内容
1 消滅時効の期間を一律に
時効によって権利が消滅するための期間は,原則として10年になります。ですので,友人にお金を貸した場合,返済予定日から10年経過すると時効になってしまいます。
これに対し,銀行が融資をしたように,商売としてお金を貸した場合には5年で時効になってしまいます。現実的に銀行ではあまりありませんが,消費者金融や信販会社からの借金について,5年が経過したことで消滅時効の通知を送ることが結構あります。
さらに,債権の種類によっても時効の期間が個別に定められており,工事の請負代金は3年間,弁護士の報酬は2年間,飲食代(いわゆる「ツケ」)は1年間というようにややこしい規定になっておりました。
今回,この短期消滅時効について一律に「権利を行使できると知ったときから5年間(もしくは権利の行使ができるとき10年間)」に改正されます。
したがって,今までは飲み屋のツケは1年支払わなければ時効となりましたが,改正後は5年間となりますので,飲食店の経営者や工事業者としては請求できる期間が長くなり良い改正ということになりますが,個人間の貸し借りの場合は5年になってしまいますので良くない改正ということになります。
なお,不法行為に基づく損害賠償請求は基本的に従前どおりとなりますが,生命身体に対する侵害については「損害及び加害者を知ったときから3年」だったものが「損害及び加害者を知ったときから5年」になりました。
2 用語の変更(更新と完成猶予)
債権者としては時効が完成してしまっては困りますので,債権者側から時効の進行をリセットする「中断」という手続きがありました。具体的には訴訟を提起したり,債務者に債務の存在を認めてもらう(債務承認)と方法です。
この「中断」が「更新」になりました。文字として,中断だと一旦停止というニュアンスがありますが,中断はリセットという意味ですので,更新の方がより分かりやすいかと思います。
また,一時的に時効の進行をストップさせる「停止」という制度がありました。これは,大地震などが起こり,現実的に時効の中断ができないようなときには,地震が収まってから2週間は時効が完成しないという制度です(民法161条)。この停止も「完成猶予」という用語に変わり,期間も3か月に伸びました。
具体的に説明させていただくと,令和2年12月31日の経過をもって時効が完成してしまう場合に,令和2年11月30日に債務者が承認して時効が更新された場合は改めてこの日から5年が経過するまでは時効が完成しないことになります。
また,同じ状況で令和2年11月30日に地震が起こり,令和3年1月10日に影響が無くなった場合には,ここから3か月が経過するまでは時効の完成が猶予されることになります。
3 改正の影響を受ける債権
民法が改正されるのは今年の4月1日からですが,前日までに発生した債権については従前のままとなります。
ですので,令和2年1月17日に発生した個人間の貸し借りに関しては,5年ではなく10年ということになります。