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8月 08 2018

公示送達が無効に!

6:11 PM 全手続共通

公示送達が無効になるという興味深い事件がありましたので,記事から分かる範囲で解説し,まとめておきたいと思います。

 

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公示送達とは

 

公示送達については何度か触れておりますので,詳細については,こちらをご覧いただければと思います。

→ 想いよ届け!【書類の送達】(平成25年8月29日)

→ 公示送達の訴訟(平成26年2月14日)

→ 付郵便送達と公示送達(平成30年4月25日)

 

すごく簡単にまとめると,

(1)相手方(被告)が行方不明で裁判に関する書類が届かない

(2)裁判所の掲示板に呼出状を貼り,2週間経過すると相手に届いたことになる

(3)付郵便送達と異なり勝訴するためには証拠が必要

というものです。

 

相手の住所が分からないと裁判ができないとなると訴える側(原告)にとって酷な結果になってしまいますので,相手(被告)が行方不明である場合にはやむを得ない手続かと思いますし,裁判所としてもしっかり証拠調べをしたうえで判決を出しますので,必ずしも公示送達だからと言って原告勝訴になるわけではなく,被告に酷すぎる結果になるとも限りません。

もっとも,訴訟を提起する以上,証拠があることがほとんどですので,現実的にはほぼ原告が勝訴するかと思います。

 

今回の事件では

本日,こんな事件が報道されました。

 

→ 11年前の確定判決、異例の取り消し…東京高裁(読売)

 

以下,記事の一部を引用いたします(青字部分)。

2007年8月に確定していた民事訴訟の1審判決を取り消していたことがわかった。1審の裁判所が、被告の住所が判明しているにもかかわらず訴状を郵送せず、提訴されたことを掲示板に貼り出す「公示送達」の手続きを経て審理に入っていたことが問題視された。

(中略)

民事訴訟は、訴状が被告の手元に届いた段階で始まるとされ、送達先は原告側が確認する必要がある。男性が女性の住所地を調べたところ、表札もなく、居住が確認できなかったため、「女性は無断で引っ越した」と判断。同年6月、同区役所から取得した女性の住民票(除票)を同支部に提出し、公示送達を申し立てた。

除票には女性の転居先の住所が記載されていたが、同支部はこれを見落として男性の申し立てを認め、訴状が提出されたことを示す書面を敷地内の掲示板に貼り出した上で、同年7月に第1回口頭弁論を開いた。女性が出頭しないまま、同支部は男性の請求を認める判決を言い渡し、同年8月に確定した。

<引用終わり>

 

今回の事件では,公示送達が無効と判断されていますが,これは完全に裁判所のミスかと思われます。

記事によると,原告の男性は弁護士さんに依頼せず本人訴訟で進めています。原告は被告の住所を調べたが本人の居住が確認できず,除票を提出したうえで公示送達の申立てをしたそうです。

私どもがご依頼をお受けした場合も同様の状況にはよく遭遇します。この場合,裁判所から被告の住所の調査を指示されるため,近隣住民の方や管理会社などにお話しを伺ったり,夜に行って電気が付いていないかなどを確認します。この調査をする場所は基本的には住民票の場所であるため住民票を取得しますし,仮に転居しているのであれば除票が発行され,除票に記載されている転居先を調査することになります。

今回の記事によれば,除票に転居先の住所が記載されているとのことですので,私であれば当然ながら転居先の調査を行いますが,原告は本人訴訟であったため除票の記載にはあまり詳しくなかったものと思われます。

したがって,公示送達の申立てを受けた裁判所が原告男性に指示をして,転居先の住所を調査させるべきだったにも関わらず,それをしないまま公示送達をしてしまっているので無効という判断になっているようです。

 

具体的な手続

 

詳細が書かれていないため推測になりますが,被告の女性はもともとの裁判に対して控訴していると思われます。

というのは,控訴は判決を受け取ってから2週間以内に申し立てなければなりませんが,公示送達での送達は無効であるため,被告女性は未だ適正な送達で判決書を受け取っていない状況にあります。したがって,いつまで経っても2週間は経過しないことになり,控訴ができるのだと思います。

そして,当該控訴は有効な控訴として扱われ,今回の判決に至っています。

また,最近原告が提訴した訴訟については,恐らく二重起訴の禁止に該当し,却下されることになるのではないかと思われます(民事訴訟法142条)。

 

消滅時効はどうなるのか

 

上記のとおり私としては裁判所のミスであるため原告男性は悪くありません。ただ,すでに時効期間である10年が経過していますがこれはどうなるのでしょうか。

この点,消滅時効は訴え提起の時に中断することになっています(民法147条1号)。本件訴訟は未だもって係属中となりますので,時効も中断したままということになります。

また,東京高裁はさいたま地裁の判決を取り消して,さいたま地裁に差し戻しています。ということは,結局のところ改めて1審の審理が始まるのであり,必ずしも被告である女性が勝つとは限りませんので,原告がしっかり立証すれば改めて原告勝訴の判決がなされることは考えられます。

 

このような事件はなかなか無いのですが,上記のとおり私としては頻繁に公示送達の申立てを行っておりますので,今後もしっかり調査をしなければならないと改めて肝に銘じておきたいと思います。

 

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