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1月 16 2018

書類が届かない場合の法的効果や対処など

3:29 PM 全手続共通

ご依頼をお受けして,相手方に対して様々な書類を送付することがあります。

分かりやすいところだと,貸金や家賃を支払ってもらえないので督促の手紙を出したり,逆に債務者側だと債権者に対して消滅時効援用の通知書を出したりします。

また,話し合いでは解決せずに訴訟になった場合,裁判所から書類が相手方に送られます。

 

このように書類でのやり取りというのは結構ある訳ですが,相手に対してこちらの意思が届いたときに法律上の効果が生じる場合,本当にこちらの意思が相手に伝わっているのか(書類を相手方が読んでいるか),その前提として相手に書類が届いているのかというのは重要になります。

 

今日はこの点についてまとめてみたいと思います。

 

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通知が必要なもの

上記のとおり,相手方に対して何らかの通知を行うことがありますが,ご依頼をお受けした場合に必ずしもすべてにおいて通知しなければならないものではありません。

例えば,平成29年12月31日までに借金を全額返済するという内容でお金を貸した場合,本日時点ですでに期限は経過しておりますので,督促の通知をしなくてもいきなり貸金の返済を求める訴訟を起こすことは可能です。ただ,弁護士や司法書士といった代理人から督促を行うことですんなり支払ってくれることも多々ありますので,いきなり訴訟を提起することは少なく,まずは督促することが多いです。

 

一方,相手に対して通知を行うことによって完了したり,通知をすることが条件(要件)になっていることがあります。

 

通知によって解決するものの例としては,「時効の援用」です。

一定期間借金の返済をしていない場合,消滅時効の援用を行うことで借金が無くなります(民法167条)。この「援用」とは,時効の成立によって利益を受ける人が不利益を受ける人に対して,「時効の利益を受けます。」ということを伝えるものであり,これによって初めて時効の効果が生じることになります(民法145条)。援用は相手に伝われば良いので,直接会って口頭で伝えても,電話やLINEで伝えても,書面で伝えてもすべてにおいて効力が生じますが,後でトラブルになることを防ぐために書面で行うことがほとんどだと思います。

つまり,借金に関して時効が完成している場合は,相手方に通知が届けば借金の支払義務が無くなりますので,基本的にはそれで解決します(ただし,時効中断事由があるなど,解決しないケースもあります。)。

 

通知をすることが条件になっているものの例としては「履行遅滞による解除」です。

例えば,賃料が未払いになっていて賃貸借契約を解除しようとしても,いきなり契約の解除をすることはできず,「家賃が遅れているのでいついつまでに支払ってください。」という通知(催告)をしなければなりません民法541条)。それでも家賃が払われない場合に,初めて解除することができます(ただし,例外があります。)。

 

通知の方法

直接会って意思を通知できれば良いのですが,通常は相手方は離れた場所にいるため,手紙や電話で意思を伝えます。このとき,後にトラブルにならないよう電話よりは手紙を選択しますし,手紙も内容証明郵便など記録として残る方法で通知をします。もちろん,電話を録音することでトラブルを防ぐことができますが,もし訴訟になった時に録音したものを証拠にするのは大変(録音の内容を反訳する必要など)なので書面の方が良いと思います。

 

何をもって相手に意思が届いた(通知した)ことになるのか

相手方が離れたところにいる場合,法律では相手に通知が届けば良いということになっています(民法97条)。

つまり,手紙が相手の家に届けば,実際に手紙の封を切って読んで内容を理解することまでは必要ないということになります。ですので,普通郵便でも相手の家に届けば通知としては問題ないことになります。ただ,普通郵便だと実際に届いたかどうかの確認ができませんし,どのような内容が書いてある書面が届いているのかを証明することができないので,相手方に通知が届いたことを立証しなければならないときは,内容証明郵便(配達証明付き)で手紙を送ることになります。

 

では,内容証明を相手方が受け取らなかった場合はどうなるでしょうか。

この点,受け取らなかった理由によって結論が異なるとされております。

 

まず,相手方は自宅にいたものの受け取りを拒否した場合は,基本的には通知が届いたことになります

これは,相手方が手紙を読もうとすれば読める状況にあったわけですから,届いたことにしても相手方に酷ではありません。

 

一方,相手方が海外旅行などに出ており,不在だったため受け取れなかった場合は通知が届いたことにはなりません。現実的に相手方は内容を知ることはできないのですから,それで通知が届いたことにされるというのはさすがに酷です。ただし,毎日自宅には戻っており,不在通知が入っているにも関わらず敢えて再配達を依頼しなかったような場合には受領拒否と変わりませんので届いたことになる場合もあります(ケースバイケースです。)。

 

では,相手方の家族が受け取った場合はどうなるかというと,これは届いたことになります

家族が受け取っているのであれば,通常はは家族が相手方に知らせることができますので,実際に相手方が読んでいなくても酷ではありません。ただし,相手方が行方不明になっているなど,家族も相手方と連絡が取れないような場合には届いたことにはなりません。

 

配達できない場合の対処法

 

まず,相手方行方不明の場合は,現実的に知らせることは困難ですので,公示による意思表示民法98条),訴訟であれば公示送達によって進めることになります。

公示送達についてはこちら → 想いよ届け!

 

次に,受け取り拒否の場合は,届いたということで進めてもらえれば大丈夫です。

 

最後に,不在で返却された場合ですが,敢えて受領しないのか,仕事が忙しくて受領できていないのか分からないため,通常は特定記録でも内容証明郵便と同内容の書面を発送します。

特定記録とは,書面の内容は証明してくれませんが,送付先のポストに入れた日時は証明してくれるものです。これにより,内容証明郵便は受け取ってくれなくても,特定記録は勝手に投函しますので,相手方が海外旅行等などで長期の留守で無い限り相手方に通知されたことになります。もちろん,配達されていても,相手方が海外旅行や服役などの理由で実際に受け取ることが不可能である場合は通知の効力は生じませんが,それは相手方が主張すべき問題ですので,とりあえずは通知は完了しているものとして進めます。

実際に,内容証明郵便を受け取らない方はかなり多いですが,受領拒否はほとんどなく,不在が大多数を占めます。したがって,訴訟になったときには特定記録の配達日時の記録を証拠として提出することが多々ありますが,少なくとも当事務所においてはこれで問題になったことは一度もありません。

 

ということで,相手方に書類を送る時は相手に届かないと何も意味が無いので,保険の意味でも内容証明郵便で送る時はまったく同内容の書面を特定記録で発送された方が良いかと思います。

 

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