11月 22 2017
断行前の明渡し
土地や建物の明渡しの強制執行を何度か行っておりますが,これまではすべて断行まで行って明け渡しを終えていましたが,今回は無事断行前に明渡しが完了しました。
そもそも,明渡の強制執行は,
明渡の催告
↓
明渡し猶予期間(約1か月)
↓
明渡しの断行(強制退去)
↓
目的外不動産の処分
という流れになります。
したがって,明渡の強制執行と言っても,借主はいきなり強制的に明け渡しをしなければならないのではなく,明け渡しを催告してから1か月程度の猶予時間がありますのでその間に自ら退去してくれれば業者が室内に立ち入って強制的に追い出されることはありません。また,借主自ら荷物を持っていけますので,強制的に荷物を処分されることもありません。
そしてこれは大家さん側にとってもメリットが盛りだくさんです。
仮に断行となった場合,室内の荷物を運び出すための業者さんの費用がかかりますし,その荷物を保管しておく倉庫を用意する必要もあります。加えて,残された動産の処分費用もかかりますので,安くても10万円以上,通常は数十万円レベルでかかると思います。特に住居ではなく店舗の場合は,室内の動産の量が多いうえ,特殊なもの(専用の液体や機械など)があったりするのですべての費用が跳ね上がります。
今回の事件も商売をされていたことから処分費用や倉庫の費用だけで100万円前後の費用がかかるところでしたので,断行まで行かず本当に良かったです。
なお,法的には上記の業者の費用や倉庫の費用,そして処分費用もすべて借主が負担すべきものです。しかしながら,家賃を払えずに退去を求める場合,借主は現実的には支払うことはできませんのでまずは大家さんが立て替えるしかありません。もちろん,その後に借主に請求して回収することになりますが,なかなか難しいのが現状です。
ということで,諸々の費用を考えると,断行まで行かないのは本当に助かります。ただ,本来であれば強制執行の前の訴訟の段階,さらには訴訟前の任意の話し合いの段階で退去していただけるのがベストなんですけどね。