7月 22 2013
保証人になって代わりに返済した場合
友人や知人等に対してお金を貸すのではなく,保証人になってほしいと頼まれ保証人になるケースがあると思います。
保証人というのは,基本的にはお金を借りている本人が滞りなく返済してくれていればまったく問題はありませんが,もし,その方が遅れるような場合には債権者から保証人に対し,本人に代わって払うよう督促が来ることになります。
時効や,すでに過払いになっているなどの理由があれば別ですが,特におかしな事情がなければ,請求された保証人が支払わざるを得ません。
本人に代わって保証人が債権者に支払った場合,保証人は本人に対して求償権という権利を取得します。
求償権というと難しく感じてしまいますが,常識で考えて,保証人はあくまで立て替えて債権者に払っただけなので,立て替えて払った分は当然本人に請求することができるのはお分かりいただけると思います。
この求償権ですが,これにも時効が存在しますので,あまり長期間放置すると本人に請求できなくなってしまいますので,早めに請求する必要があります。
求償権の時効に関しては2つ注意点があります。
■ 通常は10年,商売関係の借入れであれば5年で時効
例えば,友人Aさんから「親の手術費用を銀行から借りるんだけど,保証人になってくれない?」と頼まれて保証人になった後,友人Aさんが支払わなくなり,立て替えて銀行に返済した場合,返済した日から10年間はAさんに請求することができます。
一方,友人Bさんから「飲食店を経営しているんだけど,仕入れのための資金を銀行から借りるので保証人になってくれない?」と頼まれた後,友人Bさんが支払わなくなり,立て替えて銀行に返済した場合,返済した日から5年間はAさんに請求することができます。
この違いは,商事債権かどうかという点にあります。簡単に言えば,商売に関するような借り入れについては商事債権といって,時効で消えるのが通常の半分の5年になってしまいます(最高裁昭和42年10月6日判決・商法522条)。
したがって,商売上の借入れについて保証人にとして立て替えた場合は,急いで本人に請求しなければなりません。
■分割で返済した場合,その都度時効が開始し,その都度時効が完成します。
上記の例で,友人Aさんが支払わなくなった後,①平成25年7月1日に50万円,②平成25年8月1日に50万円,③平成25年9月1日に100万円というように分割して支払った場合,それぞれ時効が開始し,完成します。
つまり,①の50万円については,平成35年7月1日に時効となり請求できなくなりますが,残る②と③についてはその時点では10年経過していないため請求することができます。
このように立て替えて支払うごとに判断することとなります。
以上が法的な注意点ですが,正直なところそれよりも現実的に回収できるかという点が最大の問題です。
保証人が支払っているということは本人の行方がわからなくなっているということが往々にしてあります。そうすると,請求しようにもどこに請求書を送付すれば良いのかわかりません。また,仮に請求書が本人に届いたとしても借金を支払わずに逃げてしまったような人ですから,すんなり支払ってもらえるとは限りません。ただ,本人の行方が分かり,勤務先等も判明すればかなり高い確率で回収することができます。というのは,保証人になっており,かつ,本人に代わって返済していることの立証は容易にできますので,裁判をすればかなり高い確率で勝訴できます。あとは,粛々と強制執行を進めれば良いので本人が勤務先を退職しない限り毎月少しずつですが回収できます。
なお,本人の現在の行方については,借用書など求償債権を持っていることを証明すれば市役所や区役所などで,本人の住民票等を取得して行方を追うこともできます。もちろん,住民票がそこにあっても実際に住んでいるかどうかは別ですが・・・。
ということで,立て替えて返済した分の回収の最大のポイントは本人を探し出すということ及び本人の現在の勤務先を割り出すことだと思います。
現在進行中の事件だと,住民票上の現住所までは突き止めているものがあります。次のステップとして現実的にそこに住んでいるのかどうかを調査中です。